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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科42巻12号

1988年12月発行

雑誌目次

連載 眼の組織・病理アトラス・26

網膜の基本構造

著者: 岩崎雅行 ,   猪俣孟

ページ範囲:P.1304 - P.1305

 網膜は眼球壁の最内層をなす厚さ0.1〜0.3mmの膜様組織で,内面は硝子体に,外面は脈絡膜に接する.後方は視神経乳頭で欠落し,前方は鋸状縁で毛様体上皮に移行する.広義の網膜は網膜盲部,つまり毛様体上皮(網膜毛様体部)と虹彩上皮(網膜虹彩部)を含み,その場合には鋸状縁より後方の部分は網膜視部と呼ばれる.網膜(網膜視部)を2つに分けると,内層の感覚網膜sensoryretina (または神経網膜neural retina)と,外層の網膜色素上皮retinal pigment epitheliumとに大別される.前者は眼杯内板から発生し,透明で網膜の厚さの大部分を占める.後者は色素を持った単層立方上皮で,眼杯外板由来である.
 感覚網膜は光学顕微鏡所見より9層が区別され,網膜色素上皮を加えて全部で10層が数えられる.網膜構成細胞の核が集まる顆粒状の層(脳の灰白質に相当する)が4層と,それらの細胞の突起からなる網状あるいは線維状の4つの層(脳の白質に相当する)が交互に重なり,それに光学顕微鏡で膜様にみえる2つの境界膜が識別される.外層から網膜色素上皮,杆体錐体層rod and conelayer,外境界膜outer limiting membrane,外顆粒層outer nuclear layer,外網状層outer plex-iform layer,内顆粒層inner nuclear layer,内網状層inner plexiform layer,神経筋細胞層gan-g1ion cell layer,神経線維層nerve fiber layer,内境界膜inner limiting membraneである(図1).

今月の話題

ウイルス性結膜炎の迅速診断

著者: 青木功喜

ページ範囲:P.1306 - P.1311

 ウイルス性結膜炎の迅速診断のため,①標識モノクローナル抗体を用いての螢光抗体法,酵素抗体法による結膜上皮中の抗原検索,②血清中の抗ウイルスlgM抗体の検出,③ネガティブ染色による電顕法の普及が期待される.

臨床報告

風疹によると思われる急性脈絡網膜症の1例

著者: 石川明 ,   山口克宏 ,   芦川祐子 ,   原敏 ,   玉井信

ページ範囲:P.1313 - P.1317

 風疹の稀な合併症と思われる急性脈絡網膜症の1例を報告する.本症例では左眼に漿液性網膜剥離を認め,螢光造影において,早期像では多発性螢光漏出点と脈絡膜毛細血管板の充盈遅延が,後期像では螢光漏出部位における色素の貯溜充盈遅延がみられた部位での軽度の過螢光がみられた.また眼症状の直後に風疹の発症がみられ,風疹抗体価の有意な上昇を認めた.これより本症例ではウイルスによるRPEへの一次的な障害に加え,脈絡膜循環障害が存在すると考えられた.眼症はbetamethasone投与に反応し,3カ月後には右1.2,左1.0の視力が得られ,従来述べられてきた風疹網膜症と同じく,良好な視力予後を呈することが示された.

手術顕微鏡による網膜光障害—ブラックコンタクトレンズによる遮光効果

著者: 熊谷映治 ,   根木昭 ,   深尾隆三 ,   松村美代 ,   荻野誠周

ページ範囲:P.1319 - P.1321

 既報において,我々は人工水晶体(IOL)移植眼において35%の高頻度に手術顕微鏡光による網膜光障害が発生しうることを報告した.今回はその対策を検討する目的でブラックコンタクトレンズによる遮光効果を検索した.IOL移植後直ちに角膜上にブラックコンタクトレンズを上置した以外,術者・術式・顕微鏡などは前回のstudyと全て同様である.20例について検眼鏡及び螢光眼底撮影(FFA)により術後眼底を詳細に検査したが,先のIOL移植眼にみられた典型的な楕円形の病巣は1例も認められなかった.このことから,既報の網膜病巣は,顕微鏡照明による光障害であることが確認され,その主要因が,IOLによる集光であり,IOL移植後の時相がもっとも危険因子であることが確認された.網膜光障害はIOL移植後の遮光により防ぐことができると結論した.

