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雑誌目次

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臨床眼科42巻3号

1988年03月発行

雑誌目次

特集 第41回日本臨床眼科学会講演集 (2) 学会原著

周辺部全周に無血管野がみられた小児の閉塞性網膜血管炎の1例

著者: 大坂幸英 ,   近藤功 ,   太田厚子 ,   中山龍子 ,   櫻木章三

ページ範囲:P.211 - P.214

 イールズ病と診断された閉塞性網膜血管炎の1例について報告した.症例は11歳の男子で,両眼の周辺部に,全周にわたる血管閉塞と無血管野が認められた他,乳頭上からの新生血管,アーケードの動脈にmacroaneurysm様変化があるなど,既報告例との比較にて特異性がみられた.
 治療として,ステロイド剤,血管強化剤等の内服と平行し,アルゴンレーザー光凝固を網膜無血管野に施行した.無血管野への広範な光凝固にもかかわらず,血管閉塞の進行と新生血管からの硝子体出血をくりかえすなど,病像の進行を止めることができなかった.
 本症にて,凝固線溶検査のうち,plasmin活性を示すfibrinopeptide Bβ15-42が明らかな高値を示し,線溶系の亢進が示唆されることから,Eales病の病因に血栓形成の関与があるものと思われた.

家族性滲出性網膜硝子体症での視野異常

著者: 南部真一 ,   橋本和彦 ,   宮久保寛

ページ範囲:P.215 - P.221

 家族性滲出性網膜硝子体症60例91眼について,視野異常の形態と発生頻度,および眼底病変との関連について検討した.その結果,周辺部視野をI-4,V-4イソプターについて見ると,91眼中57眼63%は10度以上の周辺部視野異常を示していた.これらの視野変化は全て鼻側周辺部に出現し,視野狭窄または沈下として観察された.眼底病変との関連として,耳側網膜無血管野の広さおよび増殖性変化の有無による影響を3群に分類して検討した結果,無血管野の広いものでは65眼中45眼70%が10度以上の視野異常を示し,無血管野が広いもの程高度であった.この45眼中20度以上の高度な視野異常を示す29眼ではV字型変性が21眼72%に観察され,網膜無血管野とともにV字型変性が高度な視野異常の原因となっていた.増殖性の変化を持つ11眼では10眼91%に視野異常があった.このうち牽引性網膜剥離,網膜分離症が8眼80%を占めた.以上より,FEVRにおける周辺部視野異常には網膜の無血管野,V字型変性が関与しており,増殖性変化を有するものでは,眼底病変として牽引性網膜剥離,網膜分離症がその原因となっていることが判明した.

増殖性硝子体網膜症に対する硝子体手術と360度シリコン埋没術の併用

著者: 出田秀尚 ,   石川美智子 ,   井上俊輔 ,   吉野幸夫

ページ範囲:P.223 - P.226

 増殖性硝子体網膜症(PVR)の程度の強いものには,現在硝子体手術が行われている.この場合,網膜裂孔を閉鎖させるために強膜側からのバックルも同時に必要であるが,これには赤道部の上強膜を輪状に締結するexoplantと,赤道部から鋸状縁部にかけて強膜内に埋没するimplantの二通りがある.著者らは,1979年にPVRに対する硝子体手術を始めたが,初期の試行錯誤の段階で,exoplantよりimplantを360度行った方が良い結果が得られるという印象を得ていた.そこで1981年以降は,PVRで硝子体手術を要するものには全例360度のシリコン埋没術を併用している.過去5年間にPVRの程度C20眼とD69眼の計89眼に行った硝子体切除と,360度シリコン埋没の併用手術の成績を検討してみると,網膜の復位率が83.2%であった.これはexo-plantを併用している他の報告と比較してみると,著しく良好であることがわかった.これは,硝子体手術では十分に除去できない前部硝子体の輪状収縮と子午線方向の収縮を,implantの方がexo-plantより,より効果的に弛緩させる働きを持っているからだと考えられる.また,本術式は水晶体除去,網膜切開,あるいはシリコンオイルの使用などを最小限にとどめさせ,したがって手術による合併症も少ないと考えられた.

