特集 第43回日本臨床眼科学会講演集(1)1989年10月 名古屋
学会原著
眼球温熱化学療法で治癒した,眼球内に再発した網膜芽細胞腫の2例
著者:
金子明博1
伊勢泰2
大平睦郎2
高山順2
渋井壮一郎3
松岡浩司3
猪俣素子4
毛利誠5
所属機関:
1国立がんセンター病院眼科
2国立がんセンター病院小児科
3国立がんセンター病院脳神経外科
4国立がんセンター研究所 薬効試験部
5慶応大学病院放射線診断部
ページ範囲:P.289 - P.292
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放射線外照射後に再発した眼球内網膜芽細胞腫を眼球温熱化学療法を使用して,有用な視力を維持して治癒した2症例を報告した。本治療法は患側内頚動脈からmelphalanを40 mg/m2注入し,引き続きLagendijkにより開発された眼球加温装置で45℃で1時間,眼球を加温する方法である。症例1は3乳頭径の腫瘍が黄斑部に再発したが,0.2の矯正視力を治療後3年維持している。症例2は硝子体播種と4乳頭径の腫瘍が黄斑近くに再発したが,0.9の矯正視力を治療後2年8か月維持している。一過性の骨髄抑制と脱毛が本治療の副作用である。白内障や角膜障害は治療後約3年間に,まったく発生していない。