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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科40巻1号

1986年01月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・338

Contact lens corneaの所見を示した周辺部角膜病変の1例

著者: 大久保彰 ,   大久保好子 ,   大原国俊 ,   金上貞夫 ,   沢充 ,   溝口義明

ページ範囲:P.6 - P.7

 緒言 慢性関節リウマチ(以下RA)に合併する特異な角膜病変に周辺部角膜がmarginal furrows様に菲薄化する病変があり1),病変が角膜全周に広がるとあたかもcontact lensを角膜にのせたような病像を示すのでLyne2)はこれをcontact lens corneaとして報告した.本報では,強膜炎の急激な進行とともにcontactlens corneaの所見を示した1例を紹介する.
 症例:69歳,男性.

今月の話題

若年性網膜剥離

著者: 宮久保寛

ページ範囲:P.9 - P.13

 若年者の網膜剥離について,特に特発性の場合,発症の機作はまだ十分に解明されていないが,その発生には先天的素因がかなり関与していると考えられ,家族性滲出性網膜硝子体症の可能性に十分注意すべきである.

臨床報告

網膜中心動脈分枝を流れる栓子

著者: 山田酉之

ページ範囲:P.21 - P.23

 2例のカラー写真を報告する.
 第1例は49歳の女性.30歳過ぎ頃より時々右眼の一過性黒内障の発作があり,無散瞳カメラで撮影を反復して栓子の撮影に2回成功した.病変は同一分岐部に異なる形で捉えられ,すぐ消滅した.
 第2例は81歳の女性.前日発病した中心動脈分枝閉塞症を撮影中,該部に偶然栓子が流入し,約5秒間に4駒を撮影できた.

急性単球性白血病に合併した網膜中心動脈閉塞の1例

著者: 矢ケ﨑克哉 ,   宮川典子 ,   稲垣恭子 ,   木内誠 ,   中出泰充

ページ範囲:P.25 - P.29

 33歳の急性単球性白血病の男子患者の再発例に合併した片眼性の網膜中心動脈閉塞症を報告した.その原因は血液粘性の増加,あるいはhyperglobulinemiaによる網膜中心動脈閉塞ではなく,視神経への白血病細胞の浸潤あるいは転移による網膜中心動脈と視神経中心動脈の機械的閉塞によるものと考えられた.しかし,罹患眼の脈絡膜循環は正常であったので,短および長後毛様体動脈には閉塞は生じていなかったと考えられた.これらの事実から,視神経への浸潤あるいは転移が考えられる白血病を代表とする全身疾患で,網膜中心動脈閉塞の発生を観察したならば,CT撮影を早急に行う必要性を痛感した.

網脈絡膜粟粒結核症の1例

著者: 船坂恭介 ,   越野雅夫

ページ範囲:P.30 - P.34

 67歳の肺粟粒結核症患者の右眼に,約1/4乳頭径の2個の白色結節性病変,左眼に約1/2乳頭径の1個の白色結節性病変と網膜静脈周囲炎を認め網脈絡膜粟粒結核症と考えた.全身的な抗結核療法で病変は白色化を増し,境界鮮明となり瘢痕化を示した.螢光眼底撮影にて経過を観察したので報告する.

急性間質性腎炎に伴ったぶどう膜炎(Renal-ocular syndrome)

著者: 阿曾香子 ,   若倉雅登 ,   小林豊 ,   梅谷直樹

ページ範囲:P.35 - P.39

 急性間質性腎炎(以下AIN)にぶどう膜炎を合併した42歳女性の例を経験した.本症ははじめに虹彩炎に気づかれ,次いで腎炎を発症し生検にてAINと確定診断された.そして,経過中に腎炎の再燃とは関連なくぶどう膜炎の再燃をみた.再燃時の眼所見としては前部ぶどう膜炎のほか軟性白斑,乳頭発赤腫脹,眼底出血,硝子体混濁等の後部ぶどう膜炎の所見も呈し,ステロイドの全身投与により改善した.これまでの報告例と比較,検討するとAINとぶどう膜炎の合併例は女性に好発し,前部ぶどう膜炎が必発してその多くが両眼性であること,腎炎とぶどう膜炎の活動性が一致しないこと,高IgG血症がみられ全身ステロイド療法が奏効すること等いくつかの共通点を有することがわかった.眼科領域では両者の合併はほとんど知られておらず,今後注目すべき症候群であると思われた.

