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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科43巻7号

1989年07月発行

雑誌目次

特集 第42回日本臨床眼科学会講演集(6)1988年9月 東京 学会原著

後天色覚異常用仮性同色表の臨床的評価

著者: 山崎真澄

ページ範囲:P.1081 - P.1084

 眼疾患に伴う後天色覚異常の検出に仮性同色表が用いられているが,その色彩学的検討は少ない。標準色覚検査表後天異常用(SPP−2)について,Zeiss RFC−3分光色彩計を用いて分光測定を行い,色混同と色弁別の二点から検討した。
 青黄異常検出用文字は第三色覚異常の混同色軌跡に良く一致した。赤緑異常検出用の第12表文字4は,混同色軌跡と臨床結果より,青黄異常検出により適していた。
 色弁別の点から,色差△Eは6から24NBSunitを示し,青黄異常検出用文字では△Eと誤読率との間に良い相関関係を認めた。この結果より,△Eの大きさを念頭において検査を行うことによって,後天色覚異常の大まかな程度も推定でき.疾患の経過観察に有効となることが示唆された。

視神経炎(症)におけるカラーパターンVECPによる色覚異常の他覚的検討

著者: 藤本尚也 ,   安達恵美子 ,   柿栖米次

ページ範囲:P.1085 - P.1088

 視神経炎(症)3例を対象に混同色を使用したカラーパターン視覚誘発電位(カラーPVECP)で他覚的に色覚を検討した。カラーPVECPはProtan,Deutan,Tritanのそれぞれのほぼ混同色を2種ずつ使用し,それらを1秒間に3回反転する市松模様を呈示しそれぞれProtan刺激Deutan 刺激,Tritan刺激と称した。P100成分の頂点潜時,振幅を測定した。自覚検査はFarnsworth-Munsell 100-hue test,panel D-15,Lanthonyのdesaturated panel D-15,標準色覚検査表第2部後天異常用(SPP Ⅱ)で施行した。自覚的に赤緑異常を示した例では,カラーPVECPの青黄系より赤緑系の混同色の反応が悪く自覚的に青黄異常を示した例では,カラーPVECPの赤緑系より青黄系の混同色の反応が悪かった。先天性赤緑異常を合併した例では後天性赤緑異常をカラーPVECPによって先天異常と判別できた。カラーPVECPによって視神経炎(症)の色覚異常を赤緑異常,青黄異常別に判別できる可能性が示された。

低視力者のリハビリテーション中心暗点を有するケース

著者: 簗島謙次 ,   石田みさ子 ,   菊入昭 ,   菅野和子 ,   朝鍋まり枝

ページ範囲:P.1089 - P.1092

 中心暗点を有し,視力低下のために読み書きが困難となり,就労継続が難しい症例に対し,遠方視には掛けメガネ式単眼鏡または手持ち式高倍率の単眼鏡を,近見視には,ライト付ルーペや掛けメガネ式単眼鏡,または高倍率の拡大読書器(CCTV)や拡大ワープロ等を処方し,就労継続を援助することを試みた。
 過去3年間に当センターLow Vision Clinic(LVC)において中心暗点を有する患者は50例で,その82%の患者が上記処方と使用訓練により,現職復帰が可能であった。
 回復の見込みが無い低視力者で,特に中心暗点を有する患者のLVCは,視覚障害者の職域拡大に有効である。

自動スクリーニング視野計ATS−85の開発と臨床応用

著者: 大鳥利文 ,   松本長太 ,   宇山孝司 ,   宇山令司 ,   高木和敏 ,   池村英則

ページ範囲:P.1093 - P.1096

 静的量的自動視野計Automatic Tan-gent Screen (ATS−85)を設計開発した。この自動視野計は,小型で比較的低価格であり,thres-hold-related suprathreshold perimetryを行い,異常のある部をthree zonesに分け,比較暗点の感度をdB表示できるうえ,使用法が簡便で,これまでの自動視野計と比べて多くの点で優れている。この自動視野計はscreeningのみならず緑内障や半盲症の早期発見や経過観察に有用である。

原田病におけるオクトパス視野の経時的変化

著者: 森嶋直人 ,   新倉仁 ,   上川床総一郎 ,   山田荒太 ,   鎌田光二 ,   所敬

ページ範囲:P.1097 - P.1101

 原田病患者10例19眼で,オクトパス視野の経時的変化を検討し,以下の結果を得た。
 (1)治療開始時のtotal lossは,平均987±404dBであり,網膜剥離の程度と相関していた。
 (2) Total lossは,徐々に減少し,約2ヵ月後には,平均157±144dBとなった。
 (3)急性期のtotal lossの経過から,回復の遅いⅠ群と回復の速いⅡ群に分けられた。
 (4)Ⅰ群中の2例は遷延例で,回復期にもtotal lossが高く,他の視機能にも異常が見られた。
 (5)治療開始時にtotal lossが高いものは,夕焼状眼底になりやすかった。

学術展示

身体障害児と眼合併症に対するリハビリテーションに関する研究—第1報.身体障害児の眼合併症

著者: 江木邦晃 ,   藤原久子 ,   片山寿夫 ,   鈴木隆司 ,   横田光世 ,   岡本料子 ,   安東省三 ,   谷本智恵子

ページ範囲:P.1102 - P.1103

 緒言 身体障害児は多くの眼合併症を有している。眼科的検査や治療が困難を伴うことから,これらの眼合併症が放置されて,障害児にさらにハンディキャップを背負わせていることも多い。眼合併症に対するリハビリテーションを適切に行うために,学校の定期検診に際して,身体障害児の眼合併症の種類と頻度を調査した。
 方法 養護学校の眼科定期検診時に小学生,中学生,高校生の受診者全員を対象として,眼位,眼球運動,前眼部,眼底の異常を調べた。検査は眼科医,視能訓練士が学校に必要器具を持ち込んで行った。

