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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科44巻11号

1990年10月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・291

ガス白内障を再発した1例

著者: 駒井昇 ,   荻野誠周

ページ範囲:P.1728 - P.1729

 緒言 ガスタンポナーデは硝子体手術に必要不可欠な手段であるが,併発症として一過性の羽毛状の後嚢下白内障をおこすことがある1〜3)。比較的詳細な報告は池田ら3)のものしかなく,臨床所見,経過など記載は未だ不十分である。我々は二度のガスタンポナーデを行い,その度にガス白内障をきたした症例を経験した。
 症例 49歳男子ID 8903042-3。1989年3月16日初診,前年12月以来3度,裂孔原性網膜剥離の復位手術を受けた。増殖性硝子体網膜症D1,眼前手動弁。水晶体混濁はほとんど認めなかった。

眼の組織・病理アトラス・48

網膜上膜

著者: 向野利彦 ,   猪俣孟

ページ範囲:P.1732 - P.1733

 さまざまな網膜硝子体境界の病変において,内境界膜上に細胞が出現することが病理組織学的に知られている。日常の臨床において,黄斑部を中心に網膜内境界膜上に膜状物をみることは多く,セロファン黄斑症,網膜前黄斑線維症,網膜前膜などと呼ばれてきた。最近は網膜上膜と呼ばれる傾向にある。網膜上膜は網膜血管病変,眼内炎症,網膜剥離手術,穿孔性眼外傷,慢性変性疾患などに続発してみられるが,原疾患を明らかにできない特発性もある。
 検眼鏡的には,網膜表面にうすい線維状の膜を形成し,軽度の反射亢進を示す例(図1)から,明瞭な膜を形成するもの,さらに膜の収縮・牽引により雛襞を形成し,網膜血管の屈曲,蛇行を示す例(図2)までさまざまな段階がある。

今月の話題

Leber's Congenital Amaurosis

著者: 濱田恒一

ページ範囲:P.1735 - P.1738

 小児視覚障害の4大原因の一つとされているLeber's Congenital Amaurosisにつき,具体的に症例をあげながら,その疾患概念を述べた。

眼科薬物療法のポイント—私の処方・22

水痘性角膜炎

著者: 秦野寛

ページ範囲:P.1767 - P.1768

症例提示:2歳,女児,主訴:右角膜混濁
 兄の水痘にひきつづき2月16日より水痘に12日間罹患した。3月20日右眼結膜充血,3月30日右角膜混濁に気づき当科へ紹介となった。角膜はびまん性表層角膜炎と円板状角膜炎を認め,前房は詳細不明であった。実質浮腫の軽減につれて免疫輪が出現した。

眼科手術のテクニック—私はこうしている・22

Setonによる血管新生緑内障の治療

著者: 千原悦夫

ページ範囲:P.1770 - P.1771

 眼科臨床でもっとも治療が困難な緑内障のひとつに血管新生緑内障(図1)があげられる。これは網膜中心静脈閉塞症,糖尿病性網膜症や網膜剥離などによる眼球後極部の虚血性病変部から血管新生因子が放出され,血管の新生が起こり発症してくるものである。

臨床報告

難聴を伴った遺伝性視神経萎縮の兄弟例

著者: 井出賀洋子 ,   杉浦寅男 ,   宮澤裕之

ページ範囲:P.1739 - P.1743

 進行性視神経萎縮に感音性難聴を合併した34歳と28歳の兄弟例を経験した。全身検索でも他の合併症は検出されず,家族歴で同家系に同様の症状を呈するものが他に3人,計5人認められ,遺伝性疾患と考えられた。またその遺伝形式は,常染色体優性遺伝が疑われた。遺伝性視神経萎縮をきたす疾患群で,他の全身的合併症を伴う疾患は種々知られているが,特に難聴のみを合併している症例の報告は稀である。先天性難聴を伴った常染色体優性遺伝による進行性視神経萎縮の一家系と考えられた。

CHARGE associationの6例

著者: 片山真理子 ,   尾関年則 ,   馬鳴昭生

ページ範囲:P.1745 - P.1749

 先天性ぶどう膜欠損35例中,CHARGEassociationと診断された6例について報告した。脈絡膜欠損は,両眼に存在したものが4例,片眼だけのものが2例あり,虹彩欠損は1例のみであった。合併したぶどう膜欠損以外の眼先天異常は,瞳孔膜遺残が2例,小眼球が1例,顔面神経麻痺による兎眼が1例であった。合併する全身奇形は耳介奇形,成長発育遅延,精神運動発達遅滞が多く,後鼻孔閉鎖は1例のみにみられた。6例中4例に家族検査を施行したが,4例とも孤発例と思われた。CHARGE associationの頻度は予想以上に多く,また後鼻孔閉鎖や心疾患などは生命予後と密接な関係があるため,この疾患の存在に留意することが眼科医にとって必要である。

