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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科4巻5号

1950年05月発行

雑誌目次

綜説

色覺に關する最近のトピックス

著者: 中島實

ページ範囲:P.177 - P.183

 色を感ずるという事は人間の生活に多くの潤いと樂しみとを與えて居る.此色の感覚に就ては古來多くの人々が,その現象について又は色覚の起るべき根本問題について詳細な研究を行つて居るが,未だ完全に解明されては居ない.否寧ろ未だ不明の点が多いと云つた方がよいかも知れぬような状態であつて,現在多くの学者の研究の対象となつて居る.從つてその研究業績の報告は甚だ多いのであるが,私はこの中から特に私自身の興味を惹いて業績について紹介して見ようと思う.

眼科醫の知識

アレルギー性疾患(その現象と本態と治療)

著者: 鳥居敏雄

ページ範囲:P.183 - P.183

 例えは最初鯖を食べた,その時は何らの障碍もなかつたが何囘か,食べているうちに,何かの原因でこれが充分消化されない形で腸より吸收され,これに対する抗体ができアレルギー性になり,その次からは鯖をたべると嘔吐,下痢を起したり蕁麻疹が出たり場合によつては喘息発作を來たしたりするようになる.

傳染性疾患の防遏

ページ範囲:P.203 - P.203

傳染性角膜結膜炎,傳染性表在性点状角膜炎,銭形角膜炎Infektions Kerato-Conjunctivitis, Superficial Punctate Keratitis, Nummular Keratitis(米國公衆保健協會報告 厚生省譯)
 1.本病の認知 通常發病は急激で上眼瞼裏に異物感を伴ふ.眼瞼,角膜の充血,眼瞼結膜の濾胞性増殖,前耳淋巴腺が腫大,軟化と共に水樣分泌物を排出するに至り,次いで無數の針頭大點状の角膜溷濁を伴ふ症例が可成り多い.
 2.病原體 特殊の濾過性病原體と考へられる.

オーレオマイシン 發見 性能 治療

著者: 梅沢浜夫

ページ範囲:P.220 - P.220

 土の中の微生物—黴,放線菌,細菌は最近十年の間に私たちに,いくつかの治療藥を送り出した.ペニシリンはペニシリウム・フソリゲーヌム・フソリゲーヌムと云う一種の毒黴によつて作られるものである.其後放線菌を研究する人たちは又幾つかの幸運に惠まれた.巾0.5〜1.0ミクロンの菌糸が分枝してもつれあつてできている放線菌には100以上の種類がある.その一つストレプトマイツエス・グリゼウスはストレプトマイシンを作りストレプトマイツエス・ベネゼラあるいはストレプトニイツエス・ベネゼラはクロロマイセチン(腸チフス・発疹チフスの治療藥)を作つた.
 アメリカのレデル製藥会社のダツカー博士も放線菌の治療藥の研究者であつた.土から分離した一つの放線菌は菌体も黄色で黄色く寒天培養基の中へ滲み込んで行く色素をつくる.この放線菌にストレプトマイツエス・オーレオフアシエレスと命名した.これからやがて黄色の結晶が製出された.間もなく大きなタンクの中で培養されてオーレオマイシンは製作されたのである.

臨床實驗

角膜周擁毛細血管の血流に就て

著者: 呉基福

ページ範囲:P.184 - P.189

第1章 緒言
 心臟から搏出された血流は周期的に血流速度と血圧を変化して末梢血管に向うものであるけれども,脈波は血管壁を拡げる際に起る摩擦,血液の渦と血管壁の摩擦等によつて次第に減弱し,小動脈を経過して末梢血管に傳わつて行くと終に消失し,毛細血管領域に於ける血流は血圧の傾斜による連続的の血流をなすものである,又毛細血管の血流は血管が枝分岐する度毎に内径が小さくなるために内抵抗が増大し,且つ又多分岐による切口面積の増加によつて血流速度は極めて緩慢になるものである.
 斯樣にして毛細血管の血流は連続的緩慢なる血流であると言われているけれども人間の毛細血管血流は果して如何なるものであろうか?此の問題に関しては未だに詳細なる研究報告がない.

