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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科44巻2号

1990年02月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・283

先天性網膜色素上皮肥大を伴った区画型網膜色素変性症

著者: 飯島裕幸 ,   小清水正人 ,   古屋徹

ページ範囲:P.112 - P.113

 緒言 区画型網膜色素変性症は,定型網膜色素変性症にみられる網膜病変が眼底の一区画に限局してみられる非定型網膜色素変性症である1)。また先天性網膜色素上皮肥大は網膜色素上皮レベルにみられる,非隆起性の黒褐色病変である2)。今回これら両者の合併した症例を経験したので,報告する。
 症例 58歳,女性。初診:1983年11月21日.

眼の組織・病理アトラス・40

網膜芽細胞腫に対する光化学療法

著者: 大西克尚 ,   猪俣孟

ページ範囲:P.116 - P.117

 両側性の網膜芽細胞腫患者では患児の眼球を片眼でも残し,視力を保存しようとする努力がなされている。この眼球保存療法としては,放射線療法,光凝固療法,冷凍凝固療法,化学療法と免疫療法があるが,どれも一長一短である。最近,ヘマトポルフィリン誘導体を用いた光化学療法が悪性腫瘍の治療に行われ,網膜芽細胞腫にも応用されている。
 この光化学療法はヘマトポルフィリン誘導体を0.5mg/kg静脈注射し,その3日後に腫瘍にたいしてアルゴンレーザーを直径2mm,200mWで10分間連続照射して行う。腫瘍の直径が4乳頭径以下の症例では本療法のみで治癒させることができる(図1,2)。

今月の話題

無水晶体眼の網膜剥離—水晶体摘出の原因別にみた網膜剥離の特徴とその対策

著者: 出田秀尚 ,   伊藤久太朗

ページ範囲:P.167 - P.170

 無水晶体眼に起こる裂孔原性網膜剥離を水晶体が摘出された理由別に分けて,それぞれのグループの特徴について,術前所見,手術方法,治療成績についての私共の経験を述べ,それから得られた網膜硝子体医に対する提言と白内障手術医に対する提言を述べる。

眼科手術のテクニック—私はこうしている・14

隅角所見からみた術式の選択—2.原発閉塞隅角緑内障

著者: 奥平晃久 ,   根木昭

ページ範囲:P.175 - P.177

隅角所見
 緑内障治療は房水排出障害が線維柱帯以降にあるか,線維柱帯に達するまでにあるかを鑑別することに始まる。閉塞隅角緑内障は線維柱帯が一時的にせよ永続的にせよ虹彩によって塞がれることによって生ずるが,隅角鏡によりこの閉塞のメカニズムと閉塞範囲を知ることが治療選択の基本となる.隅角検査は一般にGoldmann型の間接隅角鏡を用いるが,できるだけ角膜を圧迫しない状態での隅角所見が大切で,不用意な圧迫は狭隅角を広隅角に見誤らせる。
 隅角閉塞のメカニズムには炎症や外傷に続発するものもあるが,これらは続報にゆずり本報ではいわゆる原発閉塞隅角緑内障を扱う。原発閉塞隅角緑内障のほとんどは瞳孔ブロックにより生ずる。すなわち水晶体が前方に位置するために瞳孔を通って前房へ流れるルートが狭くなり(relativepupillary block),房水は後房に貯留し後房圧の上昇により周辺部虹彩は前方に膨隆する。このため角膜後面と虹彩表面のなす角度は小さくなり,隅角構造もかくされてしまう(図1,2)。隅角の見え方は程度により異なり,毛様体帯(CB)が辛うじて見えるものからSchwalbe lineまでかくされるものまで様々であり,角膜前面と後面のスリットビームが重なるSchwalbe lineの同定が目安となる。さらに瞳孔ブロックがすすみ隅角が閉塞すると眼圧が上昇する。

