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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科4巻9号

1950年09月発行

雑誌目次

綜説

人結膜血管の生體顯微鏡像(續)

著者: 國友昇

ページ範囲:P.355 - P.357

 本誌第4卷,第2号に続いて病的な極小血管の状態に就て図を示して之に説明を加えてみたい.

眼科醫の知識

A滲透性出血と破綻性出血/B動静脈吻合

ページ範囲:P.357 - P.357

 正常なる状態に於ける血液と組織間との物質代謝は極小血管の一部に於て行はれ主として血液の液体成分が管壁を滲透して組織内に侵入し組織内の老廢物の一部が管内に吸收されるとされて居るが血管壁が障碍さるれば成分迄管外に出される.此程度が最も強くなると血液全成分が管外に出る事になるが赤血球は一番最後に出る.極小血管に最も定型的な滲透性出血を見る事が出來るのは火傷の場合である.此際には赤血球の一箇一箇が障碍された極小血管壁に浩うて多数滲透する貌が良く観察出來る.而て赤血球の滲透が認めらるゝ場所はa1及v1〜v5又はv6で其他極小血管からの滲透は確める事が出來なかつた.
 急性結膜炎の際又はヒスタミン,ヂオニン等の塗布或は点眼に依つても赤血球の滲透を惹起する事があるが此際の滲透性出血の経過は当初は正しく赤血球の滲透であるが此滲透は極小血管壁に沿い平等に起る事少く極小血管の限らたれ場所である事が多い.其場所ば普通殊a1にv1〜v2の或限られた場所である.而て此の頗る限局された滲透性出血は周囲血管壁に同樣の出血を引き起す事なく然も某局所の出血は更に進行し遂には小破綻性出血を引き起す.斯くして我が日常経験する小点状出血は形成される.

社會事業に關する術語解説

著者: 早崎八洲

ページ範囲:P.388 - P.388

 1.社会事業の分野で普通いう意味の術語が多くあらわれたのは1920年以後である.その頃から社会事業が專門的形態と内容をもつて來たからである.其大きな理由はケイス・ワークが発達してケイス・ワークが輩出したからである.
 2.現在使用されている社会事業の術語には大きく分けて二つの源泉がある.其一は日本で考え出されたもの他の一つは外來語と其を之に漢字をあてはめたものである.

臨床實驗

青色白内障の統計的観察

著者: 下田重正

ページ範囲:P.358 - P.360

 青色白内障とは斜照法に於て水晶体溷濁が青色乃至緑色を帶びて認められるが徹照法に於ては如何に精査するも陰影を発見すること困難なる特長あり,概して先天性にして又多の先輩諸家は停止性なることを説いている.本症は欧米に於てはBach,Fuchs氏等は比較的稀なるものとなすに反しRömer氏は却つて屡々遭遇するものなりと云う.我國に於ては大川内,岡村,增田,倉田,友次,草間,靑山,似内,中前,上野氏等の報告あるのみなるも,倉田氏は6ケ月間に於ける患者総数715例中4例8眼,即ち全眼疾患の0.56%に本症を経驗し敢て少きものにあらざる事を記せり.是れ畢覚Römerの言える如く実際には割合に多きものならんも其の変化微細に,して之による視力障碍僅微にして其の多くは先天性なる爲めに,本人も医師もつい観過すること尠からざる爲めならんと思われる.
 余は最近9人14眼の青色白内障を経驗し,細隙燈顯微鏡を以つて比較的精細に檢査し得たるを以つて茲に報告し,併せて從來我國諸報告を縦覧し統計的観察を企てた次第である.

特異な視野缺損を以て進展した視神經交叉部蜘網膜炎の1例に就て

著者: 八十一三

ページ範囲:P.361 - P.363

 視神経交叉部蜘網膜炎の手術症例に就ては我國に於ても昭和15年以來屡々報告されているが,その原因並びに症状は多種多樣で特に蜘網膜嚢腫を作るものは開頭によらねば鑑別診断の不可能なものも多い.著者はトルコ鞍側方の腫瘍を疑わしめる樣な特異な視野欠損を示した蜘網膜炎の1例に遭遇したので報告する.

