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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科45巻1号

1991年01月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・294

ヤマトマダニによる眼瞼咬刺症の1例

著者: 長谷川修 ,   尾崎吏恵子

ページ範囲:P.6 - P.7

 緒言 ヤマトマダニによる人体咬刺症は,眼科領域においては眼瞼咬刺症が問題となる。今回は,マダニ咬刺症の治療とともにマダニが媒介する感染症についても考察を加えた。
 症例:56歳,男性

眼の組織・病理アトラス・51

毛様体扁平部血管新生

著者: 猪俣孟 ,   岩崎雅行

ページ範囲:P.10 - P.11

 硝子体血管新生は,糖尿病性網膜症,網膜中心静脈閉塞症,ベーチェット病など種々の眼内病変に続発しておこり,硝子体出血や牽引性網膜剥離をひきおこす重篤な眼病変の合併症である。もともと血管新生は生体の創傷治癒機構の一つとしておこるもので,それは生体にとっては望ましい組織反応であるが,眼球では硝子体内に血管が新生されることによって眼内組織の透明性が阻害される。すなわち,同じ創傷治癒反応でも眼球内と生体の他の組織とは相反する結果を招来することになる。
 硝子体血管新生の好発部位は視神経乳頭と毛様体扁平部である。このうち,とくに毛様体扁平部に血管新生が好発する。その理由は,毛様体扁平部と網膜鋸状縁との移行部に硝子体側と脈絡膜側を連絡する潜在的な通路が存在するためである。

眼科薬物療法のポイント—私の処方・25

クラミジア性結膜炎—新生児封入体結膜炎

著者: 中川尚

ページ範囲:P.50 - P.51

症例:日齢14,男児
 母親は妊娠中特に異常なく,正常経腟分娩にて出生。生後10日目より両眼の眼瞼腫脹,結膜の充血,多量の眼脂が出現した。

眼科手術のテクニック—私はこうしている・25

線維柱帯切除術(2)

著者: 新家真

ページ範囲:P.54 - P.56

術後早期合併症の注意点
 線維柱帯切除術(trabeculectomy)の術後早期の注意点について述べる。Trabeculectomy術後,全く何らの合併症も起こさず,眼圧が十分に低くコントロールされ,かつ濾過胞の出来具合も十分であるというのが理想であるが,実際は表に示すごとく,理想どおりにゆくのはむしろ少数で,約半数以上は術後早期に合併症を伴う。この合併症は,十分な前房水の結膜下への漏出という手術効果と表裏一体であり,術後合併症に神経質になる余り,強膜弁縫合を強く締めすぎると,当然長期的な濾過胞形成不良という結果を招くことになる。
 この濾過手術を行う限り,なかば当然の理論的帰結である,術後早期の過剰濾過による合併症といかにうまく共存し,かつそれをいかに処理するかが,trabeculectomyの成否にとって,手術自体と同様に,またはそれ以上に寄与していると考えられる。

今月の話題

眼科領域におけるPolymerase Chain Reaction法の応用

著者: 山本修士 ,   下村嘉一

ページ範囲:P.61 - P.63

 Polymerase Chain Reaction (PCR)法は,DNAポリメラーゼを用いた微量DNAの増幅方法である。眼科領域でもウイルス感染症の確定診断や,網膜色素変性症の原因遺伝子の検索などにPCR法が応用されてきた。ここでは,PCR法を用いた角膜ヘルペス患者の涙液よりの単純ヘルペスウイルスⅠ型DNAの検出法を中心として,眼科領域におけるPCR法の応用について解説する。

臨床報告

ベーチェット病での乳頭新生血管

著者: 古館直樹 ,   笹本洋一 ,   市石昭 ,   広瀬茂人 ,   大野重昭

ページ範囲:P.13 - P.16

 1975年から1988年の14年間に当科を受診した,眼症状を有するベーチェット病患者243例について病歴調査を行った結果,乳頭新生血管を伴うベーチェット病が7例10眼あった。症例は全例男性で,年齢は22歳から41歳(平均31.7歳),病型では完全型が3例,不全型が4例であった。経過観察期間は,4か月から11年(平均約4年)間で,最終視力は0.6以上のものが10眼中6眼(60%)と比較的良好であった。視力不良例は黄斑部萎縮や黄斑円孔などの合併症を起こしたものであった。ベーチェット病にみられる乳頭新生血管の成因については網膜の虚血性変化をあげる報告が多いが,本症例では,螢光眼底造影でいずれも毛細血管床の閉塞はなく,乳頭新生血管は炎症の直接的な結果と考えた。したがって乳頭新生血管に対する治療は抗炎症療法が中心であるべきと考える。

