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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科46巻10号

1992年10月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・314

ステロイド注射と全身投与が奏効した眼窩内血管腫の1例

著者: 中西徳昌 ,   大平明彦 ,   福島正隆 ,   土田嘉昭 ,   岩中督

ページ範囲:P.1402 - P.1404

 緒言 顔面血管腫は乳児においては頻度の高い疾患であるが,血管腫が眼窩筋円錐内まで及んだ報告はまれである。今回筆者らは頬部から眼窩筋円錐内に及ぶ血管腫により眼球突出をきたし,ステロイド局所および全身投与によって著明な改善を示した症例を経験したので報告する。
 症例 生後3か月の女児。出生10日頃に左下眼瞼周囲に鮮紅色の色素斑が出現し,その後色素斑は頬部へと拡大し苺状血管腫の様相を示すようになった。生後2月頃,同部の腫脹および眼球突出も出現したため,当科に紹介受診した。

眼の組織・病理アトラス・72

サルコイドーシス

著者: 猪俣孟

ページ範囲:P.1406 - P.1407

 サルコイドーシスsarcoidosisは多臓器をおかす原因不明の疾患で,病変部に乾酪壊死を伴わない慢性肉芽腫性炎症の病像を示す。病変は,両側の肺門リンパ節をはじめ,肺,皮膚,脾臓,肝臓,眼などに高頻度に認められる。眼組織では,眼球内および眼球付属器のすべての部位に発生しうる。
 臨床的には,自覚症状に乏しく,職場における健康診断で肺門リンパ節の腫脹を発見されて,あるいは眼科で慢性ぶどう膜炎や緑内障を指摘されたことが契機となって,本症が発見される。

眼科手術のテクニック—私はこうしている・46

結膜移植および被覆術

著者: 崎元卓

ページ範囲:P.1408 - P.1411

 眼科手術のなかで球結膜の移植術あるいは被覆術は古典的なものの1つであり,すでに19世紀後半には重篤な角膜疾患に対する治療法として知られていた。しかしながら,種々の治療薬,手術法が発達した現代でも,これらが非常に有用な治療手段として使用されていることは,角膜に対する結膜の重要性を表わすものとして興味深い。近年,Ocular surface disordersが注目され,角膜表層の改善による視力回復を目的としたいくつかの手術方法が工夫され,その1つに角膜上皮形成術(Keratoepithelioplasty)が行われている。しかしながら,この術式の適応と考えられる症例に対しても,健丈な自己結膜の利用が可能であれば,donor角膜の上皮組織を利用するより予後が良いことが再確認されている。このような背景を考え本項で結膜に対する基本的な術式である結膜移植および被覆術を見直してみるのは重要である。

今月の話題

原田病とHLA

著者: 新藤裕実子 ,   水木信久

ページ範囲:P.1413 - P.1420

 ヒト組織適合遺伝子複合体であるHLA抗原は,自己免疫疾患の遺伝的発症要因の1つと考えられている。HLA抗原と疾患発症との相関に対する分子機構を,3大ぶどう膜炎の1つである原田病を例に概説した。

目でみるCT・MRI眼科学・4

[4]視神経疾患

著者: 中尾雄三

ページ範囲:P.1423 - P.1427

 CT-ScanとMRIの臨床への応用は視神経疾患の診断と治療に新しい展開をもたらした。とくにMRIでは視神経に沿った矢状断面や冠状断面の選択,STIR法,造影剤ガドリニウムDTPAが有用である。

臨床報告

眼内レンズ挿入術の後発白内障の多変量解析による検討

著者: 内尾英一 ,   稲村幹夫 ,   森冨喜子

ページ範囲:P.1429 - P.1434

 眼内レンズ(以下IOL)挿入術後の後発白内障に関与する因子を求めるために数量化理論Ⅱ類を用いて検討した。対象は水晶体嚢外摘出術+IOL挿入術を行った173例193眼である。IOLは合計24種類を使用した。後発白内障は12眼6.2%にみられ,capsulotomyは4眼33.3%で実施されていた。後発白内障は術前の虹彩後癒着合併例(33.3%)および全長13.00mmのIOL(20.8%)で有意に多くみられた(P<0.05)ほか,支持部角度,光学部径,偽落屑症候群そして角膜片雲などが強い関与を示した。後発白内障の防止には,術中の水晶体上皮の除去とともに水晶体上皮の増殖を抑制する化学的ならびに機械的特性をもったIOLを選択することが重要である。

トリアゾール系抗真菌剤による角膜真菌症の治療

著者: 石橋康久 ,   加畑隆通 ,   本村幸子 ,   渡辺亮子

ページ範囲:P.1437 - P.1443

 トリアゾール系の抗真菌剤であるイトラコナゾールまたはフルコナゾールの内服により4例の角膜真菌症を治療した(イトラコナゾール2例,フルコナゾール2例)。症例1は68歳の女性でソフトコンタクトレンズの連続装用中に角膜真菌症を発症し,イトラコナゾールの内服により真菌症は治癒した。症例2は61歳の男性で,左眼を植物の枝で突いて発症し,イトラコナゾール内服で治癒した。症例3は62歳の男性で外傷により発症した。フルコナゾールの投与で治癒した。症例4は33歳の男性で外傷により発症し,フルコナゾール内服で治癒した。これらの症例の治療中に薬剤の副作用と思われる所見はなかった。これらの薬剤は角膜真菌症の治療に有効で,安全性も高く今後さらに検討されるべきものと考えられた。

角膜脂肪変性症の1症例

著者: 高橋邦昌 ,   高島保之 ,   飯田文人 ,   鈴木春見

ページ範囲:P.1445 - P.1448

 36歳女性の片眼性の角膜脂肪変性症に対し表層角膜移植術を施行した。その病理組織所見は,光学顕微鏡において,角膜実質内は膠原線維の走行が乱れ,細胞が集積し,その細胞質内に脂肪染色により中性脂肪を証明した。角膜実質内に血管侵入も認めた。電子顕微鏡において,組織球が多数の脂肪球を細胞内に取り込んでいた。本症例は,眼疾患の既往はないが,無症候性の角膜の炎症があって血管侵入が起こり,続発性に角膜脂肪変性症が発生したと推察した。

結膜および眼窩にみられたextramedullary plasmacytomaの1症例

著者: 槃木弘 ,   井上正則 ,   坂井智代 ,   文順永

ページ範囲:P.1449 - P.1451

 結膜および眼窩にみられたextramedul—lary plasmacytomaの1例を経験した。症例は78歳の女性。左下眼瞼球結膜に弾性硬で可動性に乏しい腫瘍を認め,CT検査で左下眼瞼結膜下より眼窩へ進展する腫瘍陰影を認めた。両初期白内障以外,眼科学的には特に異常所見はなかった。血液および尿検査にても異常を認めなかった。腫瘍摘出,生検術を行い,腫瘍は免疫染色によりIgGχチェーンに対し陽性を示すplasmacytomaであった。骨髄検索を含め,全身検索にてほかに異常所見を認めなかったため,本症例をextramed-ullary plasmacytomaと診断した。

網膜血管腫の1例

著者: 山本美保 ,   砂川光子 ,   中野豊

ページ範囲:P.1453 - P.1455

 29歳の女性で,左眼に孤発性網膜血管腫と高度の黄斑浮腫を認めた症例の血管腫に対し,5回に分け,アルゴンレーザー光凝固術を試みた。その結果,血管腫は著明に縮小,黄斑浮腫も消失し,視力も0.3より1.2に回復した。網膜血管腫とそれに伴う黄斑部病変が,光凝固術により著明に改善した症例を経験したので報告した。

液体パーフルオロカーボンを用いた硝子体内脱臼眼内レンズの整復

著者: 池田誠宏 ,   佐藤圭子 ,   高峯行男 ,   岩崎哲也

ページ範囲:P.1465 - P.1468

 眼内レンズ(IOL)が挿入7か月後に完全脱臼した1症例に対して液体パーフルオロカーボン(PFC)を用いたIOL摘出術を施行し,同時にIOLの毛様溝縫着術を施行した。PFCを用いたIOLの摘出は容易であり,眼内で鑷子によるIOLの保持も不要でかつ10Lの摘出時に眼球が虚脱することもなかった。さらに,引き続きIOLを毛様溝へ縫着する場合にも,IOLの傾斜,落下などの合併症を生ずることもなく,同時に眼球の形状も保持され,安定したIOLの挿入が可能であった。

低眼圧緑内障を呈した多発性脳梗塞の4症例

著者: 細田源浩 ,   山林茂樹 ,   塚原重雄

ページ範囲:P.1470 - P.1475

 視神経乳頭が緑内障性の陥凹を呈し,視野は緑内障性変化を示しながら,開放隅角で,眼圧は常に正常範囲にある低眼圧緑内障124例について原因検索を行ったところ多発性脳梗塞がみられた4症例を報告した。
 症例は57〜80歳ですべて男性であった。頭部CT検査により脳内に多発性の脳梗塞巣が認められた。高血圧,糖尿病が2例,狭心症が1例にみられた。
 視神経の緑内障性変化の原因として視神経の栄養血管の循環障害による視神経乳頭の脆弱性のためと考えられた。