前房隅角部角度の画像計測

著者: 坂本保夫 ,   高橋信夫 ,   佐々木一之

ページ範囲:P.1104 - P.1105

 緒言 日常臨床において前房隅角の広さの測定は,通常ゴールドマン型三面鏡下の観察ないしは,簡便にはVan Herick法などによって行われるが,これを数値として表現する試みは少ない。特殊撮影法により撮影された前眼部スリット像を画像処理することにより,前房隅角部の角度を具体的な数値として求める方法を,開発したので以下に報告する。
 画像および装置 前房隅角部の角度計測を行うための画像は,著者らが現在開発中の多目的前眼部生体計測装置1)によった。本装置によるスリット像撮影にはScheimpflugの原理が応用されている。スリット長は13mmであり,角膜輪部までの撮影が十分可能である。記録にはCCDカメラを使用しており,撮影と同時にmicro-computerのCRT display上にスリット断面像がデジタル画像(図1)として表示される。得られた画像は直ちにmicro-computerで処理される。

神経網膜炎様所見を呈した神経皮膚黒色症の1例

著者: 金井光 ,   湯田兼次 ,   田中直樹

ページ範囲:P.1106 - P.1107

 緒言 神経皮膚黒色症は,皮膚及び軟膜を含めた中枢神経系の色素細胞が同時に原発性に増殖する一つの母斑症と考えられる先天性の疾患で,1861年Rokitan-skyの報告以来これまでに約50例,本邦では確認できた範囲で11例の報告しかない稀な疾患である。われわれは両側眼底に乳頭浮腫,星芒状白斑を認め,神経網膜様所見を呈した本症の1例を経験した。この様な報告は今まで見られず,貴重な症例と考えられたので報告する。
 症例 4歳男子。

偏心固視と誤診した頭蓋咽頭腫

著者: 八重康夫 ,   山本佐知 ,   中塚和夫 ,   山之内夘一

ページ範囲:P.1108 - P.1109

 緒言 頭蓋咽頭腫は,小児脳腫瘍の中では神経膠腫,髄芽腫に次いで多く,多彩な眼症状を呈すことで知られている。
 今回我々は,強度遠視と偏心固視弱視の診断を下し治療を開始するも,その治療効果に疑問を抱いたことが契機となり頭蓋咽頭腫を発見した。本症例の確定診断がなぜ遅れたかは興味ある内容なのでここに報告する。

後天性風疹による眼筋麻痺の1例

著者: 𠮷澤豊久 ,   今井済夫 ,   芝崎喜久男

ページ範囲:P.1110 - P.1111

 緒言 従来より,風疹は臨症症状が軽く「三日ばしか」といわれ合併症はきわめてまれと考えられている。また,妊娠初期の感染による先天性風疹症候群が多く見られることは知られているが,後天性の風疹による眼合併症の報告はごくわずかである。
 今回,われわれは後天性風疹により眼筋麻痺を呈した症例を経験したので報告した。

筋緊張性ジストロフィの外眼筋ミトコンドリア異常

著者: 伊佐敷靖 ,   川畑悦男 ,   大庭紀雄 ,   中川正法 ,   樋口逸郎 ,   納光弘

ページ範囲:P.1112 - P.1113

 緒言 筋緊張性ジストロフィはミオトニー症候群に含まれる常染色体優性遺伝病で,眼科的にもさまざまな徴候を示す系統疾患である。典型的な症例からえられた骨格筋と外眼筋試料を形態学的および生化学的に検討したところ,ミトコンドリア異常を示唆する所見をえたので報告する。
 症例 検索症例は53歳の男性。縦長の特徴ある顔貌と前頭部の脱毛がみられた。神経内科学的検索により,筋緊張性ジストロフィに罹患していることが確認された。眼瞼下垂,眼球運動障害(内転および外転障害が著しい),点状もしくは星亡状水晶体混濁,黄斑部色素上皮網状ジストロフィがそれぞれ両眼にみられた。この症例の骨格筋(上腕二頭筋)と外眼筋(上直筋)の生検試料を形態学的および生化学的に検索した。まず,形態学的には,光学顕微鏡所見として骨格筋と外眼筋はともに筋線維が大小不同で,中心核と間質結合織の増加が顕著であった。さらに,Gomori trichrome染色によれば筋鞘膜下にミトコンドリア集積をもつとみなされるragged red fiberが多数みられた(図1)。Ragged red fiberの出現率は骨格筋でほぼ20%,外眼筋ではほぼ50%であった。電子顕微鏡所見として,それぞれの試料には巨大化したミトコンドリアや結晶様封入体の形成がみられた。