眼科薬物療法のポイント—私の処方・14

治療に難渋した内因性真菌性眼内炎

著者: 石橋康久

ページ範囲:P.179 - P.181

 患者は61歳の男性で,1985年に直腸癌のため手術を受けた。その後,肝,肺,膀胱などへの転移のため,入退院および手術をくり返していた。1989年1月に入院し,IVHを挿入され,抗生剤,抗癌剤などを投与されていたが,同6月12日に両眼に黒いものが飛んで見えるとの訴えで眼科を受診した。
 主訴:両眼飛蚊症

臨床報告

緑内障と白内障同時手術の成績

著者: 竹内正光 ,   山岸和矢 ,   武市吉人 ,   山根淳志 ,   西川睦彦 ,   三木弘彦

ページ範囲:P.125 - P.129

 最近2年間に,27例35眼の原発開放隅角緑内障,あるいは落屑症候群を伴う開放隅角緑内障のある老人性白内障に対し,トラベクロトミーと白内障の同時手術を行った。その内,6カ月以上経過観察を行えた15例22眼について調査した。白内障手術を嚢外法で行った13眼では,9眼(69%)が無投薬で眼圧コントロール良好であり,4眼(31%)がコントロールに点眼治療の追加を必要とした。白内障手術を嚢内法を行った9眼では,3眼(33%)が無投薬で眼圧コントロール良好であり,6眼(67%)がコントロールに点眼治療の追加を必要とした。術後視力は,緑内障性視神経萎縮の強かった1例を除いて全例で改善が得られた。特別な合併症の発生はなかった。この同時手術は,安全かつ有効で,開放隅角緑内障と老人性白内障を合併した症例には考慮されてよい手術と思われた。

角膜移植術後の角膜上皮の変化—スペキュラーマイクロスコープによる観察

著者: 坪田一男 ,   真島行彦 ,   村田博之 ,   山田昌和

ページ範囲:P.131 - P.134

 全層角膜移植術を行った20眼につき,術後の角膜上皮の修復過程をスペキュラーマイクロスコープにて観察した。術後1週間目には,全例で角膜上皮細胞の形が乱れ,16眼に紡錘形細胞が出現した。術後1から2か月目には,紡錘形細胞の減少とともに,巨大細胞や核が観察できる細胞が増加し,術後3か月まで高頻度に見られた。以後は,紡錘形細胞,巨大細胞,有核細胞が時間の経過と共に減少し,術後6か月には8眼のみにこれらの細胞が見られ,12眼では上皮の形の乱れだけが観察された。
 以上より,スペキュラーマイクロスコープを用いて全層角膜移植後の上皮細胞の再構築の過程が表層細胞の形の変化を通じて観察でき,また,術後の上皮細胞が正常化するのに6か月以上を要することが明らかになった。

硝子体注入された気体の問題点—4.気体全置換とその視力的予後

著者: 古川真理子 ,   高木均 ,   山本文昭 ,   上野聡樹

ページ範囲:P.135 - P.138

 難治性網膜剥離に対して,初回硝子体手術に眼内気体全置換を併用した130例130眼のうち,本操作のみで最終的に網膜が復位した症例(95例95眼)において,術前術後視力の推移,あるいはその結果に影響を及ぼすと思われる因子について検討を行った。一度目の眼内気体全置換で復位を得た症例のうち術後視力が改善したのは62%であり,逆に低下した症例が25%存在した。2回行った症例では,視力改善率は71%,視力低下は21%であった。黄斑円孔性以外の網膜剥離で,術前に黄斑部が剥離していた症例と,剥離していなかった症例とを比較すると,前者のほうが視力改善率が高く,後者においては術後視力の低下する症例が半数近く存在した。一方黄斑円孔性網膜剥離に限ってみると,術後視力の改善は57%にみられたが,0.1以上には改善し難く,特に後極部のみが剥離していた症例では,二象限以上剥離していた症例よりも,術後視力の改善率は少なく,むしろ低下する例が多く見られた。このことからも本術式は,なんらかの影響を黄斑部に及ぼすことが予想され,黄斑部の剥離を伴わず術前視力の比較的良好な症例ほど,慎重な対応が必要と思われる。

