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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科46巻12号

1992年11月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・315

皮下血腫を伴った上眼瞼の毛母腫

著者: 大島浩一 ,   岡田大造 ,   松尾信彦

ページ範囲:P.1532 - P.1534

 緒言:毛母腫は毛母細胞由来の良性腫瘍で,石灰化上皮腫と呼ばれることもある1,2)。本腫瘍は眉毛から上眼瞼にかけて好発し,若年者に多い。皮膚科領域ではさほど珍しくないが,眼科領域では注目されることが少ない。ただし臨床像を理解してさえおけば,多くの場合診断に迷うことはない。本症ではときに出血を伴うことがある3,4)。そして多量に出血して血腫を生じた場合には,臨床診断がむずかしくなる。筆者らはこのような血腫を伴った毛母腫を経験し,病理所見により初めて診断を確定することができたので,以下に述べる。
 症例:患者は57歳の女性で,1991年8月頃,左上眼瞼に腫瘤を自覚した。腫瘤の色調は,はじめは周囲の皮膚と同じであったが,ゆっくりと増大するにつれて黒色調を帯びるようになり,同年10月3日当科を受診した。初診時,左上眼瞼中央部の瞼縁付近に,暗紫色で,縦10mm×横12mmのほぼ球形の腫瘤を認めた(図1)。腫瘤表面は健常な皮膚で覆われていたが,頂上付近の表皮は壊死に陥っていた。表皮下に拡張した血管がみられ,より深部に黄白色の組織塊が透見できた。腫瘤は太い茎を介して瞼縁の皮膚とつながっていたが,gray zoneを越えてはいなかった。腫瘤表層の血腫に相当する部分は軟らかであったが,内部には硬い芯を触れた。腫瘤と瞼板との癒着はなく,瞼結膜にも著変はなかった。

眼の組織・病理アトラス・73

網膜周辺部類嚢胞変性

著者: 猪俣孟

ページ範囲:P.1536 - P.1537

 網膜周辺部類嚢胞変性cystoid degeneration ofthe peripheral retinaは摘出眼球の鋸状縁付近の網膜にみられる小嚢胞様病変に対してつけられた病理組織学的名称で,報告者にちなんでBlessig-Iwanoff嚢胞とも呼ばれる。外網状層に小さな嚢胞腔が形成され,それらが互いに融合して,網膜の内部に複雑な網目状のトンネルができている。このトンネルは網膜の内層から外層に伸びる多数の細い柱によって支えられている。
 臨床的には,網膜周辺部類嚢胞変性を検眼鏡で観察すると,網膜鋸状縁の湾入のすぐ後に小さな赤い顆粒状の小斑点が比較的規則正しく集合配列した状態としてみられる。赤い斑点が小嚢胞腔に相当し,斑点と斑点の間の小白点が網膜の内層から外層に伸びる柱に相当する。

今月の話題

レーベル病とDNA診断

著者: 真島行彦

ページ範囲:P.1544 - P.1548

 ミトコンドリアDNAにおける11778番目と3460番目の塩基置換はレーベル病に特有で(no false positive),特に11778番塩基置換は日本人レーベル病患者の約80%にみられる。この塩基置換を利用したDNA診断は,PCR法と制限酵素消化法により迅速かつ簡単であり,末梢血1mlほどで数日で結果が得られるため臨床応用されつつある。

目でみるCT・MRI眼科学・5

[5]眼窩内疾患(1)

著者: 中尾雄三

ページ範囲:P.1550 - P.1554

 眼窩内疾患の病変はCTやMRIにより存在が明らかになるだけでなく,眼窩内組織(眼球,視神経,外眼筋,血管)や周辺構造(骨壁,副鼻腔,脳)との位置関係が詳細に把握できる。冠状断面・矢状断面(CTでは再構成画像)や造影剤使用が有用である。

