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臨床報告
初期糖尿病において多発性の網膜血管透過性亢進像をきたした1例
著者: 斉藤喜博1 藤田峻作2 西川憲清3 福岡陽子1 木坊子敬貢1 中谷一1 星充2
所属機関: 1大阪厚生年金病院眼科 2大阪厚生年金病院内科 3大阪警察病院眼科
ページ範囲:P.883 - P.887
文献購入ページに移動症例 は20歳女性.糖尿病罹病歴3年.血糖コントロール不良で,しばしば低血糖やketoacidosisを繰り返していた.眼科初診時,軽度の後嚢下白内障がみられたが,検眼鏡的に網膜症は認められなかった.しかし螢光眼底撮影にて,後極部を主体とした網膜毛細血管の多巣性透過性亢進像が認められた.その透過性異常は増悪傾向をきたし,視力が低下したため,片眼のみに網膜光凝固を施行した.約6カ月後に血糖コントロールが良好になると,毛細血管の透過性異常は両眼とも軽快しはじめた.
本症例のような透過性亢進には,激しい血糖変動,とりわけ低血糖の頻発が関与していたと考えられ,罹病期間が短いためその変化は可逆性であったと考えられた.またそのような網膜症に対して光凝固は無用なものであった.
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