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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科47巻10号

1993年10月発行

雑誌目次

連載 走査電顕でみる眼組織……What is This?・4

虹彩線維芽細胞によるラテックス球貧食像

著者: 杉田新 ,   阿部文英

ページ範囲:P.1687 - P.1687

ラテックス粒子(直径0.1μm,0.6μm,1.0μm)混合液の前房内注入1時間後の虹彩前面の走査電顕写真。虹彩前面を被っている虹彩線維芽細胞の表面に多数のラテックス粒子が観察される。虹彩線維芽細胞が偽足様の細胞質突起(矢印)を出して,ラテックス粒子を取り込もうとしている様子がよくわかる。ニホンザル。×17,000

眼科図譜・326

II型未熟児網膜症とレーザー光凝固

著者: 中山正 ,   深澤美穂子 ,   牧野伸二

ページ範囲:P.1688 - P.1689

 緒言 未熟児網膜症治療の最大の難問はII型未熟児網膜症をいかに早期に診断し,いかなる治療を行うかである1〜3)。厚生省新分類ではその特徴を,極小低出生体重児の未熟性の強い眼に発症し,赤道部から後極側の領域で,全周にわたり未発達の血管先端領域に,異常吻合および走行異常,出血などがみられ,それより周辺は広い無血管領域が存在する。網膜血管は血管帯の全域にわたり著明な蛇行怒張を示す,としている4)。著者らはII型未熟児網膜症の1例に対し,散瞳が約3mmの状態でレーザー光凝固治療5)を行ったのでその臨床経過を供覧する。

眼の組織・病理アトラス・84

眼瞼および眼窩の類皮嚢胞

著者: 猪俣孟

ページ範囲:P.1692 - P.1693

 類皮嚢胞dermoid cystは分離腫choristomaの一種で,身体の表面以外の部位に本来存在しない皮膚様の組織が存在し,それが嚢胞を形成する先天発育異常に基づく腫瘤である。発生原因は,胎生期に表層外胚葉の一部が骨の縫合部に沿って残存したためである。眼瞼と眼窩は類皮嚢胞の好発部位で,眼瞼の類皮嚢胞を表在性類皮嚢胞superficial dermoid cyst,眼窩内の類皮嚢胞を深部類皮嚢胞deep dermoid cystとも呼ぶ。表在性類皮嚢胞は,眼瞼の外側では前頭頬骨縫合fronto—zygomatic sutureに沿って(図1),眼瞼の内側では滑車のすぐ下方にある眼窩骨の縫合線に沿って発生する。深部類皮嚢胞は,眼窩外側では前頭頬骨縫合に沿って,または涙腺窩,内側では滑車のすぐ後で,奥では上眼窩裂に沿って生じる。
 類皮嚢胞は皮膚様の構造からなる嚢腫であるので,皮膚の分泌物やケラチンなどが内腔に貯留し,徐々に大きくなる。眼瞼の類皮嚢胞は早期に腫瘤として触知されるようになり,嚢胞が比較的小さいうちに家族が気づいて,幼児期に眼科を受診する。一方,眼窩内のものは眼瞼のものよりも大きくならないと気づかず,受診は10歳台以降になることが多い。まれに,増大した嚢胞のために眼球突出を生じる。

今月の話題

緑内障と視神経

著者: 溝上國義

ページ範囲:P.1695 - P.1700

 近年,縁内障性視神経症,という視点での緑内障学研究が進み,縁内障における視神経障害の実態がより明らかにされてきた。
 初期緑内障眼では,口径の大きい神経線維,胞体径の大きな節細胞が優先して障害される可能性がある事が示唆され,早期の視機能障害の検出手段としてコントラスト感度が有望視される。さらに,緑内障眼では網膜,視神経で血流が減少していると予想され,乳頭循環障害診断の臨床技術の進歩が今後期待されている。

眼科手術のテクニック—私はこうしている・58

エクソプラントの選択と置き方(2)

著者: 松村美代

ページ範囲:P.1748 - P.1749

選択
 エクソプラントはどのような裂孔に対しても選択可能である。ただし前方の裂孔(毛様体裂孔や鋸状縁付近の網膜最周辺部の裂孔)では,エクソプラントは結膜下に外から見える(美容上の理由),術後期間を経て脱出してくることがある,直筋付着部がバックル位置になるなどの理由でインプラントの方がよい。以下に網膜裂孔のタイプと網膜剥離の広さによるエクソプラントの選択を示す。ただしこれはあくまで目安である。

