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角膜腐食に対する角膜上皮形成術keratoepithelioplasty
著者:
木下茂1
大橋裕一2
眞鍋禮三3
所属機関:
1大阪労災病院眼科
2関西労災病院眼科
3大阪大学医学部眼科
ページ範囲:P.21 - P.26
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角膜上皮形成術keratoepithelioplasty単独,あるいは表層角膜移植との同時手術を施行した6例の化学腐食眼(受傷程度はGradeIIIと推定される症例)について,術後創傷治癒過程を細隙灯顕微鏡で詳細に観察した.術後角膜表面の上皮欠損は,lenticule上のdonor角膜上皮からの再生上皮により1〜2週間で修復された.上皮型拒絶反応は術後1〜8カ月の間に,様々な程度で6例全例に発生したが,ステロイドに良好に反応した.Donor角膜上皮がhost結膜上皮に拒絶反応とともに完全置換したものは1眼のみで,他の5眼ではdonor角膜上皮は島状に残存した.このdonor角膜上皮は,臨床的な拒絶反応を伴うことなく,host再生結膜上皮に徐々に置換した.完全な上皮置換例では,周辺部角膜に軽度の表層性血管新生を認めたが,角膜実質混濁の程度には変化を示さなかった.術後視力はhost結膜上皮に置換後も,術前と比較すると全例で改善傾向を維持し,表層角膜移植を併用した例では視力改善も著明であった.6眼中2眼が術後経過中に眼圧上昇を来したが,ステロイド局所投与の制限と緑内障治療薬により正常眼圧にコントロールされた.今回の結果から,keratoepithelioplastyは表層性血管新生を伴う結膜化した腐食角膜に対する有効な外科的治療方法と考えられた.