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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科40巻4号

1986年04月発行

雑誌目次

特集 第39回日本臨床眼科学会講演集 (3) 特別講演

高眼圧症および緑内障における視神経乳頭の変化

著者: ,   難波克彦

ページ範囲:P.318 - P.320

 眼科医の大半は高眼圧症や緑内障における視神経乳頭の異常の有無やその変化については主観的方法で判定しといる.我々は視神経乳頭の血流状態や乳頭陥凹や蒼白性の変化をより正確に判定する方法を考案した.
 視神経乳頭の血流状態をみるためには視神経乳頭の螢光眼底撮影を用いている.この方法で開放隅角緑内障や高眼圧症では常に充えい欠損がみられ,かつ正常眼に比してその充えい欠損の数や大きさが大きいことがわかった.螢光眼底撮影により緑内障眼や高眼圧症眼の視神経乳頭では血流状態にあきらかな変化があるのがみとめられた.
 立体眼底写真の写真測量により,乳頭陥凹の容積だけでなく,深さ,陥凹壁の傾き,陥凹開口部の面積などが測定できる.陥凹を縦断面の輪郭からみると乳頭陥凹の形の特徴を表わすことができ,正常眼,高眼圧症眼,緑内障眼ではあきらかに違った形状を示す.
 コンピューター画像解析により乳頭の蒼白性を測定した.この方法により視神経乳頭に対する蒼白な部分の面積比を求める.
 これらの三つの方法により高眼圧症や緑内障における視神経乳頭の異常性のみならず,その経時的変化を把握することができ,それ故に診断能力が向上し,患者の治療,処置方法を改善することができる.

学会原著

CO2レーザーによる経強膜光凝固の臨床応用について

著者: 杉本由佳 ,   原和彦 ,   野寄喜美春

ページ範囲:P.321 - P.324

(1)低出力安定型CO2レーザー装置LMC-352とCO2レーザー伝導効率の高いKRS-5ファイバーを使用し,先の動物実験の結果をもとに経強膜網膜凝固を臨床的に応用した.その結果,網膜剥離の裂孔閉鎖や周辺部変性の剥離予防手術において,18眼中17眼に良好な結果を得た.
(2)凝固条件の安全域が広く,適正条件は凝固出力300mW〜450mW,凝固時間10秒〜40秒であった.適正出力ではかなり長時間照射しても重篤な合併症はなく,たとえ過剰凝固となっても冷凍凝固のような網脈絡膜出血や裂孔形成は発生しなかった.また,今回の条件範囲内では,強膜への障害は全く認めなかった.
(3)本法は冷凍凝固に比べ,凝固斑が小さく,先端のファイバーチップの交換により凝固サイズの変更も可能で,位置的にも精密な凝固が可能であった.また凝固直後から凝固斑が明瞭であり,同一部位を重複凝固することなく,正確な凝固斑の配列が可能であった.
(4)本法による網膜凝固で,硝子体への影響はみられなかった.

角膜真菌症の早期診断・早期治療

著者: 塩田洋 ,   内藤毅 ,   兼松誠二 ,   新田敬子 ,   三村康男

ページ範囲:P.325 - P.329

 過去6年間に,当科ならびに関連病院で角膜真菌症と診断された19例について検討した.その結果,(1)8例(42.1%)に角膜外傷の既往がはっきりしていた.内7例は植物による外傷であり,角膜真菌症の発症と植物による外傷に深い関係がみられた.(2)治療に用いたピマリシンは,18例中の17例に著効もしくは有効(累積有効率94.4%)であった.(3)潰瘍が汚く灰白色を呈し,その辺縁が不規則な症例やhyphate ulcerを見れば角膜真菌症を疑い,真菌の検出を行うとともにピマリシンによる早期治療を開始すべきである.これらのことが判明した.

