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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科4巻8号

1950年08月発行

雑誌目次

第1囘東京眼科講習会講演記事

可動性義眼に就て(特に眼球摘出時に施行する方法)

著者: 桑原安治

ページ範囲:P.311 - P.312

 第1囘眼科講習会に於て可動性義眼と網膜剥離の手術療法に就て述べたが50数板の図を中心に講演したので其等を総て紙上に掲げる事は不可能である.又網膜剥離の手術療注は既に盛教授の特別講演を初め多数の論文があるので茲には省略し,可動性義眼のみに就て記述し度いと思う.
 眼球喪失は外見上極めて醜貌を呈する爲何とか之れを補整して容貌を整えようとするのは人情の常である.從つて古來より義眼が考えられ,木,金属,貝殻等を細工して使用しておつた記載がある.現在一般に使用しておる硝子義眼は18世紀の初めに,フランスに於て作製せられたが極めて幼雅なものであつた.其の後ドイツにてMüllerが稍々精巧な義眼を作つたが尚一重義眼の域を脱しないものである.更にMüllerは苦心研究の結果1898年に精巧なる二重義眼を発表するに及んで全世界を風靡するに至つた.当時は本邦にてもそれを購入し使用したのである.本邦にて硝子義眼を最初に作製したのは大阪の高橋春爲氏であつたが遂に大成するに至らず中止の己むなきに至つた.其の後中泉博士の指導により厚沢氏が立派な義眼を作製し昭和の初めより今日迄大いに眼科学界に貢献した.硝子義眼は優秀なるものでも破損し易いという大きな欠点がある.其の爲現在はアクリル酸樹脂の義眼が作られ更に一段の進歩をなした.如何に理想的であつて一見義眼挿入の氣付かぬ程であつても義眼の最大の欠点は可動性でないという事である.

最近の眼科手術諸相(映画使用)

著者: 中村康

ページ範囲:P.313 - P.317

 最近眼科疾患に際し眼部以外の手術が色々と加えられるようになつて來た.本日は其等に加え2-3眼科的な手術の目新しいものを述べて見ようと思う.
 日眼総集会,関東眼科集談会と特別講演続きで此度の講習会の準備が充分整つていない.目下研究中のものが大部分で成果に就て確実な事が申上げられない事は甚だ遺憾である.今後皆さんと協力研究し各手術の効果を批判して見たいと思う.

保險のしほり

健康保險照會事項

ページ範囲:P.317 - P.317

 問 昨年10月10日附保險発第293号保險局医療課長より都道府縣保險課長宛通牒によれば,視力檢査眼底檢査は特に屈折異常による自覚症状があり且つ医師も眼鏡の使用を必要と認めた場合に認められるとあり他の場合は認められないものと解されるが,緑内障又は網膜脈絡膜炎等に於て眼底檢査を行つた場合この檢査料も認められざるものなりや.
 なほ視野眼底檢査料は如何なる場合に請求し得るや具体的な例を示されたい.

社會保險と眼科處置の點數

ページ範囲:P.322 - P.322

 〔問〕眼科手術の場合,手術前後の洗眼,点眼の処置は手術点数以外に請求出來るものなりや.
 〔答〕手術時の麻酔注射と同様,別に点数の請求は出來ません.しかし,手術の後に行う毎日の処置については当然請求出來ることは勿論である.

社會保障制度研究試案要綱に對する厚生省の意見

ページ範囲:P.331 - P.331

 社会保障制度審議会で作成した同研究試案要綱に対し厚生省から安田委員案として修正案が提出されたが,第4編「公衆衛生」総則は次の通りである.
1.衞生教育に関する條項を設けること

健康保險の療養給付解説

ページ範囲:P.349 - P.349

 〔問〕次の洗眼,点眼の点数を指示されたい.
1.洗眼後10%ホモスルフアミン軟膏点数の場合

診療所の患者收容制限

ページ範囲:P.352 - P.352

〔問〕法的に「入院」とは病室に收容し注意,観察,治療を施すものを云うべきか,それとも病室に一時收容し,診断に必要ある病状を観察し,檢査するための期間も入院に含まれるか.(宮城縣)
〔答〕入院とは何等法的にも根拠なく,從つて定義もない.貴問のような場合は総て入院と看做して差支えない.(厚生省)

臨床實驗

人體によるビタミンB1缺乏實驗例の眼所見に就て

著者: 板倉敏男

ページ範囲:P.318 - P.319

 昭和23年1月より3月に亘り,京都大学医学部に於て,人体によりビタミン(以下V.と略記) B1の欠乏実驗が敢行された当時,私は京都大学眼科教室に勤務しており,恩師山本教授に該実驗の眼科的檢査をする樣命ぜられた.茲に,遅くればせながら,当時得た興味ある成績を紙上に発表し,以つてこの貴重なる人体実驗に参加した檢者としての責務を果したいと思う.