前房隅角広狭の超音波検査による検討

著者: 真壁禄郎

ページ範囲:P.1323 - P.1326

 隅角鏡所見は使用する技術や検者の主観に少なからず左右される.所見の客観化をはかるため超音波検査を応用した.細いBモード探触子を利用して眼裂に小型水浸カップを置くだけで前房隅角を断層でとらえ得た.映像プリント上で隅角広を角度で測り,隅角鏡所見と比較した.
 原発緑内障64眼,正常53眼につき検討した.一般に隅角鏡所見と実際の隅角広はあまり一致しなかった.特に隅角鏡で狭隅角と判定された例に両者間の相違が著明で,超音波で計測した隅角角度は必ずしも狭くない例が多かった.隅角鏡で隅角を可視しえないものでも隅角は閉塞していない事が多い.隅角広と前房深の相関も弱くしばしばPlateau irisが証明された.

非含水性ソフトコンタクトレンズによる重症涙液減少症の治療

著者: 濱野孝 ,   桑山信也 ,   眞鍋禮三

ページ範囲:P.1327 - P.1331

 重症涙液減少症に対する治療として5例8眼に対して非含水性ソフトコンタクトレンズを使用した.これらの症例はすべて涙点閉鎖が行われているにもかかわらず充分な治療効果の無かった症例で,この非含水性ソフトコンタクトレンズ装用により,著明な自覚症状の軽減と視力の改善をみた.このコンタクトレンズは,涙液減少症の治療の一つとして有効であると考えられる.

トラベクロトミー術後の隅角所見の経時変化

著者: 谷原秀信 ,   永田誠

ページ範囲:P.1333 - P.1335

 トラベクロトミー術後の隅角所見の経時変化につき検討した.術後4日〜2週の隅角鏡検査によると虹彩前癒着は術後4日以内に完成されており,それ以降の進行は軽度である.血液逆流は術直後は38%に認めたが急激に減少し,10%前後に落ち着く.したがって隅角所見の基本パターンは術直後には完成されており,裂隙の再閉鎖現象の進行や色素沈着の二次的な修飾をうけると考えられる.

白内障術後に発見された眼底疾患

著者: 越生晶 ,   谷口康子 ,   浅井源之 ,   宮谷寿史 ,   佐々木次壽

ページ範囲:P.1337 - P.1342

 過去6年間に施行した白内障手術例1,205眼に術後2週以内に徹底した眼底検査を行った.その結果11.2%に術後になって初めて何らかの眼底疾患が発見された.
 高頻度でみられたものは網膜剥離およびその関連病変と網膜血管性病変で,それぞれ5.6%,3.8%にみられた.その他に原因不明の網脈絡膜萎縮巣,特発性黄斑部網膜上膜,老人性円板状黄斑変性,高度近視に伴う黄斑出血がみられた.
 網膜剥離およびその関連病変では格子状変性が最も多く,そのうち20%は裂孔や円孔を伴っていた.格子状変性と関係のない裂孔や円孔もあり,他に黄斑円孔や裂孔原性網膜剥離もみられた.
 網膜血管性病変では糖尿病性網膜症が最も多く,次いで網膜静脈閉塞症が多かった.他に網膜動脈閉塞症と網膜動脈瘤がみられた.
 発見された眼底疾患のうち,糖尿病性網膜症は他眼の網膜症とほぼ同程度であった.しかし網脈絡膜萎縮巣を除く他の疾患では他眼に同じ疾患をみないことが多かった.
 網膜剥離およびその関連病変と網膜血管性病変には光凝固の適応例が多く,眼底疾患がみつかった眼の41.5%,全体の4.6%に光凝固が行われ,その経過は良好であった.
 以上のことから,後発白内障や虹彩後癒着を生じ易い嚢外摘出法と眼内レンズ挿入術が白内障手術の主流となってきた現在,術後早期に十分な眼底検査を行い,眼底疾患の早期発見に努めることが重要である.

