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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科43巻11号

1989年10月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・279

網膜剥離手術後に生じた前房レンズのpupil capture

著者: 大野敦史 ,   三好輝行

ページ範囲:P.1666 - P.1667

 緒言 Pupil capture1)は,眼内レンズ手術の術後合併症のひとつである。しかし,その報告のほとんどは後房レンズについてのものであり,前房レンズの報告は少ない。私たちは,前房レンズ挿入眼に生じた網膜剥離の術後3日目に,前房レンズのpupil captureを生じた稀な1例を経験したので報告する。
 症例 78歳女性。

眼の組織・病理アトラス・36

動脈硬化性網膜症

著者: 猪俣孟

ページ範囲:P.1670 - P.1671

 全身の動脈硬化症に伴って網膜動脈に硬化性の変化である網膜動脈硬化症retinal arteriosclero-sisが生じる。動脈硬化性の変化は本態性高血圧症のほとんど全例に認められる病変であるが,中高齢者では,それが高血圧によるものか,動脈硬化による病変であるかを区別することは困難である。
 検眼鏡で認められる網膜動脈の硬化性変化としては,動脈の血管反射の亢進,血管反射の幅の増大,動脈の直進化,狭細化,動脈壁の白鞘形成,静脈の蛇行や拡張,動静脈交叉現象(図1)などがある。このような網膜動静脈壁の硬化性変化と,それに伴って生じる網膜出血や白斑などの病変を含めて動脈硬化性網膜症arterio-sclerotic re-tinopathyとよぶ。

今月の話題

視神経炎の治療

著者: 若倉雅登

ページ範囲:P.1733 - P.1737

 急性特発性視神経炎は自然寛解傾向があり,ステロイド療法は真に効果があるか,否か,わからない。
 一方,最近パルス療法が視神経炎治療にも応用されはじめ,従来のステロイド治療とは異なった効果が期待されている。東洋と西洋では視神経炎自体の性質(病因,病態)も,ステロイド療法に対する考え方も異なるという観点から,最近の報告に自験例を交えながら視神経炎とその治療について考えてみた。わが国独自のデータが必要であることを強調し,またより特異的で安全な治療法の確立への期待を述べた。

眼科薬物療法のポイント—私の処方・10

角膜ヘルペス—実質型

著者: 秦野寛

ページ範囲:P.1743 - P.1745

10歳男児。主訴:左眼充血
 3月11日,近医受診し,EKCの疑いで,ステロイド点眼と抗生剤点眼の投与を受けた。3月28日の同医再診にて,円板状角膜炎を指摘され,抗ウイルス剤の投与を受けた。4月7日,実質型角膜ヘルペスの治療目的で当科紹介となった。既往歴にアトピー性皮膚炎がある。

眼科手術のテクニック—私はこうしている・10

水晶体仮性落屑症候群の白内障手術

著者: 市岡博

ページ範囲:P.1748 - P.1749

 水昌体仮性落屑症候群(以下PE症候群)の症例は白内障手術を行う上で留意すべき点がいくつかあり,不用意に手術に臨むと思いがけぬ困難や併発症に遭遇することがある。

臨床報告

化学療法が奏効した悪性リンパ腫による視神経浸潤

著者: 矢野真知子 ,   橋場のり子 ,   堀越昇 ,   明石巧 ,   赤星隆幸

ページ範囲:P.1673 - P.1676

 61歳男性の両眼に悪性リンパ腫による視神経浸潤が発症した。化学療法により眼底所見は著明に改善したが,全身状態悪化により6ヵ月後死亡した。剖検により全身リンパ節,肝臓,脾臓,消化管,中枢神経系ではくも膜下腔,硬膜への浸潤が認められ,両眼の眼窩内視神経への浸潤が確認された。

