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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科45巻3号

1991年03月発行

文献概要

連載 眼の組織・病理アトラス・53

眼瞼の基底細胞癌

著者: 猪俣孟1

所属機関: 1九州大学

ページ範囲:P.202 - P.203

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 基底細胞癌basal cell carcinomaは,皮様嚢腫,母斑細胞性母斑とともに眼瞼に発生するもっとも頻度の高い腫瘍の1つで,眼瞼腫瘍の約10%を占め,高齢者に頻発する。本腫瘍の60%は下眼瞼に発生する。発症原因として,強い太陽光線や大量の放射線刺激が誘因となるともいわれている。腫瘍が大きくなると,周囲組織に浸潤して,眼球壁,副鼻腔,眼窩に広がるが,遠隔転移はきわめてまれである。病理学的にも腫瘍細胞の異型性は少なく,毛,脂腺,アポクリン腺,エクリン腺など,皮膚付属器への分化がみられる。したがって,真の癌ではないという考えから,基底細胞腫basal cell epitheliomaとも呼ばれる。しかし,WHOの眼腫瘍組織分類をはじめ眼科関係の文献では基底細胞癌として扱われている。
 基底細胞癌の臨床症状は,初期には小結節状の隆起がみられ,やがて不規則地図状に拡大し,その中央部に浅い潰瘍を伴う(図1)。刺激症状がある。色素沈着を伴うことが多い。腫瘍の肉眼的形状から,結節—潰瘍型,色素沈着型,斑状硬皮症型などの臨床的分類がある。色素沈着を伴うものでは,悪性黒色腫と誤診されることがある。わが国では,眼瞼皮膚の悪性黒色腫はきわめてまれで,しかも基底細胞癌の肉眼的形状はきわめて特徴的であるので,悪性黒色腫との鑑別は容易である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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