3種類の網膜色素上皮機能検査の連続記録

著者: 森敏郎 ,   三善恵 ,   田澤豊 ,   F. Marmor

ページ範囲:P.1114 - P.1115

 緒言 網膜色素上皮(RPE)機能の電気生理学的検査法としては,EOGのlight riseが臨床に広く普及している。しかし,この応答は視細胞の興奮を介したRPEの膜電位の変化であることから,視細胞の状態が検査結果に影響を及ぼし,純粋なRPE機能を反映しているとは言いがたい。
 米村らは,高浸透圧液あるいは炭酸脱水酵素阻害剤(Diamox®)の投与によって,網膜常存電位(SP)が低下する1,2)ことを報告し,これらの反応を薬物誘発応答と名付けた。これらの応答は,視細胞の関与がないことからRPE自体の機能を捉えるものと考えられ,また,発生機序がlight riseと異なる3)ことから,それぞれ違ったRPE機能の情報をもたらすと思われる。

眼部腫瘍組織のin vitro NMR緩和時間の測定—その病理組織学的所見との比較検討

著者: 能勢晴美 ,   本村幸子 ,   能勢忠男 ,   坪井一穂 ,   本間一弘

ページ範囲:P.1116 - P.1117

 緒言 磁気共鳴画像(MRI)は組織学的診断の可能性のある画像診断法として近年その臨床応用はめざましいものがある。しかしながら画像の読影は必ずしも容易ではなく,一つ一つの画像の持つ意味を十分に理解するには組織の緩和時間の測定等の基礎的研究が不可欠である。そこで今同我々は摘出した眼部腫瘍のプロトン緩和時間を測定し,その病理組織学的所見と対比させることによりMRIの正しい読影のための知識の確立とさらに腫瘍の生物学的性格に関する新しい情報を得ることを期待し以下の実験を行い知見を得たので報告する。
 方法 眼球内および眼窩内腫瘍の手術中に,その摘出腫瘍組織の一部を直径5mmのNMR用サンプルチューブに採取して密封し,ただちに−75℃で急速凍結して保存した。これを測定の10分前に室温に置き,Bruker社製NMRスペクトラム解析装置MinispecPC−120(常伝導,磁場強度0.47T)を用いてそのT1値ならびT2値を測定した。T1値の測定に際してはpuls sequenceはIR (inversion recovery下法を用い,τの異なる10のtime interva1でエコーを捉え,さらにS/N比を高めるために10回加算を行った。またT2値の測定にはCPMG (Carr-Purce1-Meiboom-Gill)法を用い,8pointでエコーを捉え16回の加算を行った。

片眼性眼球突出を伴う上顎洞血瘤腫について

著者: 齊藤伸行 ,   松井博嗣 ,   新海雅貴 ,   赤見泰成 ,   真砂めぐみ ,   河本道次 ,   亀田典章

ページ範囲:P.1118 - P.1119

 緒言 上顎洞血瘤腫は比較的稀な腫瘍であり本邦では1917年田所1)が記述したのが最初で以後耳鼻科領域にわずかな報告をみるのみである。今回我々は急激に片眼性眼球突出をきたし,悪性腫瘍を思わせる症例の診断治療過程において,いわゆる上顎洞血瘤腫と診断された1症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。
 症例 16歳 男性

眼窩海綿状血管腫の3例

著者: 秋田信宏 ,   佐賀徳博 ,   田川義継

ページ範囲:P.1120 - P.1121

 緒言 眼窩海綿状血管腫は成人にみられる良性腫瘍であるが報告は少ない。今回,我々は病理組織所見により本症の診断を得た3例を経験したので,その臨床像および組織所見につき報告する。
 症例 1.臨床所見:女3例,宅訴は眼球突出2例,腫瘤触知1例であった。眼球突出をきたした2例は初診時視力低下,及び視野検査でマリオット盲点の拡大・イソプターの沈下を認めた。眼球運動は1例で全方向に,1例で上転・内転・外転の制限を認めた。眼底では,2例で視神経乳頭の発赤,網膜静脈の拡張・蛇行,脈絡膜皺襞を認めた。他の1例は腫瘤触知のみで他の所見は認めなかった。CTでは,1例は筋円錐内に,1例は筋円錐内外に,1例は筋円錐外に境界明瞭な異常高吸収域を認めた。全例,眼窩腫瘍の診断で,観血的手術を施行した。1例は経結膜的に,1例はクレイラインにより,1例は経皮的に腫瘍を摘出した。全例,被膜を有し2例では全摘可能であった。1例は可及的全摘であって。手術後全例で,眼症状及び理学的所見の改善を見た。以上をまとめて表1及び図1,2にしめす。

小児の眼窩髄膜腫の1例

著者: 三井健正 ,   井上克洋 ,   湯田兼次 ,   河野宗浩 ,   藤津和彦

ページ範囲:P.1122 - P.1123

 緒言 小児眼窩髄膜腫はまれな疾患で予後不良と考えられている。根治手術を試みた眼窩原発extradural typeの小児眼窩髄膜腫を経験した。病理組織診断は,fibroblastic meningiomaであった。
 症例 患者は9歳女性で,1987年夏より右視力低下を自覚。顔を右に向けて物を見ることに気付かれ,1988年1月に当科を受診した。既往歴,家族歴には特記すべきことはない。眼科所見は右視力光覚,左視力1.2(n. c)。眼位は右外斜視だが,眼球運動制限はなかった。眼球突出度は右13mm,左11mm (Base 84.5mm)。右視神経乳頭耳側は蒼白で右Marcus Gunn瞳孔を認めた。眼圧,前眼部,中間透光体等異常はなかった。右視野は耳側周辺部に残存するのみで,左視野は正常であった(図1)。視束管撮影にて,右視束管の著明な拡大を認めた。hyperostosisの所見は認められなかった(図2)。頭部CTスキャンでは,トルコ鞍右側に造影効果のある腫瘤を認め(図3),腫瘤は視神経にそってintracanalicular segmentよりoptic foramenをへて,intracranial segmentにおよんでいた(図4)。脳血管造影では,右眼動脈起始部の挙上を認めたが,tumor stainingの所見はなかった。血液ホルモン検査では,下垂体機能の異常は認められなかった。神経線維腫症の合併は認められなかった。

眼底の定量立体計測

著者: 中谷一 ,   吉村武晃 ,   鈴木範人

ページ範囲:P.1124 - P.1125

 緒言 眼底をon lineで定量立体計測できる器械を開発し,これを使って正常および緑内障眼の乳頭陥凹の解析を行った。
 方法 等間隔格子縞を角度をつけて眼底に投入し,通常の方向から観測する。乳頭が一様な平面であれば眼底に写った各格子縞は直線として観測されるが,陥凹があればその部の格子縞に位相差が生じる1-4)。この位相差をDIANA動画像処理システムで解析した5)

眼部超音波診断における画像処理と臨床的意義—第22報 眼底後極病変の画像化

著者: 菅田安男 ,   村上喜三雄 ,   福與貴秀 ,   山本由記雄

ページ範囲:P.1126 - P.1127

 緒言 超音波エコーの豊富な情報を画像化し臨床応用しようとする研究過程で眼部の三次元表示法を開発してきた1)。Colemanによる偽レリーフ法も三次元表示法の種であるがDモードとして実用化されている階調表示法の一法であり2)本質的にはBモードの断面表示法とかわらない。我々は単一探触子のらせん走査により採取した眼部のエコーデータからCRT上に任意の方向から見たように三次元像を回転表示する方法,閉空間の体積計測,実際の走査で得られない任意断面の表示法の可能性を示した3)。さらに三次元表示法の応用範囲を拡大するため後極の平面的再構成,立体視用の写真記録を試みた。
 方法と結果 仰臥水浸法にてらせん走査(図1)装置を約1分駆動し三次元データを採取した。

眼科超音波診断に関する研究—第23報 超音波画像のファックスによる遠隔電送診断

著者: 太根節直 ,   橋本眞理子 ,   橋本武光 ,   平田昌也 ,   木村陽太郎

ページ範囲:P.1128 - P.1129

 緒言 技師の撮影した,あるいは診断的に困難な超音波画像を瞬時に遠隔地の中央の病院へ送り,専門家による正確な診断,回答を直ちに仰ぐことができれば,日常の臨床上大へん有用である。今回は通常のファックス装置を用いて,眼科におけるAモード,及びBモードなどのフィルム画像を,出来るだけ階調性を損うことなく,忠実に原画を電送,判読することを試みた。
 方法 使用したファックス装置は今回は送受信共,黒から白までの濃淡を16階調に分けて中間調電送ができるNEFAX-3EX (NEC)を用い,電送した超音波写真は,ZD-252装置,ZD-255装置,及びTopscan装置(ES−100型)等で撮影した眼部のモノクローム,Aモード,及びBモードのポラロイド写真で,別にカラースキャンコンバータで採取したカラー画像も電送した。市内の近距離及び市外の遠隔地へもそれぞれ電送して結果を比較した。電送には15秒を要するのみであった。電送は以下の諸条件で行い,画像を比較した。

Bilateral big blind spot syndromeの1例

著者: 古野久美子 ,   若倉雅登 ,   宮田幹夫 ,   湯田兼次

ページ範囲:P.1130 - P.1131

 緒言 Miller1)やFletcherら2)は,脳圧亢進の見られない片眼性巨大盲斑をbig blind spot syndromeと称して報告している。今回我々は,上記報告例とは異なり巨大盲斑で両眼性に発症し,視神経乳頭周囲に比較的境界鮮明な色変わり所見を呈した症例を経験した。本例は診断に苦慮したが,約4年後に興味深い知見が得られたので報告する。
 症例 33歳,女性。既往歴,家族歴には特記すべきことはなし。

硝子体手術後に高度の遠視化を呈した糖尿病性牽引性網膜症の2例

著者: 池田恒彦 ,   田野保雄 ,   細谷比左志 ,   中江一人 ,   生島操 ,   日下俊次 ,   井上新

ページ範囲:P.1132 - P.1133

 緒言 有水晶体眼の硝子体手術では基底部硝子体の切除は不可能である。増殖性硝子体網膜症において眼内の細胞増殖機転が進行すると,基底部硝子体を中心に輪状に残存した硝子体が前部眼内増殖症の場を提供し前部輪状牽引を生じることが知られているが,増殖性糖尿病性網膜症ではその重要性はまだあまり認識されていない。我々は,硝子体術後に高度の遠視化を呈した糖尿病性牽引性網膜剥離の2例を報告し,遠視化と周辺部残存硝子体の術後の変化との因果関係につき考察を加える。
 症例 症例1は36歳女性。初診時,右眼は黄斑部牽引性網膜剥離,左眼は黄斑外牽引性網膜剥離であった。右眼に対して硝子体手術を施行し以後経過は良好である。左眼もその後牽引性網膜剥離が黄斑部に進行したため硝子体手術を施行した。後部硝子体剥離が少なく周辺部まで網膜と増殖膜の癒着があったため乳頭を中心として放射状に増殖膜の切開を行ったが周辺部に増殖膜が残存した。その後周辺部より再剥離を来したため計5回の手術を行った(図1)。3回目の手術後短期間に約10ジオプトリーの著明な遠視化を呈した。この時細隙灯顕微鏡検査では水晶体後面の彎曲が著明に減少しており(図2),水晶体後面の残存硝子体が網膜面に対して凹面を形成していた。

画像処理装置(TOSPI-Ⅱ)の眼科的応用—その3.カラーパノラマ写真の制作

著者: 鳥飼治彦 ,   大谷省三 ,   吉田博 ,   中村旭男 ,   伊月宣之

ページ範囲:P.1134 - P.1135

 緒言 眼科分野で画像処理技術の応用が進められているが,眼底写真に関しては上分活用されていない。今回,東芝製の画像処理装置TOSPIX-Ⅱを利用したカラーパノラマ写真の作成を行ったので報告する。
 方法 TOSPIX-Ⅱに取り込んだ眼底写真をそのまま重ね合わせると,手作業の貼合わせと同様に境界でずれる。これを最小限に少なくする目的で周辺画像をアフィン変換式で修正した。

連載 眼科図譜・276

傍乳頭網膜毛細血管腫の1例

著者: 前野貴俊 ,   佐藤文平 ,   渡辺千舟 ,   萩原健志

ページ範囲:P.1070 - P.1071

 緒言 網膜血管腫症のうち,von Hippel病,Leber病などはよく知られているが,傍乳頭部の孤立性毛細血管腫は比較的稀であるとされている。Gassは,endo-phytic (内長性)とexophytic (外長性)の毛細血管腫を記載しているが,今回私達は,両方の要素を併せもち,螢光眼底造影によって毛様網膜動脈由来の傍乳頭網膜毛細血管腫と確定診断した症例を経験した。本例では黄斑部を含む続発性網膜剥離を生じ,視力低下を来たしたため,2度のアルゴンレーザー光凝固治療を施行し4年間経過観察をしてきた治療経験より,本疾患に対するレーザー治療の適応・方法などにつき若干の知見を得たので報告する。
 症例 14歳,男子。 初診:1984年5月1日。

眼の組織・病理アトラス・33

シュレム管

著者: 猪俣孟

ページ範囲:P.1074 - P.1075

 前房水の大部分は線維柱帯(小柱網)のぶどう膜網,角強膜網,内皮網を経てシュレム管へ流出する。シュレム管は角膜縁を輪状に取り巻いて存在する全長約35mmの扁平な管である。幅は300〜400μm,高さは約20μmである。シュレム管壁は組織学的に,シュレム管壁内皮細胞,基底板,シュレム管周囲結合組織pericanalicular connec-tive tissueの3層に分けられる。いずれもシュレム管の内壁(前房側)と外壁(強膜側)でその組織構造は著しく異なる。
 シュレム管内壁内皮細胞のもっとも顕著な特徴は巨大空胞の形成である(図1,2)。巨大空胞は前房側とシュレム管腔内の圧力差によって内皮細胞の基底板欠損部あるいは内皮網との接着が弱い部位で,内皮細胞の胞体がシュレム管腔側へ膨隆したものである。巨大空胞の内圧がある一定の高さに達するとシュレム管側へ膨隆した内皮細胞の胞体に細胞を貫通する細孔が形成され,そこから巨大空胞内の房水がシュレム管腔へ流出する。その結果,巨大空胞の圧力が低下して空胞は虚脱に陥って消失する。いわば,巨大空胞は前房側とシュレム管腔との間の弁のような働きをするものと考えられている。シュレム管内壁と外壁の移行部では,内皮細胞に巨大空胞の形成がみられることもあるが,外壁の内皮細胞にはほとんどみられない。

今月の話題

細菌性眼内炎の診断と治療

著者: 秦野寛

ページ範囲:P.1077 - P.1080

 細菌性眼内炎の対応にあたっては,念頭におくべきキーが三つある。それは1.発症動機(外因性・内因性),2.感染部位(房水感染型・硝子体感染型),3.起炎菌種(グラム陽性菌・グラム陰性菌)である。これらの組み合わせで,本症の予後と対応は異なる。要注意は,本症は内因性に硝子体感染をきたすグラム陰性菌性眼内炎で漸増中で重篤である。

眼科薬物療法のポイント—私の処方・7 細菌性角膜炎—典型例

緑膿菌性角膜潰瘍

著者: 大石正夫

ページ範囲:P.1138 - P.1140

 19歳,女性。ソフトコンタクトレンズ装用中の左眼に,数日前より充血を伴い眼痛が出現した。近医を受診し角膜潰瘍の診断で,ゲンタシン点眼液を1日4回点眼して治療したが,眼痛が増強し角膜潰瘍はすみやかに拡大したので,当科に紹介された。
 主訴:左眼痛,充血,眼脂分泌

眼科手術のテクニック—私はこうしている・7

眼内レンズ挿入術—前嚢切開

著者: 荻野誠周

ページ範囲:P.1141 - P.1143

前嚢切開
 ほとんどの症例で環状連続引き裂き法continu-ous circular capsulorhexisを行っている。それにはhydrodissection+ダブルフック法か,12時前嚢のrelaxing incision+hydrodissectionまたは曲げ針を打ち込んで核を浮かしておく操作かの併用が必要である。
 しかし徹照が悪くて,前嚢が裂けていくのを観察するのに困難な場合は最初から,前嚢の裂け目が赤道部に延びてしまった場合には途中からcan-opener法に変更する。

臨床報告

眼内レンズ表面膜様物質の由来と細胞の観察

著者: 岡田潔 ,   佐川宏明

ページ範囲:P.1149 - P.1152

 術後の眼内レンズ前面をスペキュラマイクロスコープで観察した結果,133眼のうち61眼において,術後4日目から225日目までの間に,灰色の無構造な物質が観察され,その一部は,光の干渉によって,ニュートンリング(干渉縞)を生じていた。灰色の無構造な物質は,術後早期では斑状に認められるが,時間の経過とともに,癒合,拡大し,膜状を示しながら,眼内レンズ前面を覆うのが観察された。この経過は,細胞のみられない部位でも観察された。このことから,灰色の無構造な物質は,眼内レンズ表面にみられた細胞が,分泌したものではなく,前房中の物質が吸着したものであると考えられた。

特発性老人性黄斑円孔に対する全周クリプトンレーザー凝固

著者: 真壁禄郎

ページ範囲:P.1153 - P.1155

 3〜6週間前,急激に視力低下を来した特発性老人性黄斑円孔26眼に,黄斑円孔周辺の網膜隆起に沿って全周360°を赤色クリプトンレーザーで凝固した。56〜78歳の男6例,女14例,計20例の患者で,同年輩の健常者に比較して眼動脈圧が有意に高く,著明な起立性低下を示した。26眼中13眼に高度の後部硝子体剥離が証明され,他の13眼に黄斑部限局の硝子体収縮を否定できなかった。
 凝固前の矯正視力は0.02〜0.5,11眼では0.16またはそれ以上であった。凝固後3〜18ヵ月の経過観察で,矯正視力は18眼に改善,1眼に悪化,7眼に不変であった。視力改善は術後1〜2週間で起こり,患者も改善を自覚した。視力改善率(69%)は約10%とされる自然改善に比べて明らかに高率である。

角膜上皮のカラースペキュラーマイクロスコピー像

著者: 坪田一男

ページ範囲:P.1157 - P.1159

 新しく開発された特殊コンタクトレンズ(SMレンズ)を用いると角膜上皮のスペキュラーマイクロスコープ撮影が容易にしかも鮮明に行うことができる。今回この手法を用いて種々の疾患における角膜上皮を観察した。写真撮影は40倍にて高感度カラーフィルムを用いて行った。
 正常角膜上皮には,dark cell, medium cell, bright cellの3種の多角細胞が鮮明に観察された。カラー撮影を行うことによりこの3種の上皮細胞をよりよく識別することができた。円錐角膜では円錐を中心としてたまねぎ状に配列した紡錘形の角膜上皮が観察された。Epikeratophakia術後にはこのたまねぎ状の配列は減少したが,術後7ヵ月においても,異常な反射や核を持つ細胞が観察され,同時にbright cellの増加が認められた。角膜移植や角膜上皮剥離後においても,創傷部位を中心としてこの紡錘形細胞は出現し,病状が回復するにつれて紡錘形細胞出現頻度は減少した。紡錘形細胞,異常な反射や核を示す細胞は正常角膜上皮には存在せず,上皮の異常またはその治癒過程に関連があるものと思われた。角膜上皮のカラースペキュラーマイクロスコピー撮影を行うことにより,スリットランプでは検出できない角膜上皮の微細な変化を観察することができた。

遠隔病巣をもつ中心性漿液性網脈絡膜症—網膜色素上皮剥離との関連

著者: 新城光宏 ,   久保町子

ページ範囲:P.1161 - P.1164

 中心性漿液性網脈絡膜症において,螢光眼底造影上,時に中心窩から遠く離れた個所に螢光色素漏出点を認めることがある。
 螢光眼底造影を施行しえた中心性漿液性網脈絡膜症26例28眼の中に,中心窩から3乳頭径以上離れた個所に螢光色素漏出点を認めた遠隔病巣をもつ症例を2例見出した。いずれの症例も,網膜色素上皮剥離病巣から漏出点が認められている。
 中心性漿液性網脈絡膜症に,網膜色素上皮剥離が併発する頻度は20%前後である。したがって,遠隔病巣をもつ中心性漿液性網脈絡膜症と網膜色素上皮剥離との関連性は,通常の中心性漿液性網脈絡膜症と比較して,より強いのではないかと考えられる。

長期コンタクトレンズ装用の角膜内皮に及ぼす影響—1.その発生について

著者: 上田直子 ,   山本美保 ,   三住千明 ,   平方秀男 ,   深尾隆三 ,   本田孔士 ,   塩田亮一

ページ範囲:P.1165 - P.1170

 長期間(平均14.6年)コンタクトレンズ(CL)を装用した39症例74眼の角膜内皮細胞をspecular microscopeで観察し,次の結果を得た。
 (1)変動係数(SD/mean)は15年以上の装用,年齢30歳以上の症例に,平均細胞面積は20年以上の装用,年齢35歳以上の症例に。日本人正常者平均値から離れて,大きな値を示す症例をみた。
 (2) CL非装用者で,明らかに異常な内皮細胞をみたものはなかった。
 (3)装用状態と内皮細胞異常出現の関係を調べたところ,自覚的訴えの有無・検査時の角膜びらんの有無・CLの装着状態の各々と,内皮細胞異常出現との間には関係はみられなかった。しかし,photokeratographで歪みをみたものは,明らかに内皮細胞異常の出現頻度が高く,長期の steepな装用は,内皮に悪影響を及ぼす可能性が示唆された。

