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臨床報告
重症糖尿病性網膜症における増殖性硝子体網膜癒着に対するviscodelamination
著者: 岡野正1 新田安紀芳1 得居賢二1
所属機関: 1群馬大学医学部眼科
ページ範囲:P.187 - P.193
文献購入ページに移動粘弾性分層術の対象として,発達した線維血管性増殖膜があって牽引性網膜剥離を生じていた重症糖尿病性網膜症例17眼を選んだ。標準的な3-port vitrectomyで,粘弾性分層術を駆使した。後部硝子体剥離部を小切開し,そこから粘弾性液を硝子体網膜間隙に注入し,硝子体と網膜とを分層した。新生血管茎epicenterは,粘弾性液の存在下で,水平剪刀で切断した。最後は,後部硝子体と増殖膜を一括して網膜から浮き上らせて除去するen bloc excisionまたはそれに準じて処理し,同時に粘弾性液を洗い出した。この方法で,線維血管性増殖膜を十分除去できた。術後平均3か月追跡した成績を報告する。
17眼全例に,発達した線維血管性増殖膜と牽引性網膜剥離があったが,術後は,全例で臨床像が改善した。解剖学的改善を全例に,網膜剥離の復位を14眼82%に得た。医原性裂孔の頻度は,17眼中4眼24%であった。この観察期間で,2段階以上の視力改善は13眼76%あったが,2段階以上の低下はなかった。粘弾性液による合併症は,皆無であった。粘弾性分層術は,手術の適応の拡大と安全性をたかめる上で効果的である。
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