Endocapsular techniqueによる人工水晶体挿入手術成績と問題点

著者: 竹村美保 ,   小紫裕介 ,   三浦昌生 ,   岩城正佳 ,   三木正毅 ,   近藤武久

ページ範囲:P.139 - P.143

 Endocapsular techniqueによる前嚢切開後,後房レンズを挿入した190症例,248眼について,嚢内固定率および固定位置別の術後合併症の種類・頻度の比較を行い,endocapsular tech—niqueの問題点を検討した。
 1.固定率は嚢内固定(In-In)79.0%,非対称性挿入(In-Out)10.9%,?外固定(Out-Out)2.0%,計画的嚢外固定(planned Out-Out)2.0%,不明6.2%であった。
 2.術後視力,角膜乱視度,乱視軸,術前屈折予測値と術後屈折実測値との誤差,術後炎症所見には,固定位置による有意差は認められなかったが,レンズの偏位,傾きはIn-Out群で有意な増加をみた。
 3.術中に後嚢破損,硝子体脱出を生じた5眼は,前嚢を残し意図的にOut-Outに挿入した。術後の視力,固定状況は良好である。
 4.In-Out群で嚢外固定と認めたループは,77%が先に挿入したループであった。
 以上より本法の問題点として,核娩出時の前嚢亀裂,非対称性前嚢切除が後房レンズの術後位置異常の主因と考えられ,今後理想的な前嚢切開としては,対称性で亀裂の生じ難い形状が必要と思われた。

慢性緑内障眼における羞明に関する検討

著者: 星野峰子 ,   溝上國義

ページ範囲:P.145 - P.147

 視神経疾患では,高輝度下における視力低下,いわゆる羞明を訴えるとされている。近年,緑内障において初期より中心視機能障害が存在する事が示唆されている。我々は,中期までの緑内障眼における高輝度下での視機能障害を検討した。
 対象は,前眼部と中間透光体に混濁のない,年齢15〜58歳,矯正視力1.0以上,視野湖崎分類Ⅰb期〜Ⅲb期までの慢性緑内障眼41例70眼である。グレアテスターによる検査を施行し,グレア難視2.5%の視標が見えるか見えないかの2群に分類し,視野ステージと,オクトパス自動視野計による傍中心6度での感度低下との相関を調べた。
 その結果,グレア視力障害は傍中心での緑内障暗点と相関していた。緑内障初期の段階からグレア視力に影響を及ぼす中心部視神経障害の存在が示唆された。グレアテスターは緑内障初期暗点診断に有用である。

緑内障様視神経乳頭変化をきたした頭蓋内病変の2例

著者: 小泉公仁子 ,   鈴木康之 ,   新家真 ,   山上淳吉

ページ範囲:P.149 - P.154

 過去22か月間に低眼圧緑内障様の所見を呈する58症例を経験した。男子34例,女子24例であり,年齢は55.9±11.5歳であった。これら症例は,眼圧は24時間眼圧変動を含めて正常範囲にあり,隅角は開放性で,他に眼疾患がなかった。これら全例にCTスキャン,頭部X線検査,副鼻腔X線検査と耳鼻科的検査を行った。このうち70歳男子にトルコ鞍拡大が発見され,原発性emptysellaと診断され,63歳女子に右内頸動脈に動脈瘤が発見された。この2例とも,低眼圧緑内障類似の眼所見は両眼性であった。低眼圧緑内障では,隠れた頭蓋内病変の可能性に留意する必要があると結論される。

後極部漿液性網膜剥離と脈絡膜剥離を伴ったUsher症候群の1例

著者: 加藤祐造 ,   柏木賢治 ,   渡辺逸郎 ,   佐々木隆弥

ページ範囲:P.155 - P.158

 網膜色素変性と先天聾があり,Usher症候群と診断され,5年前に白内障手術を受けた40歳男子に,両眼の網膜浮腫,漿液性網膜剥離,ならびに左眼の脈絡膜剥離が発症した。両眼の前房と前部硝子体中に炎症細胞が多数浮遊し,網膜血管の透過性亢進が螢光眼底造影により確認された。全身ステロイド投与で,これら眼底病変は消褪し,視力が回復した。網膜浮腫,漿液性網膜剥離,脈絡膜剥離の原因として,網膜変性に基因する炎症反応が疑われた。