臨床報告

長期経過したStevens-Johnson症候群の2例

著者: 栗本康夫 ,   砂川光子

ページ範囲:P.1703 - P.1705

 13年と23年の長期経過を観察したStevens-Johnson症候群の2症例4眼を報告した。4眼中3眼では,急性期から慢性期に移行した時点では良好な視力を保っていたが,10年を越える長期の慢性的経過の後には角膜混濁による著明な視力低下をきたした。短期間の経過観察では病状不変と思われる症例でも,長期的に見れば確実に視力は低下していたので,長期間の経過観察と徹底した治療が必要であると考えた。

AIDSに伴うサイトメガロウイルス網膜炎の1例

著者: 藤井ゆかり ,   永田茂樹 ,   判治康彦 ,   粟屋忍

ページ範囲:P.1707 - P.1710

 AIDSに伴うサイトメガロウイルス網膜炎の1例を経験し,ganciclovirによる治療を行った。通常の維持量では網膜炎が鎮静化しなかったため,通常維持量の2倍である10mg/kg/日,週6日投与を行った。ganciclovirの副作用である白血球減少は中等度にみとめられた(1700/μl)が,その他の重篤な副作用はなかった。ganciclovir投与開始時に網膜障害が軽度であった左眼の視力予後は良好であったが,既に重篤な網膜炎のあった右眼の視力予後は不良であった。サイトメガロウイルス網膜炎では早期のganciclovir投与が有効であると思われる。

腎移植患者にみられた網膜黄斑部病変

著者: 三島一晃 ,   佐藤隆哉 ,   嵩義則 ,   雨宮次生 ,   松屋福蔵 ,   斉藤泰

ページ範囲:P.1713 - P.1716

 腎移植後の患者45例90眼の網膜黄斑部病変について検討した。網膜黄斑部病変は18例24眼(26.7%)に認められ,うち黄斑部疾患は12例14眼(15.6%)であった。主な黄斑部疾患は中心性漿液性網脈絡膜症,多発性後極部網膜色素上皮症,網膜色素上皮剥離,黄斑変性であり,これらの疾患は,死体腎移植例の36.8%に認められ,生体腎移植例の19.2%よりも多かった。
 HLA A2,24 B35 Bw54 Cw1,3 DR2,4の抗原保有者は網膜色素上皮障害を生じやすく,免疫抑制剤,副腎皮質ステロイドの大量投与およびウイルス易感染性に加え,免疫遺伝学的影響も大きいと推論した。

腎移植後に発症した中心性漿液性網脈絡膜症の4例

著者: 松倉修司 ,   宮下公男 ,   平賀聖悟 ,   角田隆俊

ページ範囲:P.1719 - P.1724

 腎移植後に発症した中心性漿液性網脈絡膜症の4例を経験した。4例とも腎移植後経過良好で,ステロイド剤と免疫抑制剤は維持量または漸減中であった。螢光眼底造影上は特記すべき所見はなかったが,HLAを検索したところ,A24,Cw1,DR4,DRw53が4例中4例にみられ,Cw3,DR5,DRw52,DQw3が4例中3例にみられた。病態生理上,中心性漿液性網脈絡膜症と類似の多発性後極部網膜色素上皮症が,腎移植後に発症した報告でもHLAの共通がみられており,Bw54を除くCw1,DR4が自験例とも一致していたため,両疾患の発症にHLAに示される免疫遺伝学的素因の関与が考えられた。

ミトコンドリアDNAのnt11778遺伝子変異をもつレーベル視神経症16家系の臨床所見

著者: 篠田啓 ,   緋田芳樹 ,   真島行彦 ,   小口芳久

ページ範囲:P.1727 - P.1730

 ミトコンドリアDNAのnt11778遺伝子変異をもつレーベル視神経症16家系20例の臨床所見について検討した。家族歴は11家系に認められた。男性が16例(80.0%)を占め,発症年齢は10歳から45歳で,平均24.2歳であった。両眼の発症間隔は平均2.3か月であった。最終経過観察時視力は40眼中34眼(85.0%)が0.1以下であったが,3例5眼に0.4以上の視力回復がみられた。ゴールドマン定量視野検査を施行した16例中,1.0までの視力回復例を除き15例に中心暗点を認めた。発症から2か月以内に螢光眼底造影が施行された10例において,8例に拡張性微細血管症が認められた。これらの臨床所見は,同じ遺伝子変異をもつ欧米人のレーベル視神経症の症例とほぼ同様であった。