クラミジア感染症の病原診断—眼科と泌尿器科の比較

著者: 青木功喜 ,   広田紀昭 ,   岩本かよ ,   佐藤千秋 ,   橋本信夫

ページ範囲:P.1343 - P.1346

 性行為感染症として再び注目をあびている最近のクラミジア感染症は,特定な局所に局在する傾向が強く,病巣を各々に比較検討することは,クラミジア学とその臨床のため必要である.今回は病原診断の面から眼科と泌尿器科の比較検討を加えた.
 札幌市の同地域の同規模の眼科及び泌尿器科診療所を通して,1986年から1987年までの13カ月間にクラミジア感染症を疑った結膜炎51名,尿道炎53名についてMicro Trak,細胞培養(Vero-cell)を用いて,病原診断を行うと共に分離できた株においてはモノクロナール抗体セットを用いて,血清型の決定を行った.
 ①病原診断の陽性率は,泌尿科では47%と眼科の31%よりも高頻度であった.②結膜炎では,分離培養の方が抗原検出よりも感度がよく,尿道炎においては差がみられなかった.③男性では分離と抗原検出が共に陽性である場合は47%であったが,女性では共に陽性となったのは11%であった.④血清型は50%は結膜炎でも尿道炎でもD型であった.⑤病原体陽性の頻度は,男性では抗クラミジア抗体陽性と陰性の間で有意に差があったが,女性では差がなかった.
 クラミジア感染症の病原診断は,尿道からの分離と抗原検出の間で差がなく,結膜では分離の感度がよく,診断法の選択が必要である.

化学外傷における前眼部炎症に対する静注用アスピリンの効果

著者: 竹本勇 ,   桐生純一 ,   平光忠久

ページ範囲:P.1351 - P.1354

 化学外傷の症例5例5眼において,球結膜充血と前眼部疼痛に対するアスピリン静注剤の効果について検討した.殆どの症例で静注後1時間以内に球結膜充血や前眼部疼痛は著明に改善した.全症例が10日以内に何の合併症もなく,治癒した.アスピリン静注剤は化学外傷の治療に有効であった.

食餌療法により軽快したガラクトース白内障の1例

著者: 山口慶子 ,   原敏 ,   成沢邦明 ,   相川純一郎 ,   早坂征次

ページ範囲:P.1356 - P.1361

 食餌療法により軽快したガラクトース白内障を経験した.ガスリー法陽性,ボイトラー法陰性で,血中ガラクトース値117mg/dlと高値を示した.白内障以外に臨床的に異常所見はなく,赤血球galactokinase活性の低値があり,生後1カ月でgalactokinase欠損型ガラクトース血症と診断された.ただちに,ガラクトースを除去した食餌療法を開始したところ,7日後には血中ガラクトース値はほぼ0mg/dlとなり,尿中還元糖も陰性となり,約30日後には水晶体混濁は著しく減少した.

小瞳孔症例に対する後房レンズ移植術の試み

著者: 金谷いく子 ,   石井好子 ,   溝上國義

ページ範囲:P.1362 - P.1366

 術前の散瞳がレンズ径より小さい小瞳孔例6例6眼に対し,虹彩根部切開および同部の前嚢切開を加え,ECCE,後房レンズ移植を行った.また,2例の眼圧コントロール不良例に対しては,トラベクロトミーを併用した.
 虹彩根部切開から,水晶体核を娩出するため,瞳孔損傷が避けられた.皮質吸引時にI/Aチップの挿入経路として用いたが,比較的無理のない角度で挿入可能で,チップ先の可動範囲が大きい.虹彩下に存在する大部分の皮質は,イリスフックを併用することで,直視下に周辺まで十分吸引することができた.後房レンズは,瞳孔径が4mm以上で,瞳孔の伸展性が比較的よい場合は,経瞳孔的挿入が可能であった.瞳孔縁に落屑を認めるもの,虹彩の萎縮の強いものは瞳孔の伸展性に乏しいが,これは,イリスフックで確認できた.水晶体嚢が大部分残されているため,経瞳孔的に挿入した場合,容易に嚢内固定が可能で,経虹彩切開的に行う場合でも,直視下に確実に嚢内に固定することができた.また切開部は10-0ナイロンで整復するため,角膜中央にほぼ円形の瞳孔を術後長期にわたって維持することができた.術後視力は,黄斑変性を合併した2例は0.1以下であったが,緑内障性視野障害を有するが,中心視野の保たれている他の4例は,0.5以上の矯正視力が得られた.