形態視野に就て

著者: 萩原朗 ,   柳田長子

ページ範囲:P.320 - P.322

 普通臨床的に測定される視野は,光覚を有する網膜の範囲を外界に投射したものであつて,專ら光神及び色神に関するものである.然るに網膜周辺部に於いては,事物の形態は如何に感知されているかと云うことに関して研究を行つている人は甚だ尠く,Ziglerと3人の女子協力者Collier,Galli等の3,4の報告が見られるのみである.我々も最近2ケ年間この形態視野とも謂うべきものの測定を,健常視野を有するもの及び病的視野を有するものに就いて試みつつあるが,茲に先ず健常視野を有する被檢者の成績を述べ,御参考に供しようと思う.

急性結膜炎とアレルギー

著者: 三井幸彦

ページ範囲:P.323 - P.324

 結膜の急性炎症を考える場合,私共はアレルギーの概念を除外して行うことは出來ない.さきに弓削(本誌2卷234頁)はトラコーマ病変をアレルギー機轉によつて説明しようと試み,上野(日眼53卷149頁)はこの問題を組織学的に檢討している.両者の見解に対する私の見解は既に(日本医事新報1328号)述べた通りであつて,私も氏等と同樣アレルギー機轉を考えることなしにはトラコーマ病変を考え得ないと思うが,細部に於ては氏等の説には訂正を要する点があると思う.
 私は今囘,私共が今迄結膜炎というものを綜合的に種々の方面から檢討した結果,私共が現在考えている結膜炎に於けるアレルギー機轉というものを綜括して述べてみ度いと思う.何故そう考えなければならないかという個々のデーターは逐次発表していくつもりである.

幼兒に見た視神經脊髓炎

著者: 塚原勇

ページ範囲:P.325 - P.326

 1879年Erb氏が初めて視神経と脊髓炎の合併せる症例を報告してから,同疾病は次々と諸家によつて報告された.殊に最近10年余の間に或いは視神経脊髓炎の名称によつて症例が加えられ,本邦に於いて既に30余例を数う.今日では本疾患は左程稀なものではないが,私は從來の報告にはなかつた幼兒に本病を認めたので追加報告する.

高齡者に發病した結膜黒色肉腫の1例

著者: 河瀨澄男

ページ範囲:P.327 - P.329

 我が國で結膜に初発した黒色肉腫の報告は明治32年川上氏の例より昭和23年廣石氏の例に至る17例を数え,そのうち眼瞼結膜より発生したものは藤原,井上,田丸,稻葉,藤川,河村,廣石氏等の7例で穹窿部結膜より発生したものは岡村,中村,古城,後藤氏等の4例であります.私は最近70歳女子に於て多発性に発育したと考えられ,下眼瞼結膜及上眼瞼穹窿部結膜より発生したと思われる黒色肉腫の1例に遭遇したので茲に追加報告します.

先天梅毒による虹彩毛樣體炎に就て

著者: 福田恒一 ,   藤田佐

ページ範囲:P.330 - P.331

 先天梅毒乳兒に虹彩毛樣体炎を見る事は既に相当多数の報告があるが,私も最近経驗する事が出來たので追加報告をする.

網膜膠腫の経過中に眼球癆の状態を呈せる1例(網膜膠腫→眼球癆→網膜膠腫)

著者: 中村道紀

ページ範囲:P.332 - P.333

 私は定型的網膜膠腫の状態を呈せる眼が,その経過中に数ケ月間眼球癆の状態にあり,治癒した樣に見えていたのに,後に炎症々状を以て再び定型的の網膜膠腫の症状を具備するに至つた珍奇な例を経驗したので,茲に報告する.

一種の結核性網膜脈絡膜炎に就て

著者: 田辺信靖

ページ範囲:P.334 - P.335

症例
 58歳男子.
 〔既往症〕2,3日前から,何等原因と思われる事なく,右眼の視力減退を覚え,賣藥を用いて居たが,増惡の傾向があるからとて來院す.内科的には,8年前に,左側の濕性肋膜炎を経過したが,以來健康であつた由である.