特異な経過を示したContact lens corneaの1例

著者: 大久保彰 ,   大久保好子 ,   大原国俊 ,   金上貞夫 ,   沢充 ,   溝口義明

ページ範囲:P.41 - P.45

 69歳男性の両眼に発症したcontact lenscorneaの一例を報告した.
 本例は難治性の結膜炎として発症し,次第に上強膜炎および強膜炎の症状が出現し,炎症症状の悪化に従って輪部結膜が角膜周辺部へ侵入するとともに,周辺部角膜が連続性に菲薄化する特異な病変を示した.経過中に慢性関節リウマチおよびシェーグレン症候群が確認されたことから,Con-tact lens corneaと診断した.
 保存的療法とステロイド療法を併用したが再発を繰り返したため,cyclophosphamideの投与を行ったところ症状は劇的に改善した.
 本症の難治例に対してはcyclophosphamideの投与が有効であると考えられた.

先天性網膜分離症における硝子体手術の1例

著者: 三宅養三 ,   近藤俊

ページ範囲:P.46 - P.48

 強い硝子体出血を伴った先天性網膜分離症で出血の自然吸収が見られなかったため,硝子体切除を行った症例を報告した.
 耳側に見られた胞状の網膜分離部に内層裂孔が存在し,その部の網膜血管の一部はbridge状となっており,網膜分離部に網膜硝子体癒着が見られることが術中に判明した.硝子体出血がこの部の血管の破綻により生じたものと思われ,硝子体牽引を十分に除去した.しかし術後1年以上を経て再び硝子体出血が生じ,これはすぐに自然吸収された.硝子体牽引は除かれたはずであるから,今回の出血の主因は内層裂孔の形成,あるいは拡大による血管破綻が考えられ,出血を生じたと思われる網膜血管をアルゴンレーザーにより閉塞させ,その後再出血を見ない.
 本症では,硝子体出血や網膜剥離など硝子体手術の適応になりうる合併症が多く見られるにもかかわらず,硝子体手術の報告はほとんどない.硝子体切除中に得た我々の経験を述べた.

乳児の急性硬膜下血腫に続発し増殖性変化を来した両眼硝子体出血の1例

著者: 三輪正人

ページ範囲:P.53 - P.56

 急性硬膜下血腫に引き続き,両眼に著明な硝子体出血を起こした生後9カ月の男児の症例を経験した.
 左眼には,繊維性増殖膜が形成され続発性網膜剥離が起こったため,硝子体手術等を施行したが最終的には眼球癆となった.右眼は保存的に経過観察を行ったが,視機能の保持は不可能であった.
 この症例の発症および経過に関して,以下のように推測した.急性硬膜下血腫に続いて起こった硝子体出血は,突然の頭蓋内圧上昇により,中心性網膜静脈閉塞症と類似する状況が起こったためである.また,新生血管を伴った増殖性変化は,静脈閉塞が硬膜下水腫のため遷延したため,反応性に起こったものである.

結膜下悪性リンパ腫に続発した開放隅角緑内障の1例

著者: 佐藤真由美 ,   布田龍佑

ページ範囲:P.57 - P.61

(1)両側性の結膜下腫瘍を伴った開放隅角緑内障の1例を経験した.
(2)この結膜下腫瘍は組織学的には悪性リンパ腫(びまん性リンパ腫小細胞型)であった.
(3)結膜下腫瘍を切除したところ,眼圧は下降し,C値にも改善が見られたことより,結膜下悪性リンパ腫が直接上強膜静脈を圧迫し,房水流出抵抗が増大し,緑内障を起したものと考えた.

潰瘍性大腸炎に肉芽性虹彩毛様体炎を合併した1例

著者: 坂本高章 ,   藤原久子 ,   片山寿夫 ,   小見山知之 ,   水島睦枝

ページ範囲:P.67 - P.70

 17歳男性で潰瘍性大腸炎と内科で診断され,その後両眼の肉芽性虹彩毛様体炎をくり返した症例について報告した.虹彩炎は肉芽性を呈し,両眼に豚脂様角膜後面沈着物が認められ,高度の虹彩後癒着を呈した.
 潰瘍性大腸炎と虹彩毛様体炎の合併した報告は,本邦では少なく,しかも肉芽性虹彩毛様体炎の合併はまれである.

