icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科47巻1号

1993年01月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・317

硝子体手術が奏効した網膜海綿状血管腫の1症例

著者: 半田嘉久 ,   水谷聡 ,   木村修 ,   荻野誠周

ページ範囲:P.6 - P.8

 緒言 網膜海綿状血管腫(cavernous heman—gioma)は1971年にGassら1)によって初めて報告されて以来,独立した疾患として認められている。わが国では1978年石川らの報告2)に始まり,その後数例の報告がなされている。若年より発症し無症状に経過することが多いが,血管腫に対して網膜光凝固術,冷凍凝固術を行うことがある3〜5)。筆者らは13歳頃から徐々に進行した視力低下と変視症を主訴とする16歳男性で続発性硝子体網膜牽引症候群を認めた1症例に硝子体手術を行い,視力の回復と変視症の軽減を得た症例を経験したので報告する。

眼の組織・病理アトラス・75

トキソプラスマ性網脈絡膜炎

著者: 猪俣孟 ,  

ページ範囲:P.10 - P.11

 トキソプラスマ性網脈絡膜炎toxoplasmic retinochoroiditisはトキソプラスマ原虫Toxo—plasma gondiiの感染によって起こる網膜の炎症である。脈絡膜には網膜の炎症に対する反応として強い細胞浸潤が起こる。先天感染と後天感染がある。
 先天感染のトキソプラスマ性網脈絡膜炎は黄斑部の瘢痕病巣として観察されることが多い。病巣と健常網膜の境界が明瞭で,境界部に著しい色素沈着を伴っているのが特徴である。主病巣から離れた部位に瘢痕化した小さな娘病巣がみられれば,診断の助けになる。

今月の話題

レーザーによる緑内障の治療

著者: 直原修一

ページ範囲:P.14 - P.16

 緑内障に対するレーザー治療の進歩は機器の発達に負うところが大きく,これまで各種の方法が開発されてきた。ここでは,比較的新しい方法であるホルミウムYAGレーザーによるスクレロストミーab externoおよび経強膜毛様体光凝固について解説した。

目でみるCT・MRI眼科学・7

[7]視交叉とその近傍疾患(1)

著者: 中尾雄三

ページ範囲:P.18 - P.22

 視交叉とその近傍疾患では両耳側半盲を主とした視機能障害と内分泌異常からなる視交叉症候群がみられる。近年のCTやMRIの画像検査によりこれらの疾患については診断のみならず,病態の把握も容易になった。しかし早期の診断には特徴的な眼科所見を見逃さないことが最も重要で,次に画像検査を行って確認することになる。

眼科手術のテクニック—私はこうしている・49

角膜表層切除・上皮掻爬術

著者: 木下茂

ページ範囲:P.57 - P.59

 角膜表層切除術や上皮掻爬術は手術というよりは外来処置法の1つである。この処置は病理検索のための試料を採取するためか,混濁を除去するために行われる。

臨床報告

後房レンズのループ偏位により生じた角膜内皮障害の1例

著者: 斉之平真弓 ,   吉田弘俊 ,   細谷比左志 ,   大橋裕一

ページ範囲:P.23 - P.26

 嚢外水晶体摘出眼に対する後房レンズの二次挿入術後に,後房レンズのループが周辺虹彩切除孔から脱出し,機械的接触による角膜内皮障害をきたした55歳男性の1例を経験した。眼内レンズ自体は偏位,傾斜しており,下方ループは後嚢破損部から硝子体側に落下していると推測された。外科的に眼内レンズの位置を矯正すると,角膜浮腫は改善したが,後に著明な内皮細胞の拡大を残した。周辺虹彩切除術を伴った無水晶体眼に後房レンズの二次挿入術を施行する場合,とくに後嚢破損を伴っている症例では,破損部位と虹彩切除部位を考慮したうえで眼内レンズの長軸方向を決定する必要があると考えられた。

眼窩偽リンパ腫に対するガンマ線照射後に生じた角膜穿孔

著者: 大島浩一 ,   杉本学 ,   松尾信彦 ,   大月洋 ,   栄勝美 ,   上者郁夫 ,   平木祥夫

ページ範囲:P.27 - P.30

 77歳男性の右眼窩偽リンパ腫を治療するために,コバルト60遠隔照射装置を用いて放射線治療を行った。総腫瘍線量は40Gyで,20回に分割して32日にわたって照射した。照射終了6か月後に,右眼の角膜穿孔を生じた。角膜の被曝線量は,53Gyと推定できた。眼窩部への放射線照射を計画するにあたっては,角膜の被曝線量が過度にならないように考慮しなければならない。

アメリカアイバンク提供角膜を用いた角膜移植における微生物感染および拒絶反応

著者: 戸田郁子 ,   藤島浩 ,   坪田一男 ,   大竹雄一郎 ,   苗加謙応

ページ範囲:P.33 - P.38

 アメリカアイバンクからの提供角膜を用いて行った角膜移植36例に対し,保存中の角膜の微生物汚染と術後感染,拒絶反応について検討した。角膜保存液は1例(3.6%)が微生物汚染陽性,術後感染が疑われたものは3例(8.3%)でこのうち起炎菌が確定したものは1例(2.8%)であった。保存液培養陽性例は術後感染を起こしておらず,したがって保存中の微生物混入による術後感染率は0%であった。レシピエントの結膜擦過培養はすべて正常細菌叢であった。拒絶反応発生率は7例(19.4%)であった。輸送のための長期保存による角膜の微生物汚染,異人種間の移植による拒絶反応率は,今回の調査では国内提供角膜と比較してほぼ問題ないと思われた。

角膜脂肪変性に対するアルゴンレーザー光凝固

著者: 島﨑潤

ページ範囲:P.39 - P.43

 角膜新生血管に続発して生じた角膜脂肪変性8例8眼に,アルゴンレーザー光凝固による新生血管の凝固閉塞を行い,その効果について検討した。8例中5例で新生血管の閉塞が認められた。重篤な合併症はなかったが,沈着した脂肪の吸収はきわめて緩徐であり,この治療により観察期間中に視力向上した症例はなかった。本方法は簡便かつ安全で,角膜脂肪変性の進行を防止するうえで多くの場合有効と思われたが,視機能の予後を考えると,新生血管が生じ炎症が消退した後なるべく早い時期に施行すべきと考えられた。

小眼球に伴う閉塞隅角緑内障に対する内眼手術

著者: 山名隆幸 ,   根木昭 ,   佐藤章子

ページ範囲:P.45 - P.48

 小眼球に伴う閉塞隅角緑内障に対して内眼手術を行い,術中に前房形成不金を生じたため手術をいったん中断したものの,その後複合手術を行って眼圧がコントロールできた症例を報告した。右眼は隅角癒着解離術,超音波乳化吸引術,眼内レンズ移植同時手術を行い眼圧はコントロールされた。左眼も同様の手術を予定し,core vitrectomy後,隅角癒着解離術を施行した。Con—tinuous circular capsulorhexisを行っているさい,前房形成不全となり手術をいったん中断し,同日約12時間後,D-mannitol, acetazolamideを点滴し手術を再開し超音波乳化吸引術を終了した。2週後,眼内レンズ移植,後嚢切除,core vitrec—tomyを追加し,その3日後laser gonioplastyを施行し眼圧コントロールを得ることができた。術後uveal effusion,網膜剥離などの併発症はみていない。

眼底白点症を合併した小眼球症の1症例

著者: 田川泉 ,   小関義之 ,   平戸孝明 ,   白土城照 ,   岡島修

ページ範囲:P.61 - P.64

 眼底白点症を合併した小眼球症の1症例を報告した。両疾患はともに稀な遺伝性疾患であり,これらの合併は今までに報告されておらず,貴重な1例と思われる。家系内には二代にわたり小眼球症が認められたが,網膜異常がみられたのは本人のみであった。症例は22歳女性で,小児期より夜盲を自覚していた。初診時,暗順応曲線は二相性で100分後に正常閾値に達し,その時点でのERGは正常振幅であった。眼底には両眼対称性に,黄斑部を除く網膜全体に,孤立性の境界鮮明な小白点が多数みられた。8年後,視機能および電気生理学的所見が不変であったにもかかわらず,眼底白点の増加および拡大が,初診時眼底写真との比較により確認された。

角膜水疱形成を生じる先天性表皮水疱症の1例

著者: 鈴木忠子

ページ範囲:P.65 - P.69

 症例は16歳女性。学童期より年に数回以上角膜水疱形成を生じ,今回,表皮水疱症のうち接合部型軽症汎発性萎縮型と確定診断された。角膜の水疱形成部位は一定しないものの,主として中央部に多く,角膜表層で,角膜全体の1/3〜2/3の範囲に生じた。通常は対症療法により,約1週間で完全に消失していた。高校入学時より水疱形成時に治療用ソフトコンタクトレンズと,フィブロネクチン点眼を行い,水疱形成の頻度は減少している。同胞症例の兄は今まで数回の角膜びらん形成のみであった。接合部型軽症汎発性萎縮型において,角膜びらんを伴う症例は,数例の報告があるが,本症例のごとく角膜水疱形成を生じた症例は検索した範囲ではなかった。

