特集 第43回日本臨床眼科学会講演集(1)1989年10月 名古屋
学術展示
外傷性外転神経麻痺の成人患者に見られたいわゆるblind spot syndrome
著者:
尾崎峯生1
古瀬達人1
高木満里子1
所属機関:
1熊本大学医学部眼科
ページ範囲:P.318 - P.319
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緒言 Swanの提唱したいわゆるblind spot syn—drome (盲斑症候群)は1)12度から18度の内斜視2)時折にしか複視や混乱視を自覚しない 3)内斜眼のMariotte盲斑が常に固視領域に重なっている4)両眼の良好な視力 5)正常網膜対応(NRC)6)融像能力(haploscopeにて)の存在という臨床約特徴を持ち,Mariotte盲斑によって複視を消していると説明されている1)。本症候群は後天性内斜視だけでなく,成人の麻痺性内斜視が共同性となった例にもまれに認められる。しかし本症候群については否定的な意見もあり2),複視が自覚されない機構についても不明な点が残っている。今回われわれは,外傷性外転神経麻痺後にいわゆる盲斑症候群と思われる所見を呈した成人例を経験し,両眼視機能を中心に分析したので報告する。
症例 35歳,男性。1988年8月8日,頭部外傷を受け,左外傷性外転神経麻痺のため複視自覚。2か月後,内斜視は残っていたが時折にしか複視や混乱視を自覚しないようになった。近医より眼位異常を主訴に当科紹介され,1989年4月6日当科入院。