臨床報告
真菌性眼内炎後の網膜上膜に対する硝子体手術
著者:
直井信久1
松浦義史1
二見要介1
橋口恵子1
大角五輪男1
澤田惇1
所属機関:
1宮崎医科大学眼科学教室
ページ範囲:P.1587 - P.1590
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筆者らは真菌性眼内炎治癒後の牽引性網膜剥離例3眼に対して硝子体手術を行った。手術は眼内炎の発症からそれぞれ6年,3か月,3年後に行われた。症例1,2では視神経乳頭から始まり黄斑部に続く増殖性線維血管膜が形成されていた。この膜のdelaminationのさい,ある部位では増殖膜は網膜自体と硬く癒着し網脈絡膜全層を貫く瘢痕を形成しており,この部分の膜は分層が不可能であった。症例3では網膜のごく一部を除いて周辺部まで牽引性網膜剥離が存在し,下方周辺部には高度の網膜新生血管増殖が認められたが,membrane peelingおよびsegmentationによって網膜は復位した。症例2,3では血管閉塞による網膜無血管帯が認められ,これが炎症とともに増殖膜の形成に関与している可能性が示唆された。視力はそれぞれ0.09→0.15,m.m.→0.04,20cm指数→0.09に向上した。視力予後は,黄斑部の傷害の程度と網膜全層の瘢痕の部位に依存した。真菌性眼内炎後の牽引性網膜剥離に対する硝子体手術は視機能改善に有効な手術であると思われた。