icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床眼科41巻6号

1987年06月発行

特集 第40回日本臨床眼科学会講演集 (3)

学会原著

低眼圧症を伴った外傷性毛様体解離に対する手術療法の一経験

著者: 玉井嗣彦1 松本結香1 上野脩幸1 伊与田加寿1 岸茂1 割石三郎1 森沢あおい1

所属機関: 1高知医科大学眼科学教室

ページ範囲:P.597 - P.601

文献概要

 症例 は,右眼のワイヤーによる鈍的外傷後,アルゴンレーザーによる外傷性毛様体解離部への光凝固(計5回)にもかかわらず,1985年4月30日の受傷時より約7カ月間,低眼圧とそれに起因する視力低下を持続して,当科に紹介された38歳の男性である.
 初診時(1985年11月21日)視力:右0.1(0.2),左2.0(nc).眼圧:右4mmHg,左15mmHg.患眼は前房浅く,隅角鏡検査で,12時,2時の部を中心に毛様体解離があり,3時から10時まで隅角後退が認められた.眼底は,低眼圧症の症状を示し,乳頭は境界不鮮明で発赤し,黄斑部には放射状皺襞形成がみられた.
 入院後ステロイドの内服,同剤およびアトロピンの点眼療法にも効果がないため,1986年1月13日に,全麻下で角膜輪部より9.5mmを中心に8〜11mmの強膜を全周性に観音開きに半層切開し,直径1.5mmのシリコンロッドを埋没した.その後,網膜剥離用プローベで,埋没部の角膜側に冷凍凝固を−60℃,30秒で計22発全周性に施行した.術後,前房はしだいに深く形成され,眼圧は10日目に正常(15mmHg前後)に復した.眼底所見も改善し,1カ月半後には視力0.7(0.9)となり,以後経過は良好である.
 シリコンロッドを埋没させたので美容的にも問題はなく,術式もそれほど困難ではないので,本法は第一選択としてもよい手術法の一つと考えられた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら