薬の臨床
キノロン系抗菌剤DR−3355のヒト涙液内移行
著者:
富井隆夫1
福田正道1
佐々木一之1
所属機関:
1金沢医科大学眼科学教室
ページ範囲:P.1607 - P.1610
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キノロン系抗菌剤DR−3355のヒト涙液内移行濃度を測定し,薬動力学的に解析した。同時に涙液採取法の違いによる測定濃度の差について検討した。DR−3355はofloxacinの光学異性体(l体)である。この薬剤を正常男性健康人13名(24〜39歳,平均年齢32歳)に,空腹時1錠(100mg)を経口投与したうえで,投与後0.5,1,2,4,8,12時間時点で涙液を採取した。涙液採取は1回の薬剤投与に対し1時点のみとした。涙液採取はガラス毛細管を用いて,涙液メニスカスから直接採取する方法(第一法)と,あらかじめ下結膜嚢に生理食塩水を20μl点眼したうえで,涙液を回収する方法(第二法)を用いた。両方法とも薬剤投与後0.5時間より涙液中への移行を認め,ピーク値は2時間時点で,0.61μg/ml (第一法),0.92μg/ml (第二法)であった。その後,8時間(第一法),12時間(第二法)まで涙液中へのDR−3355の移行濃度が測定可能であった。涙液の採取方法による測定濃度差は,各時点で(第二法)が(第一法)を0.2μg/ml程度上回ったが,両方法の測定値の相関係数は0.9965と良好であった。