臨床報告
網膜色素変性症に対する東洋医学治療の試み
著者:
岩崎義弘1
松村美代1
後藤保郎1
石川享2
吉田光範2
松本享彦2
所属機関:
1兵庫県立尼崎病院眼科
2兵庫県立尼崎病院付属東洋医学研究所
ページ範囲:P.1561 - P.1565
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網膜色素変性症患者67名に対し東洋医学治療を行い,治療開始後3か月,12か月の時点での他覚的,自覚的変化につき検討した。治療内容は針および漢方治療であり,針治療は,湖南中医学院付属病院および北京中医研究院付属病院のデータを参考とし,週1回ないしは2回,40ミリ16号針を用いて身体の各部(健明,上晴明,太陽,球後,合谷,曲池,光明)に軽い得気を得るまで刺入し,10〜15分留置した。漢方は,高血圧または高齢の患者には牛車腎気丸(7.5g分3)および桂枝茯苓丸(7.5g分3)を,血圧が正常または低血圧の患者には補中益気湯(7.5g分3)および桂枝茯苓丸(7.5g分3)を用いた。治療開始3か月後視力が改善したものは67名中0名,electroretinogram (ERG)の改善したもの0名,視野拡大傾向を認めたもの5名,視野悪化したもの1名,自覚的に改善したもの11名であった。治療開始12か月後視力改善したものは21名中0名,ERG改善したもの0名,視野拡大傾向を示したもの1名,視野の悪化を認めたもの5名,自覚的改善は9名であった。網膜色素変性症に対する東洋医学治療においてはdrop outする者が多く,視野進行例もその自然経過と同様の頻度で存在し,1年間という限られた範囲内で東洋医学治療をみた場合,有効とはいいにくいと思われた。