二次的人工水晶体移植眼の角膜内皮細胞

著者: 高橋由佳理 ,   野近裕美子 ,   前田育枝 ,   谷口重雄 ,   稲富誠 ,   深道義尚

ページ範囲:P.331 - P.334

 二次的人工水晶体移植術を行った94例104眼について,術前,術後の角膜内皮細胞をSpecular microscopeを用いて観察した.
 二次移植前の細胞面積は502±240μm2であった.二次手術までの期間は2カ月から35年にわたっていた.二次移植後の細胞面積は,術後6ヵ月で584±234μm2でcell lossは14%であった.二次移植に用いたレンズは,隅角支持レンズ96眼,後房レンズ6眼,4ループレンズ2眼でcelllossは,各々11%,7%,22%であった.二次移植前の細胞面積の大小,手術までの期間の因子は,術後のcell lossに影響しなかった.
 隅角支持レンズ,後房レンズを用いた二次移植は,安全で有効な方法であるが,手術前の角膜内皮細胞面積の検査は不可欠である.術前面積が1000μm2以上で内皮障害が強く疑われる症例では,二次移植の際,viscosurgery等により,角膜内皮の保護に十分注意を払う必要があると考えられた.

Grating acuity cardsによる視力検査

著者: 山本節 ,   治村隆文 ,   高山昇三 ,   谷恵美子 ,   竹内晴子 ,  

ページ範囲:P.335 - P.338

 生直後からの視力測定のため,一窓式縞視力カードを製作し,69人(男38人,女31人)の新生児,未熟児に対する縞視力を検査した.
 発育のよい40週数の児では,20/1200(0.0167)〜20/800(0.025)程度の縞視力が得られ,発育週数とともに視力の向上がみられた.縞視力検査の成功率は約80%で,両眼縞視力の測定時間は,平均4分47秒であった.
 早期の自発眼球運動や誘発運動の観察は,困難とされていたが,縞視力検査時の眼球運動をelectrooculographyにて記録することができた.
 以上の検査は早期の視覚障害,眼球運動障害,中枢神経系疾患に対する早期診断に有用である.

眼科超音波診断に関する研究—第20報 眼科臨床における超音波Dモード(Sモード)診断

著者: 太根節直 ,   堀越順 ,   神野順子 ,   木村陽太郎

ページ範囲:P.339 - P.342

 Topcon装置(Topcon ES-100型眼科用超音波診断装置1))により超音波Dモード法を行い,種々の眼病変のAモード,Bモードと対比させながら,その画像の特徴,および有用性につき検討を加えた.
 Dモード像はBモード像にAモードを3次元的に重ね合わせ,その反射波の強度を同時に,かつ,画像を360°自由に回転させて観察できるため,A,B両モードの長所を兼ね備えており,特に病変の内部反射の強度(階調性)を明確に把握でき,また病変の局在や位置関係などを容易に理解することができ,組織構造や病理変化などについても,ある程度推察することが可能で,病変の特徴を診断することが本表示法により一層容易となった.

外傷性眼内炎の超音波Bモード所見について 分類と治療および予後

著者: 新里悦朗 ,   松本長太 ,   橋本陽世 ,   小島伸介 ,   三島弘 ,   大鳥利文

ページ範囲:P.343 - P.346

 従来,眼内炎は予後不良の疾患とされてきたが,硝子体手術の進歩により,その予後は著しく改善された.我々は臨床的に外傷性眼内炎と診断され,1977年1月より1985年1月までに近畿大学医学部附属病院において入院加療を受けた18例18眼のうち,超音波検査を施行した15例15眼を対象とした.超音波所見を,stage 0〜IVに分類しそれぞれ,陰影なし,膜様陰影,小嚢様陰影,嚢様陰影,嚢様陰影+網膜剥離とした.また全例を最終矯正視力0.1以上の予後良好群と0.1未満の予後不良群とに分け,硝子体手術施行例(10例)と硝子体手術非施行例(5例)とについて検討を加えた.
 硝子体手術施行例,非施行例ともに,stage IIまではすべて予後良好(硝子体手術施行例:6/10,非施行例:3/5)で,stage III以降に進むと,すべて予後は不良(硝子体手術施行例:4/10,非施行例:2/5)であった.
 外傷性眼内炎の超音波Bモード所見の分類は,治療方針の選択と予後判定上非常に有用であった.この分類を用いて予後ならびに視力の改善という観点から硝子体手術時期をみると,stage II (小嚢様陰影)が最適と思われた.