眼科手術のテクニック—私はこうしている・47

角膜電気分解

著者: 木村千佳子

ページ範囲:P.1595 - P.1597

はじめに
 角膜電気分解法は顆粒状角膜変性症(cornealgranular dystrophy, Groenow Type Ⅰ)に対して,その混濁を消失あるいは淡くする目的で用いられる治療方法1〜3)の1つである。その原理としては,顆粒状角膜変性症の白濁の本体であるフォスファチジールコリン(燐脂質)4,5)が有する不安定なO—結合部分(図1,2)が電気分解により壊されて分解し,その結果として白濁が消失ないし減少するものと推定される3,6)。顆粒状角膜変性症の治療は,一般に視力回復を目的とする角膜全層移植術,あるいは表層移植術が行われ,角膜擦過法,表層切除術,角膜電気分解法が試みられているが,そのいずれの方法7,8)においても再発は必至である。
 筆者があえて,ここで角膜電気分解法を紹介したいのは,1)手術手技が簡便で,手術時間が短い,2)視力改善が短期間に認められる,3)手術効果が少なくとも1年以上,長いもので4年間持続する,4)繰り返し行うことが可能である,5)安全で合併症を起こさない,などの利点3,6)があり,計画的外来手術として,角膜移植術を施行する前,あるいは施行後の再発例に対し,積極的に用いられるべき方法と考えるからである。

臨床報告

ホルミウム—YAGレーザーによる緑内障濾過手術—Sclerostomy ab externo

著者: 恩田鋭治 ,   安藤宏 ,   本部千博 ,   直原修一 ,   北澤克明

ページ範囲:P.1555 - P.1559

 新たに開発されたホルミウム—YAGレーザー装置を用いた緑内障濾過手術(scleros—tomy ab externo)を眼圧コントロール不良な緑内障患者に施行し,その安全性および眼圧下降効果につき検討した。
 13例14眼に対しsclerostomy ab externoを施行した結果,全例に容易に前房への穿孔が得られ,術直後より濾過胞の形成が認められた。術後の眼圧が21mmHg未満に調整される確率は,術後3か月では50.0%,術後9か月では31.3%であった。術後合併症として,脈絡膜剥離,浅前房,前房出血,虹彩嵌頓を認めたが,これらは一部の症例を除き保存的治療のみで自然消退した。
 本術式は結膜に対する侵襲が軽微で眼内操作を必要とせず,手技は容易で短時間に施行できるため患者に対する負担が少なく,外来手術としても施行可能であることより,有用な術式であると思われた。

緑内障眼における後房レンズ挿入単独手術と線維柱帯切除術併用術式の比較

著者: 山上聡 ,   森美奈子 ,   新家真

ページ範囲:P.1561 - P.1566

 眼圧下降剤の点眼治療のみにより眼圧が21mmHg以下にコントロールされていた緑内障を伴う白内障眼41例46眼に対し,PC-IOL挿入術単独(IOL単独手術群)または線維柱帯切除術との同時手術(同時手術群)を施行し,白内障手術としての予後および術後眼圧コントロールを比較検討した。両群間では,年齢,術前眼圧,術前点眼量などの背景因子に差がなかった。IOL単独手術群では,フィブリン出現率が6眼(22.2%)と,同時手術群の11眼(57.9%)に比し有意に低かった。術後測定した視野には両群間で差はなかった。0.5以上の視力獲得率は22眼(81.5%)であり,同時手術群の10眼(52.6%)に比し有意に高率であった。同時手術群では,術後眼圧が1〜2か月と5〜6か月で,また薬物投与量が術後全経過を通じてそれぞれ有意にIOL単独手術群に比し低値を示した。生命表法による解析では,術後の眼圧コントロール非悪化率には両群間に差がなかった。同時手術群で最終的に無投薬となる率は術後16か月で52%であった。

内因性ぶどう膜炎併発白内障の眼内レンズ移植

著者: 釜田恵子 ,   大原國俊 ,   大久保彰 ,   佐々木洋

ページ範囲:P.1567 - P.1570

 内因性ぶどう膜炎が非活動性となった併発白内障18例21眼に対し,水晶体嚢外摘出術と後房レンズ移植術を行った。臨床経過の観察は,細隙灯顕微鏡などによる眼科一般検査とともに前房フレアを定量的に測定した。術直前および術後1年目以内の経過で前房フレア値は老人性白内障の対照群に比べ高い値であったが,重篤な炎症の再燃はみられず,全例で視力の改善を得た。ぶどう膜炎の既往があっても,症例の選択と術中操作,そして術前後の観察を慎重に行うことにより眼内レンズの移植が可能と考えられる。