フリクテン性疾患に對するレスタミンの局所療法

著者: 大山秀 ,   淸沢兼久

ページ範囲:P.364 - P.366

 最近に於けるアレルギー(以下アと記す)学説の発展は誠にめざましいものがあり,其の病理発生に関してはヒスタミン説(Dale),細胞膜説(Doerr),ヒヨリン説(中村,Hoff),或いは細胞反應説等種々の学説は樹てられたが未だに解決を見ないようである.最近Daleのヒスタミン説に基礎を置いてフランス,アメリカで抗ヒスタミン剤の研究が旺んとなり既に20数種の製剤を見,本邦にてもレスタミン,アネルゲン等が現われるに到つた.之等抗ヒスタミン剤のア性疾患に対する全身的投與に就ては既に眼科領域は勿論皮膚科,小兒科其の他の領域に於ても報告は散見する所であるが,其の局所使用に就ては,春季カタルに対する今井氏,及び昭和24年度関東眼科集談会に於ける向山氏の結核ア性疾患に対する應用以外には未だ報告を見ない.
 私共は結核ア性疾患の発生は全身の結核ア状態にAn—ageを置くは勿論ながら,其の眼局所発現に関しては局所的要約の重要性に鑑み,又抗原体反應に際して生ずるとされる組織のヒスタミン発生が必ずしもア炎の本態でもあるまいとの見解から,眼疾患の如き局所的なものに於ては抗ヒスタミン剤の投與は全身的より寧ろ局所に集中的に作用せしめた方が効果的ならんと考へ10月以來レスタミンの局所療法を施行し見るべき効果があつたのでここに報告し諸先輩の御批判を仰ぐ次第である.

外眥部に發生した初期硬結の1例

著者: 林生

ページ範囲:P.367 - P.368

 梅毒初期硬結が陰部以外殊に眼部に於て見られる事は外國には多数報告されているが我國では風習に著しい差が有る爲め比較的稀なものとされていた.然るに終戰後我國の風習は急速に欧米化の一途を取りつつ有り一方世相の惡化と共に梅毒患者の増加とが相俟つて其の数も増加しつつあるのではないかと思われる.余も最近其の1例に遭遇したので茲に報告する次第である.

眼窩漏斗尖端部症候群を呈せる頭蓋内内頸動脈瘤に就て

著者: 岩永敏男 ,   鳥居俊夫

ページ範囲:P.369 - P.370

 脳底の動脈瘤は西洋には多数報告されているが,我國では報告甚だ寥々たるもので,以下数氏の記載を見るに過ぎない.

梅毒性視神経萎縮のペニシリン療法

著者: 遊佐満

ページ範囲:P.371 - P.372

 梅毒性視神経萎縮は,脊髓癆,タボパラリーゼ,進行麻痺等の合併症として認められるが,その発現率はIgersheimerによると脊髓癆では10-15%,Moore,Hahn, Woods, and Sloanによると,脊髓癆13.7%,タボパラリーゼ21.1%,進行麻痺2.4%となつていて,他の全身症状に先んじて現われる事が多く,瞳孔の異常と共に診断上重要な位置を占めている.
 しかし乍ら,一旦その治療の点になると,從來行われて來た重金属類による駆梅療法,マラリア,ゴノワクチン,大腸菌ワクチン,腸チフス菌ワクチン等による発熱療法,Swift-Ellisの注射法等は未だ満足し得べき療法とは云い難く,ややもすれば,急速に,又は緩慢に萎縮が進行し,遂に失明に終る事が尠くない.

V.B2缺乏症(Ariboflavinosis)の眼症状

著者: 弓削経一

ページ範囲:P.373 - P.376

 AriboflavinosisとはV.B2複合体中の成長促進因子即ちRiboflavinの欠乏症の意である.
 Goldberger, Wheeler, Lillie and Rogers (1926)によつて,酵母の水溶性Vitaminの中から抗神経性Vi-taminの他に熱安定性の第二の因子,即ちV. B2又はV.G.或はP. P.因子(ペラグラ予防因子)が分離せられた.更に卵白,牛乳等に含まれる黄色色素Flavinが量的にV.B2の成長促進因子と一致することが明かにせられFlavinはV.B2中の成長促進因子に他たらぬことがわかり(Gyorgy, Kuhn其の他1933)半乳から得られたものはLactoflavin (Kuhn,其の他1933)と云われた.其の構造上,側鎖の5炭糖がRiboseであるから一般にRiboflavinと云われる.Banga&Gyorgy (1932)は豚の心筋から黄色色素Cytoflavを得,之がWarburgのYellow ferment (1932)と講造が同じであることを明かにし,Kuhn & Rudy (1936)は,更にGybrgyのCytoflav)がRiboflavinの燐酸エステルであることを証明した.Riboflavinは故に体内では合成不能の黄色酵素の色素部分を形成し(Co-ferment)酸化環元系に重要な物質である.

頸部交感神經諸手術の眼に及ぼす影響(第1報)

著者: 板倉敏男

ページ範囲:P.377 - P.380

 頸部交感神経に関する研究は,己に多くの人によつてなされているが,頸部交感神経と副交感神経(殊に迷走神経)との関係に就ては,まだ明にされていない.私はこの両者の関係を明にする目的で,家兎の頸部交感神経に諸手術を試み,其の成績を比較吟味する事により,興味ある成績を得たので,茲に報告する.