下方半周網膜切開術による下方残存網膜剥離の治療

著者: 中江一人 ,   日下俊次 ,   生島操 ,   細谷比左志 ,   池田恒彦 ,   田野保雄

ページ範囲:P.1367 - P.1371

 不明裂孔による下方の残存網膜剥離症例13眼(糖尿病性網膜症は対象から除外した)に対して,下方半周網膜切開による治療を試みた.13眼は以前に網膜硝子体手術(ガスタンポナーデや光凝固治療を除く)を数回(平均2.5回)施行したが再剥離してきた難治例であった.網膜切開は平均204度におよびシリコンオイルは12眼に併用した.12眼中シリコンオイル抜去が可能であったのは10眼で,抜去時期は網膜切開術後平均7.9カ月目であった.抜去後平均4.9カ月の経過観察中には全例再剥離はみられなかった.2眼は前房内にシリコンオイルが充満していたり,10mmHg以下の低眼圧である等の理由によりシリコンオイルを抜去できなかった.シリコンオイル抜去不能例の2眼を除く11眼(84.6%)に完全復位を得,最終的には,13眼中9眼(69.2%)に2段階以上の視力改善を得た.不明裂孔による下方残存網膜剥離に対して,下方半周網膜切開術は有効な方法と思われる.

Coats病の治療成績

著者: 伊東良江 ,   伊東滋雄 ,   小林誉典 ,   宇山昌延

ページ範囲:P.1373 - P.1377

 われわれは当科で最近10年間にCoats病20例20眼を経験した.半数が10歳以下の若年者で,男性は女性の3倍多く,全例片眼発症であった.白色瞳孔を主訴としたのは5歳以下の乳幼児で,網膜芽細胞腫との鑑別を要したのが1眼あった.異常血管病巣が1象限以内のものは5眼,1〜2象限は6眼,2象限以上におよんだのは9眼であった.網膜血管の異常部への直接的光凝固(キセノン,アルゴン,クリプトン,色素レーザー)を18眼に行い,症例により,輪状締結術や硝子体手術を追加し,14眼77%が治癒した.とくに眼底病変が2象限以内の症例の治療成績は100%と良好であり,2象限以上に広がった症例の治癒率は44%であった.また自覚症状発現から治療開始までの期間が7カ月以上のものは,治療成績が良くなかった.治療としては光凝固が有効であるが,病巣が2象限以上に広がったものは難治であることが示された.

両眼に先天性の著明なぶどう膜外反と瞳孔開大および先天緑内障を伴ったAxenfeld-Rieger症候群の1症例

著者: 鈴木康之 ,   新家真

ページ範囲:P.1379 - P.1382

 我々は両眼に著明な先天性ぶどう膜外反と瞳孔開大,さらに先天緑内障を伴ったAxenfeld-Rieger症候群の新生児の症例を経験した.先天性のぶどう膜外反は後天性のものに比して,非常にまれであり,またAxenfeld-Rieger症候群に伴う先天性ぶどう膜外反の報告はさらにまれである.しかし,Axenfeld-Rieger症候群において本症例のような著明な先天性ぶどう膜外反と瞳孔開大を伴う例があるということは,Axenfeld-Rieger症候群の成因の研究に何らかの手掛かりを与えると考えられる.

発作寛解後に脈絡膜剥離が生じた原発性急性閉塞隅角緑内障の1例

著者: 浅井源之 ,   辻口玲子 ,   谷口康子 ,   宮谷寿史 ,   佐々木次壽 ,   越生晶

ページ範囲:P.1383 - P.1386

 急性閉塞隅角緑内障発作の寛解後に,短期間で高度な脈絡膜剥離と極度の浅前房を発生した稀な1例を報告した.
 脈絡膜剥離の発生には,発作時の著しい高眼圧と脈絡膜のうっ血,その後の薬物療法による急激な眼圧低下,毛様体の障害による低眼圧,炎症反応と血管壁透過性亢進,ピロカルピンの毛様筋収縮作用による上脈絡膜薄葉の解離などが関与し,さらに強膜の厚さと硬性,脈絡膜血管の脆弱性などの個体差も影響したものと考えた.
 急性閉塞隅角緑内障が薬物療法により急激に低眼圧となり,極度の浅前房がみられる場合には,脈絡膜剥離の合併がありうることに注意を要し,もし合併していれば上脈絡膜液の排除と周辺虹彩切除術,および前房内空気注入とを併用するのが良い.

