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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科41巻1号

1987年01月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・346

網膜剥離が続発した網膜色素上皮裂孔

著者: 砂川光子 ,   塚原勇

ページ範囲:P.6 - P.7

 網膜色素上皮裂孔とは最近確立された病名で,現在までに数例の報告をみるのみである1〜8).我々も先に網膜色素上皮裂孔の症例を螢光眼底所見を中心に報告した6).ここではその症例の眼底所見を中心に紹介する.
 症例 は60歳男性.右眼の飛蚊症を主訴として,1984年10月1日来院した.本例は胞状網膜剥離を伴う中心性漿液性脈絡膜症として,報告した症例の中の1例である.1970年に左眼に胞状網膜剥離を来し,治療に抵抗して,黄斑部に著しい瘢痕を残し,治癒して現在に致っている.今回は右眼の自覚症状を伴って来院した.

今月の話題

先天性停止性夜盲の不全型(三宅ら)

著者: 三宅養三

ページ範囲:P.9 - P.13

 先天性停止性夜盲の不全型は,強い刺激光によるERGではじめて診断される.この不全型は眼底に著変がなく,視力も完全矯正できないため,他の疾患と診断されることが多い.そこで不全型の臨床特性,錐体系ERGの分析,他疾患との鑑別につき考察し,不全型を認識する重要性を強調した.

眼の組織・病理アトラス・3

Cherry-red spot

著者: 猪俣孟

ページ範囲:P.14 - P.15

 Cherry-red spotは網膜中心動脈閉塞症やTay-Sachs病などのリピドーシス(脂肪症)で見られる特徴的な眼底所見である.
 網膜中心動脈閉塞症では網膜の血行が突然途絶してcherry-red spotが出現する.網膜動脈は終末動脈であるので,閉塞するとその支配領域の網膜は虚血に陥って壊死を起こす.網膜血管は主として網膜内層(内境界膜から内顆粒層まで)を栄養しているので,網膜動脈の血行途絶によって生じる網膜壊死は網膜の内層に限られている.これに対し,網膜外層(外網状層から網膜色素上皮細胞層まで)は脈絡膜血管によって栄養されているので,網膜動脈の血行が途絶えても壊死にならない.網膜は虚血性の壊死が起こると乳白色に混濁する.黄斑部の中心(中心小窩)は網膜外層だけで構成され,脈絡膜から栄養されているので壊死にならない.組織の透明性が保たれ,脈絡膜の色調がそのまま透見される.したがって,後極部網膜の混濁の中に中心小窩の赤い斑点が認められる.これが網膜中心動脈閉塞症のcherry-red spotである(図1).網膜動脈の血行が途絶しても赤道部から周辺部では網膜混濁は目立たない.これは周辺部では網膜内層の厚さが薄く,検眼鏡的に網膜混濁として認められにくいためである.後極部では網膜の内層が厚いので混濁が目立ち,透明部と混濁部とのコントラストは明瞭である.

臨床報告

原発性閉塞隅角緑内障における周辺虹彩切除とレーザー虹彩切開の比較

著者: 越生晶 ,   浅井源之 ,   藤井茂 ,   辻口玲子 ,   古村俊人 ,   宮谷寿史

ページ範囲:P.27 - P.32

 周辺虹彩切除術もしくはアルゴンレーザー虹彩切開術を施行した後,長期経過をみた原発性閉塞隅角緑内障(PACG)80例109眼について両術式の手術成績を比較し,以下の結論を得た.
 ①両術式間には術後眼圧調整成績に差はなく,どちらも術前PAS ratioが50%未満あるいは術前C値が0.20以上の例では術後の眼圧調整は極めて良好であった.術前PAS ratioが75%以上あるいは術前C値が0.10未満であった例は緑内障治療薬の点眼のみでは術後眼圧の調整は困難であった.
 ②術前後でのPAS ratioやC値の変化については両術式間に差はなかった.
 ③いずれの術式にも重篤な合併症はなく,術後視力経過にも両術式間に差はなかった.
 以上のことから両術式の効果は同等と考えられ,PACGの治療には,手技の簡便さと安全性からみてアルゴンレーザー虹彩切開術を第1選択としてよいことを確認した.