増殖性糖尿病性網膜症による網膜剥離の硝子体手術術直後視力不良例と手術適応について

著者: 橋本哲也 ,   根路銘恵二 ,   鈴木水音 ,   佐川宏明 ,   竹内忍 ,   戸張幾生

ページ範囲:P.227 - P.231

 過去3年間に増殖性糖尿病性綱膜剥離200眼に硝子体手術を行い,172眼(86%)に復位を得た.術前視力指数弁以下で術後復位した83眼をもとに,推定剥離期間,網膜剥離形態,増殖血管の程度と術後視力との関連を検討し,手術適応について考察を加えた.
 剥離期間が6カ月以内の症例で,0.01以上の視力改善をみたものは90.4%であったが,13カ月以上の症例では16.7%であった.術後0.01以上の視力回復を得た症例の平均剥離期間は,5.5カ月±3.9月であり,指数弁以下の症例では13.0カ月±7.3月と有位な差を認めた(P<0.01).83眼の剥離形態別での視力予後は,テーブルトップ型が最も悪く,長期間剥離の症例が多いためと思われた.剥離期間が1年以内の症例をみると,豊富な増殖血管を伴うものは視力予後は不良であった.
 増殖性糖尿病性網膜剥離は,視力予後の点から考えると,剥離期間が6カ月以内に手術するべきである.また,黄斑剥離が13カ月以上にわたる症例は,原則的には手術適応外と考えられる.

両側後頭葉梗塞の早期診断について

著者: 石川弘 ,   加島陽二 ,   中野直樹 ,   北野周作

ページ範囲:P.233 - P.237

 10症例の両側後頭葉梗塞を分析し,初診時の所見からどのように早期診断を行うか検討した.その結果,両側後頭葉梗塞の診断は,両眼同時に左右同程度の視力障害が急激に起きること,両側同名半盲の検出,対光反応や眼底などの他覚的所見に異常がないこと,およびCT検査で両側後頭葉に梗塞巣が検出できれば確定する.しかし,実際には初診時からこれらの条件を全て満たす症例は少ない.したがって,1)高齢者,2)高血圧症や心疾患などの血管障害危険因子の合併,および3)片側後頭葉梗塞の既往の確認が,早期診断の決め手となる.とくにCT検査は有用で,初診時片側後頭葉梗塞しか検出できなくても直ちに治療を開始すべきことを強調したい.

原因不明の視神経炎(症)のステロイド治療成績92眼の解析

著者: 柿栖米次 ,   安達恵美子

ページ範囲:P.238 - P.241

 原因不明の視神経炎(症)64例92眼を対象としてステロイド治療の効果を視力を指標にretrospectiveに検討した.平均年齢は31.0歳,平均観察期間は12.0カ月である.視力0.1未満は初診時57.6%,最悪時66.3%であった.回復過程で1カ月時点では0.8以上の視力は58.7%,最終時では72.8%であった.また,0.1未満にとどまったものは92眼中10眼10.9%であった.
 ステロイド1カ月投与量および総投与量とも視力の回復率には関係がなかった.初発症状よりステロイド投与開始までの期間が長いほど視力の回復が悪く,また視力回復まで長期間かかった.当科における原因不明の視神経炎(症)でのステロイド総使用量はプレドニソロン換算1,000mg以下,期間は2カ月以下であることが明らかとなった.

Vogt-Koyanagi-Harada病における髄液中白血球のメラノサイト障害活性とモノクローナル抗体による表面マーカー解析

著者: 野呂瀬一美 ,   矢野明彦 ,   瀬川雄三

ページ範囲:P.242 - P.246

 発症期Vogt-Koyanagi-Harada病(VKH)患者5例の末梢血白血球(PBL)と髄液中白血球(CSFL)について,51Cr標識ヒトメラノーマ株P-36とヒト子宮頸癌株HeLa-S3に対する障害活性を比較検討した.髄液中細胞増多の著しかった2例は2週間後に再度PBLとCSFLを採取し同様の検討を行った.また同時に1例についてはモノクローナル抗体による白血球サブセット解析を施行しPBLとCSFLとを比較検討した.抗メラノサイト障害活性はPBLで1例を除く4例に強く認められた.CSFLの2例の障害活性はPBLに比較して有意に弱く,3例のCSFLは障害活性を認めなかった.一方,HeLa-S3に対する細胞障害活性はPBLおよびCSFL両者とも認めなかった.CSFLのモノクローナル抗体による白血球サブセット解析ではT11+細胞が89%を占め,OKT3+,OKT4+,Lue HLA-DR+細胞はPBLに比し増加していた.

