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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科43巻12号

1989年11月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・280

後部円錐水晶体の生体観察

著者: 石綿丈嗣 ,   矢田浩二 ,   永野幸一 ,   藤原隆明

ページ範囲:P.1796 - P.1797

 緒言 水晶体後面の一部が円錐状または丘状に突出したものは,posterior lenticonusと名づけられ,比較的まれな疾患である。本症は,Meyer1)がはじめて人眼で発見し,日本でも河本2)が報告して以来注目されるようになった。
 現在までの報告は主として,病理組織検索が主であったが,今回我々は,posterior lenticonusの1症例に対してspecular microscopeと水晶体専用cone lensを組合わせ,後部円錐水晶体の生体観察を試みたので報告する。

眼の組織・病理アトラス・37

虹彩の血管新生(虹彩ルベオーシス)

著者: 猪俣孟 ,   岩崎雅行

ページ範囲:P.1800 - P.1801

 虹彩の表面に新生血管が形成された状態を虹彩ルベオーシスrubeosis iridisという。虹彩の実質内には血管が存在しているが,血管の外膜には厚い膠原線維の層が存在するので,臨床的には虹彩の血管は観察できない。これに対し,虹彩の新生血管は血管壁が非常に薄く,しかも虹彩の表面に存在するので,その血柱が明瞭に認められる。虹彩ルベオーシスという言葉は,糖尿病患者の虹彩が新生血管によって赤い刷毛ブラシでなでたようにみえたので(図1),糖尿病性虹彩ルベオーシスrubeosis iridis diabeticaと表現されたのが最初である。その後,虹彩の新生血管は糖尿病だけでなく,種々の疾患でも生じうることがわかり,糖尿病性という表現を削除して,虹彩ルベオーシスrubeosis iridisと呼ばれるようになった。ところが虹彩に新生血管が生じても,虹彩は必ずしも赤くならない。たとえば,ごく早期の新生血管は気づかれないことが多いし,また逆に,発生して月日が経過した新生血管は周囲の結合組織におおわれてみえなくなる。このことから,虹彩ルベオーシスという表現よりも虹彩の血管新生neovas-cularization of the irisの方がより適当であるとされている。
 虹彩の新生血管は虹彩実質内に存在している血管,とくに静脈や毛細血管から内皮細胞の増殖発芽によって発生する(図2)。

今月の話題

老人性円盤状黄斑変性症の網膜下新生血管像—実験的網膜下新生血管との対比

著者: 大西克尚 ,   熊野祐司 ,   沖坂重邦

ページ範囲:P.1803 - P.1808

 老人性円盤状黄斑変性症の本態は脈絡膜から発生した網膜下新生血管である。この新生血管網の螢光眼底造影像と,実験的に作成した網膜下新生血管の鋳型標本とを対比させ,本症の新生血管の先端部が環状あるいは放射状の形態をとり,治療にさいしては,この先端部を十分に光凝固する必要があることを述べた。

眼科手術のテクニック—私はこうしている・11

人工レンズ挿入時のバイマニュアルテクニック

著者: 市岡博

ページ範囲:P.1844 - P.1845

 人工レンズ(後房レンズ)を挿入する際の手技としてはダイアリング法やコンプレッション法などのシングルハンドテクニックが広く知られている。しかし,4ホールから2ホールそしてノーホールレンズが好まれるようになり,より光学径の大きいレンズが主流となりつつある現在これらの手技のみでは確実に嚢内に固定することが困難な場合も多い。加えてcircular capsulorhexisを行った場合,レンズ挿入時には独得のコツを要する。
 我々はこのようなレンズデザインや術式の変化に対応して,嚢内に,より確実にレンズを挿入するため両手を用いた挿入法を行っており,ここにその一部を紹介する。