朝顔症候群の網膜剥離

著者: 中江一人 ,   日下俊次 ,   生島操 ,   細谷比左志 ,   池田恒彦 ,   田野保雄

ページ範囲:P.1677 - P.1682

 網膜剥離をきたした朝顔症候群の2症例を報告した。症例1の32歳男性は,下方約2象限におよぶ浅い網膜剥離を認めた。硝子体切除,眼内液空気置換術,術後光凝固の追加等で治療を試みたが復位せず,最終的にシリコンオイル注入術,眼内光凝固術を行い,網膜の完全復位を得ることができた。症例2の13歳の男子は鼻側乳頭漏斗状陥凹部のすぐ内側に非常に小さな裂孔を認め,乳頭の耳側に固定皺襞を伴った網膜剥離を認めた。硝子体切除術,眼内液空気置換術を行い,術後光凝固術を施行したが,復位が得られず,空気灌流下硝子体手術を行い,裂孔部を生体接着剤(ブチルシアノアクリレート)により閉鎖することにより,網膜の完全復位を得ることができた。2症例の経過により,朝顔症候群の網膜剥離における網膜下液の由来は,裂孔を介して網膜下腔に進入した液化硝子体であると考えた。治療は硝子体手術の応用による裂孔閉鎖が有用であると考えられる。

ステロイドで視力改善した側頭動脈炎の確定診断例

著者: 松村美代 ,   鍵本伸二 ,   松村理司

ページ範囲:P.1683 - P.1686

 生検により確定診断した側頭動脈炎で,右眼虚血性視神経症を伴った症例に,ステロイド治療を行った。後頭部痛で発症し,初診時視力は指数弁で,視神経乳頭には著明な蒼白浮腫を認めた。迅速な診断のもとにプレドニソロン80mgから開始したステロイド治療により,視力は0.5まで改善したが,視野は中心から耳側のみを残して著明に狭窄したままで,改善をみなかった。右浅側頭動脈は生検により巨細胞性動脈炎の所見を示した。高齢者の頭痛と視神経乳頭の蒼白浮腫を認めた際には,側頭動脈炎を忘れてはならず,早期に確定診断の努力とステロイド治療を行うべきである。

筒井式他覚的視力測定装置の臨床評価

著者: 岩井玲子 ,   高橋裕昭 ,   松崎浩

ページ範囲:P.1687 - P.1691

 視運動性眼振抑制法による筒井式他覚的視力測定装置を用い,正常者27名及び視力障害者30名を対象に視力測定を行い,ランドルト環による5m自覚視力と比較,検討した。
 正常人については,5m自覚視力と90cm他覚視力は相関係数0.95と良い相関を示した。また,斜視,視神経疾患,網膜疾患等の患者で視力障害を有する症例でも自覚視力と他覚視力は良い相関を示し,とくに心因性視力障害者では6例中4例で他覚視力が自覚視力を上回った。
 本装置は,中心暗点のあるもの,眼球運動障害のあるものには応用できないが,他覚的視力測定法として簡便で,精度が高く,臨床上も有用であると思われた。

非調節性間歇性内斜視の臨床像

著者: 小池信宏 ,   高橋信子 ,   岩重博康 ,   久保田伸枝 ,   丸尾敏夫

ページ範囲:P.1693 - P.1697

 非調節性間歇性内斜視と考えられる3歳から14歳までの17名が次の臨床症状を呈した。3歳前後に間歇性の内斜視が突然発症し,遠見,近見に関係なく大きな斜視角の動揺を認める。屈折異常との相関はなく,調節異常はみられず,視力は良く,左右差がない。両眼視機能は良好で,眼振はなく,交代性上斜位は証明されない。また脳波検査ではすべての症例で異常所見があった。このような臨床症状を示す内斜視は従来報告がなく,我々はこの非調節性間歇性内斜視は独立した疾患単位とするべきものと考えた。

エキシマレーザーの角膜に対する応用—第2報 照射光学系の試作

著者: 真鍋洋一 ,   神鳥英世 ,   山口達夫 ,   天野清範 ,   野寄喜美春

ページ範囲:P.1699 - P.1702

 エキシマレーザー装置に新しい光学系を試作し使用した。ヘリウムネオンレーザーをエイミングビームとして用いたこの光学系により,6種類の異なった型の角膜切開が可能となった。この光学系の中で主としてスリット状に集光するものを用いて,エキシマレーザーを家兎角膜に照射し,角膜厚の1/3の深さで角膜中央部に切開を行った。照射時間は光学系を用いない場合より約半分に短縮された。照射直後に眼球を摘出し,光学顕微鏡学的,電子顕微鏡学的に検索を行った。切開創は鋭利であったが,その形状は先端部が鈍なV字形であった。また切開の深さは同一角膜の中央部では深く,周辺部ではやや浅めであった。新しく開発した光学系の利点,欠点について考察した。