ベーチェット病患者の血清免疫抑制酸性蛋白

著者: 難波克彦 ,   永井彩 ,   古谷和正 ,   坂本尚子 ,   小川智美

ページ範囲:P.251 - P.253

 ベーチェット病患者37例の血清免疫抑制酸性蛋白(IAP)について調べた.健常人61例を対照とした.Studentのt検定により,患者のIAPは活動期非活動期ともに対照より有意に高く(P<0.0001),活動期は非活動期に比べ有意に高かった(P<0.0001).患者16例で,IAPは眼発作後もっとも高く,症状の回復とともに低くなる傾向がみられた.1例の患者で,発作直前にIAPの明らかな上昇が認められた.IAPは,ベーチェット病において臨床的に有用な指標と考えられる.

特異な虹彩毛様体炎の組織学的検討

著者: 船田みどり ,   広瀬晶 ,   鎌田光二 ,   所敬

ページ範囲:P.254 - P.257

 高眼圧と虹彩萎縮を伴う片眼性の急性虹彩毛様体炎は,ウイルス感染によるものと考えられている.今回,我々も同様の症例を経験し,手術時に得られた虹彩および隅角部の組織学的検査を行い,その病態について検討した.
 電顕により虹彩には肥大化したメラニン細胞が観察され,血管内皮細胞,上皮細胞内に直径150nmの三層構造を有する均一な顆粒が多数認められた.これは形態的にヘルペスウイルス様粒子と考えられた.さらに螢光抗体法で虹彩には単純ヘルペスウイルス抗原の存在が認められた.このことは本症例が単純ヘルペスウイルスの感染による虹彩毛様体炎である可能性を強く示唆するものである.

学術展示

網膜静脈閉塞症に合併する緑内障

著者: 中村富雄 ,   原田敬志

ページ範囲:P.258 - P.259

 緒言 網膜静脈閉塞症に原発性開放隅角緑内障や新生血管緑内障が合併することはよく知られ,網膜静脈閉塞症における眼圧管理の重要性を物語っているが,具体的な症例研究は余り多くない.今回我々は網膜静脈閉塞症に合併した緑内障についてretrospectiveに調査し,その病型,頻度,特徴などについて若干の知見を得たので報告する.

自動視野計による緑内障の病期診断 Key Hole Areaの検索

著者: 湖崎弘 ,   塚本和子 ,   菅節子 ,   飯田輝子 ,   中谷一 ,   木坊子敬貢

ページ範囲:P.260 - P.261

 目的 自動視野計は省力化の特徴を持つ反面,静視野検査のため視野全体のパターンを知ることがむつかしく,ことに緑内障診断には使いにくい.小範囲の静視野検査によって緑内障の病期診断を可能にし,自動視野計の有用性を確立せんとするのが,今回の研究の目的である.

緑内障における網膜神経線維層欠損の観察 早期診断に対する有用性について

著者: 竹田明 ,   勝島晴美 ,   竹田眞

ページ範囲:P.262 - P.263

 緒言 緑内障は進行性失明疾患であり,早期診断早期治療が必要となる.1973年Hoyt1)は,緑内障眼において,網膜神経線維層(RNFL)欠損をred freefilterを用いて撮影し,その評価を行い判定基準を報告している.岩田2,3)は眼底色素の多い東洋人では,focusの合せやすいカラー撮影でも十分観察できることを発見し,stereoscopeを用い緑内障の極早期の繊細な変化をとらえている.我々も岩田の方法によりRNFLの欠損を観察し緑内障の極早期診断における有用性を検討してみた.

緑内障性視神経乳頭陥凹と視野との関係

著者: 難波克彦 ,   岩田和雄

ページ範囲:P.264 - P.265

 緒言 視神経乳頭陥凹(cup)を観察し,その変化を追跡することは緑内障の進行の有無を他覚的に知る重要な方法である.しかしcupは大別して,乳頭内の色調の変化でとるcolor cupと形状の変化でとるcon-tour cupとがあり,はっきりとした定義はない.我々1)はcupを立体観察にてその変化を追跡し,緑内障病期によりcupの変化する部位が,その深さにより異なること,また同様の所見が網膜神経線維層の欠損の進行につれてみられることを報告した.今回緑内障病期(湖崎分類)2)とcupの変化との関係について検討した.