類嚢胞黄斑部浮腫に対する高気圧酸素療法

著者: 石田一成 ,   伊藤光枝 ,   鈴木照 ,   荻野誠周

ページ範囲:P.1171 - P.1174

 黄斑浮腫の認められた網膜静脈閉塞10症例,白内障手術(眼内レンズ挿入)後に合併した嚢胞状黄斑部浮腫(CME)2症例について高気圧酸素治療を施行した。2〜4週間の高気圧酸素治療により,CMEが認められた症例のみ視力の改善がみられた。また,そのうち半数の症例にCMEの再発増悪がみられた。

糖尿病性網膜症の軟性白斑発症に関与する臨床因子

著者: 船津英陽 ,   山下英俊 ,   北野滋彦 ,   堀貞夫

ページ範囲:P.1175 - P.1179

 軟性白斑(綿花様白斑)の発症と臨床因子との関連性について検討し,軟性白斑発症前後における血液網膜柵の透過性の変化についても検討した。
 東大病院眼科糖尿病外来で1年間以上,平均20.6ヵ月間観察し得た,単純性及び増殖前糖尿病性網膜症を有するインスリン非依存型糖尿病患者96人を対象とした。糖尿病性網膜症における軟性白斑の発症には,血糖コントロールが関連しており,全身合併症としては神経障害との関連が強くみられた。経過観察中に軟性白斑が出現した例では,眼科初診時に比べ軟性白斑出現時には空腹時血糖値とグリコヘモグロビン(HbAlc)値の平均値が共に有意に低下していた。血液網膜柵の破綻による透過性亢進が,軟性白斑の出現に関連していた。

副鼻腔嚢胞のMRI所見

著者: 柿栖米次 ,   渡部美博

ページ範囲:P.1181 - P.1184

 千葉大学医学部眼科を受診した副鼻腔嚢胞9例に対して磁気共鳴画像(MRI)を施行した。撮影条件は常電導MRIではP (300),IR (1000,350),SE (1000,60/90)で,超電導MRIではT1強調SE (440,40),IR (1500,500),T2強調SE(1500,80)にて行い,各撮影条件における副鼻腔嚢胞のMRIを検討した。副鼻腔嚢胞9例は前頭洞嚢胞1例,前頭洞・前部篩骨洞嚢胞3例,前部篩洞嚢胞2例,術後頬部嚢胞1例,後部篩骨洞嚢胞2例である。P,T1強調SE,IRでは症例により無信号から高信号領域まで嚢胞の画像は異なっていた。また,IRでは同一嚢胞内で信号領域に異なった部分があり,成分の違いによりT1値が異なっているものと思われた。一方,嚢胞による眼窩内組織への圧迫所見がこれらの画像で判別できた。T2強調SEは撮影した8例で全例均一の高信号領域を示し副鼻腔嚢胞ではT2値が非常に長いものと考えられた。

硝子体混濁と緑内障を伴った全身性アミロイドーシスの1例

著者: 安藤一彦 ,   山下英俊 ,   佐藤孜 ,   望月學

ページ範囲:P.1185 - P.1188

 全身性アミロイドーシスに硝子体混濁,緑内障を合併した69歳男子を経験し,pars plana vitrectomyにより視力の改善を得た。前眼部炎症所見を伴わない硝子体混濁に関しては,重要な鑑別疾患のひとつであると考えられた。

眼内レンズ挿入術後に毛様体—水晶体嚢ブロックによると思われる悪性緑内障が発生した1例

著者: 菅澤啓二 ,   藤田久仁彦 ,   武市吉人 ,   山岸和矢

ページ範囲:P.1189 - P.1192

 周辺虹彩切除術を行った後房レンズ挿入眼の術後,浅前房と高眼圧が発生した症例を経験し,その治療に成功した。
 症例は54歳の男性で,左眼老人性白内障に対し水晶体嚢外摘出術と後房レンズ挿人術を行い,同時に周辺虹彩切除術を行っていた。手術後1日に浅前房を認め,手術後10日に眼圧上昇,pupil captureの状態となった。隅角には全周に癒着を認めたので,続発性閉塞隅角緑内障と考え,手術後13日に後房レンズ整復と隅角癒首解離術を行った。再手術翌日に再び浅前房と眼圧上昇を来たした。再手術後3日に周辺虹彩切除部からYAGレーザー照射により後嚢及前硝子体膜切開術を行った。数分後に深い前房となり,再手術後7日には正常眼圧を得た。その後は順調な経過をたどった。
 この症例は嚢外摘出術,後房レンズ挿入後に発生した毛様体—水晶体嚢ブロックによる悪性緑内障が発生したものと推察した。

4分の1周アルゴンレーザーtrabeculoplastyの成績

著者: 森樹郎 ,   竹中康雄 ,   白土城照

ページ範囲:P.1193 - P.1197

 隅角の1/4周に25発のレーザーを照射する1/4周argon laser trabeculoplasty (ALT)を原発開放隅角緑内障61眼,嚢性緑内障10眼,計71眼に対して行った。うち33眼では,2回目の1/4周照射を他の部位に追加した。術後経過観察期間は23から36ヵ月,平均28.2ヵ月であった。最終観察日に術前と同等以下の投薬内容で 20mmHg以下の眼圧コントロールが得られた症例は,原発開放隅角緑内障で33眼(54%),嚢性緑内障で8眼(80%)であった。生命表法(Kaplan-Meier)により求めた術後36ヵ月の眼圧コントロール率は,原発開放隅角緑内障で53%,嚢性緑内障で80%であった。これらの値は,先に行った1/2周ALTのものと有意差がなかった。また眼圧上昇に代表される術後合併症は,1/2周ALTのものに比べて頻度,程度ともに少なかった。1/4周ALTは1/2周ALTとほぼ同等の効果をもち,かつ合併症が少ないことから,より有用な治療法であると考えられた。

