文献詳細
文献概要
特集 第43回日本臨床眼科学会講演集(2)1989年10月 名古屋 学会原著
摘出水晶体核中の鉄濃度が高値を示した1例
著者: 松本宗明1 白木邦彦1 三木徳彦1
所属機関: 1大阪市立大学医学部眼科
ページ範囲:P.465 - P.467
文献購入ページに移動症例は38歳男性。右眼白内障手術を目的として入院。右眼視力50cm/n.d (n.c.),左眼に特記すべき所見なく,右眼に成熟白内障を認め,白内障嚢外摘出術を施行した。術後,右眼後極部に顆粒状または斑状の脱色素および色素沈着が広範にみられ,鼻下側周辺部に白色線維性増殖組織がみとめられた。螢光眼底検査,GP, ERG, EOGなどの臨床所見より眼球鉄錆症を疑ったが,画像診断上,眼内鉄片異物の確証が得られなかったため,摘出水晶体核の鉄含有量を測定した。
ホルマリン中に保存した摘出水晶体核を濃硝酸を用いて溶解し,原子吸光分析により水晶体核湿重量あたりの金属濃度を測定した。保存中に水晶体核の湿重量が変化することを考え,鉄と同時に亜鉛濃度を測定し,それらの濃度比を算出した。本症例では鉄/亜鉛の濃度比は3.2で,対照例の0.48±0.17と比較して有意に高値を示した(p<0.01)。
本症例のように異物飛入の既往,鉄錆症の存在が疑われ,眼内鉄片異物を直接証明できない場合は,他の臨床所見とともに眼組織中の鉄イオン濃度の測定が病態を考慮する上で有意義であると考える。
掲載誌情報