icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床眼科42巻10号

1988年10月発行

文献概要

臨床報告

YAGレーザーによるCapsulotomy後におこった網膜剥離の1例

著者: 石井好子1 金谷いく子1 溝上國義2

所属機関: 1兵庫県立成人病センター 2神戸大学

ページ範囲:P.1143 - P.1146

文献購入ページに移動
 近年,白内障手術は生理的バリヤーを残す,水晶体嚢外摘出術および後房レンズ移植が一般的となっている.これに伴う後発白内障に対しては従来,観血的方法がとられていたが,Nd:YAG laserを用いる事によって,比較的容易に後嚢切開術が行われるようになった.Nd:YAG laserの普及に伴う使用頻度の増加と共に,その合併症に関する種々の報告がみられる.Nd:YAG laserによる後嚢切開術後の合併症として,眼内レンズの損傷,一過性の眼圧上昇,前房出血などは良く知られているが,網膜障害に関する報告は少ない.
 今回我々は,後部ぶどう腫を伴う高度近視の後発白内障に対し,Nd:YAG laserによる後嚢切開術を施行した後,黄斑円孔型網膜剥離を発症した1例を経験したので報告した.
 症例は,75歳女性.水晶体嚢外摘出術後に後発白内障を来したため,Nd-YAG laserを用いて後嚢切開術を施行した.約1カ月後に突然の視力低下を自覚し来院した.黄斑部に円孔を伴う広範な網膜剥離と,周辺部網膜に裂孔を伴う格子状変性が認められた.硝子体切除術および輪状締結術を施行し,網膜の復位を得ている.
Nd:YAG laserによる後嚢切開術の術後合併症として,眼圧の上昇のみならず,黄斑部類嚢胞浮腫,網膜剥離などの網膜,硝子体の障害も重要である。また,これらの合併症を少なくするためには,必要最小限の出力で照射すると共に,本例のような高度近視に対しては切開を出来るだけ小さくするべきであると考えられた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら