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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科44巻9号

1990年09月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・290

釘による二重穿孔の早期硝子体手術小児例

著者: 三浦元也 ,   三宅養三 ,   奥田伸利

ページ範囲:P.1384 - P.1385

 緒言 眼球の穿孔性外傷の予後は,種々の要因により左右され,一概に論ずることはできない。硝子体手術の進歩した現在においても,二重穿孔については,予後不良の症例が多いと考えられる。今回我々は,釘が右上眼瞼より刺入し,眼球を穿孔,上顎洞に到り,早期硝子体手術により良好な経過をとった症例を経験したので報告する。
 症例 男児,10歳。

眼の組織・病理アトラス・47

毛様体炎膜

著者: 猪俣孟

ページ範囲:P.1388 - P.1389

 眼内に炎症が持続すると,毛様体扁平部または鋸状縁網膜と毛様体扁平部との移行部から炎症細胞や新生血管を含む眼内増殖組織が形成され,それが毛様体の表面,さらに水晶体の前後面,ときには瞳孔領まで広がる。これを毛様体炎膜cyclitic membraneと呼ぶ。慢性の虹彩毛様体炎で眼球癆におちいった眼球の割面を作ってみると(図1),毛様体炎膜は非常に硬い結合組織からなっている。したがって,毛様体炎膜はかつては毛様体炎性硬皮とも呼ばれていた。毛様体炎膜の基部は,硝子体基底によって周辺部網膜に強固に固定されているので,この増殖組織の収縮によって周辺部網膜が牽引されて剥離する(図2,3)。
 眼内増殖組織の形成とそれに引き続いておこる牽引性剥離は,眼内の炎症のみでなく,穿孔性眼外傷(図4),糖尿病性網膜症,難治性網膜剥離の後などにもしばしばみられる現象である。最近では,これを前部増殖性硝子体網膜症 anterior PVRとも呼ぶ。前部増殖性硝子体網膜症は,増殖性硝子体網膜症 proliferative vitreoretinopathy(PVR)のうち,網膜内境界膜の前面や剥離した硝子体の裏面に増殖組織が形成されておこる後部増殖性硝子体網膜症posterior PVRとは増殖組織の広がる範囲が異なることからそれと区別して名づけられたものである。

今月の話題

視神経乳頭部の先天異常

著者: 東範行

ページ範囲:P.1391 - P.1396

 視神経乳頭部先天異常の代表的な疾患の特徴を解説した。また各疾患の間での共通点,発生学上の問題点,あるいは疾患概念の混乱している点についても述べた。

眼科手術のテクニック—私はこうしている・21

人工水晶体の偏位による色素性緑内障に対する対策

著者: 千原悦夫

ページ範囲:P.1424 - P.1425

 近年人工水晶体挿入術は広く普及し,年々多数の患者が手術を受けている。人工水晶体は後房で嚢内にうまく挿入されると合併症も少なく,安定した視力が得られるが,out of the bagに挿入されるといくつかの合併症が起こりうる。本報ではその合併症のひとつであるpigment dispersion glaucoma (Grey iris syndrome)の症状とその対策について述べる。

眼科薬物療法のポイント—私の処方・21

眼部帯状疱疹

著者: 秦野寛

ページ範囲:P.1427 - P.1429

症例:77歳,女性,主訴:右眼充血
 1か月前から,近医にて帯状疱疹として鎮痛剤の投与を受けていた。皮疹が右の頭皮,前額,眼瞼および鼻尖,鼻背にみられた。結膜充血はあるが濾胞はめだたない。角膜周辺に太い偽樹枝病変を認めた。前房混濁と角膜内皮の白色豚脂様沈着物が見られ,角膜知覚は低下していた。

臨床報告

Nd-YAGレーザーによる網膜裂孔弁の切断

著者: 西川雅子 ,   小椋祐一郎 ,   石郷岡均 ,   沖波聡 ,   西垣士朗 ,   荻野誠周

ページ範囲:P.1397 - P.1400

 牽引性網膜裂孔への硝子体牽引を切断する目的で,網膜裂孔弁状部にQスイッチ型 Nd—YAGレーザーを照射して網膜裂孔弁を切断し,網膜剥離13眼および網膜裂孔3眼の治療を試みた。網膜裂孔弁における硝子体牽引は,16眼中14眼で切断できた。切断が可能であった網膜剥離12眼中,9眼にYAGレーザーによる網膜裂孔弁の切断後,gas tamponadeを施行した。一部の症例には強膜内陥術を行った。全例で網膜は復位し,重篤な合併症はなかった。YAGレーザーによる網膜裂孔弁の切断は,弁状網膜裂孔弁の硝子体牽引を解除するのに有効であると考えられた。

急性網膜壊死症候群の3症例

著者: 望月清文 ,   田辺譲二 ,   若林謙二 ,   山下陽子 ,   輪島良平 ,   河崎一夫 ,   小倉壽 ,   中村信一

ページ範囲:P.1401 - P.1407

 急性網膜壊死症候群の3例5眼を経験した。症例1の33歳男子および症例2の59歳男子は典型的な桐沢型ぶどう膜炎を呈し,症例2は両眼発症例であった。症例3の49歳女子は特発性間質性肺炎に対するステロイド療法中に右下肢に帯状疱疹が発現し,その後に両眼に壊死性網膜炎が発症した。アシクロビル,γ—グロブリン製剤の全身投与,およびアシクロビルあるいはステロイド灌流下での硝子体切除術,強膜輪状締結術,眼内光凝固術などの治療を行った。症例1では視力0.2を保ったが,症例2および3では汎網脈絡膜萎縮および視神経萎縮となり,予後不良であった。3例4眼に硝子体切除術を行い,採取した硝子体液中の水痘帯状疱疹ウイルスの抗体価が4眼すべてで高値であった。急性網膜壊死症候群の発症には水痘帯状疱疹ウイルスの関与が考えられた。

磁気共鳴画像を行ったぶどう膜悪性黒色腫の5症例

著者: 西野和明 ,   竹田眞 ,   竹田宗泰 ,   秋葉英成 ,   佐藤昌明 ,   堀越貴志

ページ範囲:P.1409 - P.1413

 5例のぶどう膜悪性黒色腫に対して磁気共鳴画像(MRI)を行った。T1強調画像(T1)では,全例very hyperintense, T2強調画像(T2)では,2例でvery hypointense, 2例でhypointen—se, 1例でisointenseであった。病理組織学的所見と比較検討した結果,メラニンの多寡が特にT2の信号強度の差となった。T1では網膜剥離を伴う4例のうち3例で,網膜剥離と腫瘤が明瞭に判別された。Ga-DTPAを症例に行ったが,著明な増強効果は得られなかった。MRIはぶどう膜悪性黒色腫の鑑別診断で,従来の画像診断に加えて形態や性質を推定する上で有用であると考えられた。

網膜色素上皮裂孔を合併した胞状網膜剥離の1症例

著者: 川地浩子 ,   白井正一郎 ,   湯口幹典

ページ範囲:P.1419 - P.1423

 49歳の男性が,左眼視野欠損を主訴として受診した。視力右1.0,左0.7で,両眼に多数の網膜色素上皮剥離があり,左眼の下方には胞状の網膜剥離がみられた。螢光眼底造影では左眼に多数の螢光漏出点と4.3×1.7乳頭径の網膜色素上皮裂孔が検出された。色素上皮裂孔部以外の螢光漏出点に対してクリプトンレーザー光凝固を2回施行したところ,網膜剥離は徐々に消失した。色素上皮裂孔部も瘢痕化し,左眼視力は0.4と比較的良好に維持できた。色素上皮裂孔を伴った胞状網膜剥離でも,裂孔部以外の漏出点への光凝固により剥離が消退し,裂孔部の瘢痕化が期待できるので,裂孔部以外の螢光漏出点に対する光凝固をまず試みるのがよいと考えた。

糸状角膜炎に対する角膜表層穿刺

著者: 佐堀彰彦 ,   辻村まり ,   岡崎茂夫 ,   山本節 ,   上総良三

ページ範囲:P.1431 - P.1435

 従来の治療に抵抗した再発性の糸状角膜炎6例に対して角膜表層穿刺(anterior stromal puncture)を施行し,全例で有効であった。症例は34〜80歳の男2例,女4例で乾性角結膜炎2例,角膜パンヌス2例,再発性角膜びらん1例,原因不明1例であった。Anterior stromal punc— tureはdisposableの22ゲージ注射針を用いて行い,フィラメントの根部に2〜3回の穿刺を加えた後にフィラメントを除去し,再発するものには1週ごとに数回繰り返して穿刺を行い,圧迫眼帯を併用した。全例でフィラメントの著明な減少ないし消失がみられ,自覚症状は著しく改善した。本法は注意深く行えば安全かつ簡便であり,糸状角膜炎に対して有効な治療法であると考えられた。