網膜中心静脈閉塞に毛様網膜動脈閉塞が併発した鉄欠乏性貧血症の1例

著者: 朝蔭博司 ,   堀江英司 ,   伊地知洋 ,   前田利根 ,   樋田哲夫 ,   青木功

ページ範囲:P.17 - P.19

 網膜中心静脈閉塞に毛様網膜動脈閉塞を併発した44歳女性を報告した。内科的精査の結果,鉄欠乏性貧血を認めたため,血管強化剤,循環改善剤および血栓溶解剤(アボキナーゼ®)の点滴に加え鉄剤の投与を行った。2か月半後,貧血の改善とともに検眼鏡的眼底所見は正常化した。
 網膜中心静脈閉塞の発症には,鉄欠乏性貧血による低酸素状態が関与し,解剖学的に脆弱な毛様網膜動脈はその網膜中心静脈閉塞による二次的な影響を受けやすいと思われる。

緑内障のある白内障眼への眼内レンズ挿入術—術後早期の変化

著者: 天野史郎 ,   清水公也

ページ範囲:P.21 - P.24

 緑内障75眼に対する後房眼内レンズ挿入術の術後早期の変化を検討した。眼圧調整に必要な治療は原発閉塞隅角緑内障(PACG)32眼全例と原発開放隅角緑内障(POAG)43眼の大多数例で術前と同じか減少した。POAGでは 30mmHgを越える眼圧上昇が5眼(12%)にあった。術後合併症はPACGで比較的多かった。この結果から以下の手術方針が示唆される。PACG眼では,眼圧調整が薬物療法でできる場合は白内障手術を行う。POAG眼では,内服療法下にある症例では緑内障手術を優先させる。十分な散瞳がえられ,手術操作が比較的容易であるPOAGの症例においては,緑内障手術,白内障摘出,後房眼内レンズ挿入を同時に行うtriple procedureも考慮する。

遷延性原田病における前眼部炎症の定量的分析

著者: 大久保彰 ,   大原國俊 ,   大久保好子 ,   佐々木洋 ,   宮本孝文 ,   大島史子

ページ範囲:P.25 - P.29

 遷延性原田病7例13眼の前眼部炎症をレーザーフレアー・セルメーターにより定量的に解析した。レーザーフレアー・セルメーターによって得られた前房フレアー強度は,対象とした全例で細隙灯顕微鏡による前房フレアー所見とよく一致した。観察期間中のフレアー値の最低値は正常者に比較して有意に高い値を示し,長期間の前眼部炎症の継続と血液—房水柵破壊の存在が示唆された。細隙灯顕微鏡による前眼部炎症の評価とともにレーザーフレアー・セルメーターによる前房フレアーの定量的測定の導入によって,原田病などの内因性ぶどう膜炎の病勢分析がより詳細に行える可能性が考えられた。

糖尿病性網膜症での剥離網膜血管

著者: 広川博之 ,   吉田晃敏 ,   門正則 ,   秋葉純

ページ範囲:P.31 - P.34

 剥離網膜血管(avulsed retinal vessel:ARV)のある糖尿病性網膜症例36眼の臨床所見を検討した。36眼のすべてが増殖性網膜症で,高頻度に網膜光凝固術あるいは硝子体出血の既往があった。ARVは耳側網膜に多発し,また,すべて赤道部より後極の網膜静脈に存在していた。後部硝子体はすべての症例でARVに牽引のある部分剥離であった。また,ARVの位置に網膜新生血管が7眼(19%)に観察された。経過を観察できた21例のうち新たに7例(33%)に硝子体出血が生じた。網膜新生血管が生じた例は皆無であった。
 以上より,糖尿病性網膜症でのARVの発生には,網膜光凝固術による網膜内層の破壊,硝子体出血による硝子体の収縮,およびNVを介する網膜血管と硝子体の強固な接着が関与していると推測された。

網膜剥離を合併した赤道部強膜ぶどう腫の1例

著者: 橋添元胤 ,   小椋祐一郎 ,   安渕幸雄 ,   本田孔士 ,   浅山邦夫

ページ範囲:P.35 - P.38

 網膜剥離を合併した広範な両眼性の赤道部強膜ぶどう腫の症例を経験した。
 症例は80歳の女性で,左眼視力低下を訴え網膜剥離を指摘されて,京都大学病院眼科を受診した。初診時,視力は右眼0.01(0.04),左眼眼前手動弁(矯正不能)であり,右眼には耳側周辺部,左眼には全周に及ぶ網膜剥離があった。両眼共に赤道部に輪状の幅広い網脈絡膜萎縮をみたが,裂孔は不明であった。76歳頃より両眼の高眼圧症の既往があり,点眼加療を行っていた。右眼は78歳時に網膜剥離を指摘され,光凝固施行後,剥離の範囲は拡大していない。左眼に対しては2回目の光凝固術を施行したが奏功せず,観血的療法のため当科へ紹介された。球結膜を剥離し,強膜を露出すると,赤道部強膜は著しく菲薄化しており,耳側半周は輪状に約10mmの幅で,脈絡膜が透見された。網膜下排液 ジアテルミー凝固による強膜短縮術,保存強膜およびシリコンバンドを用いた輪状締結術を行い,網膜は復位し視力は左眼0.03(0.04)に改善した。
 このような赤道部強膜ぶどう腫に網膜剥離を合併する症例の報告は欧米では散見されるが,本邦ではきわめてまれなものであると思われる。本症例の経過より,赤道部ぶどう腫に合併した網膜剥離の成因およびその治療法について考察した。

白内障手術後角膜の形状解析 第2報

著者: 池沢暁子 ,   宮田和典 ,   清水公也

ページ範囲:P.39 - P.43

 白内障手術における術後乱視の観察を角膜のphotokeratoscope写真をphotoker-atoanalyser (PKA)を用いて解析し,角膜の中間周辺部の形状変化を観察した。対象は,7mm (10眼)および3.9mm (11眼)の強角膜切開創より超音波乳化吸引術と眼内レンズ移植を施行した2群21眼である。角膜乱視は術前,術後7日,1,3,6か月に,中央部をauto-keratometerで,中間周辺部はPKAを用いて測定した。形状解析は直径約3mm,約6mmの部位に相当する垂直方向の上下,水平方向の鼻側,耳側の計8か所で行い,局所の屈折力の術前値からの動きを算出した。7mm群において,中央部の角膜形状は7日目に水平方向はflat化,垂直方向はsteep化した。また垂直方向の中間周辺部の屈折力の動きは縫合部に近い部位ほど大きい値を示し,非対称的な変形を示した。ところが小切開3.9mm群では,水平,垂直方向は角膜中央部,中間周辺部ともに角膜屈折力の変化は小さく,術後角膜の変形は少なかった。白内障手術において,小切開法は従来の切開法と比べ,術後早期より角膜形状変化を少なくするために優れた方法と考えられる。

ウイルス性網膜ぶどう膜炎が疑われる3症例

著者: 諏訪雄三 ,   大路正人 ,   中川やよい ,   多田玲 ,   笹部哲生 ,   春田恭照 ,   湯浅武之助

ページ範囲:P.44 - P.49

 60歳前後の女性にみられたウイルス性と思われる両眼性網膜ぶどう膜炎の3症例を報告した。3例とも前眼部の炎症は軽度で,隅角に結節があり,軽度ないし中等度のびまん性硝子体混濁がみられた。眼底には,赤道部から周辺部にかけて小円形の黄白色滲出斑が散在し,一部に網膜壊死様の融合した滲出斑が存在した。網膜動脈炎および静脈炎もあった。眼病変の推移は緩慢で徐々に軽快し,大量のステロイドとアシクロビルが有効であった。これらの症例の臨床症状および経過が他のウイルス性網膜ぶどう膜炎と類似しており,前房水の検索による結果も総合すると,単純ヘルペスウイルスの関与が疑われた。

フルコナゾールの局所投与により治癒した角膜真菌症の1例

著者: 石橋康久 ,   渡邊亮子 ,   山本享宏 ,   本村幸子 ,   根本龍司

ページ範囲:P.65 - P.68

 外傷に起因する角膜真菌症が57歳の男性に発症した。当初ピマリシン点眼,5-FCの内服を試みたが効果がなく,5-FCによる薬疹が出現した。ついでイトラコナゾール内服で治療を行ったが,やはり薬疹が出現したため,内服治療は中止した。患者はフルコナゾールの結膜下注射,点眼および病巣部の掻爬(debridement)による治療に反応し,角膜中央に淡い混濁を残して治癒した。視力は眼前指数弁より0.3まで回復した。フルコナゾール局所投与および病巣掻爬による副作用は全く認められなかった。

