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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科44巻13号

1990年12月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・293

レーザーイリドトミーと汎虹彩光凝固術後に眼球癆に陥った激症型ベーチェット病

著者: 砂川光子 ,   栗本康夫 ,   山本美保

ページ範囲:P.1918 - P.1919

 緒言 ぶどう膜炎患者に,観血的手術を施行する際,発作を誘発することは,よく経験する。われわれも,種々の眼内手術後の発作について報告している1〜2)。ベーチェット病患者で,虹彩膨隆に対してレーザーイリドトミーを,虹彩ルベオーシスに対して汎虹彩光凝固術を施行したところ,発作を誘発し,ついには眼球癆に陥った症例を経験したので,一連の細隙灯写真とともに報告する。
 症例 25歳男性。1985年より徐々に両眼の視力低下を自覚し,近医にてベーチェット病と診断治療されるも,急激に視力低下が進行したため,1987年12月11日本院を紹介され受診した。

眼の組織・病理アトラス・50

隅角発育異常緑内障・晩発型

著者: 田原昭彦 ,   猪俣孟

ページ範囲:P.1922 - P.1923

 隅角発育異常緑内障・晩発型は前房隅角の発育が不完全なために発症する緑内障で,早発型よりも遅れて,眼球壁が硬くなった4歳以後に発症する。従来,若年緑内障と診断されていたものの大部分がこのタイプに分類される。
 自覚症状に乏しく,軽度の眼痛,霧視,虹輪視を時々自覚する程度である。視野異常や視力低下に気づいて眼科を受診し,本症と診断される症例も多い。角膜径はほぼ正常で,前房の深さは正常か,やや深い。眼圧は25〜40mmHg程度で,60mmHgを越えるような高眼圧はまれである。視機能は発症初期には良好であるが,異常に気づいて受診した症例では,高度の視野異常,視力低下を来している場合も少なくない。このような症例では,緑内障性の視神経乳頭陥凹と萎縮とが認められる。隅角検査で隅角形成不全を認める。本症では隅角陥凹の形成が悪く,毛様体帯がほとんど認められないか,その幅が著しく狭い症例が多い(図1)。

今月の話題

眼内レンズ挿入手術の術後合併症—後房レンズ,術後早期と晩期

著者: 前田利根 ,   樋田哲夫

ページ範囲:P.1925 - P.1928

 眼内レンズ挿入手術の術後合併症を早期合併症と晩期合併症に分け,現在一般的に受け入れられていると思われる諸家の報告をもとに記述した。種々の合併症の原因とその対策に触れた。

眼科手術のテクニック—私はこうしている・24

線維柱帯切除術(1)

著者: 新家真

ページ範囲:P.1957 - P.1959

Trabeculectomyを選択する理由
 観血的な成人の緑内障に対する手術法としては,現時点では線維柱帯切除術(trabeculectomy)が,世界の標準術式となっている。しかし,本邦では欧米人に比べていくつか報告があるように,合併症の割には成績がよくないことを理由に,できたらしたくない手術の範疇に入れられている場合があるようである。われわれがtrabeculotomyを選択して行う理由は,①他の術式,trabeculotomyでは眼圧が15mmHg以下に調整されることが少ない。ある程度以上進行した症例では(すなわち手術適応となることが多い),眼圧のコントロール目標は15mmHg以下が条件となるため,現時点ではtrabeculectomyを選択せざるを得ない。②代謝阻害剤5-Fluorouracil(5-FU)の術後局所使用により,術後成績を従来より大幅に改善することができ,少なくともtrabeculotomyに比べて合併症の多い分に見合う,眼圧下降を期待できる,という2点である。

眼科薬物療法のポイント—私の処方・24

真菌性アレルギー性結膜炎

著者: 石橋康久

ページ範囲:P.1960 - P.1961

 患者は19歳の男性。軽度の結膜充血と通年性(特に春から夏にかけてひどくなる)の眼の癌痒感を訴えて来院した。家族歴には特記すべきことはなかったが既往歴として幼少の頃,軽い気管支喘息と考えられる症状があり治療を受けたことがある。
 主訴:両眼の結膜充血,掻痒感

臨床報告

ステロイド非投与による実質型角膜ヘルペスの治療

著者: 桑山信也 ,   下村嘉一 ,   松田司 ,   濱野孝 ,   眞鍋禮三

ページ範囲:P.1929 - P.1933

 実質型角膜ヘルペス13症例13眼に対し,ステロイド非投与でアシクロビル点滴静注(750mg)を10日間連日投与(6眼),あるいは完全分子型グロブリン製剤点滴静注(2.5g)を5〜12日間連日投与(7眼)した。併用薬剤として抗ウイルス薬と抗生物質の点眼を用いた。
 全例に角膜浮腫と毛様充血の軽減がみられた。7例(7眼)に角膜ヘルペスの再発回数の減少が認められた。
 実質型角膜ヘルペスの治療に際し,ステロイド非投与にても良好な結果が得られた。

中脳病変による眼球偏位に対する斜視手術

著者: 大月洋 ,   小西玄人 ,   長谷部聡 ,   田所康徳 ,   渡辺聖 ,   岡野正樹

ページ範囲:P.1935 - P.1939

 3名の松果体近傍腫瘍,1名の視床出血の中脳病変が原因の眼球偏位に対して斜視手術を施行した。上下方向の眼球運動障害と輻湊障害を認め,1症例を除き脳外科の治療終了後最低2年以上経過を観察しえた症例を対象に,偏位に変動がなくプリズムで複視が消失する状態を確認した後に手術に踏み切った。手術の結果,偏位は減少したが眼球運動障害には改善がなかった。プリズムの補正により3名に両眼単一視視野が獲得できた。積極的に両眼視に対するリハビリテーションを行う意味で中脳病変による核上性の眼球偏位に対して,斜視手術は有用と思われた。

仮性同色表の自動提示装置に関する研究—4.小型化の試み

著者: 深見嘉一郎

ページ範囲:P.1941 - P.1943

 色覚検査に際して,仮性同色表を提示する場合に守るべき条件を満足させるための自動提示装置を試作した。1号機は大き過ぎ,2号機は満足に作動したがやや大きかった。そこで小型化するために視標をリング式にしようとして3号機を試作したが,満足な結果を得られなかった。
 今回は提示視標をドラムの外面に貼り付けて横幅を狭くし,表面鏡を使って検査距離を短くして,器械の長さを短縮した。これにより今回の4号機はほぼ満足すべき結果を得た。残る2,3の問題を解決すれば,この方式の色覚検査器を完成することができよう。

糖尿病患者に生じた両眼性一過性乳頭浮腫

著者: 高田百合子 ,   笹木右子 ,   金井清和 ,   宇山昌延

ページ範囲:P.1949 - P.1952

 糖尿病患者の両眼に一過性の視神経乳頭浮腫をみた。42歳男性が両眼の霧視を訴え,10年来の糖尿病はインスリン治療中であった。視力は両眼1.2。視野はマリオット盲点の拡大と鼻下側の周辺部狭窄をみた。眼底は乳頭は境界不鮮明で発赤腫脹し,線条出血がみられ,後極部には小出血や硬性白斑が散在していた。螢光造影では後期に色素の漏出がみられた。血糖値は216mg/dl,HbA1c 8.1%であった。2週間後より乳頭の腫脹は消退しはじめ,1か月半後には萎縮した。脳神経学的検査にて異常はなかった。これらより糖尿病性乳頭症と診断したが,末期に視神経萎縮が高度となったので前部虚血性視神経症との関連を考察した。

粟粒結核の治癒30年後に眼結核が再発した1例

著者: 鈴木一作 ,   高橋茂樹 ,   斉藤仁 ,   村田正敏

ページ範囲:P.1962 - P.1967

 46歳の女性に,粟粒結核の治癒30年後,眼結核が再発した。初診時の右眼底には,網膜下出血を伴う隆起性病変と色素沈着を伴う網脈絡膜萎縮巣があり,両眼底には小さな斑状萎縮巣が多数みられた。ツベルクリン反応は15×14mmであった。ツベルクリン注射後,右眼の前房と硝子体中に炎症細胞が多数出現し,右眼底の隆起性病変は約2倍に拡大した。抗結核療法後,右の前部ぶどう膜炎の所見は消失し,右眼底の隆起性病変は次第に瘢痕萎縮化した。本症例の眼底所見は,conglomerate tuberculosisの活動病変および陳旧病変と,acute miliary lesionの陳旧病変と判断された。

限局性網脈絡膜病変を合併した若年性関節リウマチの1例

著者: 樋口裕彦 ,   木村真也 ,   向野和雄 ,   谷田部道夫

ページ範囲:P.1969 - P.1973

 眼底に限局性網脈絡膜病変を伴う全身発症型若年性関節リウマチが10歳女児にみられた。右眼は乳頭部下方,左眼は血管アーケード付近に,網膜の浮腫を伴う白色の網膜下滲出性病変が存在し,網膜血管炎を伴っていた。アスピリン療法によって右眼の病変は瘢痕治癒し,左眼の病変は消失した。一般に眼科的合併症が少ないといわれている全身発症型若年性関節リウマチにおいても,網脈絡膜病変を含む眼科的検索の必要性があること,また若年性関節リウマチにおける網脈絡膜病変において,視力に障害のない症例では,アスピリンによる治療が可能であると考えた。

球結膜下出血の眼底および基礎疾患に関する検討

著者: 荒井優子 ,   高橋扶左乃 ,   阿部百子 ,   吉本弘志

ページ範囲:P.1979 - P.1982

 特発性球結膜下出血の基礎疾患を追求するため,140症例(年齢56.0±16.9歳)について,眼底所見,耐糖能,血液凝固能などを検討した。眼底検査をした112例中9例(8.0%)に網膜静脈分枝閉塞症を,13例(11.6%)に糖尿病性網膜症を認めた。すでに判明している16例の糖尿病例に加えて,75gブドウ糖経口負荷試験を施行した47例(年齢58.2±11.4歳)中6例(12.8%)に糖尿病を,25例(53.2%)に境界型糖尿病を検出した。血小板凝集能を測定した14例中10例が亢進していた。血清コレステロールを測定した34例中19例(55.9%)に軽度高脂血症を,また全体の1/4に高血圧者を確認した。以上より,球結膜下出血を発見した場合,眼底観察を含め糖尿病の十分な検査が必要であると考えられた。

眼サルコイドーシスでの前眼部炎症の定量的解析—第1報 病期と炎症の病勢

著者: 佐々木洋 ,   大原國俊 ,   大久保彰 ,   宮本孝文

ページ範囲:P.1983 - P.1986

 前部ぶどう膜炎を呈したサルコイドーシス67例について,レーザーフレア・セルメーターで前房フレアーを経時的に測定し,各症例の前房フレアー最高値を病期ごとに比較した。病期分類は,眼病変発症後1年未満を急性活動期,活動性病変が発症後1年以上持続していた時期を慢性活動期,眼病変沈静後1年以上経過していたものを陳旧性寛解期とした。急性活動期と慢性活動期,および陳旧性寛解期の前房フレアーはいずれも正常者に比較して有意に高い値を示した。急性活動期と慢性活動期の間に有意差はなかったが,両者とも陳旧性寛解期より有意に高い値を示した。陳旧性寛解期では,活動性眼病変の罹患期間が1年以上あったものが1年未満のものより有意に高い値を示した。サルコイドーシスの前部ぶどう膜炎は発症後1年以上の慢性期でも急性期と同等の病勢を示す。陳旧性寛解期においても前房フレアーは高く,血液房水柵破壊が存在すると考えられた。

白内障手術における術前倒乱視の転帰

著者: 鈴木亮 ,   田中一成 ,   栗本晋二 ,   藤原紀男

ページ範囲:P.1987 - P.1990

 超音波乳化吸引術(KPE)が嚢外摘出術(ECCE)より術後乱視度が小さいことは経験的によく知られている。また強角膜縫合糸,縫合法,結節の回数術者の技術などの因子が術後の乱視度に及ぼす効果は大きい。その乱視度は術前の乱視度や患者の年齢で変化することが考えられるが,KPEとECCEにっきそれを詳細に検討した論文は見あたらない。一人の術者が同じ縫合糸(10/0ポリエステル,マーシリン),縫合法,手術法を用いて行った408眼の手術のうち,術前倒乱視167眼の角膜乱視を6か月にわたって調べた。
 KPE, ECCEにかぎらず,70歳以下の術後角膜乱視は80歳以上の患者より強主径線が術直後はよりsteep化するが早く改善した。高齢者(>80歳)では,強主径線の改善効果が70歳以下の者より遅延し,6か月後の乱視度は70歳以下より大きかった。ECCEでは術前1.5 D以下の倒乱視と高年齢者(>80歳)において術前倒乱視の度数が高く,“危険因子”として考えられた。このことを倍角座標のみでなく,あらたにベクトルの動きで座標平面上で示した。

10歳女児の片眼イールズ病の1例

著者: 小成賢二 ,   竹田宗泰 ,   鈴木純一 ,   国立亨治

ページ範囲:P.1991 - P.1995

 片眼のイールズ病と考えられた10歳女児の1例について報告した。検眼鏡的には視神経乳頭鼻側の火焔状出血,眼底全体に網膜静脈の蛇行,拡張,白線化,白鞘化および静脈間吻合があり,黄斑部には出血,浮腫および硬性白斑を認めた。螢光眼底造影では白線化した血管からの強い螢光の漏出とその支配領域の血管床閉塞だけでなく,乳頭鼻側網膜にはコーツ病様の強い微小血管の拡張を認めた。眼底には新生血管はみられなかった。ステロイドの内服により黄斑部浮腫は軽快し,視力は回復した。

