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臨床報告
網膜剥離を合併した赤道部強膜ぶどう腫の1例
著者: 橋添元胤1 小椋祐一郎1 安渕幸雄1 本田孔士1 浅山邦夫2
所属機関: 1京都大学眼科 2国立京都病院眼科
ページ範囲:P.35 - P.38
文献購入ページに移動症例は80歳の女性で,左眼視力低下を訴え網膜剥離を指摘されて,京都大学病院眼科を受診した。初診時,視力は右眼0.01(0.04),左眼眼前手動弁(矯正不能)であり,右眼には耳側周辺部,左眼には全周に及ぶ網膜剥離があった。両眼共に赤道部に輪状の幅広い網脈絡膜萎縮をみたが,裂孔は不明であった。76歳頃より両眼の高眼圧症の既往があり,点眼加療を行っていた。右眼は78歳時に網膜剥離を指摘され,光凝固施行後,剥離の範囲は拡大していない。左眼に対しては2回目の光凝固術を施行したが奏功せず,観血的療法のため当科へ紹介された。球結膜を剥離し,強膜を露出すると,赤道部強膜は著しく菲薄化しており,耳側半周は輪状に約10mmの幅で,脈絡膜が透見された。網膜下排液 ジアテルミー凝固による強膜短縮術,保存強膜およびシリコンバンドを用いた輪状締結術を行い,網膜は復位し視力は左眼0.03(0.04)に改善した。
このような赤道部強膜ぶどう腫に網膜剥離を合併する症例の報告は欧米では散見されるが,本邦ではきわめてまれなものであると思われる。本症例の経過より,赤道部ぶどう腫に合併した網膜剥離の成因およびその治療法について考察した。
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