ベーチェット病における眼底発作と前房蛋白濃度の経時的変化

著者: 永原幸 ,   澤充 ,   林清文 ,   増田寛次郎

ページ範囲:P.1481 - P.1483

 眼底発作を繰り返すベーチェット病患者(網脈絡膜炎型)3症例を対象に,レーザーフレアセルメーター(興和FC−1000®)を用いて前房蛋白濃度を測定し,眼底発作と前房蛋白濃度との関係を検討した。網脈絡膜炎型では,眼底発作に続発して前房蛋白の上昇がみられ,眼底発作を予測することはできなかった。

CTスキャンとMRIで画像診断が異なった眼窩腫瘍の2例

著者: 中村裕 ,   木村肇二郎 ,   平形寿孝 ,   志賀逸夫

ページ範囲:P.1485 - P.1488

 X線CTとMRIで画像診断所見が異なった眼窩先端部に限局した2症例を経験したので報告する。両症例ともマーカス・ガン瞳孔,中心暗点を認め,視神経障害を早期から伴っていた。X線CTでは境界の不鮮明な腫瘍陰影が認められ眼窩炎性偽腫瘍が疑われたが,MRIでは境界が鮮明であり,視神経鞘髄膜腫と診断した。X線CTで腫瘍の辺縁が不明瞭であったのはbeam hard-ening artifactのためであったと思われた。これらの症例のように眼窩先端部に限局した小病変ではMRIがX線CTより有用である。

急激な視力低下で発見された肺癌の眼窩内転移の1例

著者: 桝本美樹 ,   栗原かすみ ,   坂本泰二 ,   石橋達朗 ,   大西克尚 ,   田中希代子

ページ範囲:P.1489 - P.1492

 肺癌の眼窩内転移の1例を報告した。症例は65歳の男性で,右眼視力低下と眼痛を主訴に眼科を受診した。右眼底に視神経乳頭浮腫,網脈絡膜の隆起がみられ,頭部CTで右眼球後部および視神経に接した腫瘤が認められた。切除標本の病理組織診断は扁平上皮癌であった。全身精査の結果,肺の扁平上皮癌の存在が明らかになり,右眼窩腫瘍は肺癌の転移であった。

妊娠に伴う網膜血流量の増加

著者: 田川博 ,   ,   ,   ,  

ページ範囲:P.1493 - P.1495

 対象は以前にbidirectional laser Dop-pler法の正常者として測定され,その後妊娠した26歳女子で,妊娠中と分娩後に血流量の測定を行った。測定部位は右眼の下耳側動脈である。Flow pulsatility(収縮期血流速度/拡張期血流速度)は妊娠前には3.2であり,妊娠26週には4.75に増加し,分娩直前まで一定であった。妊娠前と比べ,血流速度と血流量は妊娠22週には変化を認めず,26週に27%と21%,30週に46%と40%,34週に54%と61%,39週に95%と72%の増加を示した。測定値は分娩4週後には,ほとんど妊娠前の値に復帰していた。妊娠に伴い血流量は増加したが,妊娠22週までは増加が認められず,網膜循環には独自の血流調節機能が存在していることが示唆された。

分娩後の一過性皮質盲

著者: 佐藤泰広 ,   大平明彦 ,   山上悠一

ページ範囲:P.1497 - P.1501

 24歳初産婦の患者は分娩直後に突然の両眼視力障害を生じ,視力は光覚弁となった。眼底と対光反応に異常はなく,CT, MRIにて両側後頭葉に浮腫と考えられる異常像を認めた。治療により,急速かつ完全に回復した。過去の同様な報告24例をあわせて検討した。妊娠に関連した皮質盲の発症時期は,妊娠末期から分娩直後にかけて多く,若年層か高年層の,初産婦に多い傾向があった。子癇と妊娠中毒症が危険因子であり,視力低下は両眼性で,光覚弁以下が大部分であった。回復は急速で後遺症をほとんど残さなかった。

斜筋手術を計画するためのコンピュータ・プログラム

著者: 長谷部聡 ,   大月洋 ,   田所康徳 ,   岸本典子 ,   渡辺聖 ,   岡野正樹

ページ範囲:P.1503 - P.1506

 上斜筋麻痺71例について,術前術後にシノプトメータで49方向のむき眼位における上下偏位を測定し,術量—矯正効果を検討した。これをもとに,術前の上下偏位のパターンを用いて,6種類の手術を行った場合に期待される矯正効果をシミュレーションし,最適の術式,術量を判定するコンピュータ・プログラム(SOCALC)を試作した。第1眼位におけるプログラムの予測精度(σ)は,斜筋手術で約2〜3°,直筋手術で約1〜2°と期待される。

仮性同色表の自動提示に関する研究—6.入力方法の改良,および本研究の総括

著者: 深見嘉一郎

ページ範囲:P.1507 - P.1509

 仮性同色表をその提示条件を満足するように提示できる自動装置を開発した。小型化のため検査距離が短く,表が小さい東京医大式色覚検査表(全5表)を使用し,提示時間を0.4秒として,偽陰性を少なくした。今回は反応の入力をテンキーで行えるようにし,検者の意図が介入せず,使いやすいものにした。これで,この種の装置の基本型は完成した。
 仮性同色表の提示を機械化することは,本来の簡便さをなくすが,提示順序の無作為化や提示時間が正確になり,信頼度が高くなる。さらに内蔵させる表を選ぶことにより,仮性同色表の本来の目的である検出のみに限定できる。またスクリーニングのさいに色覚異常者のプライバシーが容易に保てる。

High-pass resolution perimetryと視野指標,乳頭辺縁面積との相関

著者: 富田剛司 ,   前田美保子 ,   曽賀野茂世 ,   北澤克明

ページ範囲:P.1511 - P.1515

 High-pass resolution perimetry (HRP)により測定された視機能指標である“functionalchannels(FC)”と従来の自動視野計による視野指標,および乳頭辺縁面積との相関を検討した。18例26眼の正常眼圧緑内障において,FC はHumphrey自動視野のMean Deviation,Roden-stock Optic Nerve Head Analyzerで測定した乳頭辺縁面積と統計学的に有意に相関した。Aul-hornの視野病期分類(Greve変法)でⅡ期以前の14眼においては,FCと辺縁面積の間に有意な正の相関を認めたが,視野視標との相関はみられなかった。
 これらの結果より,HRPは早期正常眼圧緑内障における網膜神経線維量を推定することのできる新しい技法として検討に値すると思われた。

スギ花粉症に対する塩酸プロカテロール点眼液の眼誘発反応抑制効果

著者: 佐久間靖子 ,   三田晴久 ,   信太隆夫

ページ範囲:P.1517 - P.1520

 スギ花粉症患者30例に,抗原による眼誘発試験を行い,0.003%,0.001%および0.0003%procaterol点眼液の涙液中ヒスタミン遊離抑制効果を検討した。右眼にprocaterol点眼液,左眼にplacebo点眼液を点眼し,10分後に,スギ抗原液を点眼して,アレルギー反応を誘発した。Proca-terol投与眼の誘発5分および10分後の涙液中ヒスタミン量は,対照眼に比べ,いずれの濃度においても有意なヒスタミン遊離抑制効果が認められたが,3濃度のヒスタミン遊離抑制効果の間には有意差はなかった。Procaterol点眼液はスギ花粉症に対する有効な薬剤であると考えられた。

カラー臨床報告

切迫黄斑円孔および早期黄斑円孔の手術成績

著者: 荻野誠周

ページ範囲:P.1457 - P.1463

 黄斑円孔の予防手術を24例25眼に行い,術後6〜36か月,平均17か月経過をみた。切迫黄斑円孔(Stage 1b)10眼と早期黄斑円孔(Stage2)15眼で,後者をA群(小穿孔巣+,fluid cuff−)4眼とB群(大穿孔巣+,fluid cuff+)11眼に分けた。術中にStage 2 B群の2眼に黄斑円孔が生じたが,術後に黄斑円孔が生じた例はなかった。術後核白内障進行が18眼72%にみられた。視力を相乗平均で示すと,Stage 1b群は術前0.47で術後0.62,Stage 2A群は術前0.22で術後0.49と改善したが,Stage 2B群は術前0.22で術後は0.21とやや悪化した。切迫黄斑円孔および小穿孔巣+だがfluid cuff−の早期黄斑円孔に手術的後部硝子体膜剥離は有効な方法と判断された。

文庫の窓から

点眼瓶の今昔(その2)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   齋藤仁男

ページ範囲:P.1522 - P.1523

1.スネルレン氏耐熱性点眼瓶(1911年頃)硝子製スポイト式
2.明光点眼瓶(1913年頃)
 ゴム付,筒入。5g, 10g。特色:イ)瓶底の堰を越えて液の上部のみを薬溜に傾移し,沈澱物を点眼嘴に吸入させないこと。ロ)瓶口の眞下に薬溜を形成させて最後の1滴まで吸取り得ること。ハ)瓶体丈低く座り良好にして転倒の虞のないこと。二)瓶口を辺隅に設けて点眼嘴の取扱を容易にしたこと。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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