後部硝子体の虚脱剥離と単純剥離

著者: 広川博之 ,   門正則

ページ範囲:P.159 - P.162

 飛蚊症,光視症,あるいはその両者を唯一の主訴として受診した患者のうち,後部硝子体剥離(PVD)が認められた158名173眼の硝子体について検討し,以下の結果を得た。
 1.虚脱剥離の頻度は72%で,単純剥離の頻度は28%であった。
 2.単純剥離は虚脱剥離に比べ,部分硝子体剥離率が高い,後部硝子体膜は肥厚していない,乳頭前環を認める頻度が低いなどの特徴を有していた。馬蹄形裂孔の合併頻度に関しては,虚脱剥離眼と単純剥離眼との間に差を認めなかった。
 3.PVD眼で硝子体が虚脱しているか否かは,自覚症状の持続期間と関連があった。

原発開放隅角緑内障患者の眼圧変動昼間測定の臨床的意義

著者: 安藤一彦 ,   山上聡 ,   新家真

ページ範囲:P.163 - P.166

 緑内障外来に通院する原発開放隅角緑内障患者34例62眼を対象として,その眼圧変動昼間測定を行い,それ以前に外来で測定された眼圧と比較検討した。両者の最高値について,眼圧昼間変動における最高値の方が有意に低いという結果が得られたが,最低値,平均値は両者間で差がなかった。また,ほぼ1か月に一度の眼圧測定で常に21mmHg以下の症例では眼圧変動昼間測定を行って最高眼圧が22mmHg以上となった症例は7%にすぎず,むしろ眼圧コントロール不良例で,患者が指示通り眼圧降下剤の点眼内服を行っているか否かが正確に把握できた症例が多かった。

Pigmentary dispersion syndromeの1例

著者: 宇都裕恵 ,   荒木英生 ,   菅井滋 ,   猪俣孟

ページ範囲:P.183 - P.186

 日本人に見られたpigmentary disper-sion syndromeの1例を報告した。
 症例は37歳日本人男性で,両眼に角膜裏面のKrukenberg's spindle,隅角の著明な色素沈着,水晶体赤道部後面の色素沈着を認めた。虹彩のtrans-illumination defectはみられなかった。
 本症はわが国では少ないので,誤診されやすい。本症例は当初ぶどう膜炎と診断された。
 本症はpigmentary glaucomaへ移行する可能性もある。今後慎重な経過観察が必要である。

重症糖尿病性網膜症における増殖性硝子体網膜癒着に対するviscodelamination

著者: 岡野正 ,   新田安紀芳 ,   得居賢二

ページ範囲:P.187 - P.193

 粘弾性液(1%ヒアルロン酸ナトリウム)による粘弾性分層術viscodelaminationで,高度な線維血管性増殖膜により強固に癒着した後部硝子体と網膜とを,従来の機械的分層術よりも安全かつ効果的に剥離できた。
 粘弾性分層術の対象として,発達した線維血管性増殖膜があって牽引性網膜剥離を生じていた重症糖尿病性網膜症例17眼を選んだ。標準的な3-port vitrectomyで,粘弾性分層術を駆使した。後部硝子体剥離部を小切開し,そこから粘弾性液を硝子体網膜間隙に注入し,硝子体と網膜とを分層した。新生血管茎epicenterは,粘弾性液の存在下で,水平剪刀で切断した。最後は,後部硝子体と増殖膜を一括して網膜から浮き上らせて除去するen bloc excisionまたはそれに準じて処理し,同時に粘弾性液を洗い出した。この方法で,線維血管性増殖膜を十分除去できた。術後平均3か月追跡した成績を報告する。
 17眼全例に,発達した線維血管性増殖膜と牽引性網膜剥離があったが,術後は,全例で臨床像が改善した。解剖学的改善を全例に,網膜剥離の復位を14眼82%に得た。医原性裂孔の頻度は,17眼中4眼24%であった。この観察期間で,2段階以上の視力改善は13眼76%あったが,2段階以上の低下はなかった。粘弾性液による合併症は,皆無であった。粘弾性分層術は,手術の適応の拡大と安全性をたかめる上で効果的である。