虹彩紋理型に就て

著者: 邱林淵 ,   藤田佐

ページ範囲:P.190 - P.192

1.緒言
 虹彩は胎生学上,外及中胚葉に由來し両者の完全にして平衡なる発育によつて初めて完成される.即ち前者より色素上皮層,散大筋及び括約筋等が,後者より瞳孔膜及び虹彩実質が形成される.從つて虹彩表面に於ける分割輪,窩孔及び皺襞等の形態解剖学的性状は胎生期に於ける瞳孔膜の発育状態,又は退化の時期並びに程度等により個人的又は人種的に千差万別の樣相を呈するものと予想されるにも拘らず之に関する研究業績は実に微々たるもので白色人種に関してはHes-ch,Weininger, Frank, Eskelund, Thirolf, Sch-wängerle, Freerksen,有色人種に就ては僅かに権,早野,福島,長村氏等の報告あるのみである.然し乍ら虹彩に関する形態解剖学的研究は爾他の虹彩に関する種々なる研究の基礎となるものであるから茲に敢て我々の域績を報告しようと思う.

小兒フリクテンと家族結核の調査に就て

著者: 原東亞

ページ範囲:P.192 - P.193

緒言
 「フ」が結核菌毒素免疫に基く「ア」性疾患であろうという事は今日人々は信じて疑わない.更に「フ」が多くRankeのIIte,st.血行撒布期に相当すると言われているが一般に眼科医は「フ」を軍に眼疾患として処置し終る傾向が強い.之は社会医学的に相当注意を要する事と思う.
 私は昭和19年に「フ」で眼科外來を訪れた乳幼兒の家族全員に就いて結核檢診を行いその調査が有意義であると思うので小さな調査であるだけでなく当時の記録を失い杜撰ではあるが茲にその大要を報告し併せて若干卑見を述べ度いと思う.

胎兒眼球の葡萄膜の發育過程に就て

著者: 中村康

ページ範囲:P.194 - P.199

 〔成人萄葡膜〕萄葡膜は之を虹彩,毛樣体,脈絡膜に区別する.
 〔脈絡膜〕脈絡膜は粗疎な膠樣結締織を基体とし,其間に彈力織維を混じ,其中に專ら血管が眼球後方から前方に貫通してゐる.

頸動脈注射の血液房水柵に及ぼす影響

著者: 水川孝

ページ範囲:P.200 - P.200

 頸動脈内注射による房水蛋白量の消長を観察し,動注の血液房水柵に及ぼす影響.更に動注の作用機轉の解析を試みた.

蛔虫症による網膜出血及び夜盲に就て

著者: 田坂純行

ページ範囲:P.201 - P.203

Ⅰ 緒言
 蛔虫の人体寄生は最近頓に増加し,100%近くの虫卵陽性率を示す状態である.之は一般的に栄養惡化に伴う抵抗性減弱,脂肪食餌及びビタミンA欠乏等の原因によると言われる(岩田,森下).
 眼障碍を來す腸内寄生虫としては,胞虫,嚢虫,線毛虫,糸状虫,十二指腸虫,蟯虫等が挙げられて居る.

眼窩内自然出血を伴える本態性血小板減少性紫斑病の1例

著者: 仁尾尚

ページ範囲:P.204 - P.205

1.緒言
 紫斑病に際して,眼科領域にも出血を來した報告例も乏しくないが,私も本態性血小板減少性紫斑病に於て眼窩内自然出血を來せる1例を経驗したので追加報告する次第である.

保險のしおり

社會保險の療養給付

ページ範囲:P.205 - P.205

 社會保險の療養給付につき秋田縣より照会があつたので厚生省保險局医療課長は次の如く解釋すべきものと認める旨,全國保險課長あて通知した.
△秋田縣照会ペニシリンの点眼投輿