スギ花粉症に対するPemirolast点眼液の眼誘発反応抑制効果

著者: 佐久間靖子 ,   三田晴久

ページ範囲:P.1437 - P.1440

 無症状期のスギ花粉症患者22例に,抗原による眼誘発試験として,0.25%と0.1%Pemir- olast (TBX)点眼液の涙液中ヒスタミン遊離抑制効果を検討した。右眼にTBX点眼液,左眼にplacebo点眼液を点眼し,10分後に,20倍希釈のスギ抗原液を点眼して,アレルギー反応を誘発した。TBX投与眼の誘発5分および10分後の涙液中ヒスタミン量は,対照眼に比べ両濃度とも有意なヒスタミン遊離抑制効果がみられた(5分後:p<0.001,10分後:p<0.05)。0.25%TBX点眼液のヒスタミン遊離抑制率は,誘発5分後72%,誘発10分後61%,0.1%TBX点眼液では,誘発5分後70%,誘発10分後69%であった。TBX点眼液はスギ花粉症に対する有効な薬剤であると考えられた。

未熟児網膜症の発症因子とscore化

著者: 大竹弘子 ,   田中康裕 ,   奥村光祥

ページ範囲:P.1441 - P.1443

 極小未熟児の増加に伴い,未熟児網膜症の頻度が増加している。その発症因子を過去3年間の生存未熟児212名について検討した。未熟児網膜症の発症群と非発症群との間に,出生体重,在胎週数,呼吸窮迫症候群(RDS),人工換気日数,酸素投与期間,赤血球輸血に関して有意差があった。これら出生体重,在胎週数Apgar score,酸素投与の有無,RDS,チアノーゼの有無の各項目を点数化して,未熟児網膜症をscoreとして表現する方式を立案した。

低眼圧緑内障における眼圧日内変動測定の臨床的意義

著者: 石井玲子 ,   山上淳吉 ,   新家真

ページ範囲:P.1445 - P.1448

 臨床所見より低眼圧緑内障(LTG)を疑った60例118眼に対して,診断確定のため24時間眼圧日内変動測定を施行し,その結果を,外来受診時の眼圧値と比較することにより,LTGにおける日内変動測定の臨床的有用性を検討した。日内変動の結果からLTGを否定された症例は4例7眼(6.7%)であった。これらの外来眼圧の平均は17.8±1.5mmHgで,LTGと診断された症例の外来眼圧15.5±2.0mmHgと比較して有意に高かった(p<0.01)。LTGと診断された各症例の外来眼圧と日内眼圧の差(カッコ内は両者の相関係数)は,最高眼圧では0.8±1.9mmHg (0.58),最低眼圧では1.1±1.7mmHg (0.65),平均眼圧では1.2±1.3mmHg (0.79)と,いずれも外来眼圧が有意に高かった(p<0.001)。また,外来平均眼圧と,外来診療時間に相当する午前10時から午後4時の間における眼圧日内変動平均との差(相関係数)も,1.2±1.4mmHg (0.60)と,前者が有意に高かった(p<0.001)。この結果より,LTGの日内変動測定値は外来受診時の眼圧値と比較して約1mmHg低いレベルにあると考えられ,かつその24時間の平均値はかなりの精度で外来眼圧の平均データより推定することができると考えられた。

Nd-YAG・レーザー虹彩切開術の長期成績—アルゴンレーザー虹彩切開術との比較

著者: 安達京 ,   弓田彰 ,   白土城照

ページ範囲:P.1449 - P.1452

 当院緑内障外来でNd-YAG・レーザー虹彩切開術を受け,術後2年以上経過観察された原発閉塞隅角緑内障51例63眼を対象として術前後の周辺虹彩前癒着量,投薬内容,眼圧コントロール成績について検討した。さらにNd-YAG・レーザー虹彩切開術とアルゴンレーザー虹彩切開術の長期成績について,術前因子(眼圧コントロール状態,投薬内容,周辺虹彩前癒着量)の等しい2群を用いて比較検討した。
 Nd-YAG・レーザー虹彩切開術後84.2%で術前以下の投薬内容で眼圧コントロールが得られ,術後周辺虹彩前癒着の増加はほとんど認められず,また切開孔の再閉塞した例も認められなかった。アルゴンレーザー虹彩切開術との比較の結果,両術式の治療効果は長期的にも同等であると考えられた。

