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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科41巻9号

1987年09月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・355

ソフトコンタクトレンズ装用者にみられた樹枝状角膜炎

著者: 青木功喜

ページ範囲:P.1062 - P.1063

 緒言 最近ソフトコンタクトレンズ(SCL)による新しいタイプの角膜炎がMarguliesとMannisによって報告され,herpes simplex virus (HSV)によるdendritic keratitisとの鑑別が注目されている.
 今回SCL装用者に発生した樹枝状角膜炎を2例に経験したので報告する.

今月の話題

眼手術における滅菌法

著者: 宮永嘉隆

ページ範囲:P.1065 - P.1068

 眼手術時の滅菌法の一つとして抗生剤の予防点眼をする意義について解説した.Sepidermidisなど弱毒菌の起因菌としての考え方,また,多剤耐性ブドウ球菌の問題を解説し,術前の予防点眼は現段階では臨機応変に行うべきであろうことを述べた.

眼の組組・病理アトラス・11

網膜前出血

著者: 猪俣孟 ,   岩崎雅行

ページ範囲:P.1114 - P.1115

 網膜出血は血液が網膜のどの層に貯留するかによって眼底所見が異なる.これは,網膜の各層がそれぞれ特徴的な組織構築をしているためである.逆に眼底所見から網膜のどの層に出血が起こっているかを判断することもできる.
 網膜出血は,血液の貯留部位によって,網膜前出血(図1),網膜浅層出血,網膜深層出血,網膜下出血に分けられる.

臨床報告

最近11年間における強膜炎75例の解析

著者: 荒木かおる ,   中川やよい ,   多田玲 ,   笹部哲生 ,   春田恭照 ,   湯浅武之助

ページ範囲:P.1075 - P.1078

 阪大眼科で最近11年間に観察された強膜炎患者75例について検討した.発症は30歳から70歳の年齢層に多く,平均45歳で,男女比は2:3であった.片眼性と両眼性の比率はほぼ1:1であり,この両者に重症度の差はなかった.病変は前部強膜で瞼裂に相当する部位に好発し,炎症は1年に1回程度の割合で再発していた.虹彩毛様体炎は片眼性39%,両眼性60%に合併し,その他の併発症は強膜菲薄化5例7眼,強膜ぶどう腫4例5眼,角膜病変6例8眼,眼圧上昇14例16眼,後部強膜炎による眼底病変12例15眼であった.視力の予後の良好なものが多かったが,併発症による重篤な視力低下をきたした例があった.強膜炎の治療にはステロイド剤が有効であるが,効果のあった投与法からみると点眼剤投与を主体として治療できる軽症例と内服の必要な重症例の2群に分かれる傾向があった.

アシクロビルとγ—グロブリンによる桐沢型ぶどう膜炎の治療

著者: 高橋寛二 ,   三木耕一郎 ,   佐伯勝洋 ,   緒方奈保子 ,   山田佳苗 ,   前田英美 ,   宇山昌延

ページ範囲:P.1079 - P.1084

 薬物療法により予後良好であった桐沢型ぶどう膜炎の5例を報告した.症例は20〜40歳台の男性2名,女性3名で,いずれも片眼性で急性期のうちに発見され、発症後早期に桐沢型ぶどう膜炎と診断した.治療にはステロイド剤の大量投与と,γ-グロブリン製剤,アシクロビルの点滴静注を使用した結果,急性期病変の進行停止がみられ,早期に滲出を消褪させることができた.4例は発症4カ月〜2年経過した現在,網膜剥離の発生をみず,1例は網膜剥離の発生をみたが硝子体手術とscleral bucklingにより経過良好である.桐沢型ぶどう膜炎の治療には早期発見がもっとも大切であり,急性期早期の治療法として抗ヘルペスウイルス治療薬であるγ-グロブリン製剤,アシクロビルの点滴静注およびステロイド大量投与は試みられて良い方法と思われた.

水晶体欠損症の親子発生例

著者: 本倉雅信 ,   西川憲清 ,   福田全克

ページ範囲:P.1085 - P.1088

 親子に認められた水晶体欠損症を報告した.発端者は7歳女性で,両眼の水晶体下方に欠損があり,右眼の欠損は左眼より大であった.36歳の父親には,右眼の下方に水晶体欠損を認め,左眼水晶体には異常を認めなかった.両者の類似性から,水晶体欠損症の発生には遺伝因子が関与すると考えられた.発端者を3年5カ月間観察し,右弱視を健眼遮蔽にて良好な矯正視力を得ることができたが,この間に乱視度数(水晶体乱視)の変化はみられなかった.しかし,近視度数の急速な進行がみられ,これは,成長に伴う過度な眼軸の延長によるものと考えられた.若年者で,他に器質的病変を持たない水晶体欠損症をみた場合は,長期間の視力経過を追う必要があると思われる.

