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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科41巻12号

1987年12月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・358

玩具用空気銃による角膜の鈍的外傷 traumatic corneal endothelial double ringsの2例

著者: 北川和子 ,   山村敏明 ,   望月雄二

ページ範囲:P.1300 - P.1301

 最近,玩具用空気銃(通称BBガン)による眼外傷が児童の新しい外傷として話題となっており,著者らの施設においてもここ半年間に4例経験している.弾丸(通称BB弾)は直径約6mmのプラスチック製で,かなりの威力を持っている.今回の症例は,いずれも小中学生の男児であり,全例で隅角離開と虹彩炎,3例で軽度の網膜混濁と角膜浮腫がみられた.いずれも炎症所見は約2週間で消褪し,視力予後は良好であった.角膜浮腫3例のうち2例にtraumatic cornealendothelial ringsと思われる特異な所見が観察されたので,スペキュラー像とあわせて以下に示す.

今月の話題

最近の弱視の治療

著者: 大平明彦

ページ範囲:P.1303 - P.1306

 弱視に対しては屈折矯正と健眼遮閉を感受性のある期間内に実施するという原則が既に確立されたものとなっている.最近はpreferential looking法などの他覚的視力検査法の開発で乳幼児の弱視治療が早期に正確に行われ始めている.

眼の組織・病理アトラス・14

網膜色素上皮:細胞間結合と外側血液網膜関門

著者: 岩崎雅行 ,   猪俣孟

ページ範囲:P.1320 - P.1321

 網膜の内層は網膜血管によって栄養され,外層(主に視細胞)は網膜色素上皮を介して脈絡膜血管によって栄養される.網膜は中枢神経系に属し,脳と同様に血液関門が存在する.血液網膜関門には内側と外側の関門があることが知られているが,網膜色素上皮の重要な機能のひとつが,この外側血液網膜関門である.
 色素上皮細胞の側面先端部には,先端に近い方から細隙結合gap junction,閉鎖帯zonula oc-cludens (密着結合tight junction),接着帯zonulaadherensの3種類の細胞間結合が存在する(図1,2).細隙結合は散在する斑状の結合であり,閉鎖帯と接着帯は連続した帯状構造で細胞を鉢巻き状に取り囲む.

臨床報告

網膜静脈本幹より硝子体出血を来したと思われる増殖性糖尿病性網膜症の1例

著者: 市岡伊久子 ,   市岡博 ,   荻野誠周

ページ範囲:P.1312 - P.1314

 増殖性糖尿病性網膜症の硝子体出血を数回繰り返し,硝子体手術を施行した例で偶然診察時硝子体再出血を捉えることができた.出血は後極部網膜静脈本幹より直接来したものと思われた.出血原因として硝子体手術時の血管の損傷,血管壁の脆弱化,微細な新生血管根部の断裂等が考えられる.

葡萄膜転移癌の2例

著者: 綾木雅彦 ,   林紀璧 ,   栗山洋一 ,   内藤龍雄

ページ範囲:P.1315 - P.1319

 葡萄膜転移癌の2例を報告した.第1例は46歳女性で乳癌手術後2年後に発症し,右眼毛様体,左眼虹彩に転移性腫瘍が認められた.第2例は62歳男性で、眼科受診時両眼の多発性脈絡膜腫瘍を発見され,その後内科にて原発巣は肺癌と診断された.経過中血漿中のcarcinoembryonicantigenは第1例では高値を示したが、第2例では正常であった.治療として2例とも放射線療法を行ったが,第1例には無効,第2例では有効で腫瘍の増大抑制が認められた.第2例については剖検にて摘出した眼球の光学顕微鏡および電子顕微鏡による病理組織学的検索を行い,その結果もあわせて報告した.

