臨床報告
白内障術後の乱視矯正角膜切開術の効果と安全性
著者:
宮田和典1
池沢暁子1
田中俊一1
清水公也1
所属機関:
1武蔵野赤十字病院眼科
ページ範囲:P.1755 - P.1759
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眼内レンズ移植後を中心とした白内障術後の乱視性不同視の症例16例,18眼に対し,乱視矯正角膜切開術(Astigmatic Keratotomy, AKと略す)を行い,その効果と安全性を検討した。白内障術後6ヵ月以上経過し,3.0D以上の倒乱視があり,眼鏡による矯正ができず,コンタクトレンズの装用が困難であり,術前の角膜内皮細胞密度が2000/mm2以上の症例を適応とした。術式は,光学領域は6mmとし,強主経線方向の接線に沿って4mm幅で2ヵ所のtransverse relaxingincision (T切開)を行った。切開の深さは,角膜中心の最小角膜厚とした。倍角座標上のX軸方向の角膜乱視度は,術前平均値3.7Dが,術後6ヵ月では0.8Dとなった。角膜中央付近の最小角膜厚は,術後厚くなり,術後1ヵ月にはほぼ術前値に戻った。この経過は切開創の再上皮化とほぼ時期を同じくしていた。角膜中央部の内皮細胞密度は,術後6ヵ月を通じて変動しなかった。切開創周囲には,2.6%の減少率を見た。AKは,術後乱視の減少に有効であり,術後6ヵ月の観察では,角膜内皮細胞に対する影響は大きくないと考えられた。