眼窩壁骨折の手術適応基準について

著者: 尾崎真由美 ,   中村泰久

ページ範囲:P.347 - P.350

 今回は当科5年間の眼窩壁骨折の治療方針が,どのように決定されてきたかをretrospec-tiveに検討した.GE社製CT/T8800(以下GE)導入前は主としてX線所見により治療方針が決定されていたが,GE導入後は骨折部と外眼筋の関係が明確に視覚化され,手術所見とも良く一致することから,治療方針決定の主幹となった.また,GE導入後は手術適応症例の割合が減少しており,より慎重な治療方針決定が可能になったと考えられる.我々は現在,CT所見で骨折部への外眼筋および筋間膜の嵌頓・癒着・牽引を認めるものは手術適応と判断し,原則として早期手術を行っている.また,外眼筋および筋間膜が骨折部と離れて,あるいは骨折部内にあり,腫脹していても,骨折部からfreeな状態にあり,その正常な位置関係を保っているものには,保存療法を行っている.

眼部悪性腫瘍の治療後における長期経過観察の重要性について

著者: 金子明博

ページ範囲:P.359 - P.362

 眼部悪性腫瘍の術後長期の経過観察が重要であることを示す症例報告として,(1)脈絡膜メラノーマ眼球摘出後10年目に全身転移の発見された症例,(2)網膜芽細胞腫眼球摘出後8年目に全身転移が認められた症例,(3)両眼性網膜芽細胞腫の眼球保存療法後16年目に眼窩にmalig-nant fibrous histiocytomaが発生した症例,(4)涙腺癌摘出後8年目に肺転移が認められた症例を報告した.
 わが国における眼部メラノーマの予後調査を行ったところ,242症例中111例(46%)が治療後3年以上の経過が不明であった.この原因につきアンケート調査を行った.眼科医の眼部悪性腫瘍の治療後の長期経過観察の重要性に対する認識が低いため,患者の教育,担当医交代時の引継,カルテの管理体制,再来の方式などにつき問題があると推定された.

Palisades of Vogtの消失する角膜疾患

著者: 木下茂 ,   切通彰 ,   大路正人 ,   大橋裕一 ,   真鍋禮三

ページ範囲:P.363 - P.366

 角膜輪部に存在する皺襞palisades ofVogt (POV)が完全に消失している角膜疾患を臨床的に検討した.今回検討した疾患のなかで角膜輪部360度にわたるPOVの完全消失を認めたものは,熱・化学腐食39眼中32眼82%,Stevens-Johnson症候群30眼中25眼83%,ocular pem-phigoid 8眼中8眼100%,トラコーマ10眼中10眼100%,放射線性角膜炎2眼中2眼100%,IDU長期使用者21眼中11眼52%,点眼薬頻回使用者22眼中10眼45%であった.一方,正常眼30眼,再発性角膜上皮剥離7眼,春期カタル10眼,乾性角結膜炎10眼ではPOVは全例に存在した.以上のように,POVの消失は通常の角膜上皮疾患では認められず,難治性角結膜上皮疾患で高頻度に認められた.また,POVの消失した周辺部角膜には上皮直下の表層性角膜血管新生を高頻度に認めた.今回の結果から推定して,角膜におけるPOVの消失は角結膜上皮疾患に特徴的な臨床所見と考えられた.

学術展示

先天白内障早期手術と視機能管理の現状

著者: 田中尚子 ,   呂秀根 ,   橋本悦子 ,   辻岐代子 ,   和田尚恵 ,   湖崎克 ,   原田清

ページ範囲:P.368 - P.369

 緒言 乳児の先天白内障は従来,高頻度の眼異常の合併や視性刺激遮断弱視のため,手術的治療による視機能予後不良の症例が少なくなかったが,近年は遮断弱視発生の臨界期内の早期手術,手術手技の改良および術後の適切な視機能管理により,予後の向上が期待できるようになった1,2).その観点から現在筆者らが行っている早期管理のプログラムと実施の状況ならびに成績について報告する.

難治性ぶどう膜炎と血漿交換療法

著者: 中山正 ,   松尾信彦 ,   小山鉄郎 ,   辻俊彦 ,   小西玄人 ,   藤本伸一 ,   小山雅也 ,   伊達純代 ,   松尾俊彦 ,   尾島真

ページ範囲:P.370 - P.371

 緒言 各種の薬物療法に難治性を示す桐沢型ぶどう膜炎,ベーチェット病および慢性ぶどう膜炎に対する血漿交換療法の価値を検討した.

