文献詳細
特集 第44回日本臨床眼科学会講演集(3)1990年9月 東京
学会原著
文献概要
筆者らはヒト水晶体上皮細胞は組織培養中で線維性化生を起こす間に,PGE2およびIL-1αを産生することを報告した。生体眼におけるこれらメディエーターの産生を確認するため,白内障術後の前嚢切開縁における水晶体上皮細胞の線維性化生の所見と,血液房水柵破綻の状態をレーザーフレアセルメーターで測定した前房フレア値との相関を調べた。13例の両眼老人性白内障患者(61±8歳)でcircuLar capsulorhexisに続いて核乳化吸引術を行い後房レンズを嚢内に固定した。片方の眼は残った前嚢下に付着している水晶体上皮細胞は除去せず,他眼では超音波吸引法で除去した。上皮細胞非除去眼では全例後房レンズが前嚢切開縁と接し,線維性化生を起こし始める6〜14日頃に一致してフレア値は有意に上昇し術後1〜3日言にみられたピークとともに2峰性を示した。すなわち血液房水柵が再破綻した。上皮細胞除去眼では術後のフレア値は徐々に下降し線維性化生もフレア値の再上昇もみられなかった。この結果は生体でもPGE2とIL-1αが産生されることを示している。偽水晶体眼の術後炎症には線維性化生を起こす間に上皮細胞が産生するPGE2,IL-1αによって引き起こされる非特異的急性炎症が含まれる。フィブリン反応はこの強い炎症の表現である。上皮細胞の線維性化生は今後眼内レンズの生体適合性を考えるうえで重要なファクターとなる。
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