眼底白点症が疑われた同胞例

著者: 成田和子 ,   前田修司

ページ範囲:P.70 - P.74

 眼底白点症が疑われた同胞例につき報告した。症例1は13歳女児。夜盲の自覚はなく,偶然眼底検査にて白点を指摘された。視力,視野,色覚は正常で,暗順応は著明に障害されていたものの長時間の施行で最終的にほぼ正常の光覚を得,暗順応前後のERGで回復現象をみたことから本症と考えられた。眼底には黄斑周囲5〜15°に境界鮮明な黄白色の白点,これより周辺の暗橙色の白点,また中心窩にも白点がみられ,計3種類の白点が認められた。黄白色の白点については網膜血管より上にあるものと下にあるものとが確認された。一方螢光眼底造影ではいずれの白点とも一致しない点状の低螢光と過螢光が散在し,広範な網膜色素上皮障害の存在が示唆された。以上より,本症例1では網膜表層と網膜色素上皮層にそれぞれ独立した病巣があると考えられた。症例2は11歳女児,症例1の妹。眼底には姉と類似の白点が認められ,同様の暗順応曲線ERG波形を示し,本症と考えられた。

網膜光凝固治療を行ったAIDSによるサイトメガロウイルス網膜炎の1例

著者: 秋澤尉子 ,   高原真理子 ,   松原明子 ,   相楽裕子 ,   新田義明 ,   高橋学

ページ範囲:P.76 - P.80

 不明熱をacyclovirにて加療中のAIDS患者が,左眼にサイトメガロウイルス網膜炎を発症した。投与中のacyclovirとazidothymidineを継続したうえ,汎網膜光凝固術を施行した。左眼の網膜炎は増悪し3か月後に失明したが,網膜剥離の発症はなかった。さらに2か月後には右眼にも網膜炎を発症し,その3週間後に死亡した。サイトメガロウイルス網膜炎では末期には網膜剥離が起こるといわれているが,本例ではganciclovir投与をうけなかったにもかかわらず,網膜剥離の発症はなかった。汎網膜光凝固術と発症前より投与されていたazidothymidineとacyclovirが効果的だった可能性が考えられる。

最近1年間の裂孔原性網膜剥離244眼の治療成績

著者: 弓削由佳 ,   桑原敦子 ,   高井勝史 ,   西村哲哉 ,   宇山昌延

ページ範囲:P.81 - P.85

 1989年の1年間に入院手術を行った裂孔原性網膜剥離233例244眼の手術内容と成績を示した。初回手術には,scleral buckling法を82%に,硝子体手術を9%に,ガス注入を9%に行った。再手術では硝子体手術が45%を占め,全手術ではscleral buckling法75%,硝子体手術16%,ガス注入9%であった。退院時および術後6か月の網膜復位率はともに97%であった。未復位例6眼の原因は,黄斑円孔,深部裂孔による裂孔閉塞困難例,増殖性硝子体網膜症の発生であった。
 裂孔原性網膜剥離の手術には,基本的にはscle—ral buckling法を用いることで良好な成績が得られ,本法の有用性は高いことが示されたが,一方過去の当科の報告と比べて復位率は2%上昇し,それには硝子体手術が貢献していた。

網膜脂血症をみた脂肪萎縮性糖尿病(lipoatrophic diabetes)の1例

著者: 新城光宏 ,   上田彩子

ページ範囲:P.87 - P.91

 脂肪萎縮性糖尿病は特殊型糖尿病の代表的疾患とされ,全身の脂肪組織の欠如と肝脾腫,インスリン抵抗性糖尿病,高脂血症,代謝亢進を伴う症候群であり,その特異な病態にもかかわらず発症機序はいまだに明らかにされていない。筆者らは,脂肪萎縮性糖尿病を基礎疾患として有する17歳の女性に網膜脂血症をみた症例を経験した。
 本症例は,初診時,血中トリグリセライド値が2,500mg/dlを超え,リポ蛋白分画定量結果からは高脂血症に対するFredrickson分類のV型に相当した。眼底所見上,網膜面および網膜血管の色調は特異な性状を呈し,後極部網膜は黄白色の色調が強く,中間周辺部から周辺部にかけて動静脈の色調はほぼ同一の淡紅色で,その識別は困難であった。
 本症例は,Vingerらによる網膜脂血症の分類にしたがえばgrade Iに相当した。