5度角度付き変形Jループ後房レンズ

著者: 清水昊幸

ページ範囲:P.33 - P.37

 5度角度付き変形Jループ後房レンズ(HOYA J-5 IOLR)を試作・試用した.本レンズは移植が容易で,嚢内移植も困難でない.初心者の多い今回の成績でも50%以上,多少習練を積めば100%近く嚢内移植ができると思われる.またHOYA J-5 IOLRでは原発性瞳孔捕獲はおこらず,続発性瞳孔捕獲のみ4%に見られた.
 本レンズはどのように移植されても不自然な後嚢の緊張は見られず,したがって虹彩根部圧迫も生じないと思われた.HOYA J-5 IOLRのプロリンループは柔かく形状適応がすみやかなので,嚢内移植の際,術直後に見られるループに平行の後嚢皺襞も大部分の症例で1週間以内に消失した.

隅角癒着解離術が奏効した続発性閉塞隅角緑内障の1例

著者: 田中雅二 ,   三輪隆

ページ範囲:P.38 - P.40

 70歳男性.術前狭隅角であったが,手術経過良好であった白内障嚢内摘出術後7日目に起こった浅前房から,癒着性閉塞隅角緑内障にいたる経過について述べ,隅角癒着解離術が奏効をみたことについて報告した.すなわち,術前の眼圧50mmHg/Appが,術直後より全く薬物投与なしに恒常的に15mmHg/APP前後となり,視力は術後矯正0.9となった.手術手技は,1984年永田ら1)によって報告された方法に基づき,少量の硝子体を切除吸引し,Thorpeのgonioprismで,隅角を直視しつつ,前房を灌流しながら癒着剥離を行った.癒着はきわめて容易に剥離され,術中すでに,手術部の隅角の構造がほぼ明瞭に観察され,現在に至る1年間,そのまま開放状態を保ち,再発をみていない.

未熟児網膜症に対する仰臥位レーザー光凝固

著者: 馬嶋昭生 ,   市川琴子 ,   加藤寿江 ,   滝昌弘

ページ範囲:P.41 - P.45

 未熟児網膜症に対する光凝固(PHC)と冷凍凝固(CRC)は,共にわが国において開発された方法であり,PHCが広く普及した.一方,欧米においてはかなり遅れてCRCが行われるようになり,最近はわが国でもCRCを第一の選択とする人が増えている.いずれの方法にも長所と短所はあるが,PHCの欠点の第一にあげられるのは手技の困難さである.これは,レーザーPHCが一般化し,キセノンPHC装置を使いこなせる術者が非常に少なくなったことによるものと考えられる.しかし,著者らはPHCにより多くの長所を認めているので,レーザーPHC装置を用いて簡単に行える方法を開発した.まず,未熟児・新生児用2面鏡コンタクトレンズ(馬嶋)を考案・作成し,レーザーPHC装置OphthalasRをZeissOMPI 6型手術顕微鏡に組込み,付属の細隙灯を用いて仰臥位で凝固する完成品を入手した.これを用いて,中間型1例とI型全周型6例,合計7例12眼に治療を行った.手技は非常に容易であり,しかも至適な大きさ,強さの凝固斑を的確な部位に得ることができ2週間後には理想的な瘢痕巣が完成した.そのため,今後はI型ROPでも,両眼を同日に治療する方向に進めてもよいと考えている.

Cherry red spotとmyoclonusを呈する若年例について

著者: 石田みさ子 ,   早川むつ子 ,   金井淳 ,   中島章 ,   森秀生

ページ範囲:P.63 - P.67

 角膜混濁,水晶体混濁,cherry red spot,myoclonus, gargoyle様顔貌を有する23歳男性の例を報告した.酵素学的にはβ-galactosidase,α-neuraminidaseの欠損が認められ,結膜生検の電顕所見で結膜固有層の線維芽細胞質内や毛細血管の内皮細胞質内に微細顆粒を中に有する空胞が認められた.
 以上のことから本症例はmucolipidosisの中のsialidosis type IIに含まれると思われた.同時に我が国での眼科領域でのcherry red spotと水晶体混濁を有する若年,成人例の報告の文献的考察を行った.