Kniest Dysplasiaの1例

著者: 大野敦史 ,   萬代宏 ,   松尾信彦 ,   中山正

ページ範囲:P.1387 - P.1391

 多彩な眼合併症を有する7歳男児のKniest dysplasiaの1例を報告した.
 全身的には低身長,独得の顔貌,胸椎後轡と腰椎前轡,肘,膝,足の関節の膨隆と強直,口蓋裂,難聴,中耳炎が認められた.眼科所見では視力は右0.3,左0.02で,両眼水晶体が下方へ偏位し,赤道部と後嚢下に水晶体混濁が認められた.また,硝子体変性,豹紋状眼底,網膜格子状変性がみられ,眼軸長は右28.93mm,左28.95mmと著明に長く,ERGは両眼ともsubnormalであった.7歳の時左眼水晶体摘出術を行い,術後視力0.3を得た.
 Kniest dysplasiaはまれな骨系統疾患であるが,視機能を障害しうる多彩な眼合併症を伴うので,できる限り早期から眼科的精査を行い,より良い視機能の獲得と保持に努める必要がある.

最新海外文献情報

強力なインスリン療法中の一時的増殖性糖尿病性網膜症,他

著者: 樋田哲夫

ページ範囲:P.1348 - P.1350

Rosenlund EF et al : Transient proliferative diabetic retinopathy during intensified insulin treatment. Am J Ophthalmol 105:618-625, 1988
 糖尿病歴11年および4年の22歳と19歳の女性に対し家庭での血糖モニターを行いながら強力なコントロールを行った.治療開始前,第1例は軽度の単純型網膜症があり第2例の眼底は正常であった.2例とも尿中のアルブミンが非常に高値であった.コントロールの指標としたHbA1は14.3%と17.5%の高値から5〜6カ月の間に急激に正常化した.これに平行して治療開始後5〜7カ月後に乳頭上新生血管を伴う増殖性網膜症が発症した.そのまま血糖のコントロールを継続したところ,つづく3〜5カ月間に網膜症は軽快した.第1例の5年後,第2例の2年後の眼底検査では軽度の単純型網膜症を認めるのみであった.2例とも一般的な基準からすれば光凝固の絶対的適応といえる.しかし光凝固治療にもいくつかの合併症が知られている.筆者らはすべての増殖性糖尿病性網膜症に対して光凝固が必須の治療法とする見解に疑問を提示している.
 光凝固療法の適応に対する考え方を変えるというところまではいかないであろうが治療効果の判断に際して頭に入れておく必要がある.

文庫の窓から

眼科提要

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斎藤仁男

ページ範囲:P.1392 - P.1393

 「眼科提要」は,明治10年(1877)から同12年(1879)まで,当時の越後新潟病院附属医学校における,オランダ人教師,布(保)阿屈(1845〜1883)氏の講義を竹山屯(1840〜1918)氏,中根重一(1851〜1906)氏が筆録譯記し,生徒の謄写の労を省き,同志に頒けるために作成された眼科書で,印行は明治12年4月である.
 新潟病院附属医学校における布阿屈(フォック,Fock)氏の眼科の講義はシュワイゲル(失話伊傑児,Schweigger)の眼科書(1875年刊)やグレエー(虞列歇,Grey)の眼科書(1876年刊)により行われていた.竹山屯新潟医学校長は,たまたま医学校の教授で,眼科講習生教授兼務を命ぜられた中根重一とともに協力して,その講義を訳記して本書を作成した,と伝えられている.

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原著論文の書き方について

ページ範囲:P.1394 - P.1394

 論文を書く上で一番大切なことは,何故この論文を書くに至ったのかという理由がはっきり示されることと,この研究によって新しくわかった知識は何であるかということを,はっきりと示すことであろうと思います。
 以下,具体的に順を追って述べてみたいと思います。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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