特集 第39回日本臨床眼科学会講演集 (1)
学会原著
網膜静脈閉塞症の硝子体手術の検討
著者:
市岡博1
市岡伊久子1
西村晋1
所属機関:
1天理よろづ相談所病院眼科
ページ範囲:P.129 - P.131
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硝子体手術を要した網膜静脈閉塞症につき検討した.対象は1980年1月から1984年12月の5年間に,硝子体出血にて発症したもの,あるいはその経過観察中に硝子体出血を来し,硝子体手術の適応となった網膜静脈閉塞症44例46眼で,その内訳は網膜中心静脈閉塞症2例2眼,網膜静脈分枝閉塞症42例44眼であった.このうち39眼で2段階以上の視力回復を認めたが,術後視力が0.1に満たない症例が13眼認められた。その原因別内訳は黄斑部浮腫が3眼,黄斑前繊維症が3眼,限局性牽引性網膜剥離が3眼,網膜全剥離が2眼,原因不明が3眼であった.医原性網膜裂孔をきたした症例が5眼あり,そのうち4眼が網膜剥離に発展し2眼が最終的に復位しなかった.術後再出血を来し再手術が必要となったものが7眼あったが,このうち術中光凝固を施行した症例は1例もなく,後日光凝固を追加することにより,その後再出血を認めていない.網膜静脈閉塞症は硝子体手術適応症例の中でも比較的手技的に容易であると考えられるが,医原性網膜裂孔等の術中併発症の頻度は意外と高く,手術には細心の注意を要すると思われ,また,術後再出血の予防には術中光凝固あるいは術後光凝固が有効と思われた.