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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科43巻13号

1989年12月発行

文献概要

連載 眼の組織・病理アトラス・38

倒立網膜と正立網膜

著者: 猪俣孟1 岩崎雅行1

所属機関: 1九州大学

ページ範囲:P.1898 - P.1899

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 ヒトやサルの眼球では,角膜,前房,水晶体,硝子体の透光体を経た光は,網膜の内境界膜,神経線維層,神経節細胞層,内網状層,内顆粒層,外網状層,外顆粒層,外境界膜を通過した後に,感覚網膜のもっとも奥深くに存在する光受容細胞に到達して,そこで光として感受される。光は視細胞外節の円盤に存在する視物質を刺激し,受容器電位を発生させる。この電気信号は視細胞の軸索を通り,内顆粒層に核をもつ双極細胞と水平細胞に伝達され,次いで,次のニューロンである神経節細胞やアマクリン細胞に伝えられ,神経節細胞の軸索によって頭蓋内の中枢に伝達される。
 要するに,眼内に入った光は透光体を経て感覚網膜の全層を通過して視細胞に達し,その信号は感覚網膜を逆行して中枢に伝達される。このように,光受容部位が網膜の中で光の通路からもっとも遠い位置にある組織構築を倒立網膜inverted retinaという(図1,2)。倒立網膜では,感覚網膜に存在する種々の細胞が光の通過を妨げることになるので,一見不合理な構造のように思える。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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