マリオット盲点拡大症候群の2例

著者: 石田麻美 ,   湯田兼次

ページ範囲:P.1703 - P.1707

 われわれは視野測定で片眼性にマリオット盲点拡大以外の異常がみられず,検眼鏡的に乳頭浮腫のない,いわゆるbig blind spot syndromewithout optic disc edemaの2症例を経験した。何れも軽度の視力低下と色覚異常を認めるほか,検眼鏡的にも,螢光眼底造影にても盲点拡大を説明できる異常は認めなかった。網膜電位図(ERG),視覚誘発脳波(VEP),CTスキヤン等の検査では異常は捕えられず,photostress recov-ery testで患眼の回復時間の延長を認めた。瞳孔入力障害がみられたこと,経過中に傍中心暗点が見られたこと,ステロイドの効果がみられたことなどにより視神経障害である可能性が高いと考えられた。
 Big blind spot syndromeの本態は不明だが,これまでの症例報告から視野変化として盲点拡大のみが見られる疾患群として捉らえ,その原因別分類が必要と思われた。

両眼の網膜中心静脈閉塞症様の網膜出血で発症した骨髄異形成症候群の1例

著者: 鳥海智子 ,   古田仁志 ,   野呂瀬一美

ページ範囲:P.1751 - P.1754

 両眼の網膜中心静脈閉塞症様の網膜出血で発症し,精査の結果骨髄異形成症候群と診断された41歳男性の1例を経験した。初診時あった汎血球減少は内科的治療で軽快し,血液所見の改善に伴って網膜出血も徐々に吸収された。初診時眼底所見は検眼鏡的には両眼の網膜中心静脈閉塞症と思われたが,螢光眼底撮影では出血によるblockと毛細血管瘤を認めただけで静脈への流入遅延などの網膜中心静脈閉塞症に特徴的な所見はなかった。これらの所見より,本例の網膜出血と毛細血管瘤は網膜静脈閉塞によるのではなく貧血による組織のhypoxiaが原因と考えられた。

白内障術後の乱視矯正角膜切開術の効果と安全性

著者: 宮田和典 ,   池沢暁子 ,   田中俊一 ,   清水公也

ページ範囲:P.1755 - P.1759

 眼内レンズ移植後を中心とした白内障術後の乱視性不同視の症例16例,18眼に対し,乱視矯正角膜切開術(Astigmatic Keratotomy, AKと略す)を行い,その効果と安全性を検討した。白内障術後6ヵ月以上経過し,3.0D以上の倒乱視があり,眼鏡による矯正ができず,コンタクトレンズの装用が困難であり,術前の角膜内皮細胞密度が2000/mm2以上の症例を適応とした。術式は,光学領域は6mmとし,強主経線方向の接線に沿って4mm幅で2ヵ所のtransverse relaxingincision (T切開)を行った。切開の深さは,角膜中心の最小角膜厚とした。倍角座標上のX軸方向の角膜乱視度は,術前平均値3.7Dが,術後6ヵ月では0.8Dとなった。角膜中央付近の最小角膜厚は,術後厚くなり,術後1ヵ月にはほぼ術前値に戻った。この経過は切開創の再上皮化とほぼ時期を同じくしていた。角膜中央部の内皮細胞密度は,術後6ヵ月を通じて変動しなかった。切開創周囲には,2.6%の減少率を見た。AKは,術後乱視の減少に有効であり,術後6ヵ月の観察では,角膜内皮細胞に対する影響は大きくないと考えられた。

後房レンズ挿入術後のフィブリン反応—予防のためのステロイド結膜下注射

著者: 山本修士 ,   前田直之 ,   佐藤勝 ,   松田司 ,   真鍋禮三

ページ範囲:P.1760 - P.1762

 本研究は,後房レンズ挿入術後早期のステロイド結膜下注射が術後のフィブリン反応の抑制に有効であるか否かを評価するために行われた。老人性白内障に対して後房レンズ挿入術を行い,術中および術後1日目に特に著しい合併症(眼圧上昇,前房内出血など)を認めなかった症例を対象とした。対象107眼のうち35眼を任意に選び出し,術後2〜3日目にステロイド結膜下注射を行った(ステロイド投与群)。他の72眼には,ステロイドの結膜下注射を行わなかった(ステロイド非投与群)。その結果,フィブリン反応の頻度は,ステロイド投与群においては8.6%であったが,ステロイド非投与群では,45.8%と有意に多かった。これらの結果から,術後早期のステロイド結膜下注射が後房レンズ挿入術後のフィブリン反応の抑制に有効であることが示された。