眼内レンズ挿入術後の血液房水柵機能の定量分析

著者: 鄭連山 ,   宋基栄 ,   澤充 ,   増田寛次郎

ページ範囲:P.1997 - P.2001

 白内障手術および眼内レンズ挿入術後の炎症についてレーザーフレア・セルメーターで測定し,その結果を術式,レンズの種類および年齢の因子に分けて検討を行った。対象は白内障嚢外摘出術(ECCE)および後房眼内レンズ(PCL)挿入術(ECCE+I0L)38例48眼,ECCEのみの10例10眼であり,対照は手術例の非手術他眼24例24眼である。ECCE+I0L群の術後の房水蛋白濃度はECCE単独群術後のそれより高値を示し,術後1日,7〜15日の各時点で有意差(P<0.01および0.05)があり,対照眼の房水蛋白濃度値に比して術直後から4〜6か月までの間有意(P<0.05)に高値を示した。ECCE単独群の術後房水蛋白濃度は対照眼の房水蛋白濃度値に比して1か月まで有意に(P<0.05)高かった。ECCE+I0L群術後の前房細胞数の変化はECCE単独群より術後1日目では有意に(P<0.01)高かったが,2日目以後には差はなかった。両群は正常眼に比し術直後から術後7〜15日まで有意(P<0.01)に高かった。眼内レンズ挿入術後の血液房水柵の回復には6か月を要すると考えられた。眼内レンズ(Bifocal PMMA-IOL,heparin-coat PMMA—IOL,PMMA-IOL,紫外線吸収PMMA-IOL)間では術後炎症には統計的有意差はなかった。年齢別の眼内レンズ挿入術後の房水蛋白濃度は1日目の時点のみ71〜80歳群が50〜60歳群より有意(P<0.05)に高かったが,他は術後期間と年齢の間に有意差はなかった。

カラー臨床報告

網膜血管奇形を伴ったSturge-Weber症候群の1例

著者: 網野憲太郎 ,   市岡伊久子 ,   市岡博

ページ範囲:P.1945 - P.1948

 網膜動静脈奇形を伴ったSturge-Weber症候群の1例を報告した。症例は32歳の男性で,生下時より右側顔面血管腫を認め,1歳頃,癲癇様痙攣発作を起こし,Sturge-Weber症候群と診断された。主訴は右眼霧視で,右眼球結膜血管,上強膜静脈に拡張,蛇行を認めた。眼底には,網膜血管の拡張,蛇行,動静脈吻合がみられ,脈絡膜血管腫によると思われる赤色眼底を呈していた。また,耳側網膜周辺部に無血管領域を認めた。
 左眼には,異常所見はみられなかった。

Report from Overseas

中国における急性出血性結膜炎の流行

著者: 張文華 ,   張士元

ページ範囲:P.1975 - P.1978

 1970年代の初期から約20年にわたり,全世界的に急性出血性結膜炎(AHC)の大流行を3回繰り返した。中国も例外ではなく全国的大流行が起こり,特に鉄道や沿海に近い地域では爆発的に流行した。非好発期でも局部の地域を中心に小流行と散発症例が発生した。はじめの大流行ではウイルスを分離できたが,抗血清がなく分離株は同定できなかった。しかしエンテロウイルス(EV70)と推定できた。1980年代初期の大流行期間に分離したウイルス株はEV70と同定できた。1988年爆発的流行期間の大多数の地域からのウイルスはコクサッキーウイルスA24型の変異株(CA24v)が分離された。

文庫の窓から

和蘭眼科新書(その2)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斉藤仁男

ページ範囲:P.2002 - P.2003

 この「泰西眼科全書」に附された“新訳泰西眼病方序説”および“餘録”(“解悶雑記”)(これらは別に大槻玄沢手記本として故山賀勇氏により昭和39年5月,静嘉堂文庫にて発見された)にはプレンク眼科書のオランダ語訳から「泰西眼科全書」に至る,いわばプレンク眼科書の蘭訳本の輸入および翻訳事情がこと細かに記述されている。
 さて,「泰西眼科全書」は寛政11年(1799)の春に宇田川玄眞により,カナ交りの日本文に翻訳されたのであるが,訳文は誤りも多く,完全な訳ではなかったようである。そこでたまたま漢蘭の眼科を修めた杉田立卿(1786〜1845)がプレンク眼科書の翻訳を父杉田玄白より命ぜられ,この「泰西眼科全書」を全面増訂した。

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臨床眼科 第44巻 総目次・物名索引・人名索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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