虹彩・毛様体黒色腫の1例

著者: 永岡尚志 ,   木村亘 ,   木村徹 ,   岡野智文 ,   難波紘二

ページ範囲:P.372 - P.373

 緒言 黒色腫も時に嚢腫様の形態をとることがあるとされている.今回我々は,若年男性に発症した,虹彩根部に嚢腫様増殖を示す腫瘍を経験した.臨床経過と摘出眼の病理学的検索を行ったので,併せ報告する.
 症例 :20歳男性.

脈絡膜骨性分離腫の3症例 経過観察結果と高プロラクチン血症について

著者: 上野脩幸 ,   割石三郎 ,   植田葉子 ,   竹村恵 ,   北川康介 ,   玉井嗣彦 ,   野田幸作 ,   岸茂 ,   中山正 ,   町田照代 ,   相良祐輔

ページ範囲:P.374 - P.375

 緒言 脈絡膜骨性分離腫(osseous choristoma ofthe choroid)は,1978年Gassら1)が4例を初めて報告して以来本邦でも現在まで24例の報告がみられる.今回我々は本症の3例(全例若年女性)を経験し,腫瘍病巣に増大傾向を認めたためdoubling timeを求め,本腫瘍の拡大速度を定量的に計測することを試みた.また,本症は若年女性に多いとされることにより,本症の発症に性ホルモンの関与を推測し性ホルモンの検索を行った結果,プロラクチン(PRL),黄体化ホルモン(LH),卵胞刺激ホルモン(FSH)に異常を認めたため報告する.

虹彩メラノサイトの加齢変化について

著者: 杉田新 ,   吉岡久春

ページ範囲:P.376 - P.377

 緒言 ぶどう膜メラノサイトの微細構造に関する研究はこれまでに多数みられるが,加齢によるメラノサイトの形態変化を微細構造レベルで検討した報告は極めて少なく,わずかにサル眼を用いたHuらの報告1,2)があるのみである.今回筆者らは人眼虹彩を用いて,メラノサイトの加齢変化の特徴を微細構造レベルで検討したので報告する.

眼底病変を合併した若年性関節リウマチの1例

著者: 上里忠信 ,   桑江洋子 ,   上原勝 ,   宮里章 ,   寒河江豊

ページ範囲:P.378 - P.379

 我々は若年性関節リウマチ(JRA)に視神経炎,網膜血管炎を合併し,大量のステロイド療法を行い,著効した稀な症例を経験したので,その臨床経過について報告する.
 症例 :9歳,女児.

散弾様網脈絡膜症の1例

著者: 小熊淑記 ,   大野重昭 ,   有賀浩子 ,   小竹聡

ページ範囲:P.380 - P.381

 緒言 散弾様網脈絡膜症(Birdshot retinocho-roidopathy)は1980年,Ryanらにより記載された新しい疾患1)で,日本での報告はいまだ少ない2).我々は両眼に散弾様網脈絡膜症を発生した1例を経験したのでその臨床像について報告する.

高齢になって黄斑変性を併発した乳頭周囲網脈絡膜萎縮の2例

著者: 平形明人 ,   秋山健一

ページ範囲:P.382 - P.383

 緒言 主たる変化が脈絡膜と網膜色素上皮層に地図状に現われる疾患群に対しgeographic choroiditisという疾患名で理解される傾向がある.今回,乳頭周囲に地図状の網脈絡膜萎縮巣を呈し,高齢になって初めて視力障害を認めた2症例を経験し,これらの症例がgeographic choroiditisの一群に属するものか疑問をいだいたので報告する.

高年齢層発症の内因性ぶどう膜炎に関する検討

著者: 山村敏明 ,   狩野宏成 ,   佐々木一之

ページ範囲:P.384 - P.385

 緒言 人口の老齢化とともに,高年齢者に発症する眼疾患の検討が従来にもまして重要になっている.眼底血管などの眼組織そのものの加齢変化に免疫能低下などの全身的な要因が加わり,若年者に比べて疾病の種類や臨床像の変化が予想されるが,今回,ぶどう膜炎の臨床的特徴につき報告する.