二焦点眼内レンズ(diffractive IOL, refractive IOL)の臨床成績

著者: 別当京子 ,   馬嶋慶直 ,   黒部直樹 ,   有木仁之

ページ範囲:P.1571 - P.1574

 現在までの眼内レンズは調節力がないため遠見および近見のいずれかに眼鏡による矯正が必要であり,この問題を解決するため,2つの焦点をもつ眼内レンズの開発が行われている。今回筆者らは,2種類の二焦点眼内レンズ(diffrac—tive IOLおよびrefractive IOL)を移植し,臨床経過を比較検討した。術後視力は,遠方視力については両者に大差は認められなかったが,近方視力については回折型で,加入度数不足の印象をうけた。二焦点眼内レンズは遠方,近方とも良好な視力が得られるという利点があるが,今回検討した2種類の異なる型の眼内レンズは,それぞれ特徴があるものの改良すべき点もあり,今後さらに検討を加える必要がある。

風疹と麻疹による角結膜炎の各1例

著者: 岡田和四郎 ,   秦野寛

ページ範囲:P.1577 - P.1579

 風疹と麻疹の全身感染に続発した小児および成人の角結膜炎の各1例を報告した。両者ともに軽度のカタル性結膜炎を呈し,風疹の症例は5歳の男児で,風疹の発症6日後に羞明を訴え眼科を受診した。両眼とも中央に集蔟した粗なびまん性表層角膜炎がみられた。麻疹の症例は17歳の男性で,麻疹の発症6日後に眼痛を訴え眼科を受診し,両眼にタイゲソン角膜炎に類似した点状表層角膜炎がみられた。両者とも,角膜に混濁を残さず,後遺症なく治癒した。

直腸癌に重複した脈絡膜悪性黒色腫の1例

著者: 照屋武 ,   比嘉武史 ,   荻堂哲司 ,   上原健 ,   長瀧重智 ,   福田雅俊

ページ範囲:P.1581 - P.1585

 直腸癌に脈絡膜悪性黒色腫を重複した1例を報告した。症例は73歳男性で,近医で右眼底の隆起性病変を指摘され当科に紹介された。約1年前の直腸癌手術の既往から転移性脈絡膜腫瘍を疑い放射線治療を施行したが,腫瘍は拡大し視力も低下したため眼球を摘出した。病理組織学的に腫瘍は脈絡膜悪性黒色腫であった。わが国の脈絡膜悪性黒色腫の重複癌は筆者らの例を含め12例報告されているが,癌の診断技術や治療法の進歩に伴い重複癌は増加の一途にあり,眼科においても重複癌を経験する機会は今後増えると思われる。

真菌性眼内炎後の網膜上膜に対する硝子体手術

著者: 直井信久 ,   松浦義史 ,   二見要介 ,   橋口恵子 ,   大角五輪男 ,   澤田惇

ページ範囲:P.1587 - P.1590

 筆者らは真菌性眼内炎治癒後の牽引性網膜剥離例3眼に対して硝子体手術を行った。手術は眼内炎の発症からそれぞれ6年,3か月,3年後に行われた。症例1,2では視神経乳頭から始まり黄斑部に続く増殖性線維血管膜が形成されていた。この膜のdelaminationのさい,ある部位では増殖膜は網膜自体と硬く癒着し網脈絡膜全層を貫く瘢痕を形成しており,この部分の膜は分層が不可能であった。症例3では網膜のごく一部を除いて周辺部まで牽引性網膜剥離が存在し,下方周辺部には高度の網膜新生血管増殖が認められたが,membrane peelingおよびsegmentationによって網膜は復位した。症例2,3では血管閉塞による網膜無血管帯が認められ,これが炎症とともに増殖膜の形成に関与している可能性が示唆された。視力はそれぞれ0.09→0.15,m.m.→0.04,20cm指数→0.09に向上した。視力予後は,黄斑部の傷害の程度と網膜全層の瘢痕の部位に依存した。真菌性眼内炎後の牽引性網膜剥離に対する硝子体手術は視機能改善に有効な手術であると思われた。