裂孔原性網膜剥離例を発端者とする家族性滲出性硝子体網膜症の19家系

著者: 大久保好子 ,   大久保彰 ,   清水由花 ,   金上貞夫 ,   清水昊幸

ページ範囲:P.1763 - P.1767

 裂孔原性網膜剥離例を発端者とする家族性滲出性硝子体網膜症(FEVR)19家系53例を調査し,FEVRの眼底表現型と剥離の関連性,および家系内での剥離関連病変について検討した。FEVRの表現型は発端者の剥離眼で周辺部変性型が16眼(84%)と大多数を占め,牽引乳頭型2眼(11%),鎌状剥離型1眼(5%)で周辺部変性型が剥離との関連において最も重要と考えられた。また家族内では39例のFEVRを確認し,周辺部変性型が66眼(85%)を占め,本型を見逃さないことがFEVR診断の鍵であると考えられた。また発端者の家族で裂孔形成13眼,網膜剥離1眼,網膜剥離の既往2眼で計16眼(21%)に剥離関連病変がみられた。以上からFEVRは裂孔原性網膜剥離の基礎疾患として充分に認識する必要がある。

ダウン症候群にみられた球状角膜の1例

著者: 奥田眞琴 ,   岩間喜徳 ,   滝川純 ,   杉本充 ,   宇治幸隆

ページ範囲:P.1769 - P.1772

 ダウン症候群の33歳女性に両側の球状角膜が併発した。
 本症例は,角膜厚が一様に薄く,円錐状の突出がなく,またFleischer輪を認めず,眼球硬性がきわめて低い等の特徴から,今まで少なからずダウン症候群との合併が報告されている円錐角膜と鑑別された。角膜内皮細胞の観察では,片眼で細胞密度の著しい低下があり,急性水腫の既往が疑われた。

網膜毛細血管瘤を伴う網膜色素上皮パターンジストロフィーの1例

著者: 新城光宏

ページ範囲:P.1773 - P.1776

 左眼の中心性漿液性網脈絡膜症を疑った52歳の女性に螢光眼底造影を行い,両眼に網膜色素上皮パターンジストロフィーおよび周辺部網膜の毛細血管瘤を認めた。
 網膜毛細血管瘤を発生する全身的疾患は特にみられず,パターンジストロフィーにおける病変の主座を網膜色素上皮に限定することは,現時点では慎重を要するものと考える。

Just Arrived

有水晶体眼への人工水晶体移植による近視の矯正

著者: 桂弘

ページ範囲:P.1682 - P.1682

 34例62眼の有水晶体眼に対して,近視矯正の目的で,Worst iris claw lensを移植した。緑内障および前房の深さが35mm未満の症例は適応外とした。また,術後に大量のステロイドを投与するため,胃潰瘍または糖尿病を有する症例も除外した。角膜内皮細胞密度は3,000〜4,000/mm2の症例を選択した。術後合併症としては,初期の症例では虹彩炎が多かったが,手術技術の改善とステロイド投与によって減少した。術後に人工水晶体を除去したのは1例のみで,ヒアルロン酸の除去が不十分であったために著明な眼圧上昇と不可逆性の瞳孔散大をきたした症例である。角膜への接触や白内障は認めなかった。角膜内皮細胞密度は,平均11ヵ月の経過観察で,1,500/mm2に減少した2例以外は術前の状態を保持している。最高矯正視力は62眼中50眼で改善し,11眼で不変であった。術後の屈折は,術前の予想値と比較して,1ジオプター以内が39眼(63%),2ジオプター以上異なったのは4眼(6.5%)のみであった。これらの結果より,過度の危険や重症の合併症なしに手術することが可能であると考えられた。しかし,本手術の適応は,コンタクトレンズが装用不能で,職業的または精神的理由で眼鏡の装用ができない症例で,角膜放射状切開術によっても矯正できない場合に考慮されるべきであると考えられる。

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第43回日本臨床眼科学会総会プログラム

ページ範囲:P.1710 - P.1730

会期:平成元年10月13日(金)・14日(土)・15日(日)
会場:名古屋市中小企業振興会館(吹上ホール)・名古屋市公会堂

論文論

誇張表現/引用文献

著者:

ページ範囲:P.1732 - P.1732

 ものごとを強調して言おうとするばあい,時代が下がるにつれて表現が大袈裟になる傾向があるものです。「すごぉーくりっぱ」,「非常に気になる」,「この装置は極めて有用」などがその例でしょうか。そう言えば,ある結婚式で「君が植物人間になっても愛し続けます」という新郎までいました。
 学術論文でもこういった最大級の表現がしばしば使われています。ところが皮肉なことに,「表現が大袈裟になるほど嘘らしく聞こえる」というのが人間心理なのです。「ありがとう」と英語で言うのでも,Thank you very much indeed.とやると,只のThank you.より真実味が薄れるのです。

最新海外文献情報

ERG記録の標準化

著者: 三宅養三

ページ範囲:P.1767 - P.1767

 世界中の数多くの施設でERGは繁用されているが各々の施設により記録する方法が異なるため正常範囲やERGの波形が異なり直接データを比較出来ないことが多い。そのため出来るだけERG記録方法を同一にすれば世界中の施設で記録したERGの直接比較が出来大きな利点がある。そのためERG記録の標準化に対して数年前よりInter-national Society for the Clinical Electro-physiology of Vision (ISCEV)のBoardを中心に標準化の作業が進められてきており,今回その結果が示された。今回示されたERG記録は(1)暗順応下で最大振幅が得られるERG (これは我々が一般的に記録する20ジュール程度の白色閃光刺激によるERG),(2)杆体系ERG (暗順応下で弱い刺激によるERG),(3)律動様小波,(4)錐体系ERG (杆体機能を抑える程度の背景光下に記録するERG),(5)フリッカーERGである。各々の記録に関して前順応,刺激光の強さ,背景光の強さ,電極,記録周波数域等多くの点に関して標準化している。現時点でこれらの記録を標準に合わせるのは多少困難な人もあろうが,これからsettingする人はぜひこの標準化に沿って条件を決めるとよい。

薬の臨床

運動後の血圧と脈拍数に及ぼすbetaxololとtimolol点眼の影響—健常人での交叉二重盲検試験

著者: 中島光好 ,   渡辺郁緒 ,   植松俊彦 ,   長嶋悟 ,   水野淳広 ,   松野浩之 ,   山崎玉仁 ,   米虫節夫

ページ範囲:P.1777 - P.1785

 日本人の健常男子志願者12名を対象とした交叉二重盲検試験を実施し,0.5%betaxolol点眼液,placebo,0.5%timolol点眼液の運動負荷後の脈拍,血圧に対する影響を検討した。本試験は7日間以上のwashout期をはさむ3つの試験期(Trial Ⅰ〜Ⅲ)から成り,各trialにおいてラテン方格に従って無作為に割付けられた3種類の被験薬を各被試験者に順次点眼した。被験薬点眼前後の脈拍および血圧を安静時と負荷時で測定し評価した。
 本試験において,0.5%betaxolol点眼液の脈拍,血圧に対する作用は,placeboとの間に有意差を認めなかった。しかし,0.5%timolol点眼によって脈拍は有意に低下した。また,0.5%betax-olol,0.5%timololともに有意な眼圧下降作用を示したが,その効果は0.5%timololの方が大であった。
 Betaxolol点眼液はβ1—選択性が高く,呼吸器系に対する作用が少ないことは既に報告されており,今回心血管系への影響も認められなかったことにより,緑内障治療薬として安全性の高い点眼液であると結論された。

文庫の窓から

東校医院治験録

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斉藤仁男

ページ範囲:P.1786 - P.1787

 幕末から明治の初めにかけては飜訳医書の出版が俄かに増加するようになったが,速報性の面では成書より雑誌型式の方がより効果的であるので,その型式のものが次第に多く出版されるようになった。その類としてはウイリス(William Willis, 1837〜1894)氏の東京医学校における講義を訳出した「官版日講紀聞」などが早期にみられた。また,いわゆる医学雑誌として取扱われているものには「文園雑誌」(田代基徳輯 明治6年6月刊),「医事雑誌」(坪井信良編.明治6年11月刊)などが挙げられる。
 「東校医院治験録」は,明治4年(1871)8月来日したミュルレル(Leopold müller, 1924〜1893),ホフマン(Theodor Eduard Hoffmann, 1837〜1894)両氏が東校医院において行った講義,治療の記録を印刷に付した一部で,明治5年(1872)正月,須原屋伊八,島村屋利助より発刊された。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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