輪部デルモイドに対する周辺部表層角膜移植

著者: 永江康信 ,   木下茂 ,   下村嘉一 ,   真鍋禮三

ページ範囲:P.69 - P.72

 8眼の輪部デルモイドに対して周辺部表層角膜移植術を施行し,術後2〜4.6年の経過観察を行った.その結果,デルモイドの再発は1眼も認められなかった.移植片は8眼中6眼で完全に透明治癒を示した.透明治癒しなかった2眼の内訳は,1眼は拒絶反応による移植片実質混濁を生じ,他の1眼は強膜側の移植片融解を示し,再移植した.移植片への血管侵入が検討できた7眼については,全例でgraftの表層結膜側に血管侵入を認めた.Graftの表層角膜側およびgraft実質内への血管侵入は,移植片混濁を示した1眼にのみ認めた.Graft bed (graftとhost深層実質の間)には7眼中5眼に明らかな血管侵入(ghostvesselを含む)を認めた.この結果より,周辺部に置かれた移植片組織は高率に透明性を維持し,存続できるものと考えられた.またgraftは角膜内への血管侵入を抑制していると考えられた.

ヘルペス性眼感染症と桐沢型ぶどう膜炎に対するacyclovirの使用経験

著者: 阿部俊明 ,   原敏

ページ範囲:P.73 - P.77

 眼科領域のヘルペスウイルス感染症に対してacyclovir (ACV)を使用し,見るべき副作用もなく良好な結果を得た.
 18例のヘルペス性角膜炎にACVの局所投与を行った結果,潰瘍の平均治癒期間が6.6日であり,iodoxyuridine (IDU)を使用した9例の平均12.2日に比し著しく短かった.
 眼底透見ができないほどの強い炎症を伴ったヘルペス性角膜ぶどう膜炎の1例はACVの静脈内投与で症状の著明な改善を認めた.
 帯状ヘルペス性角膜炎の1例はステロイドを使用せずACVの局所投与のみで6日間で治癒した.
 桐沢型ぶどう膜炎の1例は静脈内投与の他に硝子体内灌流と予防的強膜輪状締結術を行い,8カ月を過ぎても網膜剥離をおこさず良好な視力を維持している.

老人性白内障の進行の観察

著者: 弓削経夫 ,   竹田仁 ,   今道正次 ,   丸山節郎

ページ範囲:P.79 - P.82

 白内障の進行状態を検討するのはむずかしい.その理由の一つは,白内障の現症を記載する方法が確立していないからである.我々は老人性白内障の患者について,1〜2年後の矯正視力の変化を観察したが,70歳以上の老人の視力は,変動が大きく,大多数の症例では,進行の有無は確認できなかった.
 ナイツカタラクトカメラおよび小改造したツァイスのフォトスリットを用いて,水晶体の徹照および細隙灯写真を撮影し,その写真を用いて,光の透過度を測定し,白内障の混濁のつよさを,フィルムにあたった光の量に換算して表示することにした.皮質白内障の程度は,徹照写真中最も明るい所を基準とし,その40%で示される混濁よりもつよい混濁の占める面積の割合で表わした.また核白内障の程度は,角膜の断面からの光量を基準とし,これに対する核からの光の量の割合で表示した.
 1〜2年の間隔をあけて撮影された,同一水晶体の2枚のフィルムについて数量表示し,対照を横軸に,1〜2年後の値を縦軸にして,その変化を検討した所,核白内障はほぼ45度の線上に位置し,ほとんど進行を認めなかった.皮質白内障ではこの線の非常に下方に位置したのは,数量表示上は著しい回復を示すことになるが,実際は白内障が急速に進行した症例がある.これらを除外すると,皮質白内障は平均64.2度(タンジェント2.10)の傾きの進行を示した.

糖尿病における視機能インスリン依存型と非依存型

著者: 竹内晴子 ,   井上正則

ページ範囲:P.83 - P.86

 インスリン依存型糖尿病(IDDM)25名,インスリン非依存型糖尿病(NIDDM)49名,計74名(男44名,女30名)について,視力,色覚,空間周波数特性,中心フリッカー値を調べ,視機能を検討した.
 Farnsworth-Munsell 100 hue testを用いた色覚検査では,視力低下とともに,総偏差点が高くなったが,視力良好でも総偏差点の高い例が存在し,増殖型網膜症に特に多く,視力と色覚感度の間に差が認められた.また,青黄異常が多く認められた.Arden grating testを用いた空間周波数特性測定では,網膜症を認めない例でも高周波数域の異常を検出し得,糖尿病における網膜症発現以前の視機能異常の存在が示唆された.中心ブリッカー値は,視力が比較的良好な例で,著明に低下している例が少数認められた.また,これらの検査では,IDDMとNIDDMの視機能には,差異は認められなかった.