眼科薬物療法のポイント—私の処方・11

外傷性嫌気性菌眼内炎

著者: 坂上富士男

ページ範囲:P.1847 - P.1849

59歳,男性。草刈り機使用中に右眼に異物飛入。近医にて治療を受けるも,2日後より次第に眼痛が増強し当科を紹介された。主訴:右眼痛,視力低下

臨床報告

眼内レンズ挿入術における術中縮瞳・術後炎症に対するケトロラックトロメタミン点眼液の効果

著者: 天野史郎 ,   鈴木雅信 ,   増田寛次郎

ページ範囲:P.1809 - P.1812

 プロスタグランディンズ合成阻害作用を有するケトロラックトロメタミン(KL)の水性点眼液を用い,眼内レンズ挿入術における術中縮瞳,術後炎症に対する効果を定量的に検討した。対象は水晶体嚢外摘出術+後房レンズ挿入を行った老人性白内障で,基剤投与群10眼,0.1%KL投与群11眼,0.5%KL投与群11眼,計32眼で,各群とも術前は3,2,1時間,30分前,術後は1日3回点眼した。術前と水晶体皮質吸引後の瞳孔径,術後前房内炎症について検討した。術後炎症はレーザー・フレア・セル・メーター(FC1000®興和KK)により術後4週目まで測定し,フレアー値は牛アルブミン濃度に換算した。
 前房内蛋白濃度についてみると,0.5%群は0.1%群に対して有意差は認められなかったが低値を示し続け,基剤群に対しては1日目から2週目まで有意に低かった。0.1%群は基剤群に対して2日目から1週目まで有意に低かった。
 細胞数は,基剤群が最高値を示し続けたが,蛋白濃度ほど差はなかった。術中の縮瞳率は,0.1%群,0.5%群とも基剤群より低値を示した。

結膜下眼球破裂

著者: 白木美香 ,   水谷聡 ,   勝安彦 ,   荻野誠周

ページ範囲:P.1813 - P.1817

 鈍的外傷による結膜下眼球破裂5例のうち,結膜を通して容易に観察される輪部近傍の破裂の1例を除くと,外眼筋より後方の破裂4例の診断は受傷後10日から17日,平均13日を要していた。眼球組織の鈍的傷害のため視力予後はもともと良いものではないと考えられるものの,受傷後早期に診断がなされるべきである。

弘前大学眼科における視覚障害者の実態—第2報 1965〜1966年(Ⅰ群)と1982〜1986年(Ⅱ群)との比較検討

著者: 大島隆志 ,   中村秀世 ,   前田修司 ,   佐藤章子 ,   松山秀一

ページ範囲:P.1819 - P.1824

 1965年から1966年までの2年間(Ⅰ群)および1982年から1986年までの5年間(Ⅱ群)の当科外来患者のうち,片眼もしくは両眼の矯正視力0.1未満の症例を対象として比較検討した。(1)Ⅰ群では,眼外傷が視覚障害原因疾患の第1位(14.0%)となり,Ⅱ群では,Ⅰ群で第15位(1.8%)に過ぎなかった糖尿病性網膜症が第1位(14.7%)を占めて有意に増加していた(p<0.001)。(2)角膜パンヌスは,Ⅰ群では7.2%で第4位を占めていたが,Ⅱ群では1.3%と有意に減少していた(p<0.001)。同様にⅠ群と比較して,視神経萎縮,角膜斑および白斑のⅡ群での有意な減少が目立った(p<0.001)。(3)高度の視覚障害(両眼とも視力0.01未満)の原因疾患としても,糖尿病性網膜症がⅡ群で第1位(23.1%)を占めた。

Candida albicansによる内因性真菌性眼内炎の治療—アンホテリシンB結膜下注射の有効性

著者: 木村真也 ,   藤井雅朗 ,   向野和雄

ページ範囲:P.1825 - P.1831

 Candida albicansによる真菌性眼内炎3症例を経験し,各々に異なる治療法を行い比較検討した。症例1は49歳男性で,交通外傷後全身感染症をおこし,抗生剤の長期大量投与をうけていた。経過中カンジダ血症がみられ,Amphoter-icin B (以下AMT-Bと略す)の点滴静注を行ったが受傷2ヵ月後両眼の視力低下をきたし,眼内炎を起こしていた。その後視力の改善なく,両眼とも瘢痕化した。症例2は53歳男性で,敗血症を起こし抗生剤の大量投与が行われていた。約1ヵ月後両眼の視力低下を来し,眼内炎を起こしており5-fluorocytosineの経口投与と,vitrectomy後にAMT-Bの硝子体注入を行い軽度の視力改善をみ,瘢痕治癒した。症例3は47歳女性で胞状奇胎術後,またネフローゼ症候群のためステロイド剤の長期大量投与が行われていた。約1ヵ月後に両眼視力低下をきたし,虹彩炎と網膜の滲出性病変を認めた。治療はAMT-Bの全身投与は続行できず,0.05mg/ml AMT-Bの結膜下注射を隔日投与し,著名な視力の改善を認めた。我々は症例3がAMT-Bの結膜下注射にて明らかな視力の改善を認めたことから,今後Candida性眼内炎の積極的治療のひとつとして試みるべきであると考えた。