後天性網膜血管腫の3症例

著者: 柴田邦子 ,   竹田宗泰 ,   宮部靖子 ,   斉藤哲也 ,   奥芝詩子 ,   中川喬

ページ範囲:P.1599 - P.1603

 合併症を伴う後天性網膜血管腫の3症例を経験した。症例1は51歳男性で嚢胞状黄斑浮腫を伴い,光凝固治療により血管腫が瘢痕化するまでに1年以上の長期間の追加凝固を必要とした。症例2は64歳男性で嚢胞状黄斑浮腫,網膜前膜,浸出斑,および網膜剥離を合併し,光凝固だけでは血管腫を十分に治療できず,冷凍凝固術を追加した。症例3は57歳女性で網膜前膜を合併していた。光凝固を追加しても進行を止められない症例では冷凍凝固術,手術の併用も必要と考える。

急性扁桃炎に続発した海綿静脈洞炎によるTolosa-Hunt様症候群の1例

著者: 沢辺敬子 ,   河野剛也 ,   加茂雅朗 ,   岡宮一彦 ,   三木徳彦

ページ範囲:P.1605 - P.1609

 急性扁桃炎から化膿性髄膜炎,敗血症が起こり,その加療中非拍動性の眼痛が5日間持続したのち,眼瞼下垂,全眼球運動障害,反対側眼球の外転障害を認めた1例を経験した。CT,MRI検査で蝶形骨洞と海綿静脈洞との骨壁が欠損しており,同部に肉芽腫性変化を認め,Tolosa-Hunt様症候群を呈したものと考えた。CT,MRIの両検査で海綿静脈洞の肉芽腫性変化を捉え得た症例は少なく,ここに報告する。副鼻腔炎の約3%が蝶形骨洞炎との報告があり,自験例のような後部眼窩蜂窩織炎は決して多くはないが,眼球運動障害や複視を認めれば,後部篩骨洞や蝶形骨洞の炎症をも念頭におかなければならないと思われた。

短期間で自然治癒した小児の外転神経麻痺の1例

著者: 藤村博美 ,   綾木雅彦 ,   根岸一乃 ,   大出尚郎 ,   小口芳久

ページ範囲:P.1611 - P.1613

 6歳女児の短期間にて自然治癒した外転神経麻痺の1例を報告した。本例は前駆症状がなく突然の複視で発症し,左外転神経麻痺以外には他の眼症状および神経学的症候はみられなかった。頭部X線とCTでも異常所見がみられず,血液検査では血清パラインフルエンザ抗体が256倍と上昇を示した。特別な治療なしで経過観察を行ったところ,発症より約3週後に外転神経麻痺は消失し,約6か月が経過した現在も再発は認められていない。本例は幸い経過良好であるが,小児の後天性外転神経麻痺は脳腫瘍や髄膜炎などの生命にかかわる疾患の1症状として発現してくる可能性を考え,十分な全身検査と経過観察が必要であると思われた。

眼窩と結膜原発のリンパ系腫瘍17例の経過

著者: 伊藤良和 ,   伊東雅子 ,   土井素明 ,   有馬美香 ,   佐宗幹夫 ,   宇治幸隆 ,   大野敏之

ページ範囲:P.1615 - P.1618

 1979年から1990年までの12年間に三重大学眼科にて入院加療を行った眼窩および結膜原発のリンパ系腫瘍17例の治療および臨床経過について検討を加えた。男性13例,女性4例,年齢は48〜89歳,平均62.5歳であった。組織診断は全例に対して生検が行われ,悪性リンパ腫6例(内訳は,diffuse large cell type2例,diffuse small cell type 4例),diffuse small cell typeと炎症偽腫瘍との鑑別困難な症例6例,炎症偽腫瘍5例であった。さらに免疫組織学的に検索された5例のうち3例に,monoclonalityがみられ,2例はpolyclonalであった。治療は,病変が結膜に限局しているものは生検のさいにほぼ全摘され,後療法は行っていない。病変が眼窩に及ぶもののうちlarge cell typeは放射線療法を第1選択とし,small cell typeと炎症偽腫瘍はステロイド療法か放射線療法を選択している。当科における本疾患の生命予後は良好であり,局所再発については,ステロイドでは無効か再発する症例に対して放射線療法が有効であった。