臨床講義

角膜移植術に就て

著者: 中村康

ページ範囲:P.206 - P.208

 本日は角膜移植の話を致します.
「症例」部分角膜白斑の例

私の經驗

欝血乳頭に關する研究補遺

著者: 伊藤憲一

ページ範囲:P.209 - P.212

緒言
 1853年Türckが初めて腦圧亢進に際して眼底に変化の來る事を見出して以來.w.Graefeを始め多数の先人が,所謂鬱血乳頭の成因を窮むる可く臨床的或は実驗的に多数の貴重な業績を爲し逐げたが,未だに定説なく互に甲論乙駁,尚ほ混沌として居る.
 然るに鬱血乳頭の詳細な病理組織学的檢索を爲したものは比較的僅少であつて,特に本邦にては宇山氏の4例並に浅山氏の1例を数ふるのみである.余は幸にして其の13症例,16視束.25眼球の病理組織学的檢索を爲し,他に極めて興味ある数臨症例を観察し,鬱血乳頭の病理組織学的知見並に其の成因論に寄與し得る多くのものを得たので,ここに報告することにした.

私の研究

大塚氏の近視と調節力を基とした私の近業近視水晶體適應説反對説を讀んで

著者: 佐藤邇

ページ範囲:P.213 - P.214

 大塚任氏は日眼,53卷,181頁,昭24年(学会号)に於て,屈折と調節力の関係より,私の主張する弱度近視(弱度遠視)正視の水晶体適應説に反対し,眼軸説を支持した.
 併し私は学会に行かれなかつたので,今囘初めて其の内容を知つたが,大塚氏の実驗方法,論據に誤を認めた.更に屈折説を理解して居ない事,及び論旨に矛盾が多いと考えたので,其の理由を述べようと思ふ.

談話室

日眼に向っての苦情聞き込み帳

著者: 中村康

ページ範囲:P.215 - P.215

 私には何でも話が爲易いらしい.日眼に於ての色々な注文や希望や苦情をもち込む.投書箱と間違えている.けれども日眼の執行機関の理事なんかになつていると自分独りよがりで済ますことは現代的でない.從つて朗らかに隱しだてなしに述べる事が良いと思つて答える.間違つていたら訂正して戴き,どしどし意見を述べて欲しい.

中村教授の「總會記」を讀んで

著者: 國友昇

ページ範囲:P.216 - P.216

 十何年ぶりかに京都の春にしたつて東京に帰つて來た私は,盛会であつた総会のあれこれを思い出して,今年は早速研究に取りかゝらなければと思つた。総会は弓削教教授や府立医太の先輩,医師の方々の御盡力で順調に運営された.又,講演の内容も戰前に戻つた.安閑として居れなくなつた.うれしい悲鳴である.そう云う私の所え臨眼第4号が屈いた.中村教授の総会記を読んで「自分も評議員の一人だが」とつぶやくと眞摯に講演し討論された会員諸兄に應える所あつたかどうかを省みて自責の念にかられた.
 元來私は学会縁の薄い男で,台湾に昭和12年に行つてから引揚げる迄に唯一囘岡山であつた学会に出たばかりで,ほんとに顏を出す事が出來る樣になつたのは茲3〜4年である.從つて評議員にして頂いたのも最近で新米の方である.こんな新米が意見を述べる事は甚だ潜越であるが,総会記を読むと若い者よ意見を云つてみろと云う声がするので一筆書かして頂く.

外文抄緑

英國篇(其の2)/ドイツ篇

ページ範囲:P.217 - P.218

Britisch Journal of Ophthalmology London Vol. 32. January-December '48.
Vol.32.P.449〜516 Aug 1948
1)硝子体内ストレプトマイシン:その毒性と拡散(P.A.Gardiner.I.C.Michaelson.R.J.W.Rees and J.M.Robson)
2)人視神経の纖維の大きさの分析(L.W.Chacks)

手術メモ・XII

開眼手術

著者: 中村康

ページ範囲:P.219 - P.220

 開眼手術と言うのは,眼球の前半部の疾患に依つて,眼内光線の射入が妨げられて,視力を失つている場合に行うものである.
 此場合,眼球後半部には,異常のないものでなければならぬ.從つて,開眼手術の効果判定には,投光方向の正確な應答を以てする.患者をして正面を見させ,檢眼鏡にて反射させて光を,正面から,左,右側から,更に上,下から,病眼内に造り,明りの所在を述べさせるのである.此が正しく,直ぐ,言いあてるならば手術後,視力を恢復することは,略々確かだと言うことが出來る.

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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