眼内鉄片異物の1例

著者: 山本美保 ,   栗本康夫 ,   荻野誠周 ,   砂川光子

ページ範囲:P.1832 - P.1833

 眼内鉄片異物の症例に対し,Pars-planavitrectomy,眼内光凝固術および異物摘出術を施行し,合併症もなく,良好な視力を維持しえた。この症例にたいし,術前,術後の眼底写真を記録できたので報告した。

新しい上強膜静脈圧測定装置の使用経験

著者: 三浦昌生 ,   小紫裕介 ,   竹村美保 ,   近藤武久 ,   小椋祐一郎

ページ範囲:P.1835 - P.1838

 EYETECH社製Episcleral Venoma-nometerを用いて正常者5名10眼の上強膜静脈圧を測定した。結果は,上強膜上脈圧:8.05±0.85mmHg,眼圧:15.3±1.1mmHg,眼圧と上強膜静脈圧の差:7.25±1.60mmHg,(mean±SD),であった。また,甲状腺機能亢進症により眼球突出と上強膜静脈圧の上昇を来し,緑内障を発症したと考えられる74歳の症例を経験した。

白内障手術時の前房内エタノール誤注例

著者: 近藤三博 ,   荻野誠周

ページ範囲:P.1851 - P.1853

 白内障手術の前房内,オビソート®注入時,70%エタノールを誤注した1例を報告した。
 80歳女性の白内障2次的前房レンズ挿入術の際,オビソート®と誤って70%エタノールを前房内に誤注した。誤注直後より,角膜,前房は白く混濁したため,オペガード®にて約2分間,前房内洗浄を試みるが,術後より約3ヵ月間,デスメ膜の皺襞や角膜浮腫が持続した。術後眼は術前に比べて,角膜内皮細胞は著しく減少していた。
 今後は,誤注が生じた場合,速やかに気づき,対処する事も必要であると同時に,手術システムの念入りなチェックと絶え間ない改善が必要である。

網膜静脈分枝閉塞症を伴う三角症候群の1例

著者: 新城光宏

ページ範囲:P.1855 - P.1857

 網膜静脈分枝閉塞症を合併した三角症候群を有する60歳男性の1例を報告した。
 三角症候群の本態は後毛様動脈の閉塞によるものであり,血管閉塞性疾患の素因を共有するものと考えられ,三角症候群および網膜血管閉塞症との合併は,今後も多く見出される可能性がある。

出生後早期の硝子体手術が奏効した第一次硝子体過形成遺残の1例

著者: 加藤研一 ,   井戸稚子 ,   岩崎義弘 ,   松村美代 ,   後藤保郎 ,   新井三樹

ページ範囲:P.1859 - P.1861

 生後15日で当科初診となった片眼性第一次硝子体過形成遺残の症例に対し,視機能保持の目的で硝子体手術を行った。初診時,前眼部に異常を認めず,水晶体は透明でその後方の硝子体腔に白色組織塊がみられた。眼底後極部は透見不能で,超音波検査で高エコーレベルの組織塊が,水晶体後方より漏斗型を呈しつつ視神経乳頭へ連なる像を認めた。術前flash VEP検査において左右差をみなかった。生後22日目にpars planavitrectomyが施行された。術中,白色組織塊は水晶体,網膜と癒着していなかったが,視神経乳頭とは索状物でつながっていた。透見可能となった眼底に異常所見はみなかった。現在術後170日経過しているが,合併症はみていない。
 今回,我々の経験した症例は,透明な水晶体を保存できたこと,生後早期に手術により視軸の透明性が得られたことより視性刺激遮断弱視の発生予防に関して有利であると考えられ,良い視機能が期待される。

