臨床報告
液体シリコンによるband keratopathyの発生
著者:
切通彰1
大路正人1
木下茂1
恵美和幸2
田野保雄3
所属機関:
1大阪労災病院眼科
2大阪大学眼科
3国立大阪病院眼科
ページ範囲:P.1082 - P.1084
文献購入ページに移動
硝子体手術に伴って液体シリコン注入を行った33眼について,band keratopathyおよび水疱性角膜症の発生頻度を細隙灯顕微鏡的に検討した.原疾患は増殖性糖尿病性網膜症13眼,増殖性硝子体網膜症(PVR)15眼,外傷性網膜剥離3眼,桐沢型ぶどう膜炎2眼であり,観察時期はシリコン注入後6〜25カ月,平均13.5カ月であった.band keratopathyの発生は,シリコンが前房内に充満している群では,7眼中7眼(100%)(典型例4眼,初期例3眼),シリコンが前房に存在し一部角膜に接している群では7眼中5眼(57%)(典型例1眼,初期例4眼),シリコンが前房内にほとんど存在せず角膜には接していない群では19眼中0眼(0%)であった.水疱性角膜症の発生については,前房内にシリコンが充満している群で7眼中1眼(14%),角膜に一部シリコンが接している群で7眼中3眼(43%),角膜にシリコンが接していない群で19眼中1眼(5%)であった.スペキュラーマイクロスコープによる観察では,シリコンが角膜内皮に接触している部位でニュートンリングを形成し,シリコンに近接した内皮細胞は極めて大きく,形状の乱れとともにguttataを伴った変性所見を認めた.