ぶどう膜炎患者の血中フィブリノペプタイドA,フィブリノペプタイドBβ15-42

著者: 砂川光子 ,   新井一樹 ,   誉宇堅 ,   沖波聡

ページ範囲:P.386 - P.387

 緒言 生体内における凝固,線溶系の動態は,凝固系と線溶系とを別々に分けて把握することが,従来の血液学的検査では,非常に困難であった.フィブリノペプタイドA (FPA)とは,血液凝固の際に,トロンビンによって,フィブリノーゲンより遊離するため,血液凝固状態を反映すると考えられている.また,フィブリノペプタイドBβ15-42(FPBβ15-42)は,線溶系酵素プラスミンにより,フィブリンより遊離するため,線溶状態を反映すると考えられている.Nossel1),Kudryk2)らにより,FPA,FPBβ15-42のラディオイムノアッセーが開発され,血漿中のFPA,FPBβ15-42の微量定量が可能になった.
 今回,我々は以前より血液凝固系の異常を指摘されているBehçet病を含む3〜6)ぶどう膜炎患者7)の,血液中のFPA,FPBβ15-42を測定し,興味ある結果を得たので報告する.

隅角部および毛様体部結節を認めた眼サルコイドージスの1例

著者: 梶田雅義 ,   須田由美子 ,   伊藤陽一 ,   伊藤昌保

ページ範囲:P.388 - P.389

 緒言 隅角部および毛様体部に虹彩根部を通して連続している結節を呈した,眼サルコイドージスの疑われる珍しい1症例を経験したので報告する.

中心性漿液性脈絡網膜症の発生状況

著者: 木村早百合

ページ範囲:P.390 - P.391

 中心性漿液性脈絡網膜症は日常診療でよくであう疾患にもかかわらず,その本態は未だ不明にとどまる.
 著者はその発生状況につきまとめたので報告する.

連載 眼科図譜・341

Freeman-Sheldon症候群とその眼症状

著者: 山本憲明 ,   原田敬志 ,   冨安誠志 ,   粟屋忍

ページ範囲:P.308 - P.309

 Freeman-Sheldon症候群は,別名cranio-car-po-tarsal dystrophy,whistling-face syndromeと呼ばれ,口笛を吹いている様な顔貌,手指拘縮,手指の尺側偏位,内反足を主症状とする稀な症候群である.今回我々は,nystagmus blockage syn-dromeを合併した本症を経験したので報告する.
 症例 6歳男児.両眼の視力低下を主訴に来院.

今月の話題

眼トキソプラズマ症

著者: 鬼木信乃夫

ページ範囲:P.311 - P.317

 眼トキソプラズマ症の臨床像(Rieger型の位置づけ,血管病変,視神経病変,同胞感染例など)・診断(各種血清反応の組み合せ,酵素抗体法の応用など)・治療(クリンダマイシン療法の欠点,ステロイド剤単独療法の危険性など)に関する最近の話題を紹介する.

最新海外文献情報

神経眼科,他

著者: 向野和雄

ページ範囲:P.352 - P.354

Dresner SC, Kennerdell JS : Dysthyroid orbitopathy. Neurology 35 : 1628-1634, 1985 いわゆる内分泌性眼(窩)症dysthyroid or-bitopathyの本態は甲状腺機能異常とは関係なく出現することが頻々であり,そのために種々の眼窩,神経疾患との鑑別が重要となってくるもので,日常臨床で誤診されやすい.またその名称もGraves'ophthalmopathy, endocrine exophthal-mosなど色々である.本論文は本症に対する見解を臨床を中心に総説的にまとめたものである.
 先ず臨床症候を5項目①眼窩うっ血②眼瞼後退症,グレーフェ症候,③眼球突出,④ミオパチー,⑤視神経症に分け,その臨床像の特徴,診断,鑑別診断をまとめて示している.次でそれぞれの症候に対する治療法の実際と限界を述べている.