天理病院トラベクロトミーの統計的観察 その3 血液逆流

著者: 禰津直久 ,   永田誠

ページ範囲:P.266 - P.267

 緒言 今回,トラベクロトミー特有の現象である前房内血液逆流を中心に手術有効率などを検討し本術式の性質を探った.

リーガー症候群の2例

著者: 坂口紀子 ,   大野敦史 ,   松岡徹 ,   小山鉄郎 ,   松尾信彦

ページ範囲:P.268 - P.269

 緒言 リーガー症候群は,後胎生環,同部に癒着する虹彩周辺部よりの索状組織,虹彩萎縮を主微とする眼異常に,顔面骨の異常などの全身合併症を伴う疾患群である.最近,我々は臨床的にリーガー症候群と診断され,緑内障を発症した2症例の,前房隅角部を組織学的に検討する機会を得たので報告する.

種々の原因による深部裂孔21眼に対するSF6ガスの使用経験

著者: 黒川真理 ,   田中稔 ,   岩崎ゆり ,   久武純枝 ,   稲垣有司

ページ範囲:P.270 - P.271

 緒言 硝子体腔内ガス注入による網膜復位促進術はSF6ガス等の膨脹性ガスを用いたpneumatlcretinopexyとして単純な裂孔原性網膜剥離手術のfirst choiceとして最近用いられている.これとは別に,いわゆる難治性の症例に対し,現在シリコンオイル注入に加えて,SF6も多用されている.SF6ガスの効果および副作用等を評価するため,当院で行った網膜硝子体手術265件のうち,難治性のためSF6ガスを用いた21例について検討を加えたので報告する.

全身性真菌感染症患者に認められたぶどう膜炎

著者: 臼杵祥江 ,   能勢晴美 ,   本村幸子 ,   山田滋雄 ,   井上享 ,   土井幹雄

ページ範囲:P.272 - P.273

 緒言 重篤な消耗性疾患の経過中,全身性真菌感染症を合併することがあり,眼科領域においても内因性真菌性眼内炎の報告が近年増加しつつある.我々はこのような患者に重篤なぶどう膜炎を認め,生前眼内より直接真菌を証明することができなかったが,まもなく死の転帰をとった2症例を経験し,うち1例は剖検にてカンジダ網膜炎を確認しえたので報告する.

順天堂浦安病院における網膜硝子体手術の現状

著者: 稲垣有司 ,   田中稔 ,   岩崎ゆり ,   黒川真理 ,   久武純枝

ページ範囲:P.274 - P.275

 緒言 手術方法の進歩および多種多彩な周辺器具の開発に伴って,網膜硝子体手術の成績は向上してきているが,いまだ難治例は認められる.今回,我々は不成功例の合併症ならびに原因につき検討したので報告する.

滲出性眼底病変を主徴とする眼サルコイドーシスの臨床像

著者: 大原國俊 ,   宮澤敦子 ,   大久保彰 ,   龍井哲夫

ページ範囲:P.276 - P.277

 緒言 サルコイドーシスの典型的な眼底病変は静脈系を主とする散在性の網膜血管周囲炎と蝋様網脈絡膜滲出斑であり1),広範な滲出性眼底病変を呈することは稀であるが,我々は強度の滲出性眼底病変を呈する4例を経過した.2例はCoats病を思わせる病像を呈し,3症例には両側肺門部リンパ節腫張(BHL)を認めなかったが,経気管支肺生検(TBLB)でサルコイドーシスと診断した.サルコイドーシス診断と治療上で注意すべき臨床像と考えられるので報告する.

Pneumatic retinopexyによる早期視力改善効果について

著者: 石郷岡均 ,   根木昭 ,   西川雅子 ,   本田治 ,   上野聡樹 ,   荻野誠周

ページ範囲:P.278 - P.279

 緒言 網膜剥離に対するpneumatic retinopexy(PR)1)は手術手技の容易さから,適応範囲や合併症等まだ検討すべき問題が多く残されているものの,現在急速に普及しつつある術式である.今回我々はPRの長所の一つと考えられる視力改善効果について,従来のconventionalな網膜剥離手術と比較検討を加え,さらにこの結果を実験的網膜剥離における細胞学的変化と対応させて,その結果を報告する.