先天性眼瞼下垂眼における術後の屈折変化

著者: 鈴木泰 ,   木井利明 ,   森繁樹 ,   中川喬

ページ範囲:P.87 - P.90

 眼瞼下垂の手術が眼球に与える影響,とくに乱視の変化を研究するため,下垂手術を行った先天性眼瞼下垂14例16眼について術後の屈折の変化をオートレフラクトメーターおよびケラトメーターで測定・検討し以下の知見を得た.
(1) spherical equivalentの近視化,乱視の直乱視化の傾向を認めた.
(2)7歳未満では7歳以上に比べ,また挙筋短縮術施行群は吊り上げ術施行群に比べ,術後変化の術前値への回復が悪い傾向があった.
(3)上記の変化は上眼瞼の角膜に対する圧迫によると思われるが,挙筋短縮術では吊り上げ術に比べて眼球圧迫方向のベクトルが大きいと考えられる.
(4)若年者に眼瞼下垂の手術を行う場合は術後の屈折の変化,視力に十分に注意することが必要であると思われた.

カラー臨床報告

Superior limbic keratoconjunctivitisに対するビタミンA療法

著者: 渡辺仁 ,   大橋裕一 ,   木下茂 ,   眞鍋禮三

ページ範囲:P.17 - P.20

 6例の上輪部角結膜炎superior limbickeratoconjunctivitis (SLK)に対しビタミンA点眼(retinyl palmitate 500IU/ml)による治療を行った.6例中,従来の治療では難治であった4症例を含め,5症例(83%)で有効であり,他の1例についても自覚症状が消失した.ビタミンA点眼開始後2週間で4例(67%),1カ月後には更に1例,計5例(83%)と早期に効果が出現した.また,点眼投与期間は5カ月〜11カ月(平均6.7月)であるが,いずれの症例でも副作用は認められなかった.
 今回の成績より,SLKに対してビタミンA点眼療法が第一選択となると考えられた.

角膜腐食に対する角膜上皮形成術keratoepithelioplasty

著者: 木下茂 ,   大橋裕一 ,   眞鍋禮三

ページ範囲:P.21 - P.26

 角膜上皮形成術keratoepithelioplasty単独,あるいは表層角膜移植との同時手術を施行した6例の化学腐食眼(受傷程度はGradeIIIと推定される症例)について,術後創傷治癒過程を細隙灯顕微鏡で詳細に観察した.術後角膜表面の上皮欠損は,lenticule上のdonor角膜上皮からの再生上皮により1〜2週間で修復された.上皮型拒絶反応は術後1〜8カ月の間に,様々な程度で6例全例に発生したが,ステロイドに良好に反応した.Donor角膜上皮がhost結膜上皮に拒絶反応とともに完全置換したものは1眼のみで,他の5眼ではdonor角膜上皮は島状に残存した.このdonor角膜上皮は,臨床的な拒絶反応を伴うことなく,host再生結膜上皮に徐々に置換した.完全な上皮置換例では,周辺部角膜に軽度の表層性血管新生を認めたが,角膜実質混濁の程度には変化を示さなかった.術後視力はhost結膜上皮に置換後も,術前と比較すると全例で改善傾向を維持し,表層角膜移植を併用した例では視力改善も著明であった.6眼中2眼が術後経過中に眼圧上昇を来したが,ステロイド局所投与の制限と緑内障治療薬により正常眼圧にコントロールされた.今回の結果から,keratoepithelioplastyは表層性血管新生を伴う結膜化した腐食角膜に対する有効な外科的治療方法と考えられた.

最新海外文献情報

網膜,他

著者: 原田敬志

ページ範囲:P.50 - P.50

Marin MS, Martinez Costa R, Diaz M, Vilanova E, Harto M, Menezo JL : Resultatodos a largo plazo de la fotocoagulaciOn panretiniana en la retinopatia diabetica proliferante. Arch Soc esp Oftalmol 51 : 171-178, 1986
 汎網膜凝固法(FPR)の長期観察がそろそろ行われている.本論文ではレーザーによるFPRを受け少なくも5年,長いものでは10年の経過観察を続けた81人95眼の増殖型糖尿病性網膜症について検討されている.タイプI型は48人,タイプII型は33人である.新生血管は72.6%で減少,20%で悪化,7.4%で不変であり,乳頭および網膜新生血管を示す37眼中29眼で減少,8眼で不変であった.有用な視力(0.05以上)を保持したものは5年例で88.4%,10年例で77%であった.視力の上ではタイプII型の方がタイプI型よりも低かったが,新生血管の縮小については両タイプとも同様の態度を示した.視力は5年例で改善20%,不変47.3%,悪化32.7%,10年例で改善16.6%,不変38.8%,悪化44.4%であった.したがってこの点を除けば長期観察の結果は,短期観察のそれとほとんど差はないといえる.