臨床報告

眼内異物摘出用永久磁石

著者: 西興史 ,   五藤宏 ,   奥田斗志 ,   山中昭夫

ページ範囲:P.393 - P.395

 永久磁石を使用した,硝子体手術用の磁性眼内異物摘出器具を作成した.その特徴は,同種の電磁石式の器具と比べても遜色ない程強力な磁力を持つ磁石を使用している.これは最近本邦で開発された永久磁石で,今のところ入手可能な世界で最も強力なものとされている.把持部は太さ15mm,長さ50mm,眼内挿入部は,太さ1.6mm,長さ26mmで,アルミの外套を有しクロームメッキが施されている.磁力は,1個5.5gの鉄球(パチンコ玉)5〜6個を持上げる(27.5〜33g).オートクレープ可.硝子体切除後毛様体扁平部に幅2.4mmの切開創をつくり,磁性眼内異物を吸着して摘出する.

超音波による生体眼薄膜厚の計測—第3報 拍動部分の検出

著者: 矢野真理 ,   菅田安男 ,   冨田美智子 ,   山内紘通 ,   山本由記雄

ページ範囲:P.396 - P.398

 頭部固定台を寝台と分離することにより,比較的安定に眼球後極部からの超音波信号を採取することができた.これにより,強膜前面に拍動部分の存在することが示唆された.

観血的手術の既往なく生じた悪性緑内障の1例

著者: 竹内晴子 ,   大久保潔

ページ範囲:P.399 - P.402

 悪性緑内障は,主に観血的手術の重篤な術後合併症として知られているが,我々は観血的手術の既往なく発症した1例を経験した.
 症例 は52歳の男性で,数年来の片眼の近視化と,眼圧上昇があり,他医でレーザー虹彩切開術を施行されていた.前房は極めて浅く,散瞳により前房深度の増加を認めた.周辺虹彩前癒着は認められず,毛様突起の腫脹と前方偏位,前硝子体膜の水晶体後面,毛様突起後面への密着を認めた.
 本症の発症機序としてciliary blockの概念があるが,本症例では毛様突起,水晶体,硝子体の三者間がwater tightとは考え難い事,房水流出率に低下を認めなかった事等から,硝子体から後房への流出抵抗増大,または,硝子体の液体透過性の低下によって発症したものと推察した.

網膜血管周囲炎とぶどう膜炎を伴った樹枝状角膜潰瘍の1症例 新しい診断法と治療法

著者: 岩瀬光 ,   村尾元成 ,   小室優一 ,   望月學 ,   谷島輝雄 ,   川名尚

ページ範囲:P.403 - P.407

 6歳女児の左眼に角膜樹枝状潰瘍が発生し,モノクロナール抗体を用いた螢光抗体法により単純ヘルペス1型(HSV1)による感染と迅速診断された.潰瘍はIDU治療で改善したが,発症より2週後HSVによると思われる網膜血管周囲炎が発生し,視力が低下した.これに対して,アシクロビルの内服を行い,網膜血管周囲炎は徐々に消失し,視力は回復した.アシクロビル投与中から直後にかけ血小板数の減少が見られたが,1カ月後には正常値に戻った.

Werner症候群における白内障術後の合併症と角膜障害

著者: 谷原秀信 ,   千原悦夫

ページ範囲:P.409 - P.413

 Werner症候群における角膜変性には角膜内皮障害が重要な因子として関与している.今回,白内障術後1年にて1眼に続発性緑内障から水疱性角膜炎,角膜潰瘍,眼内炎を発症して36カ月後に眼球摘出にいたったWerner症候群の症例を経験した.他眼には創口治癒遅延による濾過瘢痕が生じており,角膜内皮細胞は著明な減少を示していた.角膜内皮細胞減少と糖尿病の合併による易感染性,角膜上皮細胞やkeratocyteの機能不全などが角膜障害に関係していると思われる.したがって本症候群の白内障術前後には角膜内皮撮影によって角膜内皮の状態を注意深く調べ,術式もできるだけ侵襲の少ないものを選ぶとともに術後,長期にわたる経過観察が望ましい.

