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神経眼科,他
著者: 向野和雄1
所属機関: 1北里大
ページ範囲:P.798 - P.801
文献購入ページに移動眼心臓反射(oculocardiac reflex)は私共臨床家にとってAschner's reflex (1908)として知られるなじみ深い反射である.本反射は斜視手術に際して徐脈と不整脈を示すもので極めて重要なものである.しかし不思議なことにその現象を生理学的に詳細に検討した報告はなかった.
本論文はヒトの斜視手術に際し15例の斜視患者について,応用した張力とそれにより発生する反射(徐脈,不整脈)を定量的に初めて詳細に分析したものである.本反射は内直筋,下斜筋では全例に,一方外直筋では約50%に惹起された.内直筋では609以上で,下斜筋では1289以上で惹起され,内直筋がより低い閾値を持っていることがわかる.外直筋では50〜600gで生じるがその徐脈は軽度であり弱い.本反射は引っぱる力が強いと急におこり,強い徐脈となり,ゆるめるといずれもゆっくりと回復する.全身的にアトロピンを投与すると完全に徐脈,不整脈を防止できる.これらの反射の経路は入力として三叉神経自由終末,筋紡錘,ゴルジ腱器官から伝えられ,出力として迷走神経核—心臓へと伝わると考えられるが,60g以上の閾値は筋紡錘では考え難く,おそらくその他受容器からpoly synaptic pathに伝えられると考えられる.そして外眼筋間,個人間の差異は入力の問題と考えられる.又面白いことに同様の反射が眼瞼,顔面,口腔刺激で生じることが知られている.
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