Report from Overseas

ヒト角膜のサル角膜への全層角膜移植

著者: 李辰 ,   徐錦堂 ,   孔繁聖 ,   李佳茘

ページ範囲:P.1199 - P.1204

緒言
 近来eye bankの普及化,角膜graftの保存方法及び手術器械と手術技術の進歩で,ヒトの同種全層角膜移植の成功率は大いに向上した。しかし,なおいくつかの国では宗教的,または他の原因でeye bankの設立はまだいろいろな困難があり,角膜graftの入手が容易でなく,何時でも即時に患者の手術要求に満足できない所がある。それでは,もし緊急手術の場合に,即時に同種角膜graftが手もとにない場合,何かの種類の異種角膜graft使用の可能性がないものか? すなわち異種全層角膜移植は成功の可能性があるかどうか?この意味で,私たちは異種角膜移植の研究の第一歩として,1983年からヒト角膜graftのサルへの全層角膜移植の実験を開始し,そのうち移植graftが1年以上透明保持し得た5例に対して長期観察を行い,また移植graftの角膜内皮のspecular microscope及び走査電顕検査を行ったので,その結果を報告する。

Group discussion

地域予防眼科

著者: 小暮文雄

ページ範囲:P.1205 - P.1207

 座長小暮(獨協医科大学)で開始。今回はWHOの眼科専門官である紺山先生を迎えて会を開催でき,多くの助言を頂きたいと紹介があり開会された。
 第1席石田誠夫・他(聖路加国際):レーザー機器の日常診療ヒでの効率化,Argon及びYAGレーザーの使用頻度は日常あまり多くなく,特にYAGにおいてそうである。コストの面から有効利用を考え,Argonレーザー装置の光学部に写真撮影装置を付けて前眼部撮影及び細隙灯顕微鏡写真撮影に使用するように改造,YAGの光学部を簡単に交換できるように改造し,日常診療においてSlit Lampとして使用するようにした。これによって日常診療に頻度高く利用できるようになった。

糖尿病性網膜症

著者: 福田雅俊

ページ範囲:P.1207 - P.1210

1.糖尿病のコントラスト感度(MTF)
川本昌代・新美勝彦(保健衛生大)
 糖尿病者115眼(網膜症群85眼,非網膜症群30眼,平均年齢55.4歳)と正常者10眼(平均年齢54.5歳)のコントラスト感度を高田MTFを使用して測定した。1)非網膜症群は高周波域,網膜症群(大半が単純型)では全周域でMTFの有意な低下あり。2)下網膜症群と非網膜症群との間には1.5・4.0cycle/degで有意差,20cycle/degでは両者共に低下あり。3) HbA110%以上群では非網膜症で1.5・4.0 cycle/degに,網膜症群では全域に有意差あり.4)血糖値,罹病年との関連なし。5)非網膜症の薬物療法群に1.5・4.0 cycle/degで有意の感度低下あり。従って糖尿病者のMTF低下は網膜病変の合併に加えて,コントロール,管理方法などの全身状態も影響を与えていると結論した。

論文論

有効数字/天地

著者:

ページ範囲:P.1211 - P.1211

 「初診時の眼圧は24.34mmHg」といった記述が,以前よく見られたものです。眼圧を小数点以下2桁まで測定するなど,まさに精密そのものの大事業なのですが,この数字,少し考えると,なんだかおかしいのです。
 種は簡単です。シェッツの眼圧計で,5.5gで針の読みが3.0ならば,換算表ではこうなっているだけのことです。眼圧はそもそも血圧の搏動と同期して,プラスマイナス半目盛り程度はいつも揺れているのが普通なので,小数点以下の数字はまず意味がないと考えるのが常識というものです。

文庫の窓から

結膜病図解

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斎藤仁男

ページ範囲:P.1212 - P.1213

 「聞きたるは読みたるよりも了解し易く,又百たび聞きたるは一たび見たるに如かず……主として視診に依って診断するを要する疾患は一層図に就きて之を説明するを利ありとす」(石原忍著「最新トラホーム図説」)とあるように,眼病図は中国伝来の占い眼科書(「銀海精微」「眼科全書」等)にも理解を深め易いように線描きではあるが絵図が挿入されている。これらはわが国に渡来してさらに詳細に色彩の手が加えられ,図譜,図鑑の形で大いに発達した。近世日本の眼科図譜の優れたものとして,黒木可亭の「済明図鑑及附録方論」(享和元年),宮本周説伝「眼科図譜」(筆者未見),本庄普一作「眼科錦嚢」附図(筆者未見)等はその一例であろうか。
 これらの図譜の発達は病状の理解を容易にしたとともに,臨床的観察がより的確に行えるようになったあかしとみることができるといわれている。これらの眼病図には簡単な図説が附されていたが,一類一症の分類法による眼病各別の病状説明であった。一つの眼病を選んでその病変を記録し図解するようになったのは近代眼科が直接行われるようになってからのことといわれている。本書はそうした明治20年代前半に行われた眼病図解書の第1書とみられるもので,著者はその緒言に次の如く述べている。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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