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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科44巻6号

1990年06月発行

文献概要

特集 第43回日本臨床眼科学会講演集(4)1989年10月 名古屋 学会原著

老人性円板状黄斑変性症—網膜下血腫型の臨床的特徴

著者: 福島伊知郎1 高橋寛二1 大熊紘1 宇山昌延1

所属機関: 1関西医科大学眼科学教室

ページ範囲:P.799 - P.805

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 最近5年間に,当科を受診した老人性円板状黄斑変性症379眼のうち,3か月以上経過観察できた網膜下血腫を主所見とする症例(網膜下血腫型)が47例50眼あった。自覚症状には,前駆症状がなく突然高度の視力低下で発症した症例が74%,前駆症状がみられた症例が26%あった。初診時の眼底所見は,網膜下血腫が血管アーケードを越える大出血例が40%あった。螢光眼底造影で網膜下新生血管網が確認されたのは53%で,3か月以内に83%の症例で新生血管網が同定可能となった。初回出血の後,1ないし3か月以内に再出血ないしは出血の拡大をみた症例が20%あった。また,硝子体出血を来した症例が30%あった。
 網膜下血腫の吸収には,多くの症例で3〜6か月かかった。症例の63%は,黄斑部の網膜色素上皮に変性萎縮を残して治癒したが,線維性瘢痕を残した症例が35%あった。しかし,本症の典型的病巣である滲出病巣(網膜下結合織増殖型)に移行したのは1眼(2%)のみで,極く少数であった。
 治療として薬物療法,光凝固,硝子体手術が行われ,最終的に60%に視力改善をみた。
 以上から,網膜下血腫型は老人性円板状黄斑変性症のなかで,急性の経過を示し,比較的子後良好な特殊な一病型であることが示された。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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