特集 第40回日本臨床眼科学会講演集 (1)
学会原著
人工水晶体移植眼にみられた網膜光障害
著者:
根木昭1
深尾隆三1
松村美代1
荻野誠周1
所属機関:
1京都大学
ページ範囲:P.325 - P.329
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人工水晶体(IOL)移植時における手術顕微鏡光による網膜障害の実態を知る目的でIOL移植眼20例について蛍光眼底撮影(FFA)などによるprospectiveな検索を行った.術後約1週間目に施行したFFAで7例に境界鮮明な楕円-円形の過蛍光病巣を後極部に認めた.同部は検眼鏡的に術後3日目より淡灰白色を呈していたが,経過とともに中央部に顆粒状の色素増殖が生じ,4〜7週後にはFFAによるlate stainingはみられなくなった.これらの病巣はその特異な形状とFFA経過からみて,術中に生じた顕微鏡光による網膜障害と考えられた.発生群では平均手術時間が64.2分と非発生群より約23%廷長していたが,年齢,術者,術式,屈折率などとは相関を認めなかった.3例で病巣に一致した比較暗点を検出したが,矯正視力は全例1.0以上を得た.7例中6例で高頻度にcystoid macular edemaの併発がみられた.発生機序は不明であるが,IOLによる集光が主要因と推察され,IOL移植後の遮光の重要性が認識された.