カラー臨床報告

側頭動脈炎によると思われる両眼の急性脈絡膜虚血を来した症例

著者: 高橋寛二 ,   板垣隆 ,   友田隆子 ,   山下秀明

ページ範囲:P.14 - P.19

 両眼の短後毛様動脈の閉塞により,後極部に広範囲の急性脈絡膜虚血を発生した1例を経験した.
 78歳の男性で両眼に急激に高度の視力低下を発生し,急性期には乳頭周囲から黄斑部を含む眼底後極部に,境界鮮明な網膜外層の灰白色の浮腫状混濁を認めた.螢光眼底造影により病変部は境界鮮明な脈絡膜螢光の高度の充盈遅延があり,そのため,造影早期には低螢光を示し,末期には過螢光を示した.本症の診断には螢光造影が有用であった.約3週間後には色素むらを示す軽度の網膜色素上皮の萎縮となった.視力は徐々に回復し,約9カ月後には両眼とも0.4にまで回復した.
 発病時,熱発,白血球増加,CRP強陽性,血清A/G比低下があったことから,原因として動脈硬化に側頭動脈炎様の血管炎が加わり発症したものと考えられ,両眼に発生した広範囲の短後毛様動脈閉塞による急性脈絡膜虚血と診断した.

網膜裂孔発見のためのポイント集(1)

網膜剥離のタイプとその特徴(1)

著者: 桂弘

ページ範囲:P.62 - P.63

 網膜剥離の治療の第一歩は裂孔の発見である.網膜復位術の技術が著しく向上し,広く普及した現在,裂孔が発見できれば,手術は80%成功したといってもいい過ぎではない.当科における過去9年間の成績では,裂孔が発見できた症例の復位率は約96%なのに対し,裂孔が発見できなかった症例では約70%であり,裂孔の発見が手術の成功にとっていかに重要かがわかる(表1).
 双眼または単眼倒像検眼鏡や細隙灯顕微鏡を用いて,術前に網膜全体の詳細な検査を行い,周辺部変性や硝子体の変化を含む様々な所見を検出するのは当然であるが,ただ漫然と眼底検査に臨むのではなく,症例の自覚症状や経過から裂孔や剥離のタイプをあらかじめ予想しておくことも大切である.また,発見した裂孔がその症例の網膜剥離の原因として説明しうるものかどうかを知らなければ,他のより重要な裂孔を見逃すことになる.そこで,裂孔発見のために知っておく必要のある大切なポイントについて述べる.

文庫の窓から

鵬氏新精眼科全書(3)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斎藤仁男

ページ範囲:P.64 - P.65

 ボードウィンの講義筆記といわれるものには精得館時代のものを初め,他の医育機関におけるものを含め,眼科の治療,薬剤,手術等各篇が多く残されている.その主なものを次にあげると,
○抱氏眼科大 全巻3 和蘭陸軍一等軍医正 抱道英口授 ○抱桃英先生 人身窮理眼篇 ○抱氏眼書  上巻:手術,薬剤の部 ○抱度殷眼科書 ○渤氏眼科治療書 和蘭 渤度印先生日授 ○勃篤印眼病治説 有正 武野宜明(原稿本) ○鵬氏眼書 6冊 ○眼科新説 3冊和蘭 抱桃英 口授 ○眼科薬剤論 和蘭 抱駝鳥殷 口述 小川清斎手写本 ○眼科診法篇 和蘭 抱駝鳥殷 口述 小川清斎手写本 ○手術篇 ○官板日講記聞(刊) 11冊 蘭医 抱桃英氏 口授 以上小川剣三郎稿(実眼3,p.363)

Group discussion

画像診断

著者: 山本由記雄

ページ範囲:P.71 - P.73

1.眼薄膜厚測定法の検討
     ○矢野眞理・管田安男・冨田美智子・山内     紘通(都立駒込病院)・山本由記雄(都立広                    尾病院) 眼薄膜厚測定への超音波PF信号の応用は,超音波の持つ最大効用の一つと考えられるが,得られた測定値の採用にはなお抵抗がある.
 年来,この問題に取り組んで,波形の処理法に検討を加えて来た.

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原著論文の書き方について

ページ範囲:P.74 - P.74

 論文を書く上で一番大切なことは,何故この論文を書くに至ったのかという理由がはっきり示されることと,この研究によって新しくわかった知識は何であるかということを,はっきりと示すことであろうと思います.
 以下,具体的に順を追って述べてみたいと思います.

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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