網膜動脈分枝閉塞症により発見された左房粘液腫の1例

著者: 安間哲史 ,   田中利昌 ,   安間文彦

ページ範囲:P.1089 - P.1094

 左眼の網膜分枝動脈閉塞症を認めた19歳の健康男子を心臓超音波検査にて左房粘液腫と診断し,左心房内腫瘍摘出術が行われた症例を報告した.この症例では起立性低血圧以外の全身所見は認められず,この起立性低血圧は腫瘍摘出手術後も続いていた.本症例の最終視力は矯正1.5と良好であった.早期診断,早期手術によってのみ完全治癒の可能な左房粘液腫の診断に,眼科医として貢献しうる最も重要なことは,網膜分枝動脈閉塞症あるいは網膜中心動脈閉塞症を若い患者の殊に左眼に見た場合には,心房粘液腫も鑑別診断の一つとして考慮し,疑わしい場合には簡便で,しかも侵襲のない心エコー検査をスクリーニング検査として行うべきであると考えた.

裂孔原性網膜剥離に対する硝子体手術の成績

著者: 荻野誠周

ページ範囲:P.1095 - P.1097

 裂孔原性網膜剥離の復位手術として,硝子体切除気圧伸展網膜復位,輪状締結,および網膜裂孔の眼内キセノン光凝固または経強膜冷凍凝固を27眼に施行した.後極部裂孔が6眼,赤道部裂孔が15眼,経強膜裂孔閉鎖術後の再発が6眼であった.復位は26眼96%に得られた.経硝子体手術は経強膜手術では合併症の多い症例によい適応となるであろう.

当教室における眼内レンズ挿入術の導入とその成績

著者: 伊東滋雄 ,   山岸和矢 ,   中嶋基麿 ,   伊東良江 ,   安藤誠 ,   宇山昌延

ページ範囲:P.1099 - P.1103

 我々の教室では,1985年1月から眼内レンズ挿入術を導入した.導入のはじめに術者教育を行うこととし,当初は天理病院で研修を受けたもの,および同病院へ2カ月間国内留学し,手術研修をうけたものが術者および指導者となり,教室の医師は,嚢外法の経験を十分積んだものが指導者のもとで眼内レンズ挿入術を行った.手術は計画的嚢外法と後房レンズ挿入を行い,86年8月までに,100眼に施行したが,全例に良好な視力を得,重大な合併症を1眼も経験しなかった.適応を明確に定め,術式を統一し,術者を十分訓練したこと,の三つがこの手術の導入に成功した大きな理由と考えられる.適応は少しずつ修正を加えられたが,当初は年齢制限60歳以上とし,現在は50歳以上に緩和された.しかし,ぶどう膜炎などの合併症のある眼には挿入していない.本手術の導入に際して好成績を得るには,術者はまず計画的嚢外法に十分習熟してから行うようにするのが最も重要であると思われた.多数の医師が勤務する施設における新しい手術の導入の過程として我々の経験を報告した.

緑膿菌性角膜潰瘍に対するHabekacinの臨床効果

著者: 大石正夫 ,   大桃明子 ,   坂上富士男 ,   田沢博

ページ範囲:P.1109 - P.1112

 ソフトコンタクトレンズ装用眼に発症した緑膿菌性角膜潰瘍の2症例に,新しいアミノグリコシド剤であるHabekacin (HBK)を0.5%水溶液の1時間毎頻回点眼,ならびに1回75mg 1日2回筋注して,いずれも著効がみとめられた.眼局所および全身投与による副作用はみられなかった.HBKは緑膿菌性眼感染症に対して有用性の高い抗生剤であると考えられた.

家庭視力表による3歳児視力スクリーニング

著者: 岸下仁 ,   川村緑 ,   武内邦彦 ,   矢沢興司 ,   早川芳江

ページ範囲:P.1117 - P.1120

 3歳児の家庭での視力検査が視力スクリーニングとして有効かどうかを検討するため,3歳児健康診査に「家庭でできる幼児用視力検査表」を用い,視力スクリーニングを実施した.
(1)事前に家庭へ視力表を郵送する方法で,319名中295名(92.5%)に視力検査が可能であった.そのうち,視力0,5を答えられた者は247名(83.7%),視力0.5を答えられなかった者は48名,屈折異常者は8名(2.5%)であった.
(2)3歳児健診当日に視力表を配布・説明し,ハガキにて回収する方法で,実際にハガキを回収できた児は553名中318名(57.5%)と低く今後検討すべき点は多いが,視力0.5を答えられた者は318名中308名(96.9%)と高く視力スクリーニングとして有効と思われた.また,屈折異常は318名中3名(0.9%)に,眼位異常は3名(0.9%)に認められた.
(3)家庭でできる幼児用視力表は実施が容易であり,前者の正答率(視力0.5を答えられた者)は83.7%,後者は96.9%であった.この視力表を保健所における3歳児健康診査のなかに導入することは有意義であると思われた.

