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雑誌文献

臨床眼科40巻2号

1986年02月発行

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網膜の細胞生物学と生化学

著者: 荻野誠周1

所属機関: 1京大

ページ範囲:P.123 - P.124

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Bennet N, Dupont Y : The G-protein of retinal rod outer segments (Transducin). J Biol Chem 260 : 4156-4168, 1985 網膜に到達した光刺激は視細胞のロドプシン(R)を感光し,電気信号として後頭葉に送られる.Rの化学反応と神経の電気反応を仲立ちする蛋白質として三つの単位(αβγ)からなるトランスジューシン(Transducin, T)がある.電気信号,TおよびRの関係を模式的にまとめてみた(図).(1)光刺激によるメタロドプシン(R)増加,(2) RとGDPのついたTの結合,(3) GPDとGTPの交換,(4) TとRの分離,(5) TのTαとTβγへの分離,(6) Tαとフォスホジエステラーゼ(PDEi)の結合,TβγとGTPアーゼ(GTPasei)の結合,(7) PDEiとGTPaseiの活性化(PDE*とGTPase),(8) PDEによる環状リン酸(cGMP)量の減少,(9)視細胞膜の透過性の変化によるCa2+チャンネル,Naポンプを介した電気信号の発生,(10) GTPaseによるGTPの水解,(11) TαとTβγの結合,がサイクルとして動く.このサイクルはロドプシンキナーゼ(RK)によるRのリン酸化で調節される.このトランスジューシン(T)のサイクルはいかにうまく流れるのだろうか.本論文は,光散乱度測定とラベルしたリン酸ヌクレオチドの利用によりサイクルの各ステップのTとメタロドプシン(R),TとGTPあるいはGDPの解離定数を求め,結合親和性を検索したものである.Tはサイクル中では,1)R*が結合してなくてGDPとの親和性が高い,2)R*が結合していてGDPあるいはGTP(特にGDP)との親和性が低い,3)R*が結合してなくてGTPが結合していてフォスポジエステラーゼとの親和性が高い,これらの三つの状態で存在することがわかった。またR*がついてないTと結合したGTPはそのままではGDPと入れ換わらない。これらの事実はこのサイクルが一方通行で,TとR*,GTPあるいはGDPの間の二つの物質の結合親和性がもう一つの物質の結合の有無で変化しサイクルが実に効率よく流れることを示していて,大変興味深い。Tの研究はここ数年で急速に発展したが,今後さらに面白い事実がわかるだろう。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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