正常者における静的フリッカー中心視野の検討

著者: 宇山孝司 ,   松本長太 ,   宇山令司 ,   大鳥利文

ページ範囲:P.1863 - P.1867

 中心30°以内の静的フリッカー視野を年齢別に正常者において検討を行った。対象は20歳代,30歳代,40歳代,50歳代の正常者10名づつ,合計40名である。
 結果として正常静的フリッカー視野(中心30°以内)は中心部が最も高く,周辺に向かって感度が低下する比較的なだらかな島状を呈し,不規則な凹凸はほとんどみられなかった。しかし,測定点毎の測定値には大きな個人差がみられた。また測定値の加齢による有意差は認めなかった。この結果より,静的フリッカー視野の正常—異常の判定基準を作成した。

VDT作業による眼精疲労の検討—内田クレペリン精神検査を指標として

著者: 竹本勇 ,   桐生純一 ,   浅見勗 ,   谷口節子

ページ範囲:P.1869 - P.1874

 VDT (Visual Display Terminal)作業者10名の眼精疲労を心因的側面から捉えるために,内田クレペリン精神検査を指標として,一般事務作業者5名を対照にして検索した。それぞれ,2時間のVDT作業,または一般事務作業を負荷作業として行わせ,その前後に内田クレペリン精神検査,眼科的諸検査を行って各パラメーターについて検討した。その結果,検査作業パターンの分析からVDT作業,一般事務作業両者ともが,作業者の心理的ストレス要因になっていることが窺われた。しかしこれを含めて他のどのパラメーターも,VDT作業と一般事務作業の間に有意の差が認められず,短時間のVDT作業による疲労感に及ぼす心因的影響は,内田クレペリン精神検査で捉えられる様な心的変化とは質の異なるものであることが推測された。しかし負荷作業条件の変更を含め,いろいろな状況下にあるVDT作業者に本検査を行うことにより,その心的変化を客観的に評価できる可能性があると思われた。

論文論

悪魔の弁護士/商品名

著者:

ページ範囲:P.1842 - P.1842

 論文を書くときに,特に考按のところですが,自分の論旨に合う文献だけを引用し,反対の立場をする話の紹介にはあまり力をいれたがらないものです。「それが人情」といえばそれまでですが,ちょっと淋しくもあり,論文が一本調子になるために,著者にとり大きな損にもなるのです。
 英語にdevil's advocateという表現があります。ラテン語の言い方が先にあり,ヨーロッパあたりの教養人ならだれでも知っています。「悪魔の弁護士」というのがその直接の意味なのですが,実際には,「自分の説と反対の立場に立ったつもりで議論をしてみる」という態度のことなのです。

Just Arrived

増殖性糖尿病性網膜症に対する硝子体手術,レンゼクトミーおよび後房レンズ移植の同時手術

著者: 桂弘

ページ範囲:P.1843 - P.1843

 増殖性糖尿病性網膜症に対して硝子体手術,レンゼクトミーおよび後房レンズ移植の同時手術を施行した19例21眼について検討した。適応は眼圧が正常で,虹彩新生血管がなく,手術操作に支障をきたすと思われる水晶体混濁を認め,3ヵ月以上後極部網膜の観察が困難な硝子体出血または黄斑部の牽引性網膜剥離の存在する症例とした。術式は,まず毛様体扁平部より,レンゼクトミーを前嚢を残したまま施行し,つづいて通常の硝子体切除,網膜前膜の除去,止血,光凝固を施行した。その後,強膜創を一時的に閉鎖し,角膜輪部切開を行って,後房レンズを前嚢の前に挿入し,ciliary sulcusに固定した。角膜創を縫合し,最後に扁平部より前嚢を中央部のみ切除した。6ヵ月の経過観察中,2眼で網膜剥離をきたし,硝子体手術と強膜バックリングによる再手術を施行した。また,硝子体腔の残存出血のために液体ガス置換術を1眼に,光凝固の追加を1眼に,眼内炎のために抗生物質の眼内注射を1眼に施行した。6ヵ月後の術後視力は16眼(76%)で改善し,4眼(19%)で不変,1眼(5%)で悪化した。また,最高矯正視力は0.1以上が16眼,0.5以上が6眼であった。2眼において残存網膜剥離に関連した虹彩新生血管と角膜浮腫を認めた。