連載 眼科図譜・261

渦巻状角膜混濁

著者: 吉野啓 ,   伊地知洋 ,   石綿丈嗣 ,   樋田哲夫 ,   藤原隆明

ページ範囲:P.204 - P.205

 渦巻状角膜混濁はFabry病において見られる特徴的な所見のひとつである.従来,渦巻状角膜変性と呼ばれ,角膜変性症のひとつとされていたが,あくまで全身疾患において見られる一症候として,現在では角膜変性症の範疇からは除外されている.
 今回我々は,典型的な渦巻状角膜混濁を呈したFabry病の女性保因者(heterozygote)と思われる1症例を経験したので報告する.

今月の話題

格子状角膜変性症

著者: 樋田哲夫

ページ範囲:P.207 - P.210

 格子状角膜変性症の三つの異なるタイプについてその臨床症状の特徴について述べ,本症に関する過去の報告の歴史的経緯についてふれた.

眼の組織・病理アトラス・17

ぶどう膜悪性黒色腫

著者: 猪俣孟

ページ範囲:P.280 - P.281

 ぶどう膜悪性黒色腫は,ぶどう膜に発生するメラニン色素をもった悪性腫瘍で,原因は不明であるが,母斑nevusから発生するとされている.とくに脈絡膜からの発生が多い.まず脈絡膜に扁平な円盤状の腫瘤を形成する.腫瘍が大きくなると,網膜色素上皮細胞層を圧迫し,さらに感覚網膜を押し上げて網膜を剥離させる(図1).腫瘍塊はブルッフ膜を破ると,きのこ状に発育する(図2).
 脈絡膜の悪性黒色腫では,腫瘍細胞が毛様動脈や毛様神経にそって強膜壁を通って眼窩内に浸潤したり,虹彩や毛様体の悪性黒色腫では,シュレム管を通って眼球外に広がることがある.また,血行性に肝臓に転移して死亡することも多い.

最新海外文献情報

角・結膜,他

著者: 田川義継

ページ範囲:P.248 - P.249

Stock EL et al : Desquamating endotheliopa-thy. An incipient iridocorneal endothelial syn-drome ? Arch Ophthalmol 105: 1378-1381, 1987
 臨床所見および組織所見よりICE (iridocor-neal endothelial)症候群の初期例または一つのタイプと考えられた症例の報告.34歳男性で外傷・感染などの既往のない症例の右眼にび慢性角膜上皮浮腫とやや下方の内皮側に異常な斑点を認めた.虹彩には癒着・萎縮・母斑などの異常はなかった.スペキュラー所見は細隙灯で異常のみられた内皮の部位に一致して内皮細胞が多形性を示していた.左眼には異常がなかった.治療に抵抗のため全層角膜移植を行い組織を電顕で観察した.角膜内皮は局所的に壊死となり落屑した内皮細胞が前房中にみられ,残った内皮細胞が障害をうけた内皮細胞の下に伸びていたが,それらはケラチンの産生がなく互いにデスモゾームを形成しておらず,内皮細胞の"上皮化"を示す所見はなかった.デスメ膜は肥厚し角膜内皮変性症の所見と類似していた.以上より本症はICE症候群の初期例または本症の一つのタイプであると著者らは結論している.

臨床報告

結露防止剤により誘発されたと思われた蚕食性角膜潰瘍の1例

著者: 片山真理子 ,   鈴木敬 ,   滝昌弘

ページ範囲:P.283 - P.286

 結露防止剤により誘発されたと思われる蚕食性角膜潰瘍の1症例を報告した.
 症例 は33歳の男性で,6カ月前に結露防止剤が右眼に飛入した既往があった.当科初診時には,右眼の角膜下方に新生血管を伴う深い潰瘍を認めた.保存療法で経過観察していたが,潰瘍は進行し穿孔の危険があったため,右結膜部分被覆術を施行した.しかし潰瘍は再発した.角膜の進行縁にundermined borderを伴うことなどから蚕食性角膜潰瘍と考え,健常部の角膜上皮も剥離し結膜で被覆して潰瘍を治癒させることができた.
 結露防止剤の成分は硅酸カルシウム,防カビ剤等を含んでいる.これらの物質により角膜と結膜の上皮に変性が起こり,本人の素因も関与して自己抗体の発生が引き起こされたと考える.