網膜静脈分枝閉塞症での血液房水柵機能とその経過

著者: 前久保久美子 ,   三宅武子 ,   三宅謙作

ページ範囲:P.93 - P.97

 片眼性の網膜静脈分枝閉塞症の血液房水柵機能とその経過を,薬物治療のみを行った群(薬物治療群),これに光凝固を加えた群(光凝固治療群),光凝固の適応がありながらその方法などが不完全であった群(光凝固不完全治療群)の3群で初診から14か月間,laser flare cell metryにより前房蛋白濃度を測定比較した。
 薬物治療群,光凝固治療群では,前房蛋白濃度は6か月まで患眼は他眼より有意に高値を示したが(p<0.01〜p<0.001),その後正常化する傾向があった。光凝固不完全治療群では,前記2群と同じ傾向を示す症例があったが,前房蛋白濃度の高値が1年以上も持続する症例がみられた。血液房水柵機能は,当疾患の活動性をみる1つの指標であることが示唆された。

眼窩結核の1例

著者: 山本美保 ,   砂川光子

ページ範囲:P.99 - P.101

 54歳女性に発症した眼窩結核の1例を報告した。この症例は,眼瞼腫脹,眼痛,視力低下,眼球運動障害などの眼窩先端症候群より始まり,わずか3か月の経過中に視力消失,強角膜壊死に陥り,眼球摘出術を施行した。術後,摘出眼の病理組織検査により,結核と診断した。同時に,上顎洞にも高度の肉芽腫性炎症病変を認め,病巣の上顎洞からの波及を疑わせた。この間,全身の他臓器いずれにも,結核を疑わせる所見はなかった。眼窩結核はきわめて稀な疾患ではあるが,眼窩内腫瘍の鑑別診断として重要であることを示した。

眼窩と副鼻腔に浸潤した巨大な眼瞼基底細胞癌の1例

著者: 小田仁 ,   中村裕 ,   木村肇二郎 ,   小川郁 ,   中嶋英雄 ,   神園純一

ページ範囲:P.103 - P.106

 眼窩と副鼻腔に浸潤した,眼瞼原発の基底細胞癌の1症例を報告した。症例は70歳の男性で,左下眼瞼に腫瘤が出現してから5年後に当科を初診した。初診時,左下眼瞼から眼球周囲にかけて潰瘍・壊死を伴った腫瘍を認め,生検にて基底細胞癌と診断された。CTスキャン・MRIにて前篩骨洞と上顎洞にまで浸潤がみられたため,拡大腫瘍根治切除術および遊離腹直筋皮弁による再建術を行った。
 比較的悪性度の低い眼瞼の基底細胞癌でも,本症例のように放置すれば眼球摘出術も必要となる場合があり,悪性腫瘍が疑われた場合はただちに生検または切除を行い,病理組織学的検査を施行することが重要であると考えられた。

病理診断が困難であった眼窩悪性リンパ腫の1例

著者: 萩原正博 ,   原拓 ,   辻求 ,   坂口一之

ページ範囲:P.107 - P.110

 病理組織学的に診断が困難であった眼窩悪性リンパ腫の1例を報告した。症例は76歳,男性で,眼球突出(左)を指摘され,当科を紹介された。左眼の上転障害があり,CTにて球後にびまん性に広がる腫瘍を認めた。クレーンライン手術により腫瘍を亜全摘し,放射線照射を行った。1年後の現在までのところ再発はない。
 病理組織像は小型リンパ球を主体とするリンパ組織の増殖を示し,多数の形質細胞が認められた。異型性は明らかでなかったが,核に軽度のくびれがみられる細胞がみられ,免疫組織化学的にκ鎖,IgMが陽性で単クローン性が証明され,悪性リンパ腫(lymphoplasmacytic type)と診断した。

Group discussion

糖尿病網膜症

著者: 福田雅俊 ,   堀貞夫

ページ範囲:P.113 - P.114

 今年は再び22題(1題辞退)と演題が増加したため,4題発表できなく申訳なかった。会場は広く,常時500名を超える聴衆があったが,余裕のある運営ができた。
 座長は堀 貞夫,佐藤幸裕,岡野 正,福田雅俊の4名が分担した。

文庫の窓から

本邦試視力表の種々(その2)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   齋藤仁男

ページ範囲:P.116 - P.117

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?