Vogt—小柳—原田病に対するサイクロスポリンA治療

著者: 稲用和也 ,   林清文 ,   増田寛次郎

ページ範囲:P.1733 - P.1737

 副腎皮質ステロイド薬(ステロイド)投与が困難と考えられたVogt—小柳—原田病(原田病)患者6例(男3例,女3例)に対しサイクロスポリンA (CYA)治療を行った。6例中2例は糖尿病と,胃潰瘍とを合併していたために初期からCYAの単独投与を行った。6例中4例は最初ステロイド投与治療を開始したが,経過中に胃潰瘍,精神神経症状,ステロイド緑内障を合併し,さらに4例中3例は症状が遷延化したためにCYA投与を行った。
 CYA初期投与量は6例中5例が10mg/kg/日で,他の1例は5mg/kg/日であった。投与期間は最低4か月,最高3年5か月であった。6例ともCYA投与開始後まもなく症状は軽快し,5例はステロイド・CYA中止後も寛解が得られている(4年4か月〜7年5か月)。1例は腎機能が低下したためにCYA投与を中止せざるを得なく,ステロイドから離脱できなかった。CYA投与による副作用は,腎機能低下,多毛,神経症状,胃腸症状,熱感,悪心であり,CYAの投与量が,5mg/kg/日以上の時に多い傾向にあった。CYAはステロイド投与困難な原田病や遷延例に対して有用な薬剤の一つとなると考えられた。

視力改善を示したnt11778遺伝子変異をもつレーベル視神経症の2家系

著者: 山田恵子 ,   真島行彦 ,   緋田芳樹 ,   小口芳久

ページ範囲:P.1739 - P.1743

 ミトコンドリアDNAのnt11778変異をもつレーベル視神経症患者16家系中3家系に視力回復患者を認め,2家系2症例に異なる視力回復過程を観察した。症例1は11歳時に急性発症し,発症から2年後より右眼視力は0.05から回復傾向を示し,10年後には0.4〜0.5になった。左眼は0.01のままであった。この視力の自然回復過程はレーベル視神経症にみられる典型的な経過であった。症例2は10歳時に亜急性に発症し,発症より約半年後にミトコンドリアの呼吸活性賦活剤であるイデベノンを経口投与した。右眼視力は0.08であったが,1か月後から回復傾向がみられ,4か月後には1.2になり,左眼視力は2か月後から回復し,8か月後に0.1から1.2に改善した。

網膜剥離手術後の再剥離症例の検討

著者: 高木史子 ,   神谷佳康 ,   山本文昭 ,   岩城正佳

ページ範囲:P.1751 - P.1754

 いったん完全に復位した後,再剥離した裂孔原性網膜剥離100眼につき,その原因,手術法,予後について検討した。再剥離眼の屈折状態は,73%が3Dを超える近視47%が8Dを超える強度近視であった。再剥離の原因は,硝子体の牽引の継続増強による原裂孔の再開(24%),増殖性硝子体網膜症(48%)が主であった。再剥離の時期は約50%が手術後2か月以内であり,その間の経過観察が重要であると考えられた。再剥離を生じても,術式を的確に選択すれば網膜の復位は可能であり,視力予後も良好な場合が多い。

角膜縫縮術が著効した円錐角膜の急性水腫の1例

著者: 中堀裕子 ,   辻村まり ,   片上千加子 ,   上総良三

ページ範囲:P.1757 - P.1760

 円錐角膜において急性水腫のために急激な視力低下をきたすことはしばしば経験するが,角膜穿孔に至ることは非常に稀である。従来,急性水腫の治療は保存的に経過観察することが多く,積極的な治療はあまり行われていない。筆者らは,円錐角膜の経過中に片眼に急性水腫より角膜穿孔をきたし,他眼に急性水腫を生じた症例を経験し,デスメ膜の修復を促進する目的で両眼に角膜縫縮術を施行した。その結果,実質浮腫を早期に消退させ,瘢痕形成を最小限にとどめることができ,良好な経過を得た。本術式は,急性水腫に対し積極的に行ってよい治療法であると考えられた。

光電素子眼球運動記録装置の特性—モデル眼球による検討

著者: 長谷部聡 ,   山岡昭宏 ,   大月洋 ,   渡辺聖 ,   岡野正樹

ページ範囲:P.1761 - P.1764

 光電素子眼球運動記録装置の特性を調べるために,人眼と赤外線吸光度をペアリングしたモデル眼球と精密位置決め装置を用いて,モデル眼球の位置変化に伴う出力電圧の変化を調べた。モデル眼球とセンサの距離が12mmでは偶然誤差はσ=0.25°であった。モデル眼球とセンサの距離が近いほど指数関数的に測定感度は増大し,偶然誤差は改善した。測定の直線性はモデル眼球とセンサの距離によらず,正面から±10°以内では良好であった。±15°では直線性誤差は無視できず,±20°を超えると,眼球運動の方向と出力電圧の関係が反転し,その理由として瞳孔領の影響が推定された。実際の測定にあたっては測定装置の特性を生かした利用が望まれる。

