icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床眼科47巻11号

1993年10月発行

文献概要

特集 白内障手術 Controversy '93 白内障をめぐる22のControversy

多焦点IOL—一歩進んだIOL

著者: 黒部直樹1

所属機関: 1藤田保健衛生大学医学部眼科

ページ範囲:P.122 - P.123

文献購入ページに移動
 白内障術後矯正法としての眼内レンズ(IOL)はこれまでの数多くの報告から,その有用性については,現在最も優れた方法と考えられる。これには,IOL自体の改良のみならず,白内障手術術式の改善も大きな役割を果たしてきた。小切開や自己閉鎖創白内障手術は,術後早期社会復帰,早期視力回復を可能とし,患者に大きな恩恵を与えている。従来の「視力が出ればよい」という白内障手術から,「よりよい視力(quality of vision)を得るための白内障手術へ」と,術者の意識,患者の要望も変化してきていると思われる。また高齢化社会や車社会に伴う白内障手術件数の増加があり,IOLの適応も拡大してきていると考えられる。
 通常ヒト水晶体は,加齢によりその調節力は低下し,高齢者の多くは老視状態となる。白内障(老人性)を生じる時期には大部分の症例は老視であり,白内障摘出後に単焦点IOLを挿入しても調節力をもたない眼となっていた。しかし多焦点IOLの出現により,この不自由さも改善されてきている。もちろん正常ヒト水晶体と同様の調節力を有するIOLが最終目的であるとしても,従来の単焦点IOLと比べ,大きな進歩であると考えられる。多焦点IOLの術後視機能について,筆者らも数々の報告をしてきた。現在考案されている多焦点IOLは回折を利用したもの(回折型)と屈折を利用したもの(屈折型)に大別され,回折型ではすでに市販されている。また屈折型の臨床治験も進んでおり,近い将来市販されるものと思われる。しかし,いずれの多焦点IOLもその臨床経験は単焦点IOLに比べ短く,限られた症例に対し挿入されている。すべての白内障手術にこの多焦点IOLが適応となるとは筆者のこれまでの経験からも考えにくく,その適応については充分に考慮する必要があると思われる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?