臨床報告
急性緑内障発作を生じたIridoschisisの1例
著者:
切通彰1
近江源次郎1
大路正人2
木下茂1
所属機関:
1大阪大学医学部眼科
2大阪労災病院眼科
ページ範囲:P.427 - P.430
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Iridoschisisは,老人に起こる稀な疾患で,虹彩の一部が前層・後層に分離し,さらに前層は幾つかの小片となって後層から剥離し,前房に遊離するものである。今回,我々が経験した患者は65歳の女性で,既往歴,家族歴に特記すべきことはなかった。初診時,右眼虹彩の4時および6時の位置,左眼虹彩の4時から8時の位置の虹彩中央から周辺部にかけて虹彩前葉が剥離し,遊離した前葉は前房内を漂っていた。後葉表面には露出した虹彩実質が認められた。左眼の成熟白内障のため手術を予定し経過観察していたところ,左眼に膨隆水晶体による瞳孔ブロックを生じ,急激な眼圧上昇を認めたため,水晶体嚢外摘出術,眼内レンズ挿入術および周辺部虹彩切除術を施行した。術後の眼圧コントロールは良好で視力も矯正にて0.8を得た。術前のスペキュラーマイクロスコープによる角膜内皮撮影では左眼の細胞数の軽度の減少,大小不同が認められた。術後2年の観察期間中,視力など視機能の低下は認めなかった。Iridoschisisの所見は,両眼ともに不変であった。