オウム病が疑われたぶどう膜炎の1例

著者: 滝川素代 ,   有馬美香 ,   森一満 ,   宇治幸隆

ページ範囲:P.69 - P.72

 オウム病抗体価の上昇を伴うぶどう膜炎の1症例を経験した。前房内炎症に加え,眼底所見では左黄斑部に白色出病変と漿液性網膜剥離を,両側眼底周辺部に小白点と毛細血管網の螢光漏出とを認めた。
 オウム病の眼所見に関する報告は少なく診断は困難であったが,咽頭痛などの上気道炎症状,インコ飼育歴,鑑別診断より本症例の原因としてオウム病が最も疑われた。

Argon laser trabeculoplastyの前房蛋白濃度と細胞数に及ぼす影響

著者: 水流忠彦 ,   釣巻穣 ,   澤充

ページ範囲:P.73 - P.76

 Argon Laser Trabeculoplasty (ALT)が前房蛋白濃度・細胞数に及ぼす影響を laser flare cell meterを用いて検討した。対象は過去に手術既往のない開放隅角緑内障患者20名20眼,平均年齢66歳(41〜87歳)で,病型は原発開放隅角緑内障(POAG)が12名12眼,嚢性緑内障(CG)が8名8眼であった。ALT術前の前房蛋白濃度(ウシ血清アルブミン濃度換算値)は53.1±25.3mg/dlであったが,術後2日目に平均338.2mg/dlと最大となった後漸減した。術後4週目までは有意な前房蛋白濃度の増加が認められた。前房細胞数は術後2日目でのみ有意に増加した。POAGとCGでは前房蛋白濃度と細胞数に有意差はなかった。

眼窩先端部症候群で発見された急性骨髄性白血病の1例

著者: 小坂敏哉 ,   藤武俊治 ,   福原雅美 ,   小田健司 ,   林雄三

ページ範囲:P.77 - P.80

 左眼の眼窩先端部症候群で発見された急性骨髄性白血病の1例を報告した。
 患者は49歳の男性で,初診時,左眼に眼窩先端部症候群があり末梢血液検査,骨髄穿刺所見などから急性骨髄性白血病M2(FAB分類)と診断された。全身的なB-DOMP療法ののち,眼症状が軽快した。

ぶどう膜炎症例に対する眼内レンズ挿入術

著者: 沖波聡 ,   岩崎義弘 ,   松村美代

ページ範囲:P.81 - P.84

 ぶどう膜炎が鎮静してから4年以上を経過した60歳以上の4例6眼に水晶体嚢外摘出術と後房レンズ挿入術を行い,全例,0.5以上の術後視力が得られた。術後早期には66.7%に一過性の眼圧上昇やフィブリンの出現がみられたが,重篤な炎症の再燃はみられなかった。症例によっては,ぶどう膜炎の既往があっても眼内レンズ挿入術の適応となると考えられるが,炎症が長期間鎮静していた症例を選択するなど,症例の選択,手術時期の決定には慎重さが必要である。

文庫の窓から

和蘭眼科新書(その3)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斉藤仁男

ページ範囲:P.86 - P.87

 本書はこのように,文化12年の春正月に初めて刊行されたが,次いで同年本書は眼球解剖図の一部を修正して,書名を「眼科新書」と改めて,浪華書肆群玉堂蔵版にて発行された。
 この「和蘭眼科新書」と「眼科新書」の両書に掲げられた眼球解剖図を比較すると,11個の図の中,第10図,第11図に修正が加えられている。即ち,第10図の図説で,前者において“T毛様線,自硝子液透見”が後者では“T角膜”とあり,第11図において前者には図番号がなく後者にはある。また,同図の水晶液・硝子液をもる器が前者の方は貝殼,後者の図ではガラス器になっている。そして図説では前者の方に“丙蒲桃膜”後者には“丙毛様線 自 蒲桃膜所剥離者”とある。本書の本文は全12篇よりなっているが,「眼科新書」の第11篇が第12篇,第12篇が第13篇に誤摺になっている外はこの両書の間にはほとんど相違が認められないようである。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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