核性近視の1例

著者: 市川宏 ,   鈴木兵衞

ページ範囲:P.336 - P.337

 核性近視は古來泰西に於て二重点水晶体,中心水晶体性近視・二重水晶体・仮性白内障等の名を以て呼ばれ河本氏によつて始めて核性近視と名付けられた比較的稀有に属する疾患であつて,本邦に於ては河本,酒井,後藤,田辺,宮下等10数例の報告がある.
 余は東京鉄道病院に於て比較的若年者に発病し過去に於て電氣熔接作業に從事し屡々その障碍をうけたことのある患者に遭遇し核性近視発生に関するGuttmannの説に一つの示唆を與えるものと考えたから敢て此処に追加報告し諸先輩の御批判を乞う次第である.

眼科醫の知識

3分間で糖尿病の診断

ページ範囲:P.324 - P.324

 米國では糖尿病を確実に檢査する最新試驗器が完成した.此器はスーツケース大の裝置で3分間で糖尿病の有無を医師に知らせてくれるのである.勿論之に血中にある糖量の正常値以上のものを確実に測定するのであり,1時間内に120以上も血液標本を取扱うて判定するのである.
 本器は発明者Thomas Hewsonの名を取つてHewson Clinitronと命名された.此の人は米國公衆衞生部糖尿病科の科員であり米國糖尿病協会の会員である.本器の出現により糖尿患者の檢出は容易となり費用も極めて低廉で研第所の人々の手を煩はす事も亦僅少となつたとのことである.

年令別結核死亡

著者: ,   福島

ページ範囲:P.329 - P.329

談話室

我が國の醫學教育の現状

ページ範囲:P.337 - P.337

 近來本邦には医学教育機関が非常に増加した.專門学校はなくなつて全部大学となつた.教育過程も等しく大学教養部2ヶ年の間に必要な理科教育を授けて後入学することになつた.私共は各大学の名称も其処に勤務する教授をも知らぬ事が多いので次に掲げることにした.

臨床講義

網膜色素変性に対する頸動脈毬摘出の效果に就て

著者: 中村康 ,   斎藤規子

ページ範囲:P.338 - P.344

 本日は網膜色素変性に頸動脈毬摘出した効果に就て述べやうと思ふ.
網膜色素変性は其発病期に依て 先天性型 小兒型(生後1ケ年以内発病)  單純型  痴呆合併型 青年型(15,6歳頃迄に発病)  單純型  痴呆型  壮年老年型を区別する,全身症として身体小躯,聾,雜聽,痴呆,癇癪,大脳性失調,四肢畸型等を伴うものがあり殊に痴呆を伴うものはStock-Spielmeiyer氏型と言う.

眼外傷

著者: 植村操

ページ範囲:P.345 - P.346

 今囘は都合上患者を供覽しないで,眼外傷の内で打撲によるもので,眼外部に創口のない場合に見られる変状を述べる.打撲には種々の原因があるが,最近は野球熱が盛んで,特に「スポンヂボール」に因る打撲外傷が多いので,特にこゝにまとめて述べるのであるが,以下述べるすべての変化が同時に起るのでないことは勿論である.又「ボール」では起さないような強力な打撲傷も付け加えて述べる.「ボール」に因る外傷は軟球に多く,硬球には少い.捕手,審判者に多い.之は軟式の場合には「マスク」を用いないことが多く,又球に弾力がある爲めに,眼球を眼窩内に強く圧迫する爲めである.

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眼科消息

ページ範囲:P.346 - P.346

 ◇藤田敏彦氏 岩手医大学長の氏は昭和25年度の文部省科学研究費として眼疾患の震氣的刺戟に対する興奮性に関する研究に対し3万円を交付さる.
 ◇本川弘一氏 東北大教授の氏は上記の科学研究費として視覚機序の研究に対し7万円を交付さる.

外文抄録

American Journal of Ophthalmology

ページ範囲:P.347 - P.349

1)早産兒に於ける水晶体後方の纎維形成(W.C.Owens and E.U.Owens)
2)老視に関する実際的諸問題(J.E.Lebensohn)

手術メモ・ⅩⅤ

眼瞼内飜及睫毛亂生

著者: 中村康

ページ範囲:P.350 - P.352

 眼瞼内飜と睫毛乱生とは元々其の起る原因が異るけれども手術方法としては屡々共通のものがあり病症としても合併することが尠しないので此処に一諸に述べることにする.
 眼瞼内飜は瘢痕性内反,痙攣性内反,老人性内反を区別する.眼瞼内反に類似し乳兒期,少年期,思春期のものに多く見るものに睫毛内反があり,之は眼位置異常も睫毛の生え方にも不整はないが瞼縁皮膚の贅皺に押されて睫毛が直立し或は内反しているものである.此に上瞼睫毛内反,上瞼睫毛内反がある睫毛乱生は睫毛の生え方に不ぞろいがあるものである.此時屡々眼瞼内反を伴うもので同病異語の如く誤解している人もある.其は正しくない.

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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