特集 第44回日本臨床眼科学会講演集(2)1990年9月 東京
学会原著
Red eyed shunt syndromeを伴う海綿静脈洞部脳硬膜動静脈奇形(dural AVM)の脳血流及び脳酸素代謝異常について
著者:
清澤源弘1
伊藤正敏2
畑沢順2
高橋明3
井戸達雄1
松澤大樹4
玉井信1
所属機関:
1東北大学医学部眼科
2東北大学サイクロンRIセンター
3広南病院脳外科
4東北大学抗酸菌病研究所放射線科
ページ範囲:P.545 - P.548
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海綿静脈洞部脳硬膜動静脈奇形の眼症状と脳循環を6名の患者で調べた。患側に静脈欝滞網膜症2名,眼球運動障害3名を認め,患側平均眼圧は25.3mmHgに上昇していた。15O標識CO2吸入法による脳血流量測定では前頭葉対側で約30%(P<0.05)の低下があり,15O標識O2吸入法による脳酸素抽出率測定では同部に正常対照群より約10%の増加(P≦0.10)があり,計算される脳酸素消費量は両側とも有意の低下を示さなかった。dural AVMに伴う前頭葉血流障害は今までに報告がなく,しかも臨床眼症状とは反対側に存在する。この所見は,眼症状をひきおこす患側上眼静脈への静脈血の逆流が出血性脳梗塞などの神経症状の発症を防いでいる可能性を示しており,今後本症の治療を考える上で重要な知見であると思われた。