Podophyllotoxin製剤VP-16により寛解をみた悪性リンパ腫の1例

著者: 一戸敏 ,   佐藤章子 ,   佐藤静生 ,   加藤久人

ページ範囲:P.415 - P.418

 眼症状を初発とし,皮下腫瘤生検の結果悪性リンパ腫と診断された50歳男子の1症例を経験した.
 入院時に認められた両眼瞼腫脹,眼球運動障害,左眼瞼下垂に加え,両眼線維素性虹彩毛様体炎症状の出現,増悪をみた.眼窩部CT検査では右外直筋および左内直筋の肥厚を認めるものの,masslesionは認められなかった.
 この症例に対しVP-16(総量3,400mg)を投与し,眼症状および全身症状の改善をみた.

Group discussion

色覚異常

著者: 深見嘉一郎

ページ範囲:P.419 - P.421

1.一般講演
I.先天性,後天性色覚異常者の3色光(赤,緑,黄)の臨界融合頻度について
  ○浜野薫・宮本正・永井幸・野寄千鶴子・        斉木貴美・太田安男(東京医大) 緒言 :先天性,後天性色覚異常者に対し,赤,緑,黄の3色のフリッカーを用いて検査を行い,色覚異常者の種類,程度を簡単に判定することを目的として実験を行った.
 実験方法:輝度を一定にした660nm (赤),550nm(緑),570nm (黄)の発光ダイオードの周波数を1〜79Hzまで変化させ,それぞれの臨界融合頻度を計測した.

網膜裂孔発見のためのポイント集(4)

網膜剥離の範囲と裂孔の位置(2),その他

著者: 桂弘

ページ範囲:P.422 - P.423

4.ルールのあてはまらない場合
 前回は網膜剥離の範囲と裂孔の位置との間にあるルールについて述べた.しかし,もちろん,すべての症例がこのルールにあてはまるわけではなく,発見した裂孔の位置から網膜剥離の範囲をどうしても説明できない症例もある.長期剥離例では強固な分界線形成や線維性組織の存在により,網膜剥離が症例によって特殊な形をとることがある(図17a).また,術後再剥離の症例では,すでに置かれているバックルや瘢痕によって修飾される.しかし,瘢痕やバックルの部位と剥離網膜との位置関係を把握することにより裂孔の位置を予想することは可能である.たとえば,輪状締結術を施行している症例では,バックル上の網膜が剥離していなければ,裂孔はバックルより後極寄りにあるはずである(図17b).また,バックル上の網膜が剥離している場合は,バックルより周辺部の剥離の範囲や瘢痕部とのつながりの有無をよく確認することが大切である.ただ,瘢痕部網膜の剥離や裂孔の有無は非常にわかりにくいので細隙灯顕微鏡による注意深い観察が必要である(図17c).
 裂孔が2個以上しかも多象限に存在する場合は,基本的にはルールの組み合わせになるが,数が多いと予想はむずかしくなる.ただ,発見した一つの裂孔で,存在する網膜剥離の範囲を説明できない時は,他に裂孔が存在することを疑うことが大切である.また,ルールにあてはまる裂孔を見つけたことにより安心し,他の部分の検査を怠ると危険で,このルールはあくまで参考であり,網膜全体をしらみつぶしに検査することが基本であることを忘れてはならない。

文庫の窓から

外科必読質篤満眼門(1)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斎藤仁男

ページ範囲:P.424 - P.425

 安永3年(1774)に「解体新書」が前野良沢,杉田玄白,中川淳庵等によってわが国における西洋医学書の本格的翻訳書として刊行されて以来,新知識を求めて西洋医学の輸入に努める意気込みは年々盛んになった.中でも近代外科書の翻訳には数々の大著がみられるが,幕末における蘭書の翻訳外科書として知られている主なものには「瘍医新書」(寛政2年〜文化13年),「瘍科新選」(天保3年),「窮理外科則」(文化〜弘化年間)等枚挙に暇がない程であるが,その中の一つに箕作院甫訳の「外科必読」がある.
この書は近代外科の翻訳書として未定訳稿ながら完本であり,日本外科史上特筆すべき一大作といわれている.(呉秀三著「箕作院甫」)

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原著論文の書き方について

ページ範囲:P.426 - P.426

 論文を書く上で一番大切なことは,何故この論文を書くに至ったのかという理由がはっきり示されることと,この研究によって新しくわかった知識は何であるかということを,はっきりと示すことであろうと思います。
 以下,具体的に順を追って述べてみたいと思います。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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