後房レンズ挿入術後のフィブリン析出について その1 計画的嚢外法との比較

著者: 坂西良彦 ,   沢充 ,   清水昊幸

ページ範囲:P.1323 - P.1328

 同一メーカー社製後房レンズ挿入術(PC-IOL)症例154眼を対象として,術後フィブリン析出の臨床像につき,計画的嚢外摘出術単独(P-ECCE)例34眼を対照として検討した.フィブリンは,形態によりO:フィブリン(-),I:線状フィブリン,IIa:膜状フィブリンでIOL光学部の透見可能,IIb:膜状フィブリンでIOL光学部の透見不可能,III:塊状フィブリンとに分類され,さらにその発症時期により,早期発症型フィブリンと後期発症型フィブリンとに分類された.早期発症型フィブリンは,PECCE,PC-IOLの両群にみられ,その発症頻度は22眼14%,発症日は術翌日,平均持続期間は2.7日であった.原因としては手術侵襲,水晶体遺残物が考えられた.後期発症型フィブリンはPC-IOL群のみにみられ,その発症頻度は58眼38%,平均発症日は術後4.7日,平均持続期間は8.0日であり,その発症にはIOLによる起炎性反応が関与していると考えられた.

網膜異形成を伴った先天性前部ぶどう腫の1例

著者: 島田宏之 ,   松井瑞夫

ページ範囲:P.1329 - P.1333

 生下時に片眼性の先天性前部ぶどう腫と診断されたが,その後角膜穿孔を来したため眼球摘出を行った1例を報告した.全身的には,Fallot四徴症,肺動脈弁欠損症,肺ヘルニア,尿道下裂,耳介形成不全を認めたが染色体異常はみられなかった.形態学的には,典型的な前眼部発生異常にあわせて,網膜異形成と脈絡膜にも形成異常を認めたので,発生異常により生じた先天性前部ぶどう腫と病理学的に診断した.

トラベクロトミー術後の隅角所見とその意義 1.基本パターン

著者: 谷原秀信 ,   永田誠

ページ範囲:P.1334 - P.1338

 トラベクロトミーを施行した77眼の術後隅角所見での裂隙・虹彩前癒着(PAS)・血液逆流・隅角角度による基本パターンを解説し,程度分類を定義した.広範囲癒着型PASは若年者群で53%に対して,高齢者群では5%と有意な相違を認めた.また周辺虹彩切除術併用群において35%に対して,他は26%と前者にやや高い傾向を認めた.早期穿孔は9カ所に認めたが,8カ所には裂隙の一部を認めた.トラベクロトミーにおける術後隅角所見を解析することは,手術効果と機序を解釈するうえで,意義を有すると考えられる.

トラベクロトミー術後の隅角所見とその意義 2.修飾パターン

著者: 谷原秀信 ,   永田誠

ページ範囲:P.1339 - P.1342

 トラベクロトミー術後の隅角所見で修飾パターンを構成する特殊所見について述べた.特殊所見としては不鮮明裂隙,色素沈着,デスメ膜剥離,膜状組織trabeculodialysis,虹彩・毛様体損傷などがある.不鮮明裂隙は経過期間が2年を越えると24%に認め,裂隙再閉塞を示唆する所見と考えられた.色素沈着も経過期間が2年以上で20%に認めた.他には,デスメ膜剥離10カ所,膜状組織7カ所,trabeculodialysis 3カ所を認めた.膜状組織,trabeculodialysisは線維柱帯内壁の離開を示唆する所見と考えられた.

映像増強管の網膜色素変性症への応用

著者: 加藤勝 ,   平光忠久 ,   渡邉郁緒 ,   嶋田光宏 ,   吉田治正

ページ範囲:P.1347 - P.1349

 今回試作した小型で携帯可能な映像増強管(image intensifier)を,暗所視下における補助具として網膜色素変性症患者へ応用する可能性を,暗順応下での光覚閾値の改善度を測定することにより検討した.
 本装置の使用により全暗順応経過を通して,正常者では平均約2log単位,網膜色素変性症患者では平均約1.4log単位の光覚閾値の低下が認められた.また,視野障害の強い網膜色素変性症患者では,そうでない患者より若干劣るものの,平均約1.2log単位の光覚閾値の低下が認められた.
 この様な結果から,本装置は網膜色素変性症患者の暗所での有効な補助具となりうる可能性があると考えられた.

Uveal effusionの手術例

著者: 鈴木まち子 ,   門屋真知子 ,   上野一也

ページ範囲:P.1351 - P.1353

 61歳男性,nanophthalmosを伴わない片眼性のuveal effusionに対し,強膜下強膜切除術を行った.術式は鼻下側輪部より4mm後方に4×5mm,厚さ1/3層の強膜弁を形成,この中央に3×2mmの強膜切除を行い,脈絡膜を露出させ,ここより後方に強膜1/3層を残し,1mm幅のトンネルを作成し,網膜下液は穿刺せずに,強膜弁を9-0バージンシルクにて2糸縫合した.輪状脈絡膜剥離は術後より著明に減少,網膜剥離も徐々に吸収され,5カ月後には完全に復位した.Nano-phthalmosを伴わないuveal effusionにおいても,本術式は有効かつ安全な方法と考えられる.