白色瞳孔に対するCTと磁気共鳴画像の有用性

著者: 西野和明 ,   前川浩 ,   竹田宗泰 ,   中川喬 ,   玉川光春 ,   竹田眞

ページ範囲:P.1751 - P.1755

 白色瞳孔を呈する網膜芽細胞腫2症例3眼,第一次硝子体膜遺残(PHPV)3症例3眼,Coats病1症例1眼の計6症例7眼に対してCTと磁気共鳴画像を行い,その鑑別診断上の有用性について検討した。CT検査は石灰化の描出に優れており,網膜芽細胞腫の2症例3眼全眼に石灰化が描出された。MRIのT1強調画像では,眼内病変,特に腫瘍の形態の描出に優れていた。T2強調画像では,網膜芽細胞腫の信号強度のみがhypointenseに描出された。しかしPHPV, Coats病ではhyperintenseであり,この点が鑑別に役立った。T2の信号強度は,細胞芽細胞腫と他の白色瞳孔を鑑別するのに適していると判断された。

外傷性前房出血に合併した角膜血染症の1例

著者: 佐々木次壽 ,   菅澤啓二 ,   浅井源之 ,   越生晶

ページ範囲:P.1757 - P.1760

 外傷性前房出血に合併した角膜血染症の1例を報告した。その原因は受傷後4日目に発生した二次性前房出血と続発性緑内障であった。強角膜切開創から凝血塊の圧出を行ったにもかかわらず,角膜血染症による角膜の混濁の消失には約17か月の長期間を要した。
 以上のことから外傷性前房出血を認めた場合,受傷後1週間は安静を保ち,角膜血染症の原因となりやすい二次性前房出血の防止に努めることが重要であることを強調した1)

頸動脈ならびに眼窩内眼動脈血流のDoppler flowmetry

著者: 橋本武光 ,   橋本真理子 ,   太根節直

ページ範囲:P.1773 - P.1777

 超音波カラーパルスドプラ法を用いて総頸動脈ならび眼窩内眼動脈血流のDoppler flow—metryを行い,血流速度と流量を計測した。正常者23名における年代別の総頸動脈の最高流速では,若年で速く,収縮期の前半に鋭いピークをもち,この期にほとんどの血流が流れるのに対し,加齢に伴い血流速度は低下し,高齢者では収縮期全体で血流が保たれた。これは末梢血管抵抗の増大を強く反映した結果と考えられた。内頸動脈の狭窄や,脳梗塞などの頭蓋内血管病変のある症例では,患側の頸動脈と眼動脈の血流の低下が見られた。眼窩内眼動脈と短後毛様動脈等の末梢循環の血流動態は,Bモードでの血流イメージをガイドにカラーパルスドプラ検査を用いることで,はじめて正確に定量化して分析し得た。

トラベクロトミーが有効であった虹彩振盪による色素性緑内障

著者: 飯田高志 ,   松村美代 ,   後藤保郎

ページ範囲:P.1778 - P.1780

 亜脱臼水晶体による虹彩振盪が原因で隅角に色素沈着を起こし,そのために続発開放隅角緑内障を起こしたと考えられる5歳女児の症例を経験した。
 視神経萎縮,視野狭窄を認めたが,自覚症状はなく,たまたま発見された。
 薬物療法のみでは,眼圧コントロール不良で,トラベクロトミーのみを施行した。
 術後眼圧は,すみやかに降下し,交感神経β遮断薬点眼のみで,術後2年を経過して,眼圧コントロール良好である。
 トラベクロトミーは,線維柱帯を切開して,房水流出抵抗を低下させることにより,原発性,続発性を問わず,色素性緑内障に有効であると考えられる。

Wyburn-Mason syndromeと考えられた乳児例

著者: 安積淳 ,   宮澤裕之 ,   山本節 ,   勝盛紀夫

ページ範囲:P.1781 - P.1784

 乳児期に発見され,視力予後のきわめて不良であったWyburn-Mason syndromeと思われる一例を経験した。
 正期産,正常体重で出生した男児に,生後間もなくより右眼の結膜充血が気づかれていた。生後3か月の当科初診時には,視力はPL法にて右0.005で,右拍動性眼球突出と右眼底のつた状血管腫,および網膜の出血と滲出物を認めた。頭部CT検査において右側眼窩および頭蓋内の血管異常と考えられる所見があったため,臨床的にWyburn-Mason syndromeと診断した。その後右眼に網膜剥離を併発し,生後6か月には右眼光覚(−)となった。
 乳児期に発見されたWyburn-Mason syn-dromeの報告はこれまでにみあたらず,本症例は最年少報告例と考えられた。先天性網膜動静脈吻合は続発性に網膜剥離をきたす可能性があり,慎重な経過観察が必要であると思われた。