発光ダイオードランプによる新しいランタン型色覚検査器

著者: 田邊詔子 ,   深見嘉一郎 ,   山出新一 ,   市川一夫 ,   互井成夫

ページ範囲:P.1767 - P.1770

 市川式ランタンを基本として,発光ダイオードランプによる色光を用いたJFCランタンテスト(仮称。ジャパンフォーカス社製)を開発した。色光の輝度,純度が,特に黄と緑で市川式より高いこと,全部の色光がほぼ等輝度であること,提示光の組合せを一部変えて,赤・緑・黄が平等に出現するようにしたこと,提示順序をランダムにしたこと,が市川式と異なる。検査成績を比較すると,JFCの方が市川式より誤認が少なかったが,pass・failの基準点の決定には更に検討を要する。

超音波水晶体乳化吸引術と眼内レンズ移植術後に両眼に発症した前部虚血性視神経症

著者: 阿部圭哲 ,   飯島裕幸 ,   佐藤進 ,   古屋徹

ページ範囲:P.1771 - P.1774

 両眼の眼内レンズ移植術後に,両眼それぞれに前部虚血性視神経症(以下AION)を発症した82歳の男性の1例を報告した。右眼は超音波水晶体乳化吸引術と後房レンズ移植術(以下PEA+IOL)をうけ,術後1年1か月目にAIONが発症した。左眼は,右眼の手術の5か月後にPEA+IOLをうけたが,術中硝子体脱出があり,術後眼圧が上昇した。術後20日目にAIONと思われる視神経乳頭浮腫を認めた。全身的には高血圧症,多発性脳梗塞を認めた。右眼のAIONの発症には眼圧上昇が関与していると考えられた。眼内レンズ手術後のAIONは,わが国では稀であるが,重篤な術後合併症のひとつとして,常に念頭におくべきである。

Multiple evanescent white dot syndromeにおける電気生理学的所見の経過

著者: 伊藤良和 ,   伊東雅子 ,   宮村直孝 ,   宇治幸隆

ページ範囲:P.1777 - P.1781

 19歳女性の右眼に発症したmultipleevanescent white dot syndrome (以下MEWDS)の眼所見とERG, EOGを経時的に比較した。主訴は右眼の視力低下で矯正視力は0.3。黄斑部に顆粒状の色素のむらと中間周辺部から赤道部にかけて多数の白斑の散在を認め,ERG a波,b波,律動様小波の著明な減弱と,EOG L/D比の低下およびbase valueの低下がみられた。発症より1か月後には,矯正視力1.0と回復し,眼底の白斑は消失したが,ERG,EOGの回復は遅れ,発症から約6か月後にEOGが正常化し,約1年後に左右眼のERGのb波の振幅に差がみられなくなったが,律動様小波は減弱したままである。これらの経過からMEWDSは,特徴的な眼底白斑の変化や急速な視機能の回復にもかかわらず電気生理学的には長期に異常を呈し,網膜の内層まで病変が及ぶ疾患と考えられた。

眼科の控室

文献請求/遊び心

著者:

ページ範囲:P.1750 - P.1750

 雑誌や単行本などで欲しい文献があるときには,コピーを自分でとる方法もありますが,実物が手元にない場合には,文献を請求することができます。文献請求は,それを書いた著者に頼む方法と,図書館を経由して入手する方法とがあります。
 著者に依頼する方法は簡単です。はがきでも手紙でもよろしいのですが,「これこれの題名でこの雑誌に出た論文を送ってください」と頼むことになります。同業のよしみとして,依頼された方は,別冊を送る義務があるからです。送ってくださる方の手数を省くために,こちらの宛名を書いた紙を同封するのが作法です。できれば,裏に糊がついていて,はがしてペタンと貼れるようにしておくと最高です。返信用の切手は必ずしも同封する必要はありません。いずれ,回り回って自分が別冊を送る立場になるからです。

文庫の窓から

秘伝眼病療治書

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斎藤仁男

ページ範囲:P.1782 - P.1783

 今日伝えられている麻嶋流眼科の秘伝書にはいろいろの種類が挙げられているが,書名(表題)などが異なったもののほかにも,書写の年代(または年号)からも,江戸時代以前のものから江戸時代の末まで,大変広い範囲にわたって書写相伝されたものがあり,多様である。
 『秘伝眼病療治書』は江戸時代半ば頃に書写された麻嶋流眼科書とみられるもので,その眼科の一端を窺い知ることができようかと思い,ここにご紹介する。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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