糖尿病性網膜症と臨床因子特にHbA1値との相関

著者: 船津英陽 ,   北野滋彦 ,   荻原葉子 ,   溝渕京子 ,   堀貞夫 ,   宮川高一

ページ範囲:P.1121 - P.1125

 糖尿病と診断され1年間以上経過観察し得た446名(892眼)を対象に,糖尿病性網膜症と種々の臨床因子との関連を多変量解析法を用い統計学的に推定し,次の結果を得た.
(1)糖尿病罹病期間が長く,インスリン治療歴を有し,HbA1の平均値および年齢の高いものに,糖尿病性網膜症の頻度が高く,網膜症も進行していた.
(2)糖尿病性網膜症の病期変化にはHbA1の平均値が関連性が高く,HbA1の平均値9.53%を境に,それ以上のものでは網膜症の悪化の傾向がみられた.
 これらのことより,糖尿病性網膜症の管理において,糖尿病罹病期間の長いもの,年齢の高いものやインスリン治療歴を有するものでは網膜症の発症に,またHbA1値の高いものでは網膜症の発症および病期変化に十分な注意が必要で,観察期間の間隔にもこれらのことを考慮して治療にあたることが重要であると考えられる.

カラー臨床報告

網膜血管炎,視神経乳頭新生血管と硝子体出血を伴った地図状脈絡膜炎の症例

著者: 沖波聡 ,   西村晋 ,   砂川光子 ,   田村純子 ,   川畑篤彦

ページ範囲:P.1069 - P.1074

 網膜血管炎,視神経乳頭新生血管,硝子体出血を伴った地図状脈絡膜炎の49歳男性について報告した.両眼とも地図状脈絡膜炎に続いて網膜血管炎,網膜出血を来し,さらに,視神経乳頭新生血管,硝子体出血を起こした.硝子体出血を防止する目的で汎網膜アルゴンレーザー凝固を施行した左眼,施行しなかった右眼の両方とも黄斑部に網膜前増殖膜が形成され牽引性網膜剥離を来した.右眼には硝子体手術を施行したが,硝子体出血を繰り返すうちに黄斑部の網膜前増殖膜が再発した.

最新海外文献情報

網膜,他

著者: 原田敬志

ページ範囲:P.1106 - P.1107

Moyenin P, Grange JD : Le syndrome d'Eales, aspects cliniques, indications thérapeutiques et evolution de 29 observations. J Fr Ophtalmol 10 : 123-128. 1987
+C13 24例51眼における本症の臨床像治療,経過を述べたものである.陳旧性6眼,静脈周囲炎11眼,周辺部虚血32眼,再発性硝子体出血9眼,網膜剥離3眼である.それぞれに応じ,放置,ステロイドの全身投与,光凝固,冷凍凝固(場合により硝子体手術を加える),硝子体手術を実施した.このうち経過が安定したのは60%で,あと8%では静脈周囲炎が周辺に進行し,4%で後極部に進行した.後極部の罹患は以前のSpitznasの報告に反し多く,乳頭前血管新生は30%に,CMEは18%に認められた.汎網膜凝固は25%に施行された.最終視力については34眼で安定し,9眼で0.2以下となり,6眼で0.2以上となった.視力低下の原因は,4眼でCME,2眼で黄斑部襞であり,視神経萎縮・新生血管緑内障がそれぞれ1眼に起っている.片側例は多数であった.またツベルクリン強陽性は約半数に認められた.

文庫の窓から

眼科錦嚢 続眼科錦嚢(2)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斎藤仁男

ページ範囲:P.1126 - P.1127

 次に「続眼科錦嚢」は『前篇ニ漏レタル處ノ奇病難治ノ證ヲ具載シ,其治療法術ヲ考究ス,及ビ先生門中用ユル處ノ針刀ノ類工夫ヲ凝シテ新製ス,一々其図ヲ載セテ秘蘊ヲ著ス』とあり,その上巻には普一の自説または経験奇談を掲げ,その下巻には眼科用の器械を図示し,その図解を附記している.
「続眼科錦嚢」は2巻2冊(26.7×17.5cm)よりなり,書誌的には「眼科錦嚢」と同様で,各巻々頭に 東武 普一本荘俊篤士雅著 高遠 藤田蟄蚊伯壽 越前 舟岡知衡徳夫 令校 京師 北畠良謙吉とあり,天保8年(丁酉晩夏)須原屋源助発見となっている。以下其内容を標目によってみると次の通りである。

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原著論文の書き方について

ページ範囲:P.1128 - P.1128

論文を書く上で一番大切なことは,何故この論文を書くに至ったのかという理由がはっきり示されることと,この研究によって新しくわかった知識は何であるかということを,はっきりと示すことであろうと思います。
以下,具体的に順を追って述べてみたいと思います。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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