虹彩切除術を行った転移性虹彩腫瘍の1例

著者: 緒方奈保子 ,   加賀典男 ,   三木耕一郎 ,   上田恵

ページ範囲:P.195 - P.198

 58歳男性で,左眼霧視にて眼科受診し,左眼に虹彩毛様体炎をともなう虹彩腫瘍を発見された。虹彩全幅切除術により腫瘍を摘出し,病理組織学的に検索したところ,未分化な腺癌であった。全身検査にては,胸部レントゲン撮影及び,CT検査などより肺の腺癌と診断され,脳内移転巣も見られた。術後経過は順調であったが,その後全身状態の悪化で,初診後4か月で死亡した。

Duane症候群Ⅰ型に対するKestenbaum手術

著者: 大月洋 ,   奥田芳昭 ,   永山幹夫 ,   田所康徳 ,   長谷部聡 ,   小西玄人

ページ範囲:P.199 - P.202

 Duane症候群のⅠ型を対象に,Kesten-baum手術と,従来の患眼にのみ手術を行う単眼手術の両眼単一視・視野にたいする手術効果の比較の考察を行い,4症例に施行したKestenbaum手術の治療結果を報告した。患眼の内転時に著しい眼球陥凹や,眼球の上下偏位がみられる場合は推奨されない手術法であるが,適度な術量であれば患眼の内転方向での眼球偏位の共同性を維持しつつ,外転方向への可動性を増加させ,両眼単一視・視野を増減することなく正面位へと移動することが可能な方法と思われる。

汎ぶどう膜炎を伴った若年性関節リウマチの1症例

著者: 天野史郎 ,   望月學

ページ範囲:P.205 - P.208

 汎ぶどう膜炎をともなった若年性関節リウマチ(JRA)の1症例を報告した。JRAの眼症状としては虹彩毛様体炎,白内障,帯状角膜変性症がよく知られているが,眼底に病変を確認されたJRAの症例はまれである。

カラー臨床報告

Chediak-Higashi症候群の1例

著者: 上田佳代 ,   石橋達朗 ,   西村みえ子 ,   山名敏子 ,   吉村圭子 ,   岸田邦雄

ページ範囲:P.119 - P.123

 生後4か月より観察した Chediak—Higashi症候群の1例を報告した。銀灰色の毛髪,皮膚および眼球の部分的白子症,反復する発熱と上気道感染,肝脾腫,末梢血の好中球とリンパ球の細胞質内における特徴的な巨大顆粒を認めChediak-Higashi症候群と診断した。汎血球減少症,出血傾向のため4歳9か月で死亡した。
 眼科的には羞明,眼振,内斜視,左上斜視および乱視(初診時遠視性,のちに雑性)があり,虹彩は初診時淡褐色,眼底は白子様眼底であった。加齢とともに虹彩の色素は増加し2歳頃には濃い褐色となり,眼底赤道部の色素もやや増加した。黄斑部は軽度の低形成,ERGはsubnormalで,4歳6か月時矯正視力右0.5,左0.1であった。2歳時に斜視手術を行い,その際採取した結膜を電顕的に観察し,巨大顆粒をもつマクロファージを確認した。
 Chediak-Higashi症候群は,乳幼児の眼白子症の鑑別疾患のひとつとして重要である。

文庫の窓から

眼科診断学(完)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斉藤仁男

ページ範囲:P.210 - P.211

 昔の医家,殊に臨床医家は“見立”が最も大事であるとした。その“見立”は経験の積み重ねによって体得され,しかもそれは直覚的判断であった。
 検眼鏡は眼球内の疾患を精確に診断することを可能にしたように,眼の検査に,眼の生理,解剖の知識が採り入れられ,薬物の発見,その他諸器械が発明され応用されるにおよび益々診断上の精度を期することができるようになった。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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