コクサッキーB4ウイルスによる散在性網脈絡膜炎の1例

著者: 平形恭子 ,   大島崇 ,   東範行

ページ範囲:P.1453 - P.1455

 過去に報告のないコクサッキーB4ウイルスによる散在性網脈絡膜炎の1例を報告する。症例は11歳の男子で,持続する高熱,全身倦怠感を訴え,諸検査の結果,無菌性髄膜炎,貧血,肝機能異常,心電図の異常を指摘された。視力は良好で自覚的には無症状であったが,眼底には後極部および中間周辺部を中心に血管に沿って散在する白色病巣を認めた。病巣は全身状態の改善とともに次第に軽減し,少数の瘢痕を残す以外は消失した。真菌,ウイルスを含む細菌学的検索では,コクサッキーB4ウイルスの抗体価のみ上昇がみられ,ウイルスの直接の分離同定はできなかったが,血中の抗体価の推移からコクサッキーB4ウイルスの感染によるものと思われた。

網膜動脈瘤40例の臨床像と治療法の検討

著者: 和田有子 ,   一井泰孝 ,   高橋寛二 ,   板垣隆 ,   三木弘彦 ,   宇山昌延

ページ範囲:P.1457 - P.1462

 最近10年間に40例42眼の網膜動脈瘤を経験し,その臨床像,治療法について検討した。男性9例,女性31例で,平均年齢は66歳であった。全身所見に,高血圧症と動脈硬化症が高頻度にみられた。初診時の眼底所見は,出血型が31眼(74%),滲出型が10眼あった。動脈瘤の数は1個のものが多かった。動脈瘤はすべて第3分枝以内の動脈に存在し,第2分枝に最も多くみられた。10眼では薬物療法で動脈瘤は自然消退した。出血吸収が遷延し血管外漏出が強い症例と,黄斑部に浮腫の及んだ症例32眼には,レーザーで動脈瘤の直接光凝固を行い,全例器質化に成功した。治療として光凝固が有効であると思われた。しかし合併症として,分枝動脈閉塞や動脈瘤からの再出血例を4例経験したので,過剰凝固にならない注意が必要である。

黄斑裂孔を伴ったpit-macular syndromeに対する光凝固療法

著者: 大西克尚 ,   佐川卓司 ,   荒木英生 ,   石橋達朗

ページ範囲:P.1463 - P.1467

 Pit-macular syndromeは先天性の視神経乳頭小窩に黄斑部の障害を伴った疾患である。この黄斑部の変化は主に視神経乳頭のpitを通って網膜下に移動した液により引き起こされると考えられているので,治療として光凝固療法が行われることが多いが,その凝固方法も一定していない。また,硝子体手術や硝子体内空気注入術も行われ,まだ治療方法が確立していない。そこで今回,本症に対して色素レーザーやアルゴンレーザーを応用し治療法を検討した。
 症例は17歳の女性で右眼の視力低下が初発症状である。視力は0.5であったが,2週間後に黄斑裂孔をきたし0.08に低下した。Pitの底面に存在していた透過性亢進を示す小血管の閉塞と,光凝固後のグリア細胞の増生による網膜下液の供給路の遮断とを目的としてpit底のみをアルゴンや色素レーザーで光凝固を行ったが無効であった。Pit縁の網膜に色素レーザー凝固を行ったが効果がなく,アルゴンレーザー凝固を行ったところ網膜剥離は消失し,視力は0.2に改善した。したがって,本症の治療には網膜と脈絡膜の癒着を強く起こすアルゴンレーザーを用いてpit縁の網膜に凝固するのがよいと思われた。