新しい下眼瞼再建術 粘膜のない耳介軟骨移植による裏打ち

著者: 松尾清 ,   広瀬毅

ページ範囲:P.287 - P.289

 下眼瞼再建時の裏打ち材料として,耳甲介軟骨移植を使用する,新しい方法を考案した.
 この材料の特徴は以下の通りである.(1)高い支持性が得られる.(2)周囲よりの粘膜の増殖による上皮化が容易に起こる.(3)自然なグレイラインに仕上がる.(4)適度な弾力性があり,その曲率もよく眼球前面への密着性が良い.(5)採取が容易で採取部位にも変形を残さない.
 以上より眼瞼再建の裏打ち材料として有用であると確信する.

Sjögren症候群にみられた広範な網膜血管閉塞

著者: 島川眞知子 ,   田村正

ページ範囲:P.290 - P.294

 Sjögren症候群患者で,両眼にrubeosisiridisと著明な網膜血管障害を合併した1症例を報告する.
 64歳の女性患者は,両眼の瞳孔領近くに,rubeosisが生じ,螢光眼底造影では広範な網膜毛細血管網の閉塞,細動静脈の変形・血管透過性亢進,新生血管を認めた.Schirmer test,Rose-Ben-gal test,lip-biopsy,および唾液腺管造影からSjögren症候群と診断した.血清の免疫学的検査から,この症例はSjögren症候群と全身性エリテマトーデスとの中間型であると想定できた.

硝子体出血を来したサルコイドーシスの症例

著者: 広瀬浩士 ,   原田敬志 ,   高良俊武 ,   水上寧彦 ,   粟屋忍

ページ範囲:P.295 - P.299

 サルコイドーシスによるぶどう膜炎の経過観察中に出現した硝子体出血2例を報告した.症例1は25歳男性で,螢光眼底撮影にて右眼乳頭上方からの高度の漏出を示し,また左眼乳頭の上耳側で網膜上新生血管が認められた.症例2は16歳男性で,高度な網膜血管炎とともに,初診4カ月後には周辺部網膜血管床の高度な閉塞や網膜新生血管が認められた.ステロイド内服,点眼により症状は徐々に改善したが,新生血管の退縮傾向は認められたものの,消失には至っておらず,今後の慎重な経過観察が必要と思われる.

文庫の窓から

原機啓微

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斉藤仁男

ページ範囲:P.300 - P.301

 中国(明,清代)で行われた眼科専門書の中,わが国に輸入され,翻刻されたものに「銀海精微」「眼科全書」等何種類かあるが,「原機啓微」もその一つである.
 本書が日本で翻刻されたのは承応3(1654)年2月であるが,この翻刻版には,京都,二条通松屋町,武村市兵衛刊行のものと,同年刊記入(刊行者名を欠く)の「医書十六種」(薛巳撰,蒋宗澹等校)中の「原機啓微」がある.ここには承応3年武村市兵衛刊行の「原機啓微」について紹介する.

Group discussion

レーザー眼科学

著者: 野寄喜美春

ページ範囲:P.302 - P.303

○話題提供
レーザーの波長による光凝固特性について,とくにdye laserによる光凝固
 レーザーによる凝固効果は,出力・波長特性・照射時間によって決定される.近年眼科領域で応用されはじめた色素レーザーは,577〜630nmの間で任意の波長を選択できるレーザーであり,それぞれの波長特性を十分理解し使い分けることで,諸疾患により有効な治療効果が期待できる.

画像診断

著者: 菅田安男

ページ範囲:P.304 - P.306

 Cliticalな超音波の利用例や硝子体観察の努力がみられた.硝子体の画像化,Doppler法の実用化には工学的な支持が必須である.CT検査中の視力障害例の真摯な受けとめ方には学ぶところが大きい.今回は新しい診断法の普及に向けてMRIを教育講演に選んだ.

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原著論文の書き方について

ページ範囲:P.308 - P.308

 論文を書く上で一番大切なことは,何故この論文を書くに至ったのかという理由がはっきり示されることと,この研究によって新しくわかった知識は何であるかということを,はっきりと示すことであろうと思います。
 以下,具体的に順を追って述べてみたいと思います。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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