臨床報告
硝子体注入された気体の問題点—4.気体全置換とその視力的予後
著者:
古川真理子1
高木均2
山本文昭3
上野聡樹1
所属機関:
1大津赤十字病院眼科
2天理よろづ相談所病院眼科
3京都大学医学部眼科
ページ範囲:P.135 - P.138
文献購入ページに移動
難治性網膜剥離に対して,初回硝子体手術に眼内気体全置換を併用した130例130眼のうち,本操作のみで最終的に網膜が復位した症例(95例95眼)において,術前術後視力の推移,あるいはその結果に影響を及ぼすと思われる因子について検討を行った。一度目の眼内気体全置換で復位を得た症例のうち術後視力が改善したのは62%であり,逆に低下した症例が25%存在した。2回行った症例では,視力改善率は71%,視力低下は21%であった。黄斑円孔性以外の網膜剥離で,術前に黄斑部が剥離していた症例と,剥離していなかった症例とを比較すると,前者のほうが視力改善率が高く,後者においては術後視力の低下する症例が半数近く存在した。一方黄斑円孔性網膜剥離に限ってみると,術後視力の改善は57%にみられたが,0.1以上には改善し難く,特に後極部のみが剥離していた症例では,二象限以上剥離していた症例よりも,術後視力の改善率は少なく,むしろ低下する例が多く見られた。このことからも本術式は,なんらかの影響を黄斑部に及ぼすことが予想され,黄斑部の剥離を伴わず術前視力の比較的良好な症例ほど,慎重な対応が必要と思われる。