眼窩内hemangiopericytomaの1例

著者: 坂上智巳 ,   中馬秀樹 ,   柊山剰 ,   直井信久 ,   澤田惇 ,   脇坂信一郎 ,   伊勢田努力

ページ範囲:P.1619 - P.1624

 血管外皮腫(hemangiopericytoma)は,毛細血管の外側にある周皮細胞(pericyte)を起源とし,眼窩内に発生することはまれな腫瘍である。筆者らは,眼窩内血管外皮腫の症例を経験した。症例は59歳女性で,左眼球突出を主訴に受診。経過中,眼痛,視力低下はなかった。CT,MRI,血管造影,超音波断層法などの画像診断を施行し,左眼窩内上方に血管に富んだ充実性の腫瘍陰影を認めた。経頭蓋的に上斜筋原発の腫瘍を摘出し,病理組織学的に眼窩内血管外皮腫と診断した。完全摘出されていない可能性があり,術後60Coを計60Gy照射した。一般に腫瘍の発育が緩慢なので長期にわたる経過観察が必要と思われる。本例はわが国で過去10年間における本腫瘍の4例目の報告である。

眼瞼の再建における硬口蓋粘膜の応用

著者: 萩原正博 ,   原拓 ,   木下裕子 ,   藤本耕二

ページ範囲:P.1627 - P.1631

 悪性腫瘍摘出により生じた眼瞼の全層欠損において,硬口蓋粘膜による後葉の再建を8例に行った。硬口蓋粘膜は厚く,さらに厚く硬い粘膜下組織を有しており,十分量の移植片を容易に得ることができた。彎曲も適当で,十分な緊張を保ち,術後の収縮も軽度であった。内反や外反はみられず,認むべき角膜障害はみられなかった。移植片採取部は約3週で完全に治癒した。硬口蓋粘膜は採取による犠牲がきわめて少なく,粘膜および瞼板を同時に再建する供給源として最適な組織と思われる。

ブロウアウト骨折のヘス表による定量分析

著者: 高良由紀子 ,   大戸純恵 ,   安藤幹彦 ,   稲富誠 ,   深道義尚 ,   丸森美樹 ,   谷口重雄 ,   小沢哲磨

ページ範囲:P.1633 - P.1637

 ヘス表を用いて眼窩底骨折の眼球運動障害を分析した。正常のヘス中心座標軸の中心座標点をA点,上30°をB点,下30°をC点とし,BC間の距離を測定した。術前眼球運動障害は,A点に偏位のない症例では上転障害のみの症例と上下転障害のある症例が多くみられた。A点に偏位のある症例では上下転障害のある症例が90%前後を占めた。次に術前期間14日を境に新鮮例と陳旧例に分けた。術前に上転障害のみ,下転障害のみの症例は術前期間と予後に関係はみられなかったが,上下転障害のある症例は,術後BC間が50°未満の眼球運動障害を残した症例は,新鮮例7眼(9%)に対し陳旧例では9眼(38%)あり,早期の手術が必要と考えられた。

カラー臨床報告

角膜上皮障害の新しい病態—Epithelial Crack Line

著者: 大橋裕一 ,   木下茂 ,   細谷比左志 ,   李三榮 ,   荒木かおる ,   切通彰 ,   前田直之

ページ範囲:P.1539 - P.1543

 角膜上皮に生じるひび割れ状の線状混濁をepithelial crack lineと命名し,新しい角膜上皮障害の病態として提唱した。基礎疾患として,角膜ヘルペスや瘢痕性角結膜上皮疾患などが多く,大多数の症例でpalisades of Vogtを欠如していた。Epithelial crack lineは角膜上皮に対する細胞毒性で生じることがほとんどであり,遷延性上皮欠損の前兆としての認識が必要である。

文庫の窓から

点眼瓶の今昔(その3)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   齋藤仁男

ページ範囲:P.1638 - P.1639

20.ワイエヌ式点眼瓶(1949年頃)  頭部肉厚にて型吹製ゴム帽子填込完全
21.井浪式携帯用点眼瓶(1949年頃)  上下ゴム付,木筒及びボール筒入,5cc,8cc,10cc。硬質肉厚硝子製ゴム填込,薬液流出危険ない。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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