最終講義

女性と色覚異常

著者: 市川宏

ページ範囲:P.57 - P.62

はじめに
 色覚異常はとっつきにくい学問分野であること,それと臨床医学として治療の対象にならないことから,学生に魅力のない分野として嫌われてきた感があります.しかし色覚異常は,ことに網膜内の光情報の処理系を解明するうえで有用な欠落疾患として眼生理学上貴重な位置を占めており,世界中で関心をもたれている学問分野です.それとは別に,色覚異常のほとんどが男性で,女性は垣の外におかれています.そういうわけで,今回は女性と色覚異常と題して,学生さんを対象に私の最終講義をすることにしました.
 イントロダクションとして,色盲表と名大眼科学教室の係わりに触れてみることにします.私の3代前の教授であられた小口忠太先生は小口病で世界的に有名なかたですが,1910年に陸軍の衛生材料廠から色神検査表の第一版を出し,同じ年に"Stillingの原理による仮性同色表"と副題をつけた色盲表を出版しておられます(同じころ石原忍先生が大正15年式色神検査表の名でかの有名な石原表を陸軍省の徴兵検査用として出しています).小口表は今日では全く使われていませんが,いま見てみると大変ユニークな点をもっていることがわかります.第1表に青黄異常用の表があります.この表で十分な青黄異常の検出はできませんが,既に青黄色盲に関心が払われていたことに意味があります.次の特徴は小口先生の創語による迷行表というもので,線を辿ってゆく表です.迷行表の優秀さはのちの大熊氏色盲色弱度検査表をみればわかります。第3の特徴はランドルト環様のリングの切れ目を仮性同色様に読みとる表をもっていることです(図1)。最新の石原(大熊)表にはこの方式が採用されております。カード式色神検査表が付いているのも特徴のひとつです。

談話室

慢性涙嚢炎に対する涙道挿管留置術

著者: 王桂琴

ページ範囲:P.91 - P.91

 8年間,人造ポリエチレン涙管を用いて慢性涙嚢炎を治療する留置鼻涙管挿管術を施した.
 鼻涙管の解剖学的特徴をもとに36例の患者にそれぞれ3種類の挿管を適用し,治癒率は96%に達した.
 観察した結果,ポリエチレン挿管は人体に無害であることが明らかになった.

文庫の窓から

治翳新法

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斎藤仁男

ページ範囲:P.92 - P.93

『擠下術ハ既ニ二千年来眼科ノ内翳ヲ治スル術トシテ世ニ久シク称用ス.而後千八百年代ノ半ニ至リ達非爾ナル者一術ヲ創シテコレヲ剔出法ト名ツク.コレヨリ擠下ヲ古法ト称シ,剔出ヲ新法トシ互ニ其功ヲ競イ,各互ニ之ヲ主張シ其器具ト用法ヲ益々修正シ各精功ヲ盡セリ云々』(「註」仏国名医達非爾:Jacques Daviel)
 これは「治翳新法」の冒頭に述べられた訳文の一節であるが,これによるとヨーロッパにおいては2000年来称用された内翳術の擠下法に代わって新内翳術の摘出法がはじめられたのは19世紀半のことで,ようやく進歩への第一歩が踏み出された感がする.わが国では漢方医家が古くから中国伝来の銀鍼による"そこひ"治療が行われてきたが,近代医学としての白内障手術が実際に行われるようになったのは,シーボルト等外人医師に直接の医術指導を受けるようになってからのことで,それまでは何れも秘伝秘法のベールに包まれた中国医術の模倣で,さして進歩もなかった.幕末に至ってオランダ医学の伝来とともに,各種の講義筆記やオランダ医学書の翻訳が盛んに行われるようになった.

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原著論文の書き方について

ページ範囲:P.94 - P.94

 論文を書く上で一番大切なことは,何故この論文を書くに至ったのかという理由がはっきり示されることと,この研究によって新しくわかった知識は何であるかということを,はっきりと示すことであろうと思います。
 以下,具体的に順を追って述べてみたいと思います。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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