増殖性硝子体網膜症に対する硝子体手術シリコンオイルタンポナーデの成績

著者: 荻野誠周

ページ範囲:P.1355 - P.1357

 増殖性硝子体網膜症21例21眼の網膜復位手術として,硝子体切除,増殖組織除去,気圧伸展網膜復位,輪状締結,シリコンオイルタンポナーデ,網膜裂孔のキセノン眼内光凝固および汎網膜光凝固を施行し,シリコンオイルは平均18日で除去した.気圧伸展による網膜復位が遅滞するが完全に復位するもの,あるいは完全には復位しなくとも網膜下に空気が侵入しないものをシリコンオイルタンポナーデの適応とした.いずれも前部網膜の短縮肥厚が明らかに認められた.術後12カ月以上の経過観察で17眼,81%が復位を維持し,うち13眼が0.1以上の視力を得た.

カラー臨床報告

錐体機能異常を伴った眼底白点症の1例

著者: 佐藤進 ,   飯島裕幸

ページ範囲:P.1307 - P.1311

 錐体機能異常を伴った眼底白点症の40歳男子例を報告した.眼底の白点,暗順応所見,杆体系ERG所見は典型的な眼底白点症のそれに一致したが,傍中心暗点,色覚異常,錐体系ERGの減弱,および螢光眼底像における標的黄斑病巣が非定型的であった.眼底白点症は暗順応速度の遅延を特徴とする臨床疾患単位と考えるべきであり,本症例は眼底白点症に錐体ジストロフィーが合併したものと考えられた.

最新海外文献情報

手術・小児眼科,他

著者: 樋田哲夫

ページ範囲:P.1344 - P.1345

Lewen RM et al : Scleral buckling with intraocular air injection complicated by ar-cuate retinal folds. Arch Ophthalmol 105 : 1212-1214, 1987
 裂孔原性網膜剥離に対してpneumatic-retinopexyという方法が行われるようになってから,従来のバックリング法とのガス注入の併用も以前より多用されるようになってきていると思われる.胞状剥離に対するバックリング後に前後方向の網膜のfoldが形成されることがあり,特に裂孔の後極に生じた場合は再剥離につながるfishmouthとして知られている.筆者らは上方の胞状剥離に対してcircumferential bucklingと排液,および空気注入を行った3例に,バックルによる隆起の一端から生じた弧状のfold形成を経験した.いずれも気泡の下方のmeniscusに一致して生じたもので,黄斑部にかかり術前より視力は低下した.気泡が残留網膜下液および剥離網膜を後方に向けて圧迫したことによって生じたものと思われる.この様な合併症の予防にはガスの量に対する配慮とcircumferentialよりもradialのバックルの選択が望ましい.

文庫の窓から

傅氏眼科審視瑤函(1)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斉藤仁男

ページ範囲:P.1358 - P.1359

 "瑤"は「玉」「美なる玉」という意味があるが,中国には"眼"のことを金珠,玉液,幽戸,神門,瑤函などと表わす文字がある.古来,日本では眼科のことを表わす語として"銀海"という文字があるが,その語源は中国(宋代)の詩人蘇東坂(1036〜1101)の詩
 雪後書北臺壁
 城頭初日始飜鴉
 陥上晴泥己没車
 凍合玉樓寒起粟
 光揺銀海眩生花
 ………
によったもので,道家の説によって,『両肩を以て玉樓となし,眼を以て銀海となす』に拠ったもの,要するに銀海とは眼を文学的に表現した語で,眼科学の代表語ではなかったといわれている.

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原著論文の書き方について

ページ範囲:P.1360 - P.1360

 論文を書く上で一番大切なことは,何故この論文を書くに至ったのかという理由がはっきり示されることと,この研究によって新しくわかった知識は何であるかということを,はっきりと示すことであろうと思います。
 以下,具体的に順を追って述べてみたいと思います。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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