文献詳細
特集 第40回日本臨床眼科学会講演集 (3)
学会原著
低眼圧症を伴った外傷性毛様体解離に対する手術療法の一経験
著者: 玉井嗣彦1 松本結香1 上野脩幸1 伊与田加寿1 岸茂1 割石三郎1 森沢あおい1
所属機関: 1高知医科大学眼科学教室
ページ範囲:P.597 - P.601
文献概要
初診時(1985年11月21日)視力:右0.1(0.2),左2.0(nc).眼圧:右4mmHg,左15mmHg.患眼は前房浅く,隅角鏡検査で,12時,2時の部を中心に毛様体解離があり,3時から10時まで隅角後退が認められた.眼底は,低眼圧症の症状を示し,乳頭は境界不鮮明で発赤し,黄斑部には放射状皺襞形成がみられた.
入院後ステロイドの内服,同剤およびアトロピンの点眼療法にも効果がないため,1986年1月13日に,全麻下で角膜輪部より9.5mmを中心に8〜11mmの強膜を全周性に観音開きに半層切開し,直径1.5mmのシリコンロッドを埋没した.その後,網膜剥離用プローベで,埋没部の角膜側に冷凍凝固を−60℃,30秒で計22発全周性に施行した.術後,前房はしだいに深く形成され,眼圧は10日目に正常(15mmHg前後)に復した.眼底所見も改善し,1カ月半後には視力0.7(0.9)となり,以後経過は良好である.
シリコンロッドを埋没させたので美容的にも問題はなく,術式もそれほど困難ではないので,本法は第一選択としてもよい手術法の一つと考えられた.
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