糖尿病患者の両眼性乳頭腫脹

著者: 戸塚秀子 ,   畠山正

ページ範囲:P.1468 - P.1472

 62歳男性の糖尿病患者に,視力良好な両眼性乳頭腫脹を認めた。右眼は著明な発赤腫脹,視野の鼻下側欠損を呈したが,左眼は限局的で軽微な浮腫で正常視野を示しdiabetic papillopathyが疑われた。経過により右乳頭腫脹は徐々に消退したが,左眼は増悪し,ピークとなった2か月後に視力低下(0.02)と中心暗点をきたした。ステロイド治療により左眼矯正視力は0.5まで回復し,視野は鼻側から鼻下側にかけて沈下を残した。結局,本症例は乳頭腫脹が視力障害に先行した両眼性の前部虚血性視神経症(AION)と診断された。糖尿病患者の乳頭腫脹は微小循環不全によって生じた軸索流のうっ滞によるものであり,軽度の虚血の持続により不可逆的軸索障害をきたすことが示唆される。したがって,diabetic papillopathyと虚血性視神経症は同一の病態である可能性がある。

カラー臨床報告

前房穿刺により早期に診断された眼犬蛔虫症

著者: 梅津秀夫 ,   松尾俊彦 ,   小山雅也 ,   松尾信彦 ,   石井明 ,   辻俊彦

ページ範囲:P.1415 - P.1417

 前房細胞診にて,多数の好酸球が証明されたことにより,眼犬蛔虫症を疑い,免疫血清学的所見と臨床所見にて確定診断ができたぶどう膜炎の症例を報告した。
 眼犬蛔虫症では,末梢血に好酸球増多を認めなくても,前房中に好酸球遊出を認めることがあるので,前房細胞診が早期診断,および鑑別診断に有効である。

文庫の窓から

眼科学(上・中・下)河本重次郎 著

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斎藤仁男

ページ範囲:P.1473 - P.1475

 わが国の幕末から明治の初めにかけては,欧米の医書の翻訳が盛んに行われたが,本邦人自らの著述は稀で,ことに眼科学の分野に至っては極めて少なかったようである。本書は19世紀末より20世紀初めにかけての邦人原著の眼科書として,わが国で最も多く版を重ねて出版されたものである。
 本書の著者,河本重次郎(1859〜1938)氏については揺籃期の日本近代眼科の父として,あまりによく知られた人であるが,明治18年(1885)眼科学研究のため,宮下俊吉(1860〜1900)氏,大西克知(1865〜1932)氏等とともにヨーロッパに留学し,マンツ(Willhelm Manz)氏,ミッヘル(Julius von Michel)氏およびフックス(Ernst Fuchs)氏等に師事し,その実証的な眼科研究に共鳴して,明治22年(1889)3月,留学を了えて帰国し,同年6月1日に帝国大学医科大学の教授に任ぜられ,その10月より眼科学講義を担当した。講義は,眼科学講義,検眼鏡用法,臨床講義,外来患者臨床講義(但し,検眼鏡用法は甲野棐助教授,明治36年以降,中泉行徳助教授受持)の4科目であったが,河本教授は就任してから数年間は教科書として特にまとまったものは用いなかったようで,恩師マンツ教授の外,西欧眼科の碩学の著書を取捨して講義案を作成して学生に授けたと伝えられている。

Group discussion

眼先天異常

著者: 馬嶋昭生

ページ範囲:P.1511 - P.1513

●Group discussion (GD)の名称についてのアンケート調査結果(世話人,馬場昭生)
 眼科でしか通用しないGDという名称は,多くの点で不利益が多いという筆者の提案から,数年前にGD世話人会で“研究会”への改称を決め,臨床眼科学会運営委員会へ提出したが,筆者には納得できない理由で否決された。しかし,その後も2, 3の主任教授から筆者の考えと同様の要請があり,昨年の本GDへの出席者にアンケートにより解答を頂いたので結果を報告する。解答数は77中「改正がよい」が57名(74%)で,その内「眼先天異常研究会」が44名,その他は「小児眼科学会と合同開催」,「眼先天異常学会」などであった。「現状のままでよい」は20名(26%)と四分の一にすぎなかった。以上の結果から,本GDも,他のGDでも行われたように,次回から,GDに参加しなかった会も含めて「遺伝性眼疾患,特に網膜色素変性」から通算した回数を「研究会」として併記することにした。従って,次回は「眼先天異常GD (第27回眼先天異常研究会)」とするので,特に若い研究者の皆さんは,業績や国内の眼科関係以外の雑誌には,「第○回眼先天異常研究会で発表した」と記載されるのがよいと思う。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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