臨床報告
眼内レンズ挿入術後の血液房水柵機能の定量分析
著者:
鄭連山1
宋基栄1
澤充1
増田寛次郎1
所属機関:
1東京大学
ページ範囲:P.1997 - P.2001
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白内障手術および眼内レンズ挿入術後の炎症についてレーザーフレア・セルメーターで測定し,その結果を術式,レンズの種類および年齢の因子に分けて検討を行った。対象は白内障嚢外摘出術(ECCE)および後房眼内レンズ(PCL)挿入術(ECCE+I0L)38例48眼,ECCEのみの10例10眼であり,対照は手術例の非手術他眼24例24眼である。ECCE+I0L群の術後の房水蛋白濃度はECCE単独群術後のそれより高値を示し,術後1日,7〜15日の各時点で有意差(P<0.01および0.05)があり,対照眼の房水蛋白濃度値に比して術直後から4〜6か月までの間有意(P<0.05)に高値を示した。ECCE単独群の術後房水蛋白濃度は対照眼の房水蛋白濃度値に比して1か月まで有意に(P<0.05)高かった。ECCE+I0L群術後の前房細胞数の変化はECCE単独群より術後1日目では有意に(P<0.01)高かったが,2日目以後には差はなかった。両群は正常眼に比し術直後から術後7〜15日まで有意(P<0.01)に高かった。眼内レンズ挿入術後の血液房水柵の回復には6か月を要すると考えられた。眼内レンズ(Bifocal PMMA-IOL,heparin-coat PMMA—IOL,PMMA-IOL,紫外線吸収PMMA-IOL)間では術後炎症には統計的有意差はなかった。年齢別の眼内レンズ挿入術後の房水蛋白濃度は1日目の時点のみ71〜80歳群が50〜60歳群より有意(P<0.05)に高かったが,他は術後期間と年齢の間に有意差はなかった。