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眼科消息

ページ範囲:P.360 - P.360

 ◇淺山吾三氏 山口医大医学部教授を辞退し,宇部市東区緑橋通1丁目に淺山眼科医院を開業さる.
 ◇日隈俊一氏 熊本医大眼科教室医局長の氏は國立龜川病院眼科部長に就任.氏は熊本市練兵町日隈俊雄氏の嗣子.

保險のしをり

醫療法人制度の運用—厚生省から運營上の注意(1)

ページ範囲:P.363 - P.363

 医療法の一部を改正し,新に医療法人制度が8月1日から施行されることになつたが,これが運用の適否は,我が國に於ける医療事業の発展に影響する所が少くないものと認められるので,本法の運営に当つて特に注意されたいと葛西事務次官から全國知事に通達した事項の内で,主なものを次に記しみてみる.

醫療法人制度の運用—厚生省から運營上の注意(2)

ページ範囲:P.366 - P.366

 第2.設立に關する事項.
 1.医療法人の設立の認可は,公益法人と異なりすべて都道府縣知事の行う所であり,数府縣に亘る事業内容を有するものについても,その主たる事務所々在地の知事がこれを興えるものであること.
 2.認可決定の基準については,法第45條第1項に定められているが,特にこれが営利を目的にするものではないかどうが,又数ケの診療所の開設のみを目的とするものについては,少くともその内1ケの診療所について医師又は齒科医師が常時3人以上勤務するに足る設備を有するものであるかどうかにつき,充分注意せられたいこと.

第1回眼科講習会講演記事

最近の眼の化學療法

著者: 桐沢長德

ページ範囲:P.381 - P.388

 化学療法とは周知の如く,一種または数種の病原体(細菌,リケツチア,ビールス,かび,原虫,寄生虫等)に対して殺滅乃至発育抑制作用を有する特定の化学物質をもつてその病原体に起因する疾患を治療することをいい,わが眼科領域に於ても他科と同樣に,最近目ざましい発展をとげつつあるのである.
 眼科領域に於て用いられる新しい化学療法剤としてはペニシリンをはじめとして数々あるが,本日はそのすべてについて話す時間がないので,最近われわれの試用したオーレオマイシンについて結果を報告し,次でストレプトマイシン,ペニシリン,スルフオンアミド剤等につきその使用上の諸問題について檢討してみようと思う.

臨床講義

同側性半盲症,特にSyndrome of the anterior chorioideal arteryに就て

著者: 高安晃 ,   井後吉久

ページ範囲:P.389 - P.391

 先ず臨床例から述べる.
 第1例 29歳の男子.初診,昭和24年8月25日,

私の經驗

眼腐蝕の療法

著者: 永松三男

ページ範囲:P.392 - P.392

 眼の腐蝕は大学又は一般地方病院ではあまり遭遇するものではなく,阪大眼科に於ける最近10年間の統計によるも10年間に40例に過ぎないようである.然るに我等の病院では多数の化学工場の作業員を診療している関係上眼腐蝕患者には屡々遭遇し,本年1月以降6月迄の眼腐蝕患者37名(この中には單なる結膜の充血程度のものも含むが)で公傷患者の16%に当り,之等の治療には少なからず頭を悩ましている.それで何等事新しい療法ではないようであるが,最近我等が行つている療法を述べて御批判を御願いする.

外文抄録

American Journal of Ophthalmology

ページ範囲:P.393 - P.394

1)脈管描記に依る眼窩腫瘍の診断.(Antonio Grino and Edwin Billet)
2)其の性状についての新しい着想に基ずく翼状贅片の外科療法.(H.Saul Sugar)

談話室

ソ聯將兵眼疾管見

著者: 大石省三

ページ範囲:P.395 - P.395

 昭和20年8月20日ソ軍が奉天に進駐して以來,21年3月10日奉天を撤收する迄約7ケ月間,毎日ソ聯將兵の眼患者を診る機会に遭遇した.即ち旧満洲医大病院は全般的に此等の人々の診療を引受けるべく開放され又一方私は週1囘耳鼻科の先生とソ聯軍病院に行つて眼科担当の女軍医と共に診療する樣要請されたからである.
 元來我々の診療対照となつた人々は中國人,日本人,朝鮮人,蒙古人等各種の民族であつて,言葉よりも感を働かすと云つたことに慣れてはいたが,流石野戰のソ聯兵を相手にする時は片言も通じない爲めに相手の感情を荒立たせはしないかと,氣苦労であつた.然し概して彼等は医師特に日本人医師に対する態度は慇懃親愛であつたと云えよう.

手術メモ・ⅩⅥ

瘢痕性眼瞼外飜症

著者: 中村康

ページ範囲:P.396 - P.396

 瘢痕性眼瞼外反の手術は,1)皮下瘢痕切断法,2)癒痕切開法,3)皮膚移動法,4)皮弁移植法がある.尚原因的に弛緩性外反と播搦性外反とに2〜3特種な考案がある.

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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