経強膜的網膜剥離手術による眼球形状の経時変化

著者: 佐藤恵美子 ,   谷原秀信 ,   天野浩之 ,   植田良樹 ,   鈴木聡美 ,   石郷岡均 ,   本田孔士 ,   河野眞一郎 ,   根木昭

ページ範囲:P.1785 - P.1790

 裂孔原性網膜剥離に経強膜的網膜剥離手術を施行された146例150眼について眼球形状変化を計測した。術後早期にはエクソプラント法での眼軸長は−0.8%の減少,輪状締結術では1.6%の増加を認めた。また輪状締結術では術後1年でも眼軸長増加傾向が遷延する症例があった。角膜屈折度は,術式にかかわらず,0.5〜0.8%の軽度増加傾向を示し,年齢やバックリングの材質は眼球形状には大きな影響はなかった。

Macular puckerに対する硝子体手術の経験

著者: 横井匡彦 ,   加瀬学 ,   堀本みどり ,   粂田信一 ,   長田廉平 ,   加藤富士子

ページ範囲:P.1795 - P.1799

 Macular puckerに対する硝子体手術の6症例7眼を経験した。Macular puckerの原因は,特発性のもの3例3眼,網膜剥離手術に続発したもの2例2眼,ターソン症候群に続発したもの1例2眼であった。手術によって5眼に視力が改善した。術後の視力回復経過を詳細に検討したところ,術後1か月から2か月の間に急激な視力上昇がみられ,3か月以降では大きな変動がなかった。術後視力は,網膜上膜の形態学的変化から予測できず,螢光眼底撮影による網膜の器質的変化の検索が重要であった。

蚕蝕性角膜潰瘍に対するkeratoepithelioplastyと表層角膜移植の治療成績

著者: 天野史郎 ,   佐藤孜 ,   木村内子 ,   澤充 ,   谷島輝雄

ページ範囲:P.1801 - P.1804

 難治性の蚕蝕性角膜潰瘍に対して,ker—atoepithelioplasty (KEP)と表層角膜移植lamellar keratoplasty (LKP)を同時に行った4例5眼の術後成績を報告する。観察期間は8か月から3年,平均2.0年であった。術後2眼では角膜中央部の透明治癒がえられた。他の3眼では,上皮移植片の融解と,表層移植を行った部分の上皮欠損,潰瘍の再発などを生じ,最終的に角膜全面が結膜組織で覆われた。これらの症例でも,痛みの軽減,角膜穿孔の予防などの意味で手術は効果があったと考えられた。

眼症状で初発した肺癌の眼窩内および脈絡膜転移例

著者: 藤澤直子 ,   大嶋英裕 ,   宮沢裕之 ,   井上正則 ,   山本節

ページ範囲:P.1805 - P.1808

 左眼瞼腫脹を初発とした肺癌の,眼窩内および脈絡膜転移と考えられる43歳女性の一症例を報告した。
 頭部CT scanで左眼窩内に腫瘍陰影を認め,また,胸部X線撮影にて左肺門部に異常陰影がみられたため全身検索を行った。肺生検の結果と脈絡膜にも転移がみつかったことより,本例は肺癌の眼窩内および脈絡膜転移であると考えた。
 本邦では,肺癌の脈絡膜転移の報告は稀であるが,肺癌の増加と共に,今後このような症例は増加していくと考えられ,注意が必要であると思われる。

カラー臨床報告

感覚網膜の障害を伴った網膜のgrouped pigmentationの1例

著者: 島田宏之 ,   新行内文夫 ,   川村昭之 ,   湊ひろみ ,   松井瑞夫

ページ範囲:P.1791 - P.1794

 40歳の男性で,右眼眼底にgrouped pig—mentationを認めた1例を報告した。眼底の耳側半分に境界明瞭で,平坦な,黒褐色の色素斑を多数認め,色素斑は群生傾向を示し“bear tracks”あるいは“footsteps in the snow”と呼ばれる特有な所見が認められた。EOGとERG検査は共にsubnormalを示し,視野検査では色素斑に一致して感度の低下を認めた。このことから,網膜色素上皮細胞の機能異常と,これに続発した,病巣部の感覚網膜の障害を生じているものと推測した。

文庫の窓から

全身眼病論

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斉藤仁男

ページ範囲:P.1761 - P.1762

 眼底疾患の九分九厘までが全身病に関連していて,眼疾患を全身病の一部として診なければならなくなっているといわれているように,眼病と全身病,眼病と他疾患との関係については十分な知識と理解が必要である。
 本書はこうした眼病と全身病との関係について,河本重次郎博士(1859〜1938)が長年にわたる臨床上の経験と諸書の説により著わされたもので,この種の専門書としてわが国では初めての著作と思われる。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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