海外文献情報

視神経炎ではフリッカー光の自覚的明るさが異なり,病期でも変わる。

著者: 若倉雅登

ページ範囲:P.1857 - P.1857

 脱髄性視神経炎と圧迫,虚血等による他の視神経症を視機能障害の特徴から区別しえないだろうかというのは大きなテーマである。Aulhornはいわゆる視神経炎(ON)でフリッカーの明るさが正常者より暗くみえることを発見し,上半が照度一定で周波数が可変のフリッカー刺激,下半が被検者によりその照度を調整できるようにした非フリッカー光の投影装置を作り調べてきた。本論文はこの装置を用いてONの急性期には中周波数で自覚的輝度の低下と低周波数で逆に増強が起こることを多数例で明らかにした。そしてONが回復してくるとまず前者が,次いで後者が消失するという,ONの時期により変化することを示した。このようにフリッカーの自覚的輝度はONにおいて特徴的変化を示すばかりでなく,炎症の活動性によるステージ分けにも有用で,予後や治療の評価に際し応用できる比較的簡単な検査法であるとしている。なぜこのような変化を示すかについては,ニューロンのon, offセンターの位相変化で説明しようとしている。

薬の臨床

慢性閉塞性肺疾患を合併する緑内障患者の肺機能に及ぼすbetaxolol点眼の影響

著者: 滝沢敬夫 ,   宮本昭正 ,   佐野靖之 ,   松元俊 ,   木田厚瑞 ,   竹中康雄 ,   中沢浩亮 ,   松原正男 ,   渡辺勝之延 ,   岩崎ゆり ,   北沢克明 ,   米虫節夫

ページ範囲:P.1875 - P.1882

 慢性閉塞性肺疾患(特に喘息)を合併する高眼圧症あるいは緑内障患者に対するbetax-olol点眼液の安全性を検討する目的で3ヵ月間のオープン試験を実施し,次の成績を得た。
 1)試験期間中,0.5%betaxolol点眼液1日2回点眼で有意に眼圧は下降した。
 2)0.5%betaxololの点眼で試験期間中,眼局所に対する副作用はみられなかった。
 3)慢性閉塞性肺疾患を有する患者への0.5%betaxolol点眼液の長期投与で呼吸器機能の低下や臨床所見の悪化は認められず,見るべき副作用はなかった。
 4)これらの結果は,慢性閉塞性肺疾患を合併する高眼圧症あるいは緑内障患者を対象として米国および諸外国で行われた0.5%betaxololの呼吸器に対する安全性試験の結果とも良く一致した。
 以上より,0.5%betaxolol点眼液は慢性閉塞性肺疾患を合併する緑内障患者および高眼圧症患者の眼圧下降に有用であり,全身的副作用のない安全な薬剤であると思われた。

文庫の窓から

眼科学—保利眞直 纂著(その1)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斉藤仁男

ページ範囲:P.1884 - P.1885

 明治初期の眼科はその新知識を欧米の眼科に頼らざるを得なかったが,明治16年(1983)以降,わが国からの欧州留学者が次第に帰国するに至り,ヨーロッパ眼科の直接輸入と彼ら自身による眼科書の翻訳も大いにすすめられた。本書はこうした時期にその先進眼科書を基に保利眞直(佐賀の人,陸軍々医,1860〜1929)氏により実用に適する教科書として著わされた。
 本書の緒言によれば,此書の原稿は保利眞直氏が曽て私立済生学舎(明治9年4月〜明治36年8月開校)の生徒に講授したものといわれ,グレーフェ及びゼーミッシェ氏眼科叢書,ステルワーグ氏,シュワイゲル氏,チェーヘンデル氏,クライン氏,ミッヘル氏,マイエル氏及びシュミット・リンプレル氏等の諸眼科学講本,アルト氏眼科病理解剖,シュワルベ氏組織解剖学,ゴルドラーヘル氏眼科治療書,ミッヘルス氏眼療書,クニース氏眼科提綱,ヘルデンク氏眼科摘要,マウトネル氏眼科講演筆記,同氏屈折機論及び検眼鏡用法,コーン氏色盲論 ドンドルス氏屈折機論等の諸書を参考にして,その要を摘み,傍らグレーフェ氏眼科学宝函,クナップ及びシュワイゲル氏眼科学宝函,チェーヘンデル氏眼科学雑誌,ヒルシュベルグ氏中央眼科雑誌等を渉猟抜萃して,いわば西欧諸大家の著わした諸書の中より実用に適するものを生徒に授けるために著した眼科書であるといわれている。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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