文献詳細
特集 第42回日本臨床眼科学会講演集(4)1988年9月 東京
学会原著
色素レーザーによる急性期網膜静脈分枝閉塞症の治療
著者: 坂本道子1 田中隆行1 得居賢二1 戸部圭子1 森圭介1
所属機関: 1群馬大学医学部眼科
ページ範囲:P.741 - P.747
文献概要
出血吸収は22眼で見られ,嚢胞様黄斑浮腫(CME)は15眼中13眼で,CMEを伴わない黄斑浮腫は8眼中7眼で改善した。治療後の視力は,2段階以上の視力改善で10眼,不変が9眼,2段階以上低下が3眼であった。晩期合併症として,光凝固9ヵ月後に1眼に網膜新生血管が生じた。クリプトンレーザー光凝固で見られるような脈絡膜出血,過剰凝固等の合併症はなかった。網膜神経線維層萎縮は6眼で観察され,うち5眼では,光凝固部位に一致していた。
610nmの波長は,急性期網膜静脈分枝閉塞症の出血,浮腫の吸収に従来のアルゴン,クリプトンレーザーと同様に有効であった。また,出血部でも網膜外層の凝固が可能であり,術中の凝固斑が見やすく,術後の凝固